お宝映画・番組私的見聞録 -143ページ目

青雲五人の男

今回も、日テレのポスター集から目に付いたドラマ「青雲五人の男」(66年)を取り上げてみたい。
『巨匠マキノ雅弘が描く明治青春ドラマの決定版』と謳われているように、五人の男が当時の学生姿で写っているのだが、その顔ぶれが中々強烈なのである。
大木実(当時43歳)、小山田宗徳(当時39歳)、長門勇(当時34歳)、菅貫太郎(当時32歳)、上杉高也(不明)という特に若く見えるわけでもない面々が「学生」を演じたのである。
内容もほとんど不明なので想像だが、おそらく成長ドラマで、ずっと学生のわけではなく、年を取ってからの姿を中心に描いたのではないだろうか。
「細うで繁昌記」(70年)で当時40歳の新珠三千代が回想シーンで、女学生を演じたりしたように、ドラマや映画ではよくあることだ。
大木は映画スターで、長門も「三匹の侍」や「スチャラカ社員」、唯一実年齢よりは若く見える小山田はメロドラマなどで活躍していたが、菅は当時はそれほど知られた存在ではなかったかもしれない。強烈な悪役としてお馴染みになるのは70年代になってからだろうか。本作の翌年あたりから、様々なテレビ時代劇に悪役ゲストとして顔を出すようになる。とにかく、本作のような役柄(性格は不明だが)は珍しいといえる。
そして、よくわからんのが上杉高也。上川隆也と上杉達也を合わせたような名前で知っているような気になってしまうが、詳細を知っている人はあまりいないのでは?出演経歴を調べると日本電波映画製作ドラマへの出演が多いようだ(本作も日本電波の制作である)。「琴姫七変化」では、毎回のように斬られていたといような記事もあったので、エクラン社の役者だったのかもしれない。前述の「三匹の侍」や「素浪人花山大吉」へのゲスト出演もあったようだが、70年代の初めには姿を消してしまったようである。ポスターで上杉は他の四人より後方に位置している。
他のレギュラーは藤山寛美、長門裕之、新城みち子など。
一時間ドラマのはずだが、ポスターには夜8時~9時30分と書かれている。当時(今もだが)90分の連続ドラマというのはほとんど聞いたことがないし、1話だけ90分スペシャルというようなことも当時はなかったように思うが。単なる間違いかもしれんけれども。 

主題歌は北島三郎「青雲五人男」である。

特別捜査本部

今回はちょっと古い刑事ドラマから「特別捜査本部」(68年)について触れてみたい。
といっても、1クール13回のドラマを覚えている人はあまり、いないと思うし、もちろん自分も見たことはないし、「特別機動捜査隊」や「捜査本部」という東映系のドラマもあり、ちょっとややこしい。ちなみに「捜査本部」は59年放送の東映刑事ドラマの第一号だが、わずか9回の放送で終了している。
さて「特別捜査本部」だが、番宣ポスターに載っている七人が刑事役と判断してよいだろう。山形勲、安井昌二、南廣、伊沢一郎、倉田爽平、福岡正剛、西沢利明という中々渋いメンバーである。大ベテランの山形、伊沢に、当時ともに40歳で主演映画もある安井と南、一番若い西沢でも32歳というアダルトな面々だ。
「殺しを追う刑事たち」とポスターの宣伝コピーにもあるので、普通に捜査一課の話だろう。上に六人、下に山形が一人だけ小さく写っているので、山形が課長もしくは係長といった上司ポジションで間違いないだろう。
このドラマ、68年4月にスタートしたのだが、同時期にスタートしたのが「マイティジャック」で、南と福岡は共に隊員役でレギュラー出演しているが、こちらも1クールで終了している(南は引き続き「戦え!マイティジャック」に出演する)。伊沢は前述の「特別機動捜査隊」では関根部長刑事役だが、その初登場は68年3月末の回からで、ほぼ同時期に二つの刑事役がスタートしていたのである。かたや1クールであったが、「特捜隊」の方は最年長出演者ながら、この後10年出演が続いた。ちなみに、初登場時は56歳であった。
西沢利明は、今では時代劇でも現代劇でも知的悪役というイメージだが、65年には「黄色い風土」というドラマで主役を演じたりもしている。
倉田爽平はこの中では一番馴染みのない存在であるという人は多いと思うが、どうやら70年代中盤くらいまでに姿を消しているようなのである(もっと活動していたかもしれんが)。個人的にも、先日放送された竹脇無我の「鞍馬天狗」で初めて見た(と思う)。天狗に斬られる新撰組隊士の役であったが、倉田ではなく倉多名義だったと思う。歯科大学中退という異色の経歴を持ち、奥さんは瞳麗子である。
予定通りか打ち切りかは不明だが、この時代の1クールドラマが再び陽の目を見る確率は低いだろうなと思う。それ以前に映像が残っているかどうかだが。

