1級技能士・成田の印刷技術 -9ページ目

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

先日、久し振りに「ダンドウ」という言葉を聞きました。

もう30年以上も前の話に成るんですが、この「ダンドウ」って言葉には、

チョッと苦い(?)思い出が有りましてねぇ~。30年以上も経って再び、

しかも、地元の名古屋ではなく、ここ京都で聞くとは思いませんでした。

 

今時の印刷機は操作ボタンの所に、絵文字?の様なシンボルマークが

書かれていますよね。国際規格に基づいた世界共通のマークだとか言う

話を聞いた事も有りますが、本当のところは正確に把握していません。

 

私が30歳代頃までの国産印刷機はね、そこに漢字の表記がされてたん

ですわ。「運転」「停止」「寸動」「逆寸」「給紙」「送り」なんて感じでしたね。

 

今は安全基準上、無く成ってしまったんですが、昔は「運転」よりも超遅い

超スロー連続回転をさせるボタンが有ったんですよ。例えばブラン洗浄の

時に使うような超低速連続回転です。・・・あ、昔はブランの自動洗浄機が

無かったので、オペレータがブランを手拭きで洗浄するのが普通でした。

 

ブラン洗浄を、自分の手で行うワケですから、当然の様に安全カバーを

開けた状態です。つまり、この超低速連続回転は安全カバー等を開けた

状態でも止まる事無く回転し続ける機構だったんですよ。今時の印刷機の

安全基準からしたら、カバーを開けた状態でも回り続けるなんて、こりゃ

飛んでも無い話しなので、こんな機構、無く成っても当然ですわね。

 

でもねブランを毎回、手拭きしてた人間にとって、この超低速回転ってのは、

こりゃ必要不可欠な物だったんです。この超低速回転の事を私よりも年上の

人達は「ダンドウ」と呼ぶ人が多かったんですわ。 ・・・そんな30数年前の、

ある日の事です。印刷機メーカーの方が、印刷機の修理に来てました。

 

「おい成田、あの鍛冶屋(印刷機メーカーの修理の人の事)よぉ。アホだぞ!

『ダンドウ』の事を『カンドウ』って呼びゃ~がってよぉ。何に『感動』するんだ?

感動して涙でも流すんかッ!って、オレ、そう言ったったわ~(笑)」

 

いやいや、間違った言い方を長年して来たのは、あんたの方なんだけどなぁ。

しまったなぁ、オレが早目に正確に教えておけば、こんな事で恥をかく事は

無かったのになぁ。まぁイイや、今からでも遅くは無い。この際、この年寄りに

シッカリ教育をする事にしよう。

 

ねぇねぇ、んじゃ逆に聞くけどさぁ、『ダンドウ』って、どう言う意味?「はあ~ん、

おみゃ(おまえ)今更、何言っとる。『暖かく回る』で、ダンドウって言うに決まっ

とるがや!(がや⇒名古屋弁・~だろう)」・・・んじゃさぁ暖かく回るって他には、

涼しく回るとか、冷たくとか、熱く回るとかってのが有るの?

 

「何を屁理屈言っとるッ!そのボタンのとこに『ダンドウ』って書いたるがや!」

あ、いやいや、「暖動」じゃないでしょう。これ「いとへん」で、「緩動」だからさぁ、

「カンドウ」って読むのが正解でしょう。野球で「緩急自在のピッチング」とか

言うじゃん。その「緩急」の「緩」だから、「緩く(ゆるく)動く」ってのが正解だよ。

 

「んでも、おみゃ、みんな『ダンドウ』って言っとるぞ」 オッチャンらさぁ、中学は

卒業してんだろう。まぁ授業中に遊んどったかも知れんけどさぁ、こんな漢字、

中学で習う漢字やぞ。それをイイ歳して、「ダンドウ」とか言っとったら恥ずか

しいと思わなイカンわ!しかも「暖かく回る」とか、ええ加減にしとかなかんッ!

 

昔の印刷現場の先輩方って、こんな人達が多かったんですよ。まじめに勉強を

して来なかったから、普通の漢字すら読む事が出来ない。誰かが「ダンドウ」と

言ってしまえば、右に習えで、何の疑いも無く「暖かく回るからダンドウ」だと覚え

てしまう。・・・こいつら、本当に頭悪いよなぁ~。とか思ってたんですが、そう言う

人に限って、将棋とか麻雀とかには、やたら頭の回転が速くて、全く勝てません。

その頭の回転の速さの半分でイイからさぁ、印刷技術の勉強に使えよ~。

なんて、いつも思っていましたわ~(笑)。

ローラーのニップ(接触幅)を確認、調整する。そんな事、印刷機オペレータなら、

当り前のように、しなきゃ成らない事ですよね。・・・ではこの確認・調整を、いつ

やるか?って話なのですが、大半の人は、「調子が悪いなと感じた時」とかって

答えます。「普段なら出ない汚れが出るんだよ~。あ!ニップ見ようか」ってね。

 

既に調子が思わしくない状態に成ってしまっている。だからニップ確認をする。

これって、メンテナンスじゃなくて、「修理」ですよね。メンテナンスって言うのは、

「不具合を未然に防ぐためにやるべきもの」であって、少しでも不具合が発生

してから行うのは、こりゃ、メンテではなくて、修理の部類に入るのですわ。

 

私の場合、ローラーのニップ確認・調整を毎日、行っていました。

 

