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1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

さてさて、昨日のブログで今年は最後にしようと思っていたのですが、チョッと

書きたい事が出来てしまって・・・。と言うか、私のバ、じゃないブカ(部下)がね、

ブログを書いてまして、そのバ、じゃなくて部下が湿度に関する事を書いたの

ですが、これが何とも問題発言の連発でしたので、すぐに削除させましてね。

その点に関して、部下に解説をしようと思ったんですが、何かね、一人だけの

ために解説するよりも、自分のブログに書いてしまおうと思った次第です。

 

削除された彼のブログからの抜粋です。

「名古屋気象台の年平均データを見てみたところ、なんと湿度60%を切って

いる月は1ヶ月だけなんっすよ。びっくりですわ!」  ・・・って、オイ!それで

終わりなのかよッ!その後のホローとかは、全く無しなのかいなッ!

 

私と、この部下君が所属するのは、営業管理企画部って言いましてね。

今の季節は、ウチの加湿器を販売促進する為に、あの手この手を考案して

実施している状態です。そんな時期に、「60%を切るのは1ヶ月しかない!」

とかって、ネット上で書かれてしまったら、「なんだ、そんな事なら、加湿器を

買う必要など無いじゃないか」って話に成ってしまいますよねぇ。

 

こう言う問題発言をされると、上から叱られるのは、ウチの部長だったり、

直属の上司である私だったりしてしまうワケなのですよ(涙)。まぁこりゃねぇ、

私の指導不足ですから、私がアカンのですが、実はこの彼が言ってる事は、

事実なんですよ。下の表、少し見にくいですが、「平均湿度 %」って言う列が

名古屋気象台が30年間の平均を取って発表している数字なんですよ。

 

 

この数字を見る限り、彼が言うように、湿度60%を切っているのは3月の59%

だけ。本当に年間1ヶ月だけなんですわ。でもね、以前、私がブログで解説した

「相対湿度」ってのと、「絶対湿度」ってのを理解してれば、これも納得が行く話

なのですわ。・・・普通、我々は湿度の単位を「%」で表しますよね。

 

新幹線の乗車率も同じです。乗車率50%って言ったら、まだガラガラの状態。

新幹線のぞみは、1,323人乗りですから、50%の乗車率なら、席が661席も

空いてる状態です。でもね、これが遊園地の10人乗りの電車で乗車率50%

だとしたら、空いてる席は5席しか無いって事ですよね。これがね「相対」って

言う表示の仕方の、一番の欠点なんですよ。%表示だから、全体で何人乗り

なのかが分からないので、現在の空席の数が全く分からないんですわ。

 

湿度も「%」で表すので、これ「相対湿度」ってヤツです。本当はね、空気中の

水分量を表すのが湿度ですから、「〇〇 g/㎥」って言う単位、「絶対湿度」で

表すべきなんですが、そんな単位で言われても、よ~分からんですよね~。

 

さて、ここで問題です。「10℃で湿度80%の時と、30℃で湿度30%の時」

ではどちらが空気中の水分量が多いでしょうか?・・・80%対30%ですから、

こりゃ80%の方が多いに決まってる!って話に成るかと思うんですが、これ、

30℃ 30%の時の方が水分量が多いんですわ。要するに30℃は新幹線で

10℃は遊園地の電車って事なんですよ。

 

空気ってヤツは、温度によって水分を含む能力がメッチャ変わります。これを

「飽和水蒸気量」って言うんですが、10℃では 9.34g/㎥ が限界で、これ以上

水分が増えてしまうと、水滴が目で見えるように成ってしまいます。これに対し

30℃ の場合だと 30.3g/㎥ も水分を含む事が可能なんです。10℃の時の、

3倍以上もの水分を含む事が出来てしまうんですね。

 

もう一度、上の表に戻ってみて下さい。3列目に、その月の平均気温が表示

されています。1月は平均気温が 4.5℃です。5℃の時の飽和水蒸気量が、

6.79g/㎥ ですので、それを1月の平均湿度64%で計算してみると、これが、

4列目の、4.35g/㎥ って言う水分量に成るんですわ。

 

気象台の発表は、屋外での計測数値です。でもね、この屋外の空気が室内

にも入って来ますよね。屋内の室温が20℃だと仮定して、計算した数値が、

5列目の「20℃換算%」です。4.35g/㎥ の水分量の空気が、20℃の室内に

入って来て、それを20℃の飽和水蒸気量で計算すると、湿度が25%しか

無い事が分かりますね。・・・全て私が計算しましたので、正確には計算の

誤差が有りますが、ほぼほぼ、そんな数字に成ると理解してやって下さい。

 

その20℃換算の5列目を見て頂ければ、1月、2月、3月、11月、12月の

5ヵ月が湿度40%を下回っている事が分かります。・・・だってねぇ、我々の

印刷現場を考えてみれば、分かるじゃないですかねぇ。もし加湿器設備が

全く無かったら、我々はこの5ヵ月間、静電気と闘う事に成りますもんね。

 

新型コロナのウイルスの飛散状況に関しても、空気中の水分量が少ない、

乾燥した冬場は、飛散が激しいので感染率が高く成ると言われています。

そうしたウイルス感染予防の為にも、加湿器ってのは必需品なんですよ!

