new暴れん坊商人~視覚障害者の呟き~ -71ページ目

散髪

 会社が休みで散髪に行った。
 というか、妻に連れて行ってもらった。
 中に入り、
「夫は目が悪いので介助お願いします。」
と言った妻。
「わかりました。」
との店員の答え。
「ところで髪型はどんな風に切りますか?」
と店員は妻に向かって聞いた。
「えっ、夫は応えられますので本人に聞いてください。」
と言い残し妻は近くのスーパーに買い物に行ってしまった。
 
 まぁ、よくあることではあるけれど、視覚障害で眼が見えにくいからといってもそれだけのことでして・・・。
 口もきけりゃあ耳も聞こえるし、足も動くし手も動く。
 頭脳もしっかりしたもんでっせ。 苦笑
 会社にいてもこれに似た事が結構あるもんでして。
 わしの所属する部署で、わし以外社員が休みでいない時に、他の部署からやってきた社員が、わしの横で、
「今日はまるまる部は誰もいないんじゃねぇ。」
とのたまう。
「おいおい、ここにわしがいるではないか。無視すんなよ。」
と思いつつ、よくあることなのであまり気にせんようにしてますです。
 わしが全然見ない全盲だと思っているんじゃろうか?
 ぼやけてはいても蛍光灯の明かりぐらいは感じることはできるんですよーーだ。
 耳もちゃんと聞こえているんですよーーだ、
 その声で誰がきたのかわかっているんですよーーだ。
 
 つい先日の人事異動と機構改革で上司の上司になった本部長。
 声がでかい、冗談なのか本気なのかわからんがよく怒鳴り、よく怒る。そして冗談もよく言う。
 顔の表情が見えれば何てことはないんじゃろうが、視覚障害のわしにはそのきつい怒鳴り声は心に響く。
 じっと黙って聞いて、この人は本気でおこっているんじゃろうか、それとも冗談で起こっているような言い方しているんだろうか、観察せにゃあならん。
 疲れますです。
 本部長、もうちょっと気遣ってわしに話しかけてくれんじゃろうか?
と思いつつ、それだけ他の社員同様に障害者のわしに接してくれているといいように解釈するのでした。

横浜ベイスターズ

わしは横浜ベイスターズファンである。
 今住んでいる所は関西でその前は広島。
 よって隠れファンである。
 高校も広島だったので、教室ではひたすら広島ファンの昨日のゲームの話を横目で聞きつつ、「くそったれ。」と思っていた。
 広島球状でも3類側に座っているのにほとんど、その当時の大洋歩エール図のファンはいなく、応援もこっそり膝の下の見えないところでぱちぱち拍手をしていた。
 
 何年か前に奇跡の日本一になったので思い残す事はないとは言え、今年の横浜は弱すぎる。
 次から次へと主力選手が奪い取られ、今のメンバーではなかなか勝てる気がしないのが本音である。
 もうちとどうにかならんもんかいねぇ。

男子バレーボール

 今日、男子バレーの北京オリンピック出場のための最終予選で日本がオーストラリアに快勝した。
 あと残り2試合で1勝すれば自力でオリンピック参加が決定するそうな。
 
 実は、わしは中学、高校とバレーボールクラブに所属していた。
 背はあまり高くないのでセッターをやっていた。
 わしが中学時代はミュンヘンオリンピックで日本男子バレーが金メダルを取ったような気がする。
 テレビのアニメでも「ミュンヘンの道」なんぞでセッターの猫田やエースアタッカーの大古なんぞが出ていたような記憶がある。
 それを真似して後ろ手で、Aクイック、Bクイック、Cクイックなんぞのサインを出しかっこつけてやっていた。
 
 今年もし男子バレーが女子バレーと一緒にオリンピックに出ることができれば随分楽しい観戦ができるような気がする。
 今日も37インチの液晶画面の近くに目を凝らしてみたがほんの一部分の選手の足や手が見えるだけで選手全体の動きは見えるわけでもなく、アナウンサーの声と妻の解説で頭の中で想像して応援した。
 久々に見るということをやってみると目が疲れた。
 明日もガンバレヨー。
 日本、チャチャチャ。