キッド

引き続き「日本テレビ・ポスターコレクション」から、今回は刑事ドラマを一つ。
「キッド」(81年)は、タイトルからは想像つかないが、刑事ドラマなのである。いや、本質的には親子の交流がメインで、ホームドラマ的なジャンルに含まれるのかもしれない。正直、一度も見たことがないので、よくわからんのだが。
主人公の木戸(堺正章)は刑事だが、離婚した妻との間に一人息子(柴田一幸)がいる。木戸は捜査一課から二課へ転属となることから、両課の面々がレギュラーとして登場するのである。そのメンツが中々豪華といえる。
詳細な設定などが見つからなかったので、特大ポスターの並びなどからの推測となるが、二課は船越英二を係長として、宍戸錠、前田吟、蟹江敬三、ポール牧、古尾谷雅人という顔ぶれ。一課の方は金子信雄を係長として小松方正、大前均、安原義人、峰竜太、そして、一人だけ知らない顔なのだが、ポスターにある名前から小林昭男(という人)だろうと推測する。
他にも、船越の妻に松尾嘉代、娘に友里千賀子、真行寺君枝、金子の妻に朝丘雪路、娘に山本みどり、後役柄は不明だが、細川俊之の名もある。
宍戸錠、小松方正、細川俊之は「熱中時代・刑事編」、安原義人は「ジャングル」、前田吟、蟹江敬三、古尾谷雅人も他ドラマで刑事を演じている。峰竜太などは時期的には「西部警察」と掛け持ちだったのではないか。一瞬、主演は水谷豊かと思ってしまう顔ぶれだが、あくまでも堺正章である。
一課と二課はライバル関係だか対立関係にあるらしいが、二課が扱うのは知能犯であり、詐欺だの贈収賄だので一課とは違い過ぎる。刑事ドラマといえば一課が定番で、二課が主役の連続ドラマは記憶にない。
ちなみに、両係長である船越と金子は同じ23年生まれだが、船越は大映一筋、金子は日活と東映を中心に活動していたこともあり、映画での共演はなかったと思われる(大ざっぱにしか調べてないが)。
出演者の中では古尾谷とポールは共に自殺という形で世を去り、細川と大前はいずれも昨年亡くなっている。堺の子を演じた柴田一幸だが、その後「親子ゲーム」(86年)に出演などで活躍したが、まもなく引退。00年、交通事故により27歳で他界したというのがネット上での噂である。真実がどうか確かめようがないのだが、本当だとしたら、やはり子役出身の人というのは若くして亡くなっている人が多いと改めて思う。
本作はほとんど再放送もされず、ソフト化もされていないようなので、ちょっと見てみたい作品である。

