お宝映画・番組私的見聞録
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太陽西から昇る

前回の「花嫁は十五才」で監督デビューした江崎実生が次に監督した作品が「太陽西から昇る」(64年)である。「西から昇ったおひさまが東へ沈む~」という唄で始まるのはアニメ「天才バカボン」だが、本作は別にコメディではないし、アホな映画でもない。終始シリアスな雰囲気に包まれている。
正にこれを書いている今日(3月7日)にスカパーで放送されたようだが、自分はそのチャンネル(衛星劇場)には未加入なので(高いから)、YouTube経由である。違法動画ではなくちゃんと公式(つまり日活)で公開しているやつである。
主演は浅丘ルリ子だが、その相手役は長谷川明男なのである。長谷川といえば大映のイメージだが、この時点ではまだ未所属だったのかもしれない。子役としてデビューし、テレビドラマに数本出演してから東宝の「林檎の花咲く町」(63年)で映画デビューしており、恐らく本作が初の日活出演と思われる。突如として準主演に抜擢された経緯は不明だが、長谷川和田浩治と同様に当時は石原裕次郎に似ていると言われていたのである(もちろん顔がシュッとしていた頃)。実は本作では石原裕次郎邸が撮影に使われているという。プール付きの豪華な家が登場するがそこがそうらしい。裕次郎本人は出ないが似た奴を出そうとということになったのかも。
さて「太陽西から昇る」だが、大学生の康子(浅丘)は小野寺建設の社長令嬢、亜紀槇杏子)の家庭教師を務めることになった。小野寺邸は父・重樹芦田伸介)と女中・シノ、そして居候の日下浩長谷川)という青年の四人暮らしだった。浩の父は小野寺建設の経理課長をしていたが、汚職事件の渦中に巻き込まれて自殺、そのため小野寺に引き取られたのだった。は大学をさぼり昼は庭のプールでゴロゴロし、夜は仲間の溜まり場“ブルーマンディ”で憂さを晴らしていた。康子は何故かそんな浩に惹かれていくのだった。
浩の友人である久我中尾彬)、仲間の一人で浩にベッタリなノン設楽香乃)、店のバーテン・ガン平田大三郎)、黒田組のヤクザ権田草薙幸二郎)らが主な登場人物である。中尾は61年に日活ニューフェイスとして採用されながら翌年には退社。この時は民藝の一員だ。平田も60年代の日活作品を見ていない人には馴染みの薄い役者であろう。それよりも浅丘以外の若い女性として出演している槇杏子、設楽香乃はもっと馴染みがないだろう。は本作では高校生役だが、恐らくそのぐらいの年齢だったと思われる。映画出演はどうやら5本程度で記録上ラストなのは、やはり江崎が監督の小林旭主演「女の警察」(69年)である。こちらではホステスの役である。設楽も年齢とかは不明だが、読者モデル出身で、映画出演は本作含めて2本だけのようだ。もう1本は松竹なので本作が唯一の日活映画出演作となる。本作ではずべ公のような役だが、実際はバレエをやったりピアノをやったりの総立ちのいいお嬢様らしい。彼女の弟は当時の人気子役だった設楽幸嗣である。
久我、ノンと相次いでの前で不慮の死を遂げ、父の死は自殺ではなく小野寺の差し金によるものと知ったはニューヨークへ行こうとしていた小野寺を殺害する。二か月後、逮捕された浩が小菅刑務所に移送されることを知った康子はその塀の前で護送車を待っていたが…。
当時の「映画芸術」でベストテン第1位に選出されたという。おしゃれな画面づくりで専門家が好みそうな作品ではあるだろうと感じた。客が入るかどうかは微妙な気がするけれども。

