俄・浪華遊侠伝 | お宝映画・番組私的見聞録

俄・浪華遊侠伝

山田太一が「ポーラテレビ小説」に関わったのは、前回の「パンとあこがれ」(69年)だけだったようで、翌70年には新たな木下恵介枠である「木下恵介・人間の歌シリーズ」が新設され、その2本目に山田が起用されたのである。「木下恵介アワー」が人気だったので、TBSは新たに木下枠を設定したわけである。本枠でも木下本人は、ドラマ作品の企画・監修を手掛けている。
で、山田が担当したのが「俄・浪華遊侠伝」(70年)で、時系列では「兄弟」と「二人の世界」の間の作品ということになる。今までと異なるのは、山田のオリジナルではなく、司馬遼太郎の原作が存在することである。結構CSで放送されているのだが、まともに見たことはない。
「俄」は「にわか」と読み、舞台ではなく路上で感情を素朴に表現する即興喜劇のことをいう。主人公の明石屋万吉(小林佐兵衛)はやくざ者であり、実在した人物で、幕末明治における上方きっての大親分だそうである。
11歳で母と妹を養うために賭場荒しになったが博奕は好きでも上手でもない。15歳でやくざ者として門戸を構え、いつでも死ねるのが商売という信条を掲げた。物語はこの辺りから始まるので、主役の万吉を演じる林隆三は3話からの本格的登場となるようで、1~2話の万吉少年時は岡本隆成が演じている。この頃に、芸者の小左門(藤村志保)と出会ったのである。藤村はナレーションも担当している。
以下にTBSチャンネルのサイトから各話の主なあらすじを抜粋した。第4話…万吉のところへ、大阪でも指折りの遊侠の親方雁高辰巳柳太郎)が、命仕事を頼みにきた。その訪問に感激した万吉は、どんな仕事でも引きうけると約束した。第5話…堂島の米相場をたたきつぶした万吉は、いまや度胸日本一とうわさされる男になった。ある夜、万吉小左門と結ばれる。第6話…万吉は、大阪東町奉行の久須美佐渡守島田正吾)に頼まれて、囚われの身である野々山平兵衛二谷英明)を探すために、牢を一つ一つ巡っていた。第10話…元治元年、長州軍の敗残兵が続々と大阪へ落ちてきた。万吉は、幕軍の大阪城代から落武者を見つけ次第斬るように命じられる。第12話…新撰組に捕らえられた万吉であったが、一柳藩にはその士籍がないという理由で釈放された。大石鍬次郎三上真一郎)らは万吉の後をつける。第13話…徳川幕府の大政奉還から二ヵ月。京都にいる薩長兵と大阪の徳川兵は一触即発の状態にあった。ある夜、万吉は一柳藩の仕置家老・山田捨馬渡辺文雄)に呼ばれる。

辰巳柳太郎、島田正吾という新国劇の重鎮二人が相次いで登場したり、時代劇は珍しい二谷英明がゲストで顔を見せていたりする。

上記に書かれていない主な出演者だが、小春…万吉の女房(大谷直子)、万吉の母吉川雅恵)、帯権東野孝彦)、天満の軽口屋樋浦勉)、平助常田富士男)、ゴテ政(蟹江敬三)、内山彦次郎西村晃)、建部小藤治花沢徳衛)、遠藤謹介石浜朗)、榊原三十郎小松方正)、同心渡辺津坂匡章)、嘉七金子信雄)、役者松細川俊之)、胴元白木みのる)、胴元上田吉二郎)、番頭(芦屋雁之助)など。万吉以外にも久須美佐渡守、大石鍬次郎、内山彦次郎、遠藤謹介などは実在した人物である。

結末での大阪での戦争で、万吉たちは、維新軍がわにつくという原作と違うストーリーになっているが、これは脚本の山田の創案によるもの。予め全13話と決まっていたこともあるので、仕方ないことなのか、山田が原作をなぞるだけではなく、何かオリジナリティを入れたかったのかは定かではない。