ゲバゲバ一座のちょんまげ90分

今回も「日本テレビ・ポスターコレクション」で見つけたバラエティから。
「巨泉・前武ゲバゲバ90分!」(69、70年)は、多くの人に知られている番組だと思うのだが、その後番組といえる「ゲバゲバ一座のちょんまげ90分」(71年)を覚えている人はあまりいないような気がする。ぶっちゃけ、自分も見た記憶がないし、取り上げられているのを見たこともない。しかし、上記の「ポスターコレクション」の表紙を飾っているのが、この「ちょんまげ90分」なのである。
内容はタイトル通り時代劇仕立てのコントが中心になり、出演者は「ゲバゲバ90分」とほぼ一緒で、大橋巨泉、宍戸錠、藤村俊二、常田富士男、小松方正、熊倉一雄、大辻伺郎、朝丘雪路、うつみみどり、岡崎友紀、松岡きっこ、小山ルミ、キャロライン洋子、坂上二郎、萩本欽一といったところは引き続いての登場で、ポスターには載っていないが、ハナ肇も「ゲバゲバ90分」と同じような役割で登場したようだ。
前田武彦や小川知子は抜けて、新顔として参加しているのがコメディには縁のなさそうな西田健や横山リエである。西田は当時「帰ってきたウルトラマン」で、主人公の郷と対立する岸田隊員を演じていた時である。プロデューサーである井原高忠からのオファーだったそうだが、こちらでは光源氏を持ち役としていた。余談だが、西田が劇団雲に研究生として入団した時の同期生には田中真紀子現衆議院議員がいたそうだ。
横山リエは薄幸なイメージの強い女優で、殺されたりとか不幸な役柄が多い気がする。若かったとはいえバラエティ出演は非常に珍しいと思われる。彼女も「帰ってきたウルトラマン」にはゲスト出演している。
他にもポスターにはギイ、嶋田じゅんという女優が載っている。ギイは詳細不明で、何人かもよくわからなかった。嶋田じゅんは70年ミス・ユニバースの日本代表として、上位に入賞した経験を持つ。ジャニーズ事務所二人目の女性タレントであり、77年にはフォーリブスの青山孝と結婚している(後に離婚)。ちなみに、第一号はやはり、ミスユニバース日本代表出身の飯野矢住代という人。事務所を辞めた後、21歳の若さで事故死(一酸化炭素中毒)してしまっている。幼馴染だった池田秀一の部屋で彼の不在中に起きた事件であった。
「ゲバゲバ90分」の陰に隠れる形になってしまっているが、ちょっと見てみたい番組ではある。

あなた出番です!/ドリフターズ大作戦

さて、4月になったので話題を変えようと思うのだが、先日「日本テレビ・ポスターコレクション」という本を入手した。丁度20年前に出た本なのだが、映画のポスター集などは結構あるが、テレビの番宣ポスター集というのはなかなかないと思う。で、そこから気になったものをピックアップしてみたい。
まずは、久々にバラエティから「あなた出番です!」(66~69年)を。ポスターだけ見ると、真ん中に電話を持った伊東ゆかりがドーンと写っており、その両脇にドリフターズの五人とワイルドワンズの五人が。2年近く六人組だった新生ドリフターズだが、おそらくこの番組が始まる直前あたりに綱木文夫が抜けお馴染みの五人組になったようである。
伊東が視聴者に電話をして「あなた出番です」と答えれば、スポンサーであるスズキの自動車やシャープのカラーテレビをプレゼントするというもの。そういう番組と思いきや、これは「ハッピーコール」というコーナーの1つで、一般参加のオーディションがメインの番組なのである。
伊東ゆかりがメインでドリフは司会補佐的な位置にあった。この番組から泉アキや「遠山の金さん捕物帳」の主題歌を歌った親分&子分ズが誕生している。
三年続く人気番組となったが、実はこの前年「歌え!一億」という同じ伊東とドリフが司会を務める番組があったのだが、会議中に高木ブーが居眠りをし、スポンサーを怒らせため番組は3カ月で終了していた。
「あなた出番です」の後番組が「ドリフターズ大作戦」(69年)である。ドリフがメイン司会に昇格し、レギュラーとして小山ルミとゴールデン・ハーフ。「あなたの芸を披露して、ドリフと一緒に海外旅行に行こう」というのが謳い文句の一般参加型番組である。ちなみに、この年の4月から「全員集合」はスタートしている。余談だが、加藤茶と小山ルミは交際が噂されたりしていた。
半年ごとのグランドチャンピオン大会で優勝すれば、海外旅行へということだったようだが、裏番組であるアニメ「ひみつのアッコちゃん」に人気を奪われ、番組が半年で終了してしまったので大会は1回しか行われなかったようだ。「あな番」終了も同じ理由だが、人気物のドリフをメインに据えても「アッコちゃん」にはかなわなかったのである。
ところで、この番宣ポスターだが、ドリフと小山のバックにゴールデン・ハーフがいるのだが、その数は六人。翌年のレコードデビュー時は五人(すぐに石山エリが抜けるが)だったので、当初はもう一人存在していたようである。
久々に(というより、ほとんど初の)夕方更新をしてみた。次回はまた深夜に戻るかも。