花嫁は十五才

前回の「駈けだし刑事」(64年)から約三カ月後に公開されたのが「花嫁は十五才」(64年)である。
本作を選んだのはネットで公開中というのもあるが、両作品の原作が同じ藤原審爾だったからである。普通に推理サスペンスといった分野の人だと思っていたのだが、ジャンルは多岐に及び本作のように恋愛ものも書く人というのを初めて知った。まあ、その作品を一つも読んだことがなかったためである。
そのタイトルから恋愛コメディ的なものか「三年B組金八先生」における「十五歳の母」みたいな物を想像するこもしれないが、そのどちらでもない。
主演は和泉雅子山内賢というお馴染みの「二人の銀座」コンビ。和泉の相手役は高橋英樹も多いが、個人的には山内賢が一番しっくりくる気がする。当時の実年齢は和泉が16歳で山内は20歳だったが、設定では和泉の演じる牧山弘子はタイトル通り15歳で山内の演じる片山むく太は17歳である。当時も今と変わらずで結婚可能年齢には共に1歳足りないのだ。にしても山内の役名である「むく太」というのは虚構でも現実世界でも初耳な名前である。漢字で書くと「椋太」ということになろうか。
その「むく太」は熊本で中学卒業後、叔父の養鶏場で働いていたがイヤになりあてもなく上京。まあ当時は高校に進学せず働くことはそれほど珍しくはなかった。と言っても進学率は65年で70%、2010年以降からは99%弱が続いている。で都電の中で弘子と出会い、最寄りの停留所のまえにある牛乳屋で働くことになる。弘子は15歳ということで中学生という設定なのだが、共学ではないようである。女子中というのは基本は女子高とセットで、いいとこの娘が通うというイメージである。弘子の家庭は母親は二年前に他界し、銀行の守衛である下條正巳)と二人暮らし。この時代のヒロインは貧乏と相場が決っていたが、裕福というわけではないがそこまで貧乏でもない感じであろうか、当初は。
当初はというのは、結局貧乏に陥る事件が起きるからである。弘子の父が銀行強盗に射殺されるのである。射殺シーンがあるわけではないが、銀行から走り去る車を配達中のむく太が目撃。自分も銃口を向けられるが、そのまま逃走。もしやと感じたむく太が倒れている彼女の父を発見することになる。その辺が藤原テイストなのかもしれない。で、弘子が一人ぼっちになったので、むく太は結婚を考えるようになるわけである。しかし年齢が壁になる。まあ一年くらい待てよという話なのだが。
ライバルの赤羽牛乳というのが登場するが実際撮影は北区赤羽付近で行われた模様。本作のロケ地を探訪する動画があるのだが、仕事でこの辺に通っていたことがあり、分かる場所もあったりする。
他の出演者だが、東野英治郎、奈良岡朋子、杉山俊夫、香月美奈子、初井言栄、高原駿雄などで、和泉のクラスメート役で山本陽子、西尾三枝子、有田双美子などが出演しているが、和泉演じる弘子と親しい娘というのはいないようである。
結局、何も解決しないまま終わるのだが、悲痛なエンディングというわけではない。狭い部屋の中で抱き合う二人の周囲をカメラが360度ぐるぐる回るのである。ここまで回るのは中々ないと思う。監督は本作がデビュー作である江崎実生(みおと読む)。大映テレビ制作のドラマでよく見かける名前ではないだろうか。助監督は藤田繁夫(敏八)で、山内が歌う主題歌の作詞も彼である。

駈けだし刑事

もう一作、日活の刑事ものから「駈けだし刑事」(64年)を。シリーズものではなく単発ものである。
原作は藤原審爾の「若い刑事」で、新宿警察シリーズの第1作だったようだ。原作小説を読んだことはないのだが、根来刑事を始めとする刑事たちの活躍を描いたシリーズ作品と解説にはあり、75年に「新宿警察」のタイトルで東映でドラマ化され、北大路欣也根来刑事を演じていた。他の登場人物、結城刑事藤竜也)、山辺刑事財津一郎)、徳田刑事花沢徳衛)、仙田主任小池朝雄)らが原作に存在するかどうかは調査できなかった。この「駆け出し刑事」の主役は新米の新田刑事であり長門裕之(当時30歳)が演じている。舞台は当然、新宿警察署だが、当時新宿にあったのは淀橋警察署であり、新宿署はあくまでも架空の警察署であった。69年に改称され新宿署となっており、前述のドラマの時には存在していたので、架空の角筈署という名前を使っていた。
主演の長門石原裕次郎、小林旭、宍戸錠、渡哲也辺りと比べると華はないし、なんとかラインにも入っていないのだが、主演作は結構多い。本人も本質的には脇役だと思うと語っている。54年、映画製作を再開した日活に自ら売り込む形で入社。京都で時代劇などに出演していたが、誰も知らないだろうと思ったので、父親(沢村国太郎)の名前を使ったという。61年には「太陽の季節」などで共演した南田洋子と結婚。62年には日活を退社してフリーになっており、つまり本作の時点では既にフリーの立場だったわけである。    
先輩刑事役でコンビを組むのが伊藤雄之助である。見ていてもわかりづらいのだが、新宿署の人間と本庁からの応援組が混在している。伊藤の他は、河上信夫、木浦祐三、そして「機動捜査班」でも刑事役だった花村彰則が新宿署の刑事役。高品格弘松三郎は普段は悪役だが、本作では本庁の刑事役である。陶隆や、やはり「機動捜査班」でレギュラーだった宮崎準が本庁のお偉いさん役である。
高利貸しの権藤山田禅二)が殺され、その犯人を綾子長谷百合)が目撃したという。容疑者である密売人の井上深江章喜)も殺人に関してはシロのようだった。新人刑事の新田長門裕之)は昼は花屋、夜はホステスとして働く綾子と親しくなっていくのだが…。井上は「俺の前にスケと野郎がいた」と証言。どうやらそれは綾子と弟の敏夫鍵山順一)だったらしい。というのがストーリーの概要である。
長谷百合と言えば「スチャラカ社員」(61~67年)の初代事務員として知られる。世代ではないので、実際に見たことはないが、藤田まことの「長谷くーん」は結構有名ではないだろうか。二代目は藤純子、三代目は東山明美、四代目は西川ヘレンと全員が「出世」している。
長谷百合の詳しいプロフィールは不明で、当時24歳で大阪の生まれ。関西の番組を中心に活動していたということくらい。映画出演も少なく本作も含めて全部で5本(日活が4本)だけのようである。翌65年のドラマ出演を最後に活動記録がないので、その辺りで引退したということだろう。
長門の刑事役といえば、「特捜最前線」の蒲生警視。これは二谷英明のケガをきっかけに登場し、準レギュラーとなった。「私鉄沿線97分署」の滝村課長とか、ある程度お偉いさんのイメージ。「スケバン刑事」の暗闇指令(原作では暗闇警視)もそうなのだろうか。