是非、コスモテックの新型加湿器 「いつも」 の、ご導入を検討下さいませ!

 

・・・って、これくら書いとけば、私のクビも繋がるかなぁ?

でもなぁ、私のバ、じゃなく部下君、「冬場は水分量が多く成る」とか書いて

たからなぁ。・・・夏場は水分量が多く、ジメジメして蒸し暑い。冬場は水分の

量が少なく、乾燥して肌荒れや喉の痛みを訴える。って考えるのが普通なん

だけど、何で彼は、冬場は水分量が多いと思い込んでしまっているのだろ?

一度、脳みその入れ替え手術でもせんとアカンのかなぁ(笑)。

今日は、12月28日。 皆さんの会社でも、今日、明日が、本年の最後の

出勤日に成ってらっしゃる事かと思います。今年は色々、本当に大変でした。

新型コロナなどと言う、初めての経験。経済活動が停止し、出張も出来ない。

展示会も中止が相次ぎ、セミナーも停止。こんな状態が、いつまで続くのか。

本当に、いろいろ心配な日々が続いてしまいますよね~。

 

しかしながら、今年は、そうした背景も有ってか、このブログを沢山の方に

読んで頂けました。毎日、「アクセス数」って言うのが表示されて、何人の

方に見て頂いたのかが分かるんですが、今年はコンスタントに素晴らしい

閲覧数を獲得させて頂きました。 皆さんに心より感謝申し上げます。

 

私は本当に不器用な人間なので、自分が勉強した事、勉強した上で実際に

自分で、やってみて納得した事しか解説する事が出来ません。「とても偉い

先生が、こう言ってた」とか、「専門書には、こう書かれていた」、としてもね、

そう言う事を、自分自身で何の咀嚼もしないまま、皆さんにお伝えするって

言うのは、技術屋として完全に失格だ!と思うのですよ。

 

偉い先生の、理想的な環境下での実験では、こうだった。理論的には、これ

こそが正しい事なのである。・・・確かにそれらは一つの正解です。でもね、

過酷な環境下、様々に変化する条件下、つまり我々の実務上で、そんなさぁ、

机上の理想論が本当に通用するのかッ?って私は、どうしても疑問を持って

しまうんですわ。だから、必ず自分で試してみる。

 

偉い先生がおっしゃる事や、理論でガンジガラメにされた事ってね、一発で

ウマく行くなんて、そんな簡単なモノではありません。何度も何度も試して、

失敗を重ねてると、「ああ、なるほど、先生は、こう言う事が言いたいんだ」

ってのが、おぼろげながら見えて来るんですわ。

 

だけど、我々は研究者ではなく、実務を遂行して実績を挙げなくては成らない

生産者なんですわ。また、企業の一員です。こりゃ当然のように様々な制約が

付いて来てしまうんですわ。・・・ブログ仲間の方が、私の視点を「現場目線」と

表してくれました。・・・「現場目線」、私にとっては最高の誉め言葉ですわ(^^)v

 

来年も、皆さんの仕事が、少しでもウマく行くように。楽に成りますように!と

願いを込めて、様々な事を書かせて頂きます。また宜しく、お付き合い下さい。

 

では皆さん。良いお歳をお迎え下さいませ~。

 

成田祐司

以前にも書きましたが、「百円課長」と言う、改善失敗例の、お話しです。

「課長、当社の社内食堂の利用率が低く、このままでは採算が取れません」

「そりゃ美味くないからだろう。副食費を100円上げて内容を充実させろ!」

 

早速、100円分、おかずの内容を充実させて社員さん達が来てくれる様に

改善を行ったのですが、一度は来てくれた社員さん達も、その一度で終わり。

またまた、社員食堂は閑古鳥が鳴くような寂しい状態と成ってしまいました。

 

「美味しくないからだろう」「それならば100円上げろ」・・・これ、その課長さん

個人の、ただ単なる想像であり、その課長さんの、個人的な価値観のみで

考えた改善ですよね。これはね、全く的の外れた改善と言うより変更だった

から、社内食堂の集客率を全く変える事が出来なかったと言うワケです。

 