ぼうや/夢をそだてよう

加賀まりこシリーズ、最後にテレビの方に目を向けてみたい。
「坊っちゃん」での坂本九との共演を挙げたが、テレビの方でもいくつかの共演が見つかった。
まず「ぼうや」(63年)。あの倉本聡の原作・脚本で、バンドボーイの青春を描くといったような話のようである。坂本九もスタートはバンドボーイなので、ピッタリなキャスティングかもしれない。わかっている他の出演者は石浜朗、藤原釜足、そして加賀まりこ。主題歌は九の歌う「夜明けのうた」で、この時はさほどヒットしなかったようだが、後に岸洋子が歌ってヒットさせている。
その「ぼうや」が終わったあと、直ぐに始まったのが「夢をそだてよう」(63~64年)。どうやら、これは純粋にドラマというわけではなく、終盤はショーに変わるというような構成だったらしい。
沢村貞子が九の祖母で大貫ゆみ子が妹役。役柄はよくわからないが、加賀まりこや入江美樹らがレギュラーだったようである。大貫ゆみ子については詳細不明だが、入江美樹はロシア系ハーフのモデルで、本名のイリーナから転じて入江なのだろう。後に指揮者の小澤征爾と結婚、つまり俳優・小澤征悦の母である。
おそらく、ショー部分のゲストとして出演したと思われるのが、九重佑三子、三田明、中村八大、西田佐知子、トニー谷、白木みのる、牧伸二、パラダイスキングなどで、他にも森川信、芳村真理、高石かつ枝、草笛光子、青島幸男なども出演したらしい。
坂本九と加賀まりこの共演というのは何故か多かったようである。
加賀は関係ないが、ついでに紹介しておくと「ぼうや」の前番組はやはり九が主演の「教授と次男坊」(61~63年)というホームドラマであった。タイトルの次男坊が九でその父である教授が有島一郎だ。他には松本朝夫、山田吾一、高橋とよ、長谷川明男、池田昌子などが出演していた。この主題歌が近年もピックアップされた「明日があるさ」である。