機動捜査班シリーズ

引き続き「機動捜査班」シリーズである。
タイトルの機動捜査班とは捜査四課二係のことで、主役が若手の青山恭二大宮刑事)で、ほぼ固定されているのが長尾敏之助遠山係長)、宮崎準伊藤部長刑事)、花村典昌金子刑事)である。この中で花村は名前を典克、典昌彰則と変えているようだ。
前回ちょこっと触れたが、4~5作目は花村ではなく長弘が金子刑事役を演じていた。しかし6作目「暴力」(61年)で花村が復帰し、長弘村田刑事という役目に変更されている。
しかし7作目「無法地帯」(62年)では再び長弘金子刑事で、花村の名はない。1作目で伊藤部長刑事役だった二本柳寛がここでは悪の黒幕役である。上野山功一は保安課の刑事として登場している。
62年は他に8作目「東京午前零時」、9作目「港の略奪者」、10作目「東京暴力地図」、11作目「群狼の街」が公開され、花村が金子刑事に定着していたようだ。またちゃんとした役名はないようだが、同僚の刑事として秋山耕志、今村弘、晴海勇三、東郷秀美、平塚仁郎らが出演している。この中では今村弘は日活ニューフェイスの1期生、つまり宍戸錠の同期となるわけだが、その宍戸と最も親しかったのがこの今村のようである。まあ宍戸錠の著書「シシド」を読んだ限りでは、そう感じるのである。宍戸と言えば、弟は郷鍈治だが、が8作目より登場し、内田良平と共に悪役の常連となる。前回も書いたが内田と香月美奈子はほぼ毎回のように登場するのである。南寿美子、藤岡重慶、弘松三郎、山田禅二なども出演率は高い。
珍しいところでは、6作目「暴力」に清水まゆみ、8作目「東京午前零時」には三原葉子、10作目「東京暴力地図」に上月左知子、11作目「群狼の街」に和田悦子金子光伸の名が見られる。金子内田良平に拉致される幼稚園児を演じていたようだ。ただ、光伸ではなく伸光と誤ってクレジットされていたらしい。
63年は12作目「裸の眼」、13作目「警視十三号応答なし」、最終作「静かなる暴力」と公開されている。
13作目で大きな動きがあった。主役だった青山恭二演じる大宮刑事は、冒頭で研修のため渡米してしまうのである。代わりに移動して来るのが上野山功一演じる新田刑事だ。つまり上野山が新主役なのか、と思ったらそういう扱いではないようだ。本作でのクレジット上のトップは内田良平なのである。勿論、今回も悪役だ。内田に続くのが本シリーズ初登場の白木マリ、そして青山となっている。ちなみに上野山は7番手のようだ。本作は白木のほか松尾嘉代郷鍈治の妹役で初登場している。
そして最終作だが、情報ではタイトルバックに「機動捜査班」の文字はなかったらしい。故意か忘れたのかは不明だが、それではただの「静かなる暴力」という作品になってしまう。ちなみに、今回もトップクレジットは内田良平である。前回に続き白木マリ、そして初登場の石山健二郎と続く。石山と言えば黒澤映画「天国と地獄」の部長刑事役が印象に深いが実は本作の3カ月前の公開であり、本作では通常の?ヤクザの会長役である。機動捜査班の面々は8~11番手にレギュラー四人(宮崎、上野山、長尾、花村の順)が仲良く並んでいる。まあ当初から悪側を中心に描かれていたが、最後までそのスタイルだったようだ。あと、ノンクレジットだが、竜崎勝が県警の刑事役で出ていたという。元々は高橋英樹と同期となる日活ニューフェイスの5期だったので出ても不思議はないのだが、早々と俳優座に行ってしまうのである。 上映時間は87分とシリーズ一長かったのが最後っぽいかもしれない。
青山恭二は本シリーズを最後に映画に出演することはなくテレビの方へ廻ったようである。恐らくその際に日活も辞めたと思われるが、結局68年に役者を引退したようである。
触れていなかったが、「刑事物語シリーズ」「機動捜査班シリーズ」とも監督は小杉勇。戦前はスター俳優だったが、戦後は監督に転じている。といっても他監督の作品には役者として出演することもあった。シリーズ音楽担当の小杉太一郎は息子である。、