ローラーニップを見る時って、どうやってるの?って訊くと、この回答も様々です。

「ウチはローラーに、白インキを撒いて、それで見ています」・・・こりゃまた古い

やり方ですなぁ~。確かに白インキだと、ニップは見やすいですわなぁ。んでさぁ、

その白インキは、どうやってローラーに撒くの?「ヘラでローラーに着けてます」

 

ヘラでローラーに着けるか。・・・ローラーニップってさぁ、インキの膜厚(ローラー

上のインキの厚み)によって変わってしまうと思わない?ローラー上に、沢山の

インキが乗ってればインキの厚みが厚く成るから、ニップも太く出てしまうよね。

だから、ローラー上のインキ膜厚が、丁度ベストな状態で見るのがイイよね。

 

「でも、丁度ベストな状態に成るように、ヘラで着けるってのは難しいですよ~」

イヤ、だからさぁ、ヘラで着けなくてもイイじゃないの~。それにさ、わざわざ、

白インキなんかを使うから、手間が掛かり過ぎて面倒に成ってしまうんだよ~。

小さな照明器具(懐中電灯とか)をウマく使って、光を当ててやれば、墨でも

藍でも、きっちりニップを確認する事が可能だよ。

 

それにね、ベストな状態のインキ膜厚ってのも、実は簡単に得る事が可能なん

ですわ~。だってさ、普通に印刷してる時って、ほぼ正常なインキ膜厚で印刷

してるワケでしょう。まぁ中には、メッチャ濃い盛りの印刷も有るかも知れんけど、

普通のカラー印刷なら、ほぼ正常な膜厚の範囲内で刷ってますよね。

 

であるならば、その印刷が終わった直後は、ローラー上のインキ膜厚もベストな

状態だって言えますよね。・・・だから私の場合1日の最後の仕事が終わった後、

そのタイミングで、必ずニップを見るって事にしていました。

 

その見方も、版面にローラーを下してニップを見ると言うやり方よりも、版面を

ベタにして、つまり、ローラーを版面に下した状態で印刷機を回転させて、版を

ベタの状態にして、印刷機を停止させ、5秒ほど待ってから、ローラーを上げて、

その時に版面に残ったローラーの跡(ニップ)を見るって言う、やり方の方が

正確で簡単なんですよ。

 

版をベタにせず、ローラーを版面に下して、5秒待ってからローラーを上げて、

版に着いたニップを見るってのは、エアーシリンダー等を介して、ローラーを

機械的に着けた時のニップに成ってしまうんですわ。これね、エアシリンダー

だとか、その他、機械的な部分の動き等に問題が有るとね、正確なニップが

出てくれない場合が多いんですわ。

 

それに対して、先に版面にローラーを下して、印刷機を回転させ、版をベタ

にして、それから印刷機を停止させて、5秒待ってからローラーを上げるって

言うやり方は、実際の印刷状態を再現してる状態から、ローラーを上げるって

言うやり方ですから、より正確なニップを見る事が出来るんですよ。

 

まぁ、版をベタにせず、ローラーを版に下して、寸動で少し回転させて、5秒

待ってからローラーを上げて、そのニップを見るってやり方も有りますよね。

これもケッコウ正確なニップを見る事が出来ますが、これだとローラーの跡が

イッパイ着いてしまって、何度もやってると、何がなんだか分からなく成って

しまいます。先に版をベタする方法なら、調整後の確認も、またベタにして

からローラーを上げての確認に成りますので、毎回、ローラー跡は一つだけ。

この方が、一番、楽に正確なニップを見る事が出来ると思いますよ。

 

版をベタにせずにニップを見る方法と、ベタにしてからローラーを上げる方法、

その両方を同じ胴でやってみるとね、意外なくらいにニップが違ってしまう事

が有ります。この場合、より正しいのは、ベタにしてからローラーを上げた時の

ニップだと言われています。慣れれば、ベタにしてローラーを上げる方が簡単

なので、是非、試してみて下さい。

最近、「無処理版って、どうやって使うとウマく行きますか?」みたいな質問を

ケッコウ頂くように成りました。その際の私の回答は、とっても、シンプルです。

・・・「ハハハハハ~。 ゴメンね、全く知らん。」

 

だってさ、今は現役の印刷機オペレータじゃないし、無処理版なんてオレ達の

時代には当然、無かったしさぁ~。見た事は有るけど、実際に使った事が無い

物の解説をしろっつったって、そりゃねぇ、無理と言うものでござんすよ~。

 

実際に使った事は無いけど、無処理版に関して、当然の様に勉強はしてます。

だから、原理とかは分かるけどさぁ、そんなもの、机上の空論ってヤツですわ。

私は技術屋なので、実際に自分で経験した事しか信用しないし、自分で苦労

して確かめた事や、苦労して作り出した事しか解説出来んですよ~。

 

無処理版なんてのは、最近の新しい物ですよね。そう言う、その時代、その

時代の、新しい物を使うノウハウってヤツは、その時代に実際に苦労をして

使っている人達が作り上げなきゃ成らない事だと思うんですわ。

 

私らの時代はね、そう言う意味では、新しい物だらけだったんですよ。

まずは何と言っても「連続給水」ですわ。昨日までモルトンを使ってた人間に、

「はい、じゃ今日から、この連続給水を使って下さい。大丈夫、IPAを10%も

入れれば普通に刷れるから」・・・とか言われてもねぇ~。

 

連続給水を実際の印刷現場で、実際の仕事で使うノウハウなんて誰も持って

いるワケがないですよね。それを作った印刷機メーカーですら、持っていない。

もし持っていたとしても、それこそ机上の空論。実際の印刷現場での過酷な

条件下においては、机上の論理など、こりゃ全く役に立たんわけですよ。

 