何がダメだったのか? この課長さん、問題に成っている食堂、つまり、その

現場を全く見もせずに変更案を実施してしまったのです。しかも実際にその

食堂を利用する社員さん達の意見すら聞いていない。こりゃアカンです。

 

問題が有り改善を行おうとする時には、必ずその現場を実際に自分の目で

見る事。これが何よりも大切なんです。・・・「確かに食事の内容は充実した

けどさぁ、先に作り置きしてるから、あの食堂の食べ物は冷たいんだよね~。

こんな寒い時期には、やっぱり暖かい物が食べたいでしょう。」

 

課長さんもね、実際に自分で、その食堂の昼食を食べてみれば、こんな事、

すぐに理解出来ましたよね。だからこの場合の本当の改善は「暖かい物は

暖かい状態で提供する」 こうする事が本当の改善だったと言うワケです。

 

以前、ある印刷会社さんに訪問させて頂いてセミナーをしていたら年配の

オペレータさんから発言が有りました。「ワシの印刷機は、かなり古く、もう

爪がダメなので、見当が合わない。菊全機で、四六半切はイイんだけど、

菊全を刷ると全く見当が合わずに困っている。爪の交換を、会社にお願い

しているのだが言う事を聞いてくれない。成田先生からも、社長に進言を

して頂きたい!」・・・そのセミナーには、社長さんも同席されていました。

 

そうですか。爪は消耗品ですから、古い印刷機は交換調整が必須ですが、

ケッコウ高額な予算が必要に成りますから、その古い印刷機を破棄するか

買い替えるか、爪調整の代金を払うかってのは、経営者さんとしてはねぇ、

非常に悩まれる事と思います。じゃ実際に、その印刷機を見せて下さい!

 

「ええッ!ワシの印刷機を、見るんですか?」 ハイッ!もちろんですよ!

社長さんが見ても分からんかも知れませんが、私が見たら本当に爪交換が

必要なのか、はたまた、もう破棄した方が良い印刷機なのか判別出来ます。

 

てなワケで実際に現場に行って、その印刷機を拝見。私も使用経験の有る

非常に古い印刷機ですが、外観は非常に綺麗で丁寧に使われている事が

見て取れます。・・・爪が見たいので、ステップ開けますよ~。まずは中間胴。

ここの爪は非常にキレイな状態でした。そして圧胴側のステップを開けよう

とすると、そのステップの上に機長さんが居るので開ける事が出来ません。

 

「爪、キレイでしょう。ワシ一生懸命、磨いてますもん」・・・確かにキレイです。

でも圧胴の爪も見たいので、そこ、退いてもらえますか。「エエッ!圧胴側も

見るんですか?」 当たり前です。と言うか、なんで圧胴側を見せる事をイヤ

がるのかなぁ?と思いつつ、無理矢理、ステップを開けてみてビックリです。

 

圧胴がね、ゴテゴテ状態だったんです。いや全てではないですよ。四六半切

のスペースは非常にキレイでピカピカ光ってます。でも四六半切の紙が通る

外側部分には、汚れが積もってしまっていて、明らかに汚れで段差が出来て

しまっている状態。これじゃ爪ウンヌンの前に、菊全判の見当など合うワケが

ないですわなぁ。・・・これ毎日、清掃してます?

 

「いや毎日、拭いとるんじゃけどねぇ」・・・あのね、「拭く」って言うのはね、この

汚れを取る行為を「拭く」って言うのであって、こんな段差が付くような汚れを

溜め込んでしまっている状態を、「拭いている」とは決して言わんのだよッ!

自分の手抜きを棚に上げて、爪交換をしろだとッ!ナメてんじゃねぇぞッ!

 

人はね、ウソを言います。自分にとって都合の悪い事を隠したり、ゴマカシたり

してしまうんです。でもね、印刷機械ってヤツは、ウソを言いません。ゴマカす

ような事も決してしませんし、出来ようはずも無いんですわ。若いオペレータで、

この圧胴の段差汚れが分かっていないのなら、指導のしようが有りますよね。

でも相手は、何もかも知り尽くしたベテランオペレータ。こりゃ確信犯です。

 

トラブルが発生した時、不具合で困った時、上長の者は、自分のデスクから、

あれこれ指示を出したり、文句を言ったりするのではなく、必ず、その現場を

見に行く事。実際に自分の目で、その現場を見れば、真実が見えて来ます。

真実が見えれば、正しい改善策に、たどり着くのも簡単なんですよ。

あれこれ言う前に、「まず現場を見る」 それが、管理する側の基本です。

100円課長に成って無駄な経費を使うようでは、管理者失格ですよ。

さて、もうそろそろ、年末年始の長期休みが始まりますよね~。

印刷機の方も、長期休み前に、様々なメンテナンスをされる事と思います。

ローラー交換とか、デリバリィの掃除、グリスアップ等、普段、あまりされない

部分に手を入れる際には、ケガ等に充分、注意して下さいませ~。

 