結婚記念日

 今日は結婚記念日である。
 まるまる21年、そして明日から22年目に入る。
 わしの両親と過ごした18年をとうに過ぎ、随分と年月が経ったものである。

 と言う事で買い物ついでにスーパーで握り寿司を買い夕飯とした。
「これからもヨロシクね。」
と妻に告げ皆で食った。
 
 今月は、わしの誕生日に大阪の大学に行っているお兄ちゃんの誕生日と続く。
 お兄ちゃんは元気で一人暮らしをしているのだろうか?
 大学の授業のレポートを提出せにゃあならんとプリンタを購入するとのことで2万円追加の仕送りをした。
 妻がちゃんと購入したかの電話をしたところ、友達とカラオケしているとのことで1万5千円ンのものを購入したそうな。
 先月は心配になりラーメンやレトルト食品、調味料などをダンボールに詰めて送った妻。
「今月はどうかねぇ?ちゃんと食べているかねぇ?」
と、母親としては心配な様子。
 
 妻よ。仕事は続けられ生活はどうにかなっているが毎日のいろいろな場面で手助けをしてもらってありがとね。
 あなたと結婚できて、二人の子供にもめぐまれて、今にいたっていることに感謝してますです。
こんなわしじゃが、これからも末永くヨロシクね!

目印ぽっち

 自宅と会社の療法のノートパソコンにわしはキーボードの目印をつけている。
 っていうか指で触るシールをつけているのである。
 左側の「Altキー」と「Tabキー」と右側の「Altキー」。
 そして家のパソコンは「F4・F8・F12キー」にもつけている。
 今は点字を打てる専用のシールでぽっちを打ち出し貼り付けているのである。
 けんど、それが浸かっているうちに体温でぬくもって粘着部分がねちょねちょとしてきてずれてしまい、どうにも気持ち悪い。
 そこで、今日、買い物に行った時に、100円均一でそれなりのぽっちシールを購入した。
 これは蛍光塗料を塗りこんだハート型のぽっちであり、晴眼者がいつも使うものに貼り付けて暗闇でも見えやすくする代物だそうな。
 試しに購入して家のパソコンのキーボードに貼り付けてみたところ、触り具合がこんもりつるつるとして、ハート型だと想像するとこりゃまたこれはこれでかわいらしいのかもしれない。
 明日、会社のノートパソコンにも貼り付けてもらい46歳のおっさんにはないかわいらしさをアピールしようと思うのでした。 イヒ・・・。

電話の口調

 今日は先日購入したDVDレコーダが届く日である。
 会社から7時ごろ帰宅し商品を配送し設置する運送やから電話があった。
自分では普通に応対しているつもりではあったが、その電話の終了後
「お父さん、その話し方、おかしいからやめといた方がええよ。普通に話したら。」
と妻が言った。
 
 会社では店から毎日多くの問い合わせの電話がかかってくる。
それら全てに出る訳ではないのだが人が少ない時は一日に何十本もの電話に出る。
「ありがとうございます。まるまるのまるまるでございます。」
とにこやかに話すわしがいる。
ぶっきらぼうな応対はできないのである。
よって、家での電話でもそのような話し方になっているらしい。
どちらがお客さんなんかわからないそうである。
うーーん、困ったのぉ。本

DVDレコーダ

 HDD録画 地上はデジタルチューナー内蔵DVDレコーダを買った。
 なんてことはないんだがとあるところから借りてきたVHSテープを見るのに、昔からあったVHSレコーダがぶっ壊れていたためなのである。
 昨年液晶テレビは購入していたのでその同じ機種のアクオスのレコーダを買った。
 これだと何ちゃらいう特別な線でレコーダとテレビを繋ぐと非常に使いやすい・・・そうな。
 