その当時は、我々の方も、モルトンでの刷り方しか知らないワケですからね、

突然、連続給水に成ったからと言っても、モルトンでの刷り方を、どう変えれば

良いのか分からんし、何をどうすれば、より良く成るのかもサッパリ分からない。

 

その一つの回答が「慣れるまで、IPAを10%入れて使って下さい」ってヤツ

だった訳ですわ。・・・私自身もIPAを10%入れて使ってました。その当時はね、

「第二種有機溶剤」なんて言葉、印刷業界内には有りませんでしたしね(笑)。

でもね、IPAを10%入れたって、決して何もかもウマく行くワケもなく、そりゃ

本当に苦労の連続だったんですよ。

 

それから、IPAの使用規制(5%以下)ってのが出来て、その後、我々自身の

手でノンアルコール化を成功させて行ったと言う次第です。勿論、印刷機の

メーカーさんも、エッチ液メーカーさんも頑張ってくれました。でも、その時代に

連続給水を使用するノウハウを作り上げたのは、こりゃね、紛れもなく我々、

その当時の印刷機オペレータ達なのである!と言うのが、事実なのです。

 

連続給水と共に出たのが、分割インキ壺キー。それを有効に使って行く為の

ノウハウだとか、そのセッティング方法、メンテの仕方等、その一つ一つを、

実際に業務で使用している我々オペレータが作り上げて行ったと言っても、

決して過言ではないと思います。そしてCTPの出現。それまでのフィルム版

とは違って、傷が入り易く、耐刷力も劣る。保存版が出来ない。

 

新しい物が出るたびに、便利に成る反面、それを実際に過酷な業務で使用

するってのはね、それを生産したメーカーの想定を超えた領域での困難が、

我々オペレータに降りかかって来るんですわ。実際に想定外の事が我々の

現場で発生してしまうので、メーカー側としても対応策が後手に回ってしまう。

これを乗り越える為には、我々、使い手自身が考えて行くしかないんですよ。

 

その後、二階建て式の両面機が全盛期を迎えるのですが、これを使うのも、

様々な苦労の連続だったようです。裏面の擦れ汚れの問題、見当精度の

悪さ。下胴の過熱から発生する問題の数々。梨地ジャケットの使い方等々、

その当時、様々な質問を頂きましたが、これもやはり、私自身、使った事が

無いので、まともな回答を差し上げる事が出来ませんでした。

 

我々、技術者には、その時代その時代に応じて、常に様々な新アイテムが

与えられます。中には全く使い物にも成らない、全く意味の無い物も当然の

様に多々有ります。それらを正確に選別し、その中の有効なアイテムを育て

より良い物に進化させノウハウを作って行くのは、それを実際に現場で使う

その時の、「現役技術者」以外には居ないんですよ。

 

私らのように既に現役を退いてしまった者が新しい物のノウハウを語っても、

それは本当に机上の空論なんですわ。実際に、その新し物を日々、過酷な

実務で使って、苦労をしている現役技術者の意見こそが最も正しいのです。

 

今まさに「無処理版」と言うのがそれなんです。実際に使用経験の無い我々

年寄りが、錆び付いた昔の理論を持ち出して、どうこう言う問題では無いん

ですわ。現役の技術者である皆さんが、皆さんの手で、ノウハウを作り上げ、

メーカーに意見して進化させて行く物なのですよ。 皆んな、頑張って!

朝一番、メッチャ 寒ッ!と思ったら、昼頃には、とても暖かい陽気に成る。

朝と昼の寒暖差が、15℃ なんて日も有るのが、今時の季節ですよね~。

こう成ると、インキの硬さの選択が難しく成りますよね。

 

・・・これもね、24時間稼働してる印刷現場ならば、ほぼ一定の室温で

工場内が安定してくれていますから、さほど気にする事も無く、インキの

硬さなんて事に気を使う必要も無いんですが、夜勤とかの無い通常の、

昼間だけ稼働の印刷現場は、大変ですよね。

 

朝一では、プラスチックのインキヘラが折れてしまうんじゃないか?って

位にカチカチのインキが、昼過ぎにはドロドロのダラダラな、超軟らかい

状態にまで変化してしまったりと、本当に厄介です。

 

とりあえず基本的な話ですが、軟らかいインキと、硬いインキでは、こりゃ

どっちが良いのか?・・・結論的に言ってしまうと、硬いインキの方が良い

のですわ。「ええッ!インキが硬いと、ベタのツブレとか着肉が悪いよ~」

 

そうなんですか?それはインキの硬さより、湿し水が多過ぎる事の方に

問題が有る様に思いますが。でもまぁ、インキが硬過ぎる事でトラブルが

発生する事も当然、有りますよね。でもね、インキが軟らか過ぎる場合の

トラブルと比べたら、こりゃね、軟らか過ぎるって場合の方が、より厄介な

トラブルが多いんですわ。

 

インキの硬さと、湿し水の量ってヤツには、密接な関係が有るんですよ。

昔のモルトン給水ならね、軟らか過ぎる余分なインキをモルトンが吸収

してくれましたから、トラブルには成り辛かったんですが、ゴムローラーの

連続給水機構では、余分なインキがゴムローラーに蓄積してしまうとね、

こりゃ、即、刷り辛く成ってしまうんですわ。

 