ならず者

さて、もう一丁だけ加賀まりこで辿っていくと、「ならず者」(64年)と言う作品が目についた。基本、契約していた松竹作品が多かった加賀だが、本作は東映で、カルトな作品が多い石井輝男が監督である。
これは石井の前作「東京ギャング対香港ギャング」に続いて、香港・マカオロケを敢行した作品である。
主演は高倉健で、丹波哲郎、江原真二郎、杉浦直樹、安部徹、三原葉子、高城丈二といったところはギャング映画っぽい顔ぶれで石井作品にもよく出演しているが、そこに本作では鹿内孝、南田洋子、加賀まりこといった石井作品は初めてといった面々が参加している。
南田洋子はデビューから3年弱が大映で、その後の日活時代のイメージが強く、東映作品にはあまり出ていないと思っていたのだが、日活を辞めた63年あたりから67年まで結構、東映作品にも出演していた。
本作では、南田は現地の娼婦役でロケにも参加しているが、加賀は横浜の娼婦という役。石井は長回しで撮ろうとしたが、加賀が対応できなかったので、カット割りにしたという。
本作で忘れてならないのは、当時15歳の高見理紗。等ブログでも触れたことがあったと思うが、高見エミリーの姉である。映画デビューが前述の「東京ギャング対香港ギャング」で、本作が2作目。現地の少女を演じるが、殺されてしまうのである。この64年、四本の映画にしただけで(「マグマ大使」とかにも顔を出してはいる)、姿を消してしまう。替わりに妹のエミリーがそれなりに芸能界で活躍する。
ご存知の方も多いかもしれないが、エミリーは今や鳩山邦夫元大臣の妻、理紗はブリジストン創業者(石橋正二郎)の孫(石橋寛監査役)の妻である。正二郎には長男幹一郎(元ブリジストン社長)と安子ら四人の娘がおり、鳩山の母は安子だったりする。図にしないとわかりにくいと思うが、石橋家、鳩山家、高見姉妹は密接につながっているのである。

ハイウェイの王様/坊っちゃん(66)

また、加賀まりこから辿ってみると、坂本九が主演の作品が二本あった。
1本目は「ハイウェイの王様」(65年)。本作は坂本九が白バイ隊員に扮するが、アクションものというわけではない。その隊長が谷幹一で、当時のポスターにもドンと載っている。同僚隊員役が勝呂誉に菅原文太。松竹時代の文太はこういうポジションの役が多い。それぞれの恋人に葵京子、夏圭子で、ヒロイン役は香山美子となる。彼女は雑誌カメラマンという役どころだが、当時は朝永振一郎博士がノーベル賞を受賞した時期にあり、九は彼女の叔父を朝永博士と勘違いするという時事ネタがある。その雑誌の編集長役が園井啓介。もっぱらテレビで活躍した園井だが、62~65年までは松竹と契約しており、本作にも顔を出している桑野みゆきを相手役に「あの橋の絆で」全4部作に出演している。園井といえば「事件記者」のイメージも強いが、そのキャップ役である永井智雄も香山の師匠カメラマンとして登場する。
他にも、長門勇、神山繁、上田吉二郎らに加え、加賀まりこはそのまま女優という役柄である。原作の阿川弘之や写真家の秋山庄太郎も「応援出演」という形で顔を見せる。本作は九の所属していたマセキプロとの提携作品となっており、所属の九重佑三子や九がかつて在籍していたパラダイスキングらも登場する。
2本目は誰もが知っている夏目漱石の「坊っちゃん」(66年)。もちろん、坂本九が坊っちゃんで、マドンナ役が加賀まりこである。原作では名は明かされない坊っちゃんだが、本作では小川大助となっている。他の主な登場人物は三波伸介(山嵐)、大村崑(うらなり)、藤村有弘(野だいこ)、牟田悌三(赤シャツ)、三木のり平(小使い)、そして校長である狸には作曲家・古賀政男というイメージの湧き易い顔ぶれである。古賀は本編の音楽も担当している。
前述の「ハイウェイの王様」ではヒロインの香山美子は、こちらでは冒頭にちらっと顔を見せ、九重佑三子も同様に登場する。何度か映像化されている中では、なかなかよい配役だと個人的には思うが、マドンナはうらなりの婚約者。加賀と大村崑のカップルって非常にミスマッチなものを感じる。
加賀はある特番で九のことを「もの凄くセリフ覚えの早い人だった」と述べていた。