この時期、よく質問を頂くのが、「年末の湿し水タンクとかって、どうするの?」

ってヤツです。まぁねぇ、湿し水タンクや、戻り水の中間タンクが汚れっ放しって

言うのは、こりゃ絶対に良くないですから、まずは湿し水を全て抜き取って頂き、

その後、油性でパウダーを使われているのなら、タンク内にもパウダーが蓄積

している事も有りますので、水道水でキレイに流して頂くってのが最初です。

 

水槽内に、油系の汚れが有るならば、これもキレイにしたいのですが、洗い油を

ドバドバと掛けてしまうのはアカンです。あくまでも 「水」 を管理する所ですから、

洗い油等の油が残るような事は、極力避けたいですよね。洗い油で、油汚れを

取るのであれば、ウエスに少量の洗い油を付けて拭いてやるってのが良いです。

 

洗い油よりも値段が高いので、あまり、お勧めはしませんが、水ローラー用の

洗浄液をウエスに浸み込ませて拭くって言うのが、実は一番、安全かと思います。

IPAを使っていた当時は、IPAをウエスに着けて拭くってのが、一番簡単でキレイ

に成る効率も良いのですが、第二種有機溶剤ですから、こりゃアカンですね。

 

そして問題は、キレイにした後なんですよ。水槽内の水は、空っぽのままでイイ?

これね、良くないです。湿し水タンクってのは、印刷機の各ユニットの水舟にまで、

湿し水を送って行きますよね。湿し水タンクと水舟は、ホース類で繋がっています。

このホース類とかってのは、ほとんどの場合、常に水が有る状態ですよね。

 

常に水が有る箇所なのに、お正月休み中だけは、水が無く空っぽの状態に成る。

そうしますとね、普段は水が溜まってて空気に触れない部分が、空気に触れて

放置される事に成ったりします。そうすると、錆や腐食が起こる事が有るんですよ。

ホース内や、ホースの接続部分とかに腐食とかが起こって、湿し水が正常に流れ

なく成ってしまうと、こりゃ、湿し水が溢れ出してしまいますよね。

 

ですから、湿し水タンクの清掃後、タンクを空っぽにしておくのは良くないのです。

んじゃ、休み明け、すぐ使えるように、エッチ液を入れた状態で満たしておくのは

どうか?って話なんですが、エッチ液ってね、バクテリアの餌に成るんですわ~。

休み中は印刷機を動かさないので、湿し水の冷却もしないから、温度が上がり

ますよね。温度が上がればバクテリアの発生率が高く成ってしまいますよね。

 

てなワケで、私のお勧めは、タンク内の湿し水を抜いて、キレイに洗浄したら、

その後は、エッチ液を入れず、水道水のみを湿し水タンクに満たして、そして、

循環してやる。こうすると、水道水のみで全てが満たされる事に成りますよね。

この状態で、お正月休みを過ごさせるワケです。

 

休み明けは、この水道水にエッチ液を計量して入れるってのも有りなんですが、

私は、この水道水を全て捨てて、新たに、エッチ液が定量添加された湿し水を

作っていました。・・・私の時代は、湿し水を下水に流す事が出来たので良いの

ですが、地域によっては、湿し水が廃液扱いに成り、産業廃棄物として有料で

処分する事に成るので、その点は、上司の方等と相談してみて下さい。

 

湿し水ってヤツは、どうしても汚れます。汚れたままで使って行けば、循環冷却を

している装置やホース類に大きな負担を掛け、装置の寿命を短くしてしまいます。

毎週、清掃されてる方もおられますが、多くの場合、月一回か、盆、暮れのみ。

特に盆暮れのみの、1年に2回の方達は、こりゃ汚れ方もヒドいと思いますので

清掃の際には、シッカリとやって下さいませ~。

「補色」と言う言葉が有ります。色彩の世界では、例えばマンセル色相環で

言うなら、真逆の場所に位置する色同士の事を「補色の関係」と言います。

例えば黄色の真反対に位置するのは紫色。この真反対の色同士を混ぜると

理論上は、黒(グレー)に成ります。・・・ですから、黄色の絵柄を見る時には、

紫色のフィルター越しに見てやると、黄色が黒く見えるってな具合です。

 