「極限まで湿し水を絞る」って言うのが、オフセット印刷の基本でしたよね。

軟らかいインキと、硬いインキでは、軟らかいインキの方が汚れてしまい

易いので、どうしても湿し水が多目に成ります。多目の湿し水は乾燥不良、

裏移り、乳化、ちり汚れ、ストップ汚れ、異常なドットゲイン等々、様々な

トラブルの原因に成ります。ですから、湿し水側からの目線で言うならば、

インキは硬ければ硬い程、イイって言う事に成るんですわ。

 

「そりゃ分かるけどさぁ、上質紙を刷るのに硬いインキじゃアカンだろ」

確かにそうですよね。最終的には、刷る紙の表面強度との戦いに成ります。

上質紙や、純白ロールなんて言う、表面の弱い紙に、硬いインキを使ったら、

紙とブランが離れる時に、紙の表面が毟れてしまいます。(ピッキング)

 

でもね、このピッキングってヤツも、湿し水の量と密接な関係が有るんですわ。

何度も書いてますが、紙の表面は水で濡れると、その強度が著しく落ちてしま

います。つまり湿し水が多いと、紙の表面が弱く成り、毟れ易く成ってしまう。

ピッキングが起き易く、ヒッキーが出易く成ってしまうって事なんですよ。

 

こうして考えてみると、湿し水の使い方って本当に大切だって分かりますよね。

「湿し水を制する者は、印刷品質を制する」・・・私が、いつも言ってる言葉です。

より良い物を、より楽に刷るためには、「湿し水の使い方を極める!」って言う

のが、オフセット印刷にとって、何よりも重要なんですわ。

 

むやみにインキを軟らかくしてしまう前に、今一度、湿し水を絞ってみる。

上質紙や純白ロール等、表面の弱い紙は、温度が低い朝一ではなくって、

印刷機の温度が上昇した、午後からの印刷にする等、チョッとした工夫で、

楽に刷る事が可能に成ったりしませんか。

 

「今まで、ずっと、こうやってやって来たから」と言う、古い固定観念だけに

こだわり続けてしまっていると、いつまで経っても技術が上達しないですよね。

基本から外れた、邪道のような事に挑戦する必要なんて、全く有りませんが、

「湿し水を絞る」って言うのは、オフセット印刷の基本中の基本です。インキを

軟らかくする前に、今一度、湿し水を絞る!って言う、オフセット印刷の極意に、

挑戦してみて下さいな。

ウチの本社(京都市伏見区)から、ウチの工場まで
600m以上有るのですが、時々歩いて工場まで
行っています。その途中に小さな川が有って、
2ヶ月ほど前、その川で大きめな生き物を見た
んですよ~。

その時は、川を潜ったり泳いだりしてまして、
全体を見る事が出来なかったので、ありゃ、
イタチか、カワウソですかねぇ?なんて事を
言ってたんですが、昨日、その全貌を確認!
写真撮影にも成功しました~。


ヌートリアって言う外来生物です。


メッチャ大きめのネズミって感じなのですが
手を出せば、人間の指を食いちぎるくらいの
力が有るそうです。農作物等への被害が多い
ので、通報して捕獲しなくちゃアカン生物
なのだそうですが、通報しても、なかなか
対応してくれないのだとか。

まぁ、あの川に居る限り被害が発生する事は
無いだろうと思うのですが、繁殖力の強い
外来生物なので、色々対応が難しいのだとか
言う話もネットに書かれていました。

何はともあれ、こいつ、ケッコウ可愛いん
ですよね~。・・・なんて言っててはアカン
のかな?

私が18歳で印刷会社に入社した40数年前と言うのは、印刷機と言えば、

こりゃ、外国機が当り前で、国産の印刷機を使っているのは珍しい!と言う

時代だったんですよ。(特に菊半以上の大型機) ・・・私は、18歳・新卒で

印刷会社の印刷現場に入社して20歳に成るまでの2年間で、2回の転職、

3軒の印刷会社さんに、お世話に成っています。

 

当時、導入されていた印刷機は、ハイデル、ローランドなんてのが多くて、

たまに見掛ける当時の国産機は性能的に、かなりの差を付けられていた

ように感じます。・・・今でこそ、「MADE IN JAPAN」 は、世界でも有数の、

高品質を誇る信頼のブランドですが、その当時は「安かろう悪かろう」と

形容される、ダメダメブランドのイメージが強かったんですわ~。

 

ですから、その当時、私が使って来た印刷機も、ハイデル⇒ローランド⇒

ハイデル⇒ローランド と、その2社の物ばかりを、交互に使っていました。

・・・最初にお世話に成った印刷会社に、国産の菊全4色機が有りまして、

これね、スイング機構がスゴかったです。

 

紙がフィーダーボードを流れて来て、前アテに当たり、横針が引く。その後、

印刷機に紙を送り込むのが、スイングの役目ですよね。普通の場合はね、

爪で紙を掴んで送り込むんですが、この国産機のスイングには、爪が無く、

フィーダーに有るような吸引サッカーがズラズラと並んでいて、それで紙の

咬を吸い付けて、送り込む方式だったんですよ。

 

ですからね、チョットでも紙のクセが悪くて、咬が上反りとかしてたら、こりゃ

スムーズに送り込む事が出来ませんわね。こうした場合は、フィーダー係の

人が、紙の咬部分に、自分の手で折りクセを付けて、給紙させていました。

 