機動捜査班


「刑事物語」シリーズと入れ替わる形で、始まったのが「機動捜査班」シリーズ(61~63年)である。引き続き青山恭二が今回は単独で主演を務める。タイトルを聞くと、どうしても東映の「特別機動捜査隊」を思い出してしまうが、同じ61年スタートではあるが、実は「機動捜査班」の方が約半年早い。「機動捜査」なる言葉を最初に使ったかどうかまではわからないが、その可能性は高そうだ。
このシリーズは全14作あり、上映時間も「刑事物語」シリーズよりは若干長く、70分前後になることが多いようだ。この手の刑事ドラマだと、たいてい捜査一課が主役となるのだが、こちらは捜査四課つまり暴力団関係を扱う部署である。
捜査四課と言えば、テレビドラマでは「大都会~闘いの日々~」(76年)が思い浮かぶ程度であろうか。渡哲也を主役に石原裕次郎率いる石原プロが手掛けたテレビシリーズ第1作で、日活出身者を多く起用したドラマであったが、地味過ぎて人気もイマイチだったこともあり、「大都会partⅡ」からは捜査一課の物語に転じていたりするのだ。
そもそも「機動捜査」とは刑事たちが覆面パトカーに乗って捜査にあたることというのがほぼ同義で、前述の「特別機動捜査隊」もOPは覆面パトカー(サイレンを鳴らしているが)が走っているだけの映像である。ただ、この「機動捜査班」(61年)の第1作を見た限りでは、警察側よりも悪人つまり暴力団側の描写に時間が割かれているのだ。
機動捜査班は青山恭二演じる大宮刑事、コンビを組む二本柳寛演じる伊藤部長刑事、以外の顔ぶれは長尾敏之助、花村典昌、深水吉衛など誰ですか?と言った感じの役者が並ぶが、悪人側は丹波哲郎、内田良平、藤岡重慶、森塚敏といったお馴染みとも言える顔ぶれで彼らに吉行和子、南寿美子が絡むといった構図なのである。絵になるのが悪人側なので、必然的に彼らの出番が長くなるわけである。
第2作は「機動捜査班 罠のある街」(61年)では、主演の青山恭二大宮刑事)はそのままだが、伊藤部長刑事宮崎準に変更で、二本柳寛は1作のみの刑事役であった(後に他役で登場する)。長尾敏之助遠山係長)、花村典昌金子刑事)は引き続きの登場だが役名は前作と替わっているようだ。伊藤孝雄が別部署の刑事として出演している。ゲストだが、内田良平、南寿美子は引き続きの登場で、他に近藤宏、佐野浅夫、香月美奈子、南風夕子、嵯峨善兵など「刑事物語」に良く出ていた面々が顔を揃えている。
第3作「機動捜査班 秘密会員章」(61年)では、青山恭二の役名が木村刑事になっており、大宮刑事上野山功一になっている。宮崎準、花村典昌、長尾敏之助は前作と同じ役名である。松原智恵子青山の妹役で登場。香月美奈子、近藤宏、嵯峨善兵は引き続き同じような役での登場、悪役に草薙幸二郎が加わっている。タイトルの「会員章」だが「会員証」ではないのか?と疑問が浮かぶ。
第4作「機動捜査班 都会の牙」では、青山恭二の役名が大宮刑事に戻っている。宮崎準、長尾敏之助は引き続きの登場だが、金子刑事役は長弘に変更となっている。ゲストの内田良平、香月美奈子は毎回違う役なのだが、レギュラーに近い。山内明、井上昭文、堀恭子などがシリーズ初登場。他に深江章喜、高品格など。
第5作「機動捜査班 東京危険地帯」(61年)では、機動捜査班のメンバーは第4作と同じようだ。内田良平、香月美奈子も当然のように出演。他に菅井一郎、小園蓉子、藤岡重慶、弘松三郎、野呂圭介、山田禅二、星ナオミなど。