これに対して、我々、印刷機オペレータが言う補色ってのはチョッと違います。

CMYKの4色で再現不可能な色彩が有った場合、淡紅、淡藍などを刷って、

刷り重ねる事で、少しでも理想の色彩に近付けるべく、使用する色を「補色」と

呼んでいました。「補う色」と書いて、読んで字のごとく「補色」ですわね。

 

例えば、陶器の鮮やかな紫色、南国の海のエメラルドグリーン。蛍光ピンク、

蛍光オレンジとか言う、鮮やかな色彩は、CMYKでは再現不可能ですよね。

・・・顧客である旅行会社の社長さんが、海外旅行に行って自分のデジカメで

海外の海の写真を撮って来られた。これを旅行パンフの表紙に使いたい。

 

デジカメは「光の三原色」である「RGB」での再現です。それに対して我々は

「色材の三原色」である「CMY+K」での再現に成ります。RGBの方ではね、

エメラルドグリーンの様な蛍光色を再現する事が可能なんですよ。でもこれを

印刷機で刷ろうとした場合、RGBなんてインキは無いので、CMYKの色彩に

変換して刷らなければ成らない。こりゃ当然の様にエメラルドグリーンなんて

言う蛍光色を再現する事は不可能なんですわ。

 

「再現可能色域」なんていう言葉を使いますが、RGBの方が色域が広くて、

鮮やかな色彩を再現する事が出来ます。それに対してCMYKは色域が狭い

ので、再現出来ない色彩が、どうしても出来てしまうってワケですわね。

 

これね、海のエメラルドグリーンも、そうなんですが例えば、洋服の鮮やかな

蛍光色系だとか、絵画などの色彩、鮮やかな色の陶器や、化粧品系等でも、

問題に成る場合が多いんですわ。そりゃねぇ、表現能力が狭いCMYKで、

RGB領域の色を再現しろって言ったって、当然の様に無理なんですよ。

 

そうした事を、何とか近付けようとしたのが、我々、古い印刷職人の技である、

「補色技術」ってヤツだったんですわ。私は陶器系の色彩表現で、よくやって

いましたが、京都で長年、印刷機オペレータをやって来た、私の先輩さんは、

京都の染め物屋さんのパンフの仕事で、この技を駆使されていました。

 

京都の染め物やさんと言えば、着物ですわね。鮮やかな色彩や、深い紫色、

淡く鮮やかな緑色なんてヤツは、こりゃ当然のように、CMYKでは再現不能

なんです。・・・我々の世代にCTPや、フォトショップなんてのは有りませんから

版を焼く為のフィルムに、マスク(覆い)を掛けて、必要な部分だけを抽出した

版を作って、淡オレンジやら、淡ピンクやらで補色を掛けていたんですよ。

 

正直ね、こんな高度な技術、誰にでも出来るってもんじゃ有りません。かなりの

熟練を重ねた、ほんの一部の職人達だけが、可能にしていた技だったんです。

ですからね、これが出来る印刷屋さんは、当時、本当に大儲けをしていました。

・・・でもね「技だった」。 過去形?そう、もうこの技術は過去の遺物なのです。

 

まずね、40年前のプロセスカラーインキと、今のインキでは、鮮やかさが違い

ます。今時のインキは本当にキレイですわ。もし、それでも色域が不足してる

と言うのであれば、個人的には好きではないですが「高演色インキ」なんて言う

選択肢も有ります。それに、版がCTPに成ったおかげで、250線を越える様な

高精細や、FMスクリーンなんて言う版も、簡単に作れてしまいますよね。

 

高精細やFMは、通常の175線に比べ、再現可能な色域が大きく広がります。

過去の遺物に成ってしまった補色技術を、今更、復活させるよりも、高精細や

FMで刷る技術を磨く方が、絶対に有効だと思っています。・・・サラリと書いて

いますが、高精細やFMで刷る技術って、相当、難しいですよ~。

 

でもね、家庭のテレビが、ハイビジョンから、4K、8Kに成ろうって言う時代です。

そんな高画質に慣れてしまった、お客さん達の眼を満足させる為には、我々も、

高精細やFMを、当たり前に使えるように成らなくてはアカンのではないかと、

最近、つくづく実感している次第です。・・・まぁ、古い技術屋としては、いにしえの

補色技術が蘇ったら、こりゃメッチャ面白いとも思うんですけどね。(^^)v

音楽に関して言うのならば、私はリズム感覚が、全くアカンのですわ~。

趣味でギターを弾いていますが、例えば、メトロノームがカッチン、カッチンと、

拍子を刻み出したら、こりゃもう本当にダメで、ギターの演奏が全く進みません。

 