 昔はこう見えてもこれらのAV機器は好きだったんじゃけど、見えなくなってからはめっぽう操作がわからない。
 店でいろいろ聞いてフンフンうなづいてはいたものの、半分も理解はしていなかった。 苦笑
 明日の夜接続とチャンネル設定や操作方法を教えにくるそうだが、はたしてうまい具合に操作できるのかなぁ?
 不安である。

共に生きる

 わしは毎週日曜日の朝8時からNHKラジオ第2放送の「共に生きる」を聴いている。
 25日の朝の放送で障害を持っている劇団を主宰している方のお話を車椅子のNHKの若いデレクタが取材した内容を聞いた。
「あなたは首から上の頭だけで健常者の中で守られて生きている。そんなんじゃあいけんで。」
なんてことを言われていた。
 
 おー、わしはどうなんか?
 自分の視覚障害を受け止めて晴眼者と台頭に仕事している。
なんて思っていたのは大きな間違いだったのかもしれない。
 心のどこかで、
「わしは視覚障害なんだからこれはできなくてもしょうがないんよ。」
と思いつつ、周りの人も
「彼は視覚障害者なんだから気を使ってあげてやらないといけないんだな。」
と思われた中でぬくぬくとしごとをしていたんじゃないのか?
 もっと、自分の障害を前面に出し、それでいてがちんこで仕事をしていく。
 はたしてそんなことができるのか?
 
 そんな中、今年の3月から職場内で機構改革があり部署の再編成が行われて新しい本部長がわしの上司の上司となった、
 その人は昔、労働組合の委員長をしていてよく知っている人である。
 その人は今までとは違って真っ向からわしと向かい合ってくれているような気がする。
 わしが視覚障害なんてことは関係ない。
 間違った事をしていたらガンガン言ってくる。
「仕事っていうのは先を見越してやっていかんとスピードが追いつかないんじゃ。段取り欲、とことんやらんとだめじゃ。」
と広島弁丸出しでアドバイスをしてくれる。
 そう言いながら集中して仕事して、7時過ぎに
「今日はこれでおしまい。かえって酒飲んで寝る。」
とダラダラ仕事をするのでなくスパッと退社していった。
 こちらも久々に燃えてくるようなこん衣地である。
 勝負じゃ勝負じゃ・・・と思いつつ、ちょっと疲れてしまったのでした。

物忘れ

 今に始まったことではないが、どうも最近物忘れがひどいような気がする。
 おととい、会社の同僚に家で作ったイチゴをいただいた。
 持って帰るのを忘れてはいけないと思いながらもしっかり忘れて帰る。
 今日も、先日のお祝いのお返しをいただいたのだが、今日こそ絶対持って変えるのを忘れないようにと思いつつ、ロッカーまではしっかり持ってはいたのだが、制服を着替えていると、こりゃまたしっかり忘れてしまった。
 どうなっているのだろうか?
 46歳でこんな状態だったら、60歳過ぎる頃には完全にいかれちまっているかもしれない。
 あきまへんね。

マッキー復活?

 休みで買い物に行くのに車の助手席に座って前のダッシュボードを見るといくつかのCDがあった。
 その中に牧原則之のCDがあった。
 もう15年前くらいに深夜放送で聞きなれない名前の歌手がDJをしていた。
 スタジオにキーボードを持ち込んで即興で唄をうたっていた。
 そして自分の曲も流していたが今までにないそのメロディーと歌声に一発でまいってしまい、CDを借りてカセットに録音をして聞いていた。
 その頃、まだ2歳くらいのお兄ちゃんと妻と軽自動車に乗りドライブによく出かけていて、その車の中でいつもこの牧原クンの音楽が流れていた。
 
 ひょうたんみたいな顔立ち。
 離れた目、へしゃげた鼻、大きな口、ぐちゃぐちゃの歯並びと決して見た目はよくないものの、その歌声と曲の感じは今でも新鮮さを感じるものであった。
 これからもがんばれよ、牧原クン。