刑事物語シリーズ

現状、基本は週一更新になっているが、祝日とかがあると週二もあったりする。というわけで前回の続きで、残りの「刑事物語」である。
予め言っておくと、実際に見たのは1作目だけで他は見たことは無い。で、その「刑事物語 東京の迷路」で書き忘れたのだが、保郎刑事役の待田京介が蝶ネクタイ姿なのが気になった。当時は普通だったのかもしれんが、今は蝶ネクタイで犯罪捜査にあたる刑事はいないだろう。
というわけで第4作「刑事物語 銃声に浮かぶ顔」(60年)である。今回、益田喜頓演じる佐藤源造は隅田署の刑事で、青山恭二演じる佐藤保郎は警視庁の部長刑事という設定のようだ。話は三年の刑事を終えて出所してきた森下岩下浩)がひき逃げされるところから始まる。同時に源造の拳銃が盗まれるという事件が発生する。ゲストは南風夕子、刈屋ヒデ子、丘野美子、河上信夫、弘松三郎、近江大介、嵯峨善兵など。
第5作は「刑事物語 前科なき拳銃」(60年)である。今回は佐藤源造、保郎の親子刑事がスペイン製の銃を追うというお話。ゲストは中川姿子、南風夕子、佐野浅夫、高品格、深江章喜、木下雅弘などで、山田禅二が捜査主任役。深江木下が犯人グループのメンバーのようだ。今気づいたのだが、「刑事物語」に良く出てくるのは南風夕子であって、南風洋子ではないのだ。洋子の方は民藝に所属していたので、日活作品にも顔を出しており、名前は南田洋子、顔は岸田今日子に似た感じの女優という印象があった。夕子の方はよくわからないが、芸名の変更による同一人物でも誤植でもなく南風洋子と南風夕子の二人が存在していたようだ。もっとも南風夕子で検索しても南風洋子が出てくるのでややこしい。 
第6作は「刑事物語 小さな目撃者」(60年)である。今回の親子刑事は共に向島署の刑事らしい。薬品の密売人たちを追う話のようだ。ゲストは中川姿子、南寿美子、佐野浅夫、杉幸彦、宮崎準、弘松三郎、山田禅二など。中川姿子は姉が中川弘子、妹が中川ゆきで、三姉妹揃って女優としての活動経験がある。父はモダンダンスの父と呼ばれる中川三郎である。
第7作は「刑事物語 知り過ぎた奴は殺す」(60年)である。源造は「所轄」の刑事で、保郎は警視庁の部長刑事らしい。犯人役が上野山功一森塚敏で、ゲストが香月美奈子、南風夕子、山田禅二、土方弘など。
第8作は「刑事物語 犯行七分前」(60年)である。源造は隅田署の刑事で、保郎は警視庁の部長刑事。犯人役は宮崎準、上野山功一、近江大介などで、ゲストが香月美奈子、南風夕子、深江章喜、杉幸彦、山田禅二など。
上野山功一は大映のイメージが強い気がするが、58~65年は日活に所属し、その後に大映なので両社に同じくらいの期間所属していたことになる。香月美奈子は55年に松竹から「銀令子」としてデビューし、翌56年から日活に所属となっている。66年には引退しているので、彼女も青山恭二同様にあまり語られない役者ではないだろうか。山田禅二は基本悪役だったが、このシリーズではほぼ警察の人間である。後に「特別機動捜査隊」の後半でも特捜隊の係長を演じることになる。
第9作は「刑事物語 ジャズは狂っちゃいねえ」(61年)である。佐野浅夫が麻薬組織のボスらしい。ゲストは伊藤孝雄、上野山功一、楠侑子など。
最終作は「刑事物語 部長刑事を追え」(61年)である。囮捜査のため、保郎刑事が偽装退職するが、源造はそれを知らない。ゲストが伊藤孝雄、深江章喜、楠侑子など。伊藤孝雄は日活ニューフェイスの3期(二谷英明、小林旭の代)に合格しているが、宝塚映画に入社している。60年に退社し俳優座養成所へ入所。つまり本作は養成所に所属中での出演ということになる。63年からは劇団民藝に所属し、その後は一筋である。昨年亡くなっていたことが、今年になって民藝から発表されている。