こんな事ばかりで苦労をしなきゃ成らない時代でしたから、印刷技術って

モノを勉強する様な気も無く、印刷機の機長と言えども、オフセット印刷の

理論の「り」の字も知らない人達が多かったです。まだ10歳代の私が時々、

印刷の質問をすると、多くの場合、昔話でゴマかされて終わりでした。

 

「今は、PS版だけどなぁ、昔は『石版』ってヤツでよォ。これが重くてなぁ~。

ジンク版が出てからは楽に成ったわなぁ~」・・・いやいや、そんな事聞いて

るんじゃなくて、オレはフィーダー調整の基本を知りたいんですよ!「ああ、

ヒーターな。(当時の人はフィーダーと発音出来ず「ヒーター」と言っている

人が沢山居ました) チョッと前まではなぁ、この自動ヒーターも無くてなぁ、

職人が、1枚1枚、手で紙を差しとったんだわぁ~」

 

要するに、その親方(機長)も、新しい自動フィーダーの理論を理解しては

いなかったって事なんですね。・・・まぁね、そりゃ無理なんです。その当時、

零細の印刷現場で働いていたのは、中卒のオッチャン連中ばかり。勉強

する事が嫌いな人達が印刷現場に入り、ハッタリの強い人や、より迫力の

有る人が、上に上がって行くと言う時代だったんですよ。

 

そんな、理論も何も勉強しようとしない連中から教わるような事は何も無い!

と、20歳に成るまでに、3軒目の印刷現場に入ったのですが、正直なところ、

ここが一番、ヒドかった~(笑)。ほとんど、ヤ〇ザ集団のようなオッチャン達の

巣窟ですわ。仕事をするよりも、次の休みの日に魚釣りに行く準備をする事が

何よりも最優先。印刷機を動かさず、釣りの仕掛け作りに専念してました。

 

・・・印刷現場なんて、どこへ行っても同じだな。ならば異業種に転職しようか。

とも考えたんですが、待てよ、これは大きなチャンスかも、知れんよなぁ~。

こんなアホなオッチャン達を一掃してしまうのなんて簡単なんじゃないのか?

 

と、考えたのが「水戸黄門の印籠を持つ事」だったんですよ。「頭が高いッ!、

オレを誰だと思っとるのかッ!」・・・その印籠こそが、国家資格・1級技能士

ってヤツだったわけです。当時の1級技能士合格率は、25%程度。しかも、

同じ人が何年も続けて受験し、5年目にようやく合格した!なんて時代です。

まぁ、普通のオッチャン達は「受験」って言葉だけで蕁麻疹を出すような始末

ですから、国家資格に挑戦するなんて、飛んでもない話でしたしね。

 

高校を卒業して、最短で2級資格(地方資格)を取得し、その当時の最短、

26歳で1級受験の権利を得て、ここで一発合格すれば、最速の国家資格

取得と成る訳です。「そんなもんなぁ、ベテランの賢い連中が何年も挑戦して

ようやく受かるか受からんかと言う資格だぞ。若造が一発で合格するなんて、

そんな事が有り得るワケが無いわッ!受験料がもったいないぞッ!」

 

周囲からの圧倒的な批判を跳ね返して、当時の常識を打ち破り、26歳、

初挑戦で一発合格!・・・これね、当時は、大ニュースだったんですよ~。

 

そこからは、現場内でも楽でした。「勉強もしてないヤツが、偉そうな事を

言ってんじゃないぞ!オッチャンの言ってる事と、国家資格を持ったオレが

言ってる理論の、どっちが正しい?オレの半分でもいいから、勉強し直して、

オレと対等に議論が出来る様に成ってから出直して来いやッ!」

 

まぁ、超クソ生意気な26歳ですよね~(笑)。

 

今現在は、高学歴な人や、非常に優秀な人達が、印刷現場に居る様な時代

に成りましたね。話をしてても「うわぁ~、この子、賢いわ~」と、感心する様な

若手さんが、機長に就いてくれていたりします。業界にとって、厳しい時代に

成ってしまっていますが、そうした若い人達が大きな改革を行ってくれる事を、

私は、とても楽しみにしています。(^^)v

例えば、枚葉機ではなく、輪転機の場合、版を替えて新し仕事に入る時、

こりゃ枚葉機と同じ様に、見当合わせや、色合わせと言う作業を行うの

ですが・・・。枚葉機の場合だと、20枚とか、50枚とかを刷って、一旦、

印刷を停止して、見当や色調を確認し、補正を掛けますよね。

 

これに対して、輪転機の場合には、この「停止」と言う事をしないんですわ。

ダーッと刷って行って、刷りながら、見当や色合わせをします。輪転機は、

1分間で600枚とかを印刷してしまうと言うスゴいスピードですから見当や

色合わせに10分も掛ってしまったとしたら、600枚×10分=6,000枚 の

刷り出しヤレが、簡単に出てしまうって事なんですよ。

 

輪転での刷り出し作業の場合は、絵柄の見当や、色調調整ってのは、

こりゃ当然なのですが、それプラス、「折りの位置合わせ」って言う作業が、

かなり重要に成るんですわ。だから、見当、色調、折り位置、なんてのを、

瞬時に確認して、瞬時に補正して行かなければ成らないって事なんです。

 

こう言う作業形態なので、例えば、千枚通し程度の小ロットの物を、何台も

何台も刷って行く。なんて作業には、あまり向いていないですよね。そんな

少ロットの台数物をやってたら、刷り出しの損紙だけで、凄いロスに成って

しまいます。だから、輪転には部数の多いロングラン物がイイって事です。

 

と言う事はですねぇ、逆に考えれば枚葉機の場合、少ロット物が命である!