大根と人参

加賀まりこから辿っていくと「大根と人参」(65年)というのが目についた。どんな作品だか、さっぱり想像がつかないが、調べてみるとなんとこの作品「小津安二郎記念作品」と銘打たれているのである。
自分は、小津安二郎に関しては、まともに見たのは「東京物語」くらいで、ほとんど無知に近いという状況だったりするだが、遺作となった「秋刀魚の味」(62年)の次に予定されていたのが「大根と人参」だったとのことであった。小津と野田高悟の原案をもとに渋谷実の監督で制作されている。渋谷実についても全然知らなかったので、調べてみると最も危険なタイトルの映画といわれる「気違い部落」(57年)の監督であった。ただ、渋谷も翌66年の「仰げば尊し」を最後に映画界を去ったようである。
さて、本作だが主役こそ小津記念作品らしく笠智衆が務めているが、他のメインどころである乙羽信子、長門裕之、山形勲、そして加賀まりこなんかは小津作品とはかかわりのなかった面々である。「小津記念作品」といいながらも、あまり小津映画っぽくはしたくなかったということだろうか。
小津作品への登場が多かった岡田茉莉子、有馬稲子、司葉子や出演経験のある桑野みゆき、池部良なんかはチョイ役での登場のようである。他にも常連組では岩下志麻、三宅邦子、三上真一郎、加東大介、東山千栄子、信欣三そうでない組では森光子や漫画家の加藤芳郎なんかも顔を出しており、出演者をずらりと並べると非常に豪華な顔ぶれであることがわかると思う(常連、非常連は間違っているかもしれないが)。岡田(当時31歳)、有馬(当時32歳)、司(当時30歳)、加賀の4姉妹というのも凄いものがある。

元々小津がイメージしていた役者は多少違うようで、田中絹代、佐分利信、吉田輝雄、北龍二などが予定されてようである。

タイトルだけでは、見たいと思う人はあまりいないと思うが、小津の名前と豪華キャストに引かれる人は多いのではないだろうか。

落第生とお嬢さん

もう一作、加賀まりこと藤木孝がメインで共演していた作品が「落第生とお嬢さん」(64年)である。この二人が主演というわけではないようだ。
早川保、寺島達夫、そして藤木孝扮する音大生三人組が探偵事務所でアルバイトを始める。そこに依頼に来たのが女秘書・桑野みゆきで三人は事件に巻き込まれていくというお話。
加賀まりこは上田吉二郎の娘で、誘拐されてしまう役。小畠絹子が早川の妻(あるいは姉)で、榊ひろみはポジションがよくわからんが加賀みどりという役名でちょっとややこしい。
未見だし資料も少ない作品だが、ポスターはネット上で見ることができた。トップに来てるのは三人組ではなく桑野みゆきであった。共に事件解決の尽力するようなので、彼女が主役ポジションのようだ。そのポスターには「独立美人隊」では省かれていた榊ひろみもちゃんと載っている。
桑野みゆきは13歳でデビュー。当時はすでにトップ女優の一人であった。浅丘ルリ子を生み出した「緑はるかに」(55年)のオーディションで最終選考に残った七人の中には当時12歳の桑野と13歳だった榊ひろみもいたという。ちなみに、桑野は67年に結婚引退してしまうので、今となっては馴染みのない人も多いかもそれない。
早川保は藤木同様、悪役のイメージが強いが、当時はさわやか青年の役が多かった。実は慶応高校→慶応義塾大学という慶応ボーイであり、同じコースの加山雄三は1年後輩になる。
前述のポスターには「大いに笑ってください」のコピーがあり、タイトル横に「愉快な愉快な」の文字が。つまり「愉快な愉快な落第生とお嬢さん」が正式なタイトルなのかもしれない。とまあ、喜劇であることが強調されているが、喜劇畑の人は長門勇くらいしか出演していない。他には飯田蝶子、殿山泰司、永井達郎、人気歌手の旗照夫など。黒幕役の永井達郎はこの年に改名して永井秀明となっている。