刑事物語 東京の迷路

今回は日活の「刑事物語シリーズ」(60~61年)である。全10作で、基本1時間に満たないSPだ。
東映の「警視庁物語シリーズ」(56~64年)を意識していると思われるが、こちらは親子刑事が物語の中心となっている。
主役の佐藤源造刑事益田喜頓、息子の佐藤保郎刑事青山恭二というのが基本だが、変わらないのは二人の名前だけ。というのも源造刑事は所轄のベテランというのは毎回一緒だが、それが城南暑だったり隅田署だったりするのである。保郎刑事も源造と同じ署の時もあれば、本庁所属で源造より偉い部長刑事だったりする時もあるようだ。
益田喜頓と言えば、ひょろっとした爺さんのイメージが強く本作もそういったイメージで見てしまうが、当時まだ50歳であった。36年に川田義雄(晴久)、坊屋三郎、芝利英と「あきれたぼういず」を結成。元々コメディの人なのだが、個人的にはあまりそういうイメージはなかった。坊屋の実弟だが、応招され31歳で戦死。川田は50歳の若さで病死しているが、益田と坊屋は長生きしたイメージがある。
青山恭二は日活で70本を越える作品に出演しており、主演作も多いのだが、早くに引退したこともあり、あまり語られることのない役者である。55年に東宝ニューフェースに合格し、東宝からデビューしたのだが、翌56年に日活に移籍している。「銀座旋風児」や「銀座無頼帖」といった小林旭の主演シリーズに助演で出演することが多く、クレジット順位も3~4番手と高かったのだが、あまり印象に残っていない気がする。
さて、その第1作「刑事物語 東京の迷路」(60年)だが、実はキャストが違う。保郎役は青山ではなく待田京介なのである。城南署の南刑事関口悦郎)が殺され、城南署に捜査本部が置かれる。同僚だった源造はもちろん本庁からは保郎も派遣され捜査にあたる。保郎と南は警察学校の同期だったのである。その容疑者となるのが、ホステスのマリ香月美奈子)やその婚約者である元ヤクザの君塚青山恭二)だった。そう、青山は更生した若者の役で出演しており、クレジット順も青山が3番手で待田が4番手になっている。これは、この1作目だけなのだが、何故かは不明である。真犯人役は浜村純だが(浜村淳ではない)、実は喜頓より年上だったりするのだ(当時53歳)。喜頓同様にひょろっとした爺さんのイメージだが、本作では結構走らされている(吹替かもしれんが)。
第2作は「刑事物語 殺人者を追え」(60年)からは前述のとおり青山恭二佐藤保郎刑事役に定着する。今回は本庁の部長刑事という設定で、源造は三原署の刑事になっている。ゲストは筑波久子、稲垣美穂子、深江章喜、野呂圭介、榎木兵衛、若水ヤエ子など前作よりはお馴染みの顔が多い。ちなみにタイトルは殺人者と書いて「ころし」と読む。
第3作は「刑事物語 灰色の暴走」では、1作目の保郎役だった待田京介が犯人役で登場する。待田上野山功一、武藤章生が深夜の信用金庫に侵入。金庫を開けている間にパトカーが到着し、上野山と武藤は主犯格の弘松三郎の車で逃走するが、待田は乗り遅れ弟分である沢本忠雄のいるガソリンスタンドに逃げ込むという話。お馴染みの名前が並ぶが他にも清川虹子、楠侑子、中川姿子などが出演している。