って事が言えるワケなんですよ。・・・「ウチのは刷り出しの調子が悪くてさぁ、

500枚位、刷り込んでやらんと、なかなか安定しないんだよねぇ~」なんて

言う声を、枚葉機のオペレータさんから聞く事が、しばしば有ります。

 

500枚位、刷り込まないと安定しない。って事は、立上りから500枚までは、

色調ムラだらけで、見当もシッカリ合っていないって事?・・・そんなもんさぁ、

枚葉機として、戦力に成ってないでしょう。500枚刷ったら終わりって言う

仕事も、枚葉機には沢山有るんだから、その全てがデタラメな品質って事に

成ってしまってるんだよねぇ。そりゃ、話に成らんわ。そりゃ最悪でしょう。

 

では、なんで、刷り出しから500枚までが安定しないんでしょうか?これね、

大きく分けて二つの原因が有ります。まず第一に「メンテナンス不足」です。

例えば、ローラーニップが全くダメとか、湿し水関連のローラーがダメとか、

インキ壺キーの、ゼロセットが全くダメとかね。

 

そして、もう一つの原因が、ハッキリ言って 「刷り方が悪い」 って場合です。

最初っから、インキを多目に出し過ぎてしまっている。それに伴い湿し水も

必要以上に多過ぎる。・・・まぁ、いつも言ってる、最悪の状態ってヤツです

よね。この状態を作ってしまうと、見当合わせや色合わせの時の20枚とか、

50枚とかを断続的に刷ってる時は、何とかそれなりの色調に成るんですわ。

 

ところが、さぁOKだから刷り出そう!とすると、100枚も刷り込まないうちに

色調が、ゴロッと変化したり、汚れがドヤッと出て来てしまったりするんです

よね~。こう成ると、もうドタバタです。大慌てで色調を調整し直したり、また、

湿し水の量をジャンジャン上げたり。 ・・・こんな事をしてるから「ウチのは、

刷り出しの調子が悪くてさぁ~」 なんていう言葉が出てしまうんですよね。

 

オフセット・枚葉の印刷機ってのはね、キッチリとメンテをして、シッカリと、

基本通りに、インキも水も絞った状態で立ち上げてやれば、刷り出してから

ゴロゴロ色調が変わってしまうなんて事は無いんですよ。1枚目から最後の

500枚目まで、全く色調ブレ無し、鼻歌混じりで刷り終われる。ってのが、

枚葉機の「普通」の状態だと思って下さい。

 

その「普通」が出来なくて、刷り出しから500枚目まで、ドタバタと必死に、

あれこれ補正しなきゃ成らないってのは「普通」を逸脱した「異常」な状況

であり、何かが間違っているのだと、シッカリ自覚して、今一度、基本に

立ち返り、根本的な所から、キッチリと改善するべきなんですわ。

 

ショートランが、ウマく行かない枚葉機なんて、こりゃ、価値が有りません。

そしてそれに対して、「もう印刷機が古いから」とか言う、言い訳を付けて

しまったら、こりゃ改善が進むワケが無いですよね。「古い印刷機だから

こそ、オレのウデで、何とかしてやるゼッ!」ってくらいの、強い気持ちで、

鼻歌混じりのショートランを実現させてやって下さいな。

今や、主流に成りつつある「高感度UV」なんですが、本当に高感度UVが

良いのか?従来までの油性と比べて、どうなのか?・・・私自身、両方を

使って来ましたので、そんな経験も含めチョッと話を聞いてやって下さい。

 

正直な所、油性よりも、高感度UVの方が難しいです。とにかく、インキが

使い辛いですわ。水幅が狭く、温度変化に対する挙動変動が顕著に出る

ので、ロングランの印刷時には、色調の変化にケッコウ、気を使います。

 

他にも、チリ汚れが出やすかったり、ローラーのグレイズが激しかったり、

インキのミストが飛び散って、印刷機のカバーを汚したりと、まぁ、厄介な

事がメチャ多いんですよ。まぁねぇ、乾燥形態が油性とは違うワケですから、

こりゃもう、インキの性能を上げるのにも、限界が有るワケで、今時の油性

インキほど高性能な状態に成る事は、まず、有り得ないでしょうね。

 

最近のオペレータさんは、最初から高感度UVの印刷機を使っている。油性

なんて使った事が無いって人も、少しずつ増えて来ましたが、多くの場合は、

油性機を何年も使って来て、その後で、高感度UV機を使うように成った。

って言うケースの方が、圧倒的に多い事と思います。

 

私も同様なんですが、そう成ると、どうしても、今まで使って来た油性機との

比較をしてしまうワケですわ。他人に聞かれれば、「いや~高感度UVはねぇ、

あんな事や、そんな事や、こんな事でも苦労をするんだよ~」 なんて言って、

高感度UVの、愚痴や悪口を言うのが普通なんですよ。

 

そうやって愚痴を言う人に、「んじゃ、また油性に戻る?」って聞いてみると、

「あッ、イヤ、油性機は、もうイイかな(笑)」とか言って、愚痴を言いつつも、

高感度UV機から離れようとはしません。 「だってさ、デリバリィに出て来た

時には、もう乾いてるんだよ!裏移りの心配なんて全くしなくてイイし~」

 