と言う事は、例えば、バンドを組んで、他の人と合奏をするってのもアカンです。

本当に、こりゃもう哀れなくらいに、手が止まってしまって、曲が進行出来ません。

リズム感が無いと言ってしまえば、それまでですが、本当に全くアカンですわ~。

そんな状態なので、私は、ソロギターしか弾く事が出来ないんですよ~。

 

・・・仕事にも、「リズム」って言うのが有りますよね。これやって、あれやって、

それが終わったら、今度はこっちやって。なんて感じで、リズム良く事が進むと、

疲れも少なく非常に効率良く仕事を消化して行く事が出来ます。こう言うリズム

が良い時って言うのはね、実は、ミスが、非常に出難いんですよ。

 

チョッと振り返って考えてみて下さい。メッチャ忙しい繁忙期の時期って、意外に

ミスが出ていないんじゃないでしょうか?仕事が山ほど有って、超大忙し状態

なんですが、それを手際良く消化して行ってる時って、あまりミスが出ないんです。

 

次から次へと仕事が有るワケですから、今、他の仕事をやってるって言う最中に

次の仕事の準備や確認が出来るので、次の仕事に移る時にも、こりゃその仕事に

スムーズに取り掛かる為のリズムが出来上がってて、何も考えなくても、リズムを

乱す事無く、次の仕事に取り掛かる事が出来るってワケなんですわ。

 

年間を通して見て行くと、確認ミスとか、ウッカリミスなんてのが出易い時期って

言うのは、だいたい決まっていたりします。その多くが繁忙期終了の後なんです。

繁忙期は、次から次へと仕事が有りますから、リズムが乱れない。それに対して、

繁忙期後は、仕事が激減し、リズムが乱れ易く成ってしまいます。

 

「あれ?次の仕事の版、まだ来てないの?紙はどれ?加工指示書はどこ?」

なんて言ってると、一気にリズムが乱れてしまいますよね。繁忙期中は、凄く

スムーズな流れが有ったのに繁忙期が終わると、その流れが寸断されてしまう。

こう成れば、停止して立ち止まっての繰り返し。リズムなんて無いですわね。

 

繁忙期中は快適なリズムで仕事が消化出来てたのに、それが終わると流れが

寸断されてリズムが無く成ってしまう。まだ版が無い。紙も無い。指示書も無い。

何から進めてイイのか分からない。・・・こりゃねぇ大きなストレスですわねぇ~。

ストレスが掛かった状態の人間って言うのは、それまでなら、簡単に出来ていた

確認作業などを、ついつい疎かにしてしまいがちなんですわ。

 

「何だよう!まだ紙も来てないのかッ!ええッ?あと2時間以上も来ないのッ!

もう、いい加減にしてくれよッ!」なんて言ってると、一気に集中力が低下して、

普段であるならば簡単に出来てた確認作業が、どんどん欠落して行ってしまう。

その結果、確認ミス、ウッカリミスなんてのを連発させてしまうんですね。

 

繁忙期の後って言うのは、オペレータ自身も充分に気を付けなければアカンの

ですが、管理をする側にも、もう一手間掛ける管理体制が必要なんですわ~。

繁忙期の真っ最中なら、「指示書を良く見てやっといてね!」で済む様な事でも、

急にヒマに成った時には、リズムが崩れて集中力が欠如しやすいので、こりゃ、

超簡単な指示内容でも、「ここと、ここが問題に成ってるみたいだから、刷り出す

前にオレを呼んでよ。一緒に確認してから進めよう」ってな話し合いが有効です。

 

繁忙期中は言葉を交わすヒマも無いかも知れませんが、リズム良く仕事が進行

して行くので実はあまりミスが出ない。確認ミス、ウッカリミスなんて言う初歩的

で、悔しさしか残らないようなミスは、ヒマに成った時に発生し易い。これを防ぐ

ためには、機長さんと管理者さんの、「声掛け」が非常に有効なんですよ。

 

人と人のコミュニケーションは、一つ間違えれば大きなストレスを生む事に成っ

てしまう可能性が有ります。ストレスが蓄積すれば、普通なら簡単に出来ていた

事が、出来なく成ってしまう。これを良好にするためには、定期的な話し合いの

場を持つって言うのが必要なんですよ。私は「現場会議」なんて呼んだりしてい

ますが、そんな堅苦しいのじゃなく、現場と管理が集まって、たった30分でも、

20分でもイイから、皆んなで一つの場所で話をするんですわ。

 

「いやいや、ウチの現場の連中は、話し合いが出来るようなレベルじゃないし。」

なんて事を言う人が居ますが、そりゃね、話し合いをすると言う学習が出来てない

から、そのレベルに成らないだけなんですよ。毎週、決めた時間に集まってね、

とりあえず、顔を突き合わせてみる。最初は、そこからでイイんですわ。

 