非行少女

今回は和泉雅子繋がりで「非行少女」(63年)である。彼女の初期代表作と言ってもいいと思う。まあ個人的には最近まで見たことはなかったけれども。
舞台は石川県で、原作は森山啓の「三郎と若枝」。15歳の北若枝和泉雅子)は学校にも通わず怪しげなバーで小銭稼ぎをしていたが、酔客に絡まれるのに嫌気が差して店を飛び出した。東京で仕事に失敗して内灘町に還って来た21歳の沢田三郎浜田光夫)は、町会議員の立候補を控えた長兄太郎小池朝雄)への引け目と、職安通いの肩身の狭い毎日を送っていた。そんな幼馴染の二人が、金沢の街で再会するところからドラマは始まる。和泉は当時、設定どおりの15歳で、浜田は20歳だった。小池とはとても兄弟に見えないが、実年齢では12歳差と思ったほどの差はない。太郎と三郎なので、間には画面には登場しない二郎がいるのだろう。撮影は実際に内灘町でも行われたようで、原作では触れられていない内灘闘争が話に絡められている。ちなみに内灘闘争とは、53年に現在の内灘町で起きたアメリカ軍の試射場に対する反対運動である。
他の出演者だが香月美奈子、杉山俊夫、高原駿雄、浜村純、高田敏江、佐々木すみ江、佐藤オリエ、小林昭二、野呂圭介、藤岡重慶、鈴木瑞穂、北林谷栄、小林トシ子、沢村貞子、小夜福子、小沢昭一など。制服姿で登場するのが佐藤オリエだが、最初はわからなかった。まだ俳優座養成所におり、おそらく初の映画出演だったと思われる。
監督の浦山桐郎は前年の「キューポラのある街」で監督デビュー。本作が2本目となる。「キューポラ」は吉永小百合浜田光夫の黄金コンビであったが、こちらは和泉と浜田の組み合わせなので珍しく感じる。まあ吉永小百合に「非行少女」つまりは汚れ役ををやらせるわけにはいかないということかもしれない。じゃあ和泉雅子ならいいのかということになるが、彼女は本作での演技力が認められ、エランドール新人賞や、ソビエト連邦時代のモスクワ映画祭金賞を受賞したのである。
浦山は寡作で知られ、映画監督作品は10本しかない。次作が69年「私が棄てた女」なので、この6年後となる。その主演女優である小林トシ江を自宅において、特訓したというエピソードは有名。「非行少女」に出演している小林トシ子はもちろん別人。トシ江は新人だが、トシ子は「カルメン故郷に帰る」(51年)で高峰秀子の相棒のストリッパー役で有名な女優だ。

浦山の監督作では「青春の門」(75年)が有名だが、最終作となったのは「夢千代日記」(85年)で、主演はデビュー作「キューポラのある街」でのヒロインであった吉永小百合であった。その弟役だった市川好郎も出演している。浦山はこの「夢千代日記」を完成させた後、急性心不全にて亡くなったのである。54歳の若さであった。

花と果実

今回も前回とは何の関係もな作品で、共通点は日活であるということくらいである。手っ取り早く、ネット上に転がっている作品を見たりしているのでこうなってしまうのである。
というわけで「花と果実」(67年)である。日活青春映画御用達ともいえる石坂洋次郎原作の青春もので、主演は和泉雅子杉良太郎である。当時としては和泉雅子の方が年下だが格上の存在なので、彼女の方が主演扱いである。ただ、本作においては二人の恋愛模様が描かれており、ダブル主演と言ってもよいと思う。
ストーリーと言っても、和泉演じる淡路島出身の女子大生・村上のぶ子とその恋人である杉良演じる中畑五郎のイチャイチャぶりが描かれているとしか言いようがない。特に大きな事件が起きるわけでもない。ひたすら最初から最後まで明るい和泉とひたすら三枚目な杉良。ここまで三枚目な彼も珍しく感じるが、これが後1~2年後だったら、出演を拒否していたのではないだろうか。ちなみに、解説などではのぶ子は女子大に通っているとなっているが、どう見ても共学で五郎も同じ大学の同級生と思われる。一緒に授業受けたりしているし。
杉良太郎は65年に歌手としてデビュー。66年に日活と契約し俳優活動もスタート。本作は恐らく3本目の出演映画で、初のメインキャストである。映画デビューとなる「続・東京流れ者 海は真っ赤な恋の色」(66年)では、クレジット順こそ5番目であったが、主演は渡哲也でヒロインは同じ新人の橘和子とお馴染みの松原智恵子。杉は組長の息子で松原に惚れている見習い船員というものだった。二本目の「渡哲也の嵐を呼ぶ男」では、16番目に後退し、役柄もバンドのサックス奏者というものだった。
そんな杉が3本目にして主演となったのは、おそらく同67年に始まったが主役のNHK時代劇「文吾捕物絵図」があったからだろうと思われる。テレビによってある程度売れてきたので、本作での抜擢に繋がったのだろうと予想。和泉雅子とのコンビは、あまり印象にはなかったので、珍しいと思ってしまったが、改めて調べると今回のようなカップル役は少なくとも3本はあり、相手役というわけでではない共演も数本あったのである。ただ、日活後のテレビドラマで共演することがほとんどなかったので、珍しいという印象になってしまったと思う。
さて、他の出演者だが、山本陽子、和田浩治、大坂志郎、藤竜也、松山省二、奈良岡朋子、小山明子、有島一郎などである。山本陽子和泉雅子が下宿している長谷川家の娘で、内気なお嬢様の役。有島と奈良岡和泉の両親で、藤竜也が兄で、大坂杉良の父だ。あとモデル役で、山本リンダが出ているがノンクレジットだ。
あと本作は翌68年にテレビドラマ化されており、20回にわたり放送された。主演ののぶ子は映画と同じく和泉雅子が演じているが、五郎役は関口宏になっている。他の出演者は役柄は不明だが、山内賢、小橋玲子、中原ひとみ、河原崎健三、横山道代、山田吾一、浪花千栄子、小高雄二など。ゲストとして映画にも出演している小山明子、松山省二の名があるが映画と同役かどうかは不明だ。