「速乾」ってのはね、油性をやって来た者にとって何より大きな魅力なんです。

裏移りを心配しなくてもイイ。パウダーを降る必要がない。ドライダウンによる

乾燥後の色調変化も無い。・・・こりゃね、チョッとやそっと他事で苦労しても、

速乾のメッチャクチャ大きな魅力からは離れられない~!って事なんですよ。

 

まぁ、使い勝手に関しては、「速乾」ってのが何よりも大きな武器に成るので、

高感度UVの方に軍配が上がるってのが現状でしょうね。乾き難いマット紙、

後加工などで擦れ汚れが出易いファンシー系の紙から、ユポに至るまで、

とにかく速乾!なんですから、こりゃもう無敵ですよね。

 

じゃ、印刷品質に関しては、どうか?・・・こりゃね、私としては圧倒的な差で

油性に軍配を上げたいんですわ。とにかく、今時の油性インキは本当に綺麗

ですよね。鮮やかさ、透明感、濃度感。何をとっても油性インキの勝ちです。

 

特に、油性の金や銀インキのメタリック感なんてのは、高感度UVインキでは

全く太刀打ち出来ない領域だと思いますわ。あと、UVインキってのは「乾燥」

ではなく、「硬化」と表現するように、「乾く」のではなく、紙の上でインキ被膜を

硬化させて、硬化したインキ被膜で紙表面を覆ってしまうって感じなんですよ。

 

と、成るとですねぇ、紙の風合いが活かされなく成ってしまう事が多いんです。

マットコートや、ファンシーペーパーを使うのって、その表面の風合いを活かし

たいって事が目的の一つに有りますよね。 まぁ、絵柄が少ないデザインなら

イイんですが、絵柄の多いベタベタのデザインだと、せっかく軟らかな雰囲気

の紙を選んだのに、その風合いが、活かされなく成ってしまう事も有ります。

 

何でもかんでも、全ては一長一短ですよね。「長」を活かし「短」をカバーする。

それを成し得た所の勝ちですわ。・・・私は最後に使ったのが高感度UVだった

のですが、「今、使うとしたら高感度UVですか?油性ですか?」と聞かれたら、

やっぱり、「高感度UV」と答えるだろうと思います。本当にね、速乾ってヤツは、

とても大きな武器ですわ~(^^)v

昔、三菱・菊半・4色機のオペレータだった頃、私は「ボルト落とし」の名人!

だったのですよ~(笑)。1E って言う機種ですから、こりゃ、かなり古い話し

なんですが、コイツ、胴間のステップを開けて、六角レンチで調整や分解を

する様な箇所がケッコウ有りましてね。

 

例えば、1胴目と2胴目の間のステップを開けて、そこへ半身に成って入り、

手を一杯に伸ばし、ボルトを緩めたり、締めたりする様な作業が有りまして。

暗くて狭い中での作業ですので、「あッ!」と言った瞬間にボルトがコロリン。

 

暗く狭い奈落の底へ、小さな小さなボルトが落ちて行くのですわ~。

いやいや、正直なところ、底まで落ちてしまえば、何ら問題は無いのですよ。

ボルトの予備は持ってましたから。・・・例えばですよ、このボルトがね、落ちて

行く時に、どこかに当たってハネて、例えば胴のギヤの所で止まってしまって

いたらアウトですよね。

 

次に印刷機を回転させた瞬間、ギヤにボルトが食込んで、ガッチン!とか、

大きな音を立てて、印刷機が完全停止してしまったら、こりゃ、その修理の

ために、どれだけの費用と時間が掛かるのか、考えただけでも恐ろしい(汗)

 

・・・私は「ギヤ」って書いてますが、これ「ギア」でも正解のようです。私は、

JIS規格に、「ギヤ」と表記されているので、それを採用している次第です。

ですから、くれぐれも「ギア」じゃないのかッ!とか言うコメントは、送って

下さらないように、お願いを致しまする~(笑)。

 

てなワケで、そんな狭く暗く、しかも超複雑な構成部品群が入り組む中で、

落としてしまった小指の先程の、小さな小さなボルトを、必死の思いで探す

事に成ってしまうワケなのですわ~。  これ、本当に大変な作業です。

 

圧胴の横あたりに、自分の頭を突っ込み、懐中電灯で照らして、ボルトを

探すのですが、まぁ、見える所には有りませんねぇ(笑)。見えない箇所には、

そ~っと手を突っ込んで、指先で探りながら、何とかボルトに触れようとする

のですが、これもほとんどの場合、無駄な努力に終わってしまいます。

 

まだね、銀色のボルトなら、マシなんですが、印刷機メーカーさんの策略

なのか、そう言う落ちやすいボルトに限って、黒色をしてるんですよねぇ~。

ですから、こりゃまぁ、本当に見付からないんですよ~。

 

「ボルトが落ちる瞬間、身体の全てを『耳』にして、落ちる場所を特定せよ!」

これ、その当時、メーカーの方から教わった極意です。落ちたと思った瞬間、

その行方を目で追おうとしても、まず無理だ。であるならば、全神経を耳に

集中して、転がって行く方向や場所を、音で特定せよ!との事なんですわ。

 

でもさ、こんな極意を伝授して下さるってのは、メーカーの方達も、ケッコウ、

落としてたって事なんですかねぇ? (笑)

 

確かに、この方法は効果が有りました(^^)v つ~か、先に「落とさない方法」

を考えろよ!って話なんですが、 ・・・私もね、いろいろ努力したんですよ。

落とさない様に、厚紙を敷いて、その上のボルトを外すとか、ウエスを敷いて

落ちてもウエスでキャッチするとか。でもね、何をやっても落ちる時は落ちる。

 

工業高校の機械科出身だったので、ボルトとかを扱うのはケッコウ好き

だったのですが、それは、ボルトを締めたり緩めたりする事が好きなので

あって、決して、ボルトを探し回る事が好きなワケではない!