印刷現場って所は、隣の印刷機の機長さんとでさえ、コミュニケーションがウマく

行っていない場合があります。でも、そんな事では、大切な情報の共有化が全く

出来ないから、組織としては最悪なんですよ。工場長さんでも、管理者さんでも

イイですから、まずはそうした人が中心に成って、現場会議を初めてみて下さい。

それがウマく行くと、凡ミスが圧倒的に少なく成りますよ。

今年の年末年始は、忘年会や新年会を控える傾向が強いので、

お酒好きな人にとっては、寂しいですよね~。私のように飲めない者に

とってはね、こりゃ正直、願ったり叶ったりと言う、超ハッピー状態です。

 

酒宴の席ってね、2時間も3時間も続くじゃないですか。たいした料理が

出るワケでもないし、その料理も、次々に出るワケでもなく、少しづつが

チョロチョロと出て来ます。・・・そんな料理、1分で無く成るちゅうねん!

 

1分で無く成るような料理を、10分も20分も待たされて・・・。 こりゃ、

飲まない人間にとっては、大変、苦痛な時間なのですわ。ですからね、

忘年会とか新年会とか、お酒の席ってのは、正直、大~嫌いですね。

シラフで、酔っ払いの相手をするのは、他の何よりも、超~苦痛です。

 

私は、印刷技術の方でも、ノンアルコールの指導者ですから、こりゃねぇ、

そんな私が宴会の幹事とかやったら、もう絶対に、ノンアルコール宴会を

やりますね。美味しい物をシッカリ食べて、酒類は一滴たりとも出さない。

そんな宴会なら1時間以内で終わります。どうしても飲みたい人はね、

その後で、勝手に飲みに行けばイイんですわ。

 

でもさぁ、そんな宴会を企画したら、メッチャ文句が出るだろうなぁ~。

世の中には、酒好きな人が多いですからねぇ~。だけどね、世の中、

酒が嫌いな人もイッパイ居ます。酔っ払いなど、本当に大嫌いです。

 

宴会と言えば酒。そんな風習自体が、おかしいんです。そんな風習の

おかげで、酒が嫌いな我々が、どれほどの我慢を強いられている事か。

ノンアルコール宴会をやって、一滴も飲まずに我慢するって事を、是非、

酒飲み連中に知らしめてやりたいですね。

 

「ええッ!酒が出ないなら、オレは欠席~」

・・・いやいやいや、ふざけてるんじゃねぇゾッ!オレら飲めない者が、

どれほどの我慢をして酒宴の席に行ってると思ってるんだ!本当はな、

酒を飲む場など、行きたくねぇんだよ。オレらが「欠席します」って言うと

ボロクソ文句を言うクセに「ノンアルコールなら欠席」は許さんぞッ(笑)。

 

印刷も宴会も、ノンアルコール!これが基本中の基本ですッ!(笑)。

月刊 「印刷センター」 への連載が、あと2回で、360回を迎えます。

 

「1級技能士・成田さんのヤングのためのオフセット印刷雑学」ってヤツです。

連載100回分づつをまとめ、すでに3冊の本に成っていますが、その大元は、

この 「印刷センター」 って言う、つるぎ出版さん(愛知県)の、冊子への連載

なんですわ~。

 

月刊誌で360回目ですから、その連載も、あと2回で、30年に成りますね。

30年も毎月書いたんだからさぁ、ギネス記録に成らないのかなぁ?と思い、

チョッと調べてみました(笑)。

 

同一雑誌・エッセー連載 ギネス記録 37年 林真理子さん がギネスの

認定に成ってました~。こりゃ勝ち目が無さそうですわ~(笑)。まぁ私のが、

エッセーと言う分野に入るのか?ってのはチョッと疑問なんですが、ありゃ、

技術解説とか言うより、エッセーだろうなぁとも、思っています。

 

連載が始まったのが、1991年ですから、まだ 「ウインドウズ95」 が無い

時代です。今時ならね、文章を書くのには、パソコンのワードとかを使えば

イイんですが、その当時は、「ワープロ」ってヤツが出だした当初でした。

 

バカデカい、ブラウン管画面のワープロを買いまして、それで原稿を書いて

ました。だけど、ウインドウズが普及してないって事は、ネットとか、メール

とかって言うのも、まぁ、無いに等しいって言うか、無かったんだと思います。

 

完成した原稿を、ワープロでプリントアウトして、それをファックスで出版社に

送って、出版社では、そのファックスを見て、もう一度、ワープロで原稿を打ち

直して印刷会社さんへ、データとして渡していたそうです。

 

ワープロのメーカーが違えば、データ形式が違うって言う時代だったのかな?