天使が俺を追い駈ける

前回まで松竹のサスペンスものが続いいていたが、今回は何の関連性もなく日活の喜劇「天使が俺を追い駈ける」(61年)である。
主演は三木のり平で、ヒロイン役が当時15歳の吉永小百合である。15歳といっても既に日活には入社しており、大ブレイク一歩手前といった頃であろうか。美人というよりは可愛いという頃だが、十分に完成されており、もしリアルタイムで見ていたなら、自分もサユリストになっていたかもしれないと思えるほどである。
大体のあらすじだが、友人の借金を押し付けられてしまった化粧品会社のセールスマン・三本木六平三木のり平)は絶望し、自殺しようとするがその勇気はなく、ガス自殺を図っても、すぐに窓を開けてしまう。そこへ見知らぬ男がその窓から飛び込んでくる。その男・ヌーベルの獏八波むと志)は殺人請負株式会社の殺し屋で六平は自分を殺してもらう契約をする。しかし、その直後から六平に幸運が続く。大金が手に入り、務めている会社ビルのエレバーターガールである久美吉永小百合)とも親しくなる。だんだん死ぬ気が無くなって行く六平だったが、殺し屋の国際会議では六平を殺すことを殺し屋の腕比べの大会にすることが決議されるのだった。次々現れる殺し屋から何とか逃れ、ラストは久美とハッピーエンドを迎えるという喜劇である。
他の出演者だが、千葉信男、小園蓉子、和田悦子、嵯峨善平、逗子とんぼなどで有名な役者はそれほど出ていない。左とん平がかなりチョイ役で出演している。和田悦子和田浩治の実姉で、本作では六平の部屋の階下に住み女性を演じている。
吉永小百合にとって、初めてのキスシーンということだが、のり平のおでこにチュとするだけである。かなり嫌がっていたとのり平本人は語っていたようだ。
当初、殺し屋・獏を演じているのが誰かわからなかったのだが、そういえば出演者クレジットは三木のり平、吉永小百合の次は八波むと志(東宝)となっていたことを思い出した。初めて動く八波むと志を見たかもしれない。由利徹、南利明と「脱線トリオ」を組んでいた人という知識はあったのだが、この三年後に亡くなってしまうので、リアルタイムで見た記憶はなかったのである。
おそらく唯一の日活出演作だと思うが、そもそも何で八波が(東宝)付で本作に出演しているのかと言えば、それはのり平との関係性によるものだろう。エノケンこと榎本健一率いる「雲の上団五郎一座」にてのり平とコンビのような関係だったのが八波なのである。「雲の上団五郎一座」も名前だけで、その中身は知らなかったのだ。そう言えば、最近ここで話題にしていた佐田啓二と同じくらいの年齢で亡くなったのでは、と思い改めて調べてみた。佐田啓二…1926年12月9日生まれ、八波むと志…1926年12月1日生まれで、何と8日違いであった。亡くなったのは八波…1964年1月で、佐田は1964年8月と7カ月違い。つまり共に37歳で、死因も同じ交通事故死である。違うのは八波は自分で運転していて電停に激突したのだが、佐田は運転しておらず4人で同乗していて彼だけが亡くなったのである。追い越しによる事故となっていたらしいが、最近になって運転手の居眠りだったと息子の中井貴一が明かしている。
多分共演はなかったと思うのだが、八波も俳優業が油の乗っていた時期だっただけに、いずれは佐田主演のシリアス作品に八波が出演というケースもあったかもしれない。後半話が変わってしまった。

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