って事をイヤと言うほど、思い知らされました~(笑)。

今年、初のブログです。

皆さん、明けましておめでとうございます。

今年も一生懸命に書きますので、何卒宜しくお願い致します。

 

突然ですが、皆さんは「インキ」と言います?「インク」と言います?

これね、オフセット印刷機で使っているのは、「インキ」なんですよ。

インク=「ink」 です。インキは 「inkt」 って書くオランダ語なんですわ。

 

最近は「INKT」って書いて「インク」と読む音楽グループが居ますので、

こりゃまた難しいのですが、オランダ語の inkt は「インキ」と言う発音に

近かったので、オフセット印刷用の物は、インキと呼ぶように成りました。

 

もう古い社名ですが、「大日本インキ」さん、「東洋インキ」さん等を見ても、

インキと発音する事の正しさが分かりますよね。・・・これが我々、印刷屋に

とっては普通なんですが、軽オフ屋さんは「インク」と呼ぶ方が多いですね。

「毎日、インクにまみれてさぁ~」・・・ああ、この人、軽オフ屋さんだな(笑)。

 

一時期、技術協会でも、このインクとインキの区別に関して議論された事が

有りました。「インキジェット」と呼ぶのか?イヤそれは「インクジェット」だろ。

であるならば、粘度の高い物を「インキ」と呼び、水の様にシャビシャビな物は

「インク」と呼ぼう。と、指導された事も有りました。・・・国家資格である1級の

技能検定試験で、この用語を、あいまいにする事は出来ませんもんね。

 

時々、軽オフ屋さんや、元々軽オフ屋さんで、今は大企業の印刷会社さんへ

お邪魔させて頂く機会が有るのですが、その現場の人達は頑固に「インク」と

言いますね。後々、国家資格を取ろうとする時に困るからと、指導をするの

ですが、最初に覚えた言い方、長年、そう言って来た言葉を直すってのは、

こりゃかなり難しいようです。でもね、それは正式な言い方ではなく、出る所へ

出た時には、恥をかく事も有るって事だけは、覚えておいて下さいね。

 

「ハハハ、インクってか!そう言えば、そんな言い方するヤツがおるなぁ(笑)」

なんて言ってる、あなた。あなたは大丈夫ですか?一番最初に間違って覚え

てしまった事を未だに引きずっていませんか?先輩である、あなたが間違った

言い方をしていれば、あなたから指導された後輩君達も延々と、間違ったまま

引き継ぐ事に成ってしまいます。

 

もう2年くらい前ですが、ある印刷現場で、そこの工場長さんが「チョッと調子が

悪いから、アストロの量を増やしとけ!」 と指示を出されました。私は湿し水の

専門家ですから、ああ、こちらではアストロを使ってるのか、何の何番を使って

るのかな?と湿し水タンクの方へ行ってみると、そこにアストロが無いんですよ。

 

ん?ソライヤ507を使ってるのに、そこへアストロを足すの?

 

私の様な普通の人間なら、そう思いますよねぇ。・・・工場長さん、ソライヤを

入れてる所へアストロを混ぜるのは良く無いですよ。「エエッ?なんだって?」

 

しばらく話して、ようやく分かったのですが、その工場長さん、「エッチ液」って

いう言葉を知らなかったんです。昔からアストロ(日研化学さんのエッチ液の

商品名)を使っていて、先輩から「アストロ入れとけ」等と言われて指示されて

いたので、「湿し水に入れる物を総称して『アストロ』と言う」と、覚えてしまって

いて、ソライヤ(光陽化学さんのエッチ液の商品名)もアストロの仲間と言うか、

アストロの内に含まれる物、と言う様な理解だったワケなんですよ~。

 

最近は、「こちらでは代替アルコールを使っておられます?」と、お聞きすると、

「いやウチは、S-Z1(フジさんのエッチ液の商品名)と、〇×△□しか入れて

ないよ」と、ハッキリお応えに成られるのですが、その〇×△□って言うのは、

代替アルコールの商品名ですよね (^^)v。 なんてケースが良く有ります。

 

数年前ネット上で、「ケントが合わなくて困っています」と言う、超ベテラン製版

技術者の方からの質問が有ったのですが、・・・ん?ケント紙の印刷がウマく

行ってないって事?と訊ねると、そうではなく、「見当」と言う言葉を、耳だけで

聞いて覚えてしまい、「見当」 を 「ケント」と思い込んでしまっていたんですね。

 

思い込んでいるからそれが正解だと確信している。だから、公のネット上でも、

「ケントが合わない」等と、堂々と書けてしまう。こりゃねぇ、本当に恥ずかしい

事に成ってしまいますよね。・・・正しい用語を使う。そのために勉強をする。

そんな事は、プロとして当たり前の事だと、私は考えます。

 

今回は、「工場(こうば)のおばちゃんのブログ」と言う題名の、eibundoさんの

KBさんが書かれているブログに、「インク」とか「アストロ」とかいう言葉が出て

来たので、微笑ましく思い書かせて頂きました。KBさん、ゴメンです。<(_ _)>

「工場のおばちゃんのブログ」・・・印刷現場の話が生々しくて、メッチャ楽しい

ブログです! 宜しかったら、是非、ご覧下さいませ~。