まぁ一般家庭で使うワープロは同一規格だったかもですが、印刷会社さんが、

その時に使っていたデータ形式とは、多分、合わなかったでしょうね。

 

私がパソコンを使うように成ったのは、1999年の半ばくらいからです。

年齢的には、もう40歳ですわ~。ネットの環境も、アナログの電話回線です。

今から思えば、クソ遅くて、使えたもんじゃないですよね。ネットを見ると言う

よりは、執筆原稿のメール送信だけのために使ってたって感じですね。

 

まぁ、ギネス記録に成るような事は無いでしょうが、30年間、毎月、毎月、

その時代、その時代の印刷現場や、印刷会社の話を書き続けたワケです。

「印刷現場30年の歴史」とかってねぇ、一言で語るには、こりゃ、ケッコウ

大きな変革が有った時代なんですよ~。

 

それこそ、「文字」の世界では、「写植」から「デジタル」への変革時代です。

・・・でもね、デジタルで文字を打って文章を作っても、印刷の版を作る為

には、フィルムが必要な時代でしたから、データを「出力センター」って所へ

持って行って、そこで紙に出力してもらった文章から、「版下」なんてのを

作って、そこから、フィルム作って、刷版を作るって時代でしたね。

 

印刷機の方も、連続給水システムの登場。分割インキ壺の登場。遠隔操作

での見当合わせ装置の登場など。そりゃもう素晴らしい発展の時代ですわ。

その後、CTPが普及し、Cip3が出てと、どんどん進化して行きます。

 

そんな印刷現場、印刷会社の30年を描いたのが、私の冊子なんですよ~。

今更、フィルムの話を聞いてもなぁ~。と、思われるのは当然なのですが、

歴史が有るから今が有る。歴史が分かれば、今の便利さが納得出来る。

未来は色々、変化して行きますが、過ぎ去った歴史は変わりません。

 

たった30年の小さな歴史ですが、印刷業に携わる方達にとっては、とても

身近な歴史です。「へぇ~、たった30年前なのに、そんな物も無かったの!

そりゃ苦労して印刷してたんだろうなぁ~」なんて思って頂ければ幸いです。

 

ただ、今までの30年と、これから先の10年には大きな差が有ると思って

います。私らの30年には、チョッと前に、バブルと言う時代が有りました。

正直なところ、何もしなくても企業が儲かったような時代です。でもその後に、

ヒドい就職難の時代が有って、「ええッ!こんな凄い大学を出たような人が、

印刷業界に就職したのッ!」 なんて、メッチャ驚いた事も有りました。

 

これから先の10年は、本当に良い物を作る事が出来得る印刷会社しか

生き残って行けないだろうと思っています。 10年経てば、私は71歳。

冊子の連載は、まだまだ記録を伸ばして行きたいですが、出版社さんの

方達も、ご高齢に成って来たので、そっちの方が心配ですね(笑)。

自分が印刷した製品が、どのように使われているか、見た事が有ります?

後加工までして、完成した物を見るのは、社内でも可能だと思いますが、

そうではなくて、街中や、店舗なで実際に使われてる状態を見る事ってね、

意外なくらい勉強に成るし、刷る時のポイント等も分かって来たりします。

 

例えば、屋外貼りのポスター。こりゃ当然、耐光性(耐候性)インキを使い

ますよね。例えば、この耐光性インキってヤツ、刷り方によって耐光力に

ずい分、差が出てしまったりします。・・・そうした事ってね、実際に屋外に

貼られた、自分が刷ったポスターを見てみないと分からんですよね。

 

このポスターを発注された、お客さんの方はと言えば当然のように、こりゃ

シッカリとポスターの耐光状態を見てますね。紅と黄色が退色してしまった

ポスターなんて、何のアピール力も無いどころか、ヘタをすれば、退色して

しまった画像では、商品イメージが悪くて売れなく成ってしまいますもんね。

 

耐光インキって、ケッコウ刷り辛いですよね。濃度が無いし、色調も悪いし。

そして、普通インキよりも、水幅が狭いから、刷ってて、すぐ汚れるし、すぐ

乳化してしまうしね。・・・水幅が狭くて濃度が無いインキ。こうしたインキを

相手にした場合こそ、「湿し水が極限まで絞れてるか?」って事が大きな

問題に成って来るんですわ。

 

濃度が無いインキだから、どうしても盛り気味に成る。盛れば汚れが出易く

成ってしまうから、湿し水が多目に成ってしまう。湿し水を多くすれば、また、

濃度が出なく成るから、より以上に、インキを盛る事に成ってしまう。こんな

悪循環を繰り返してしまうと、耐光力がガクンと落ちてしまうんですわ~。

 

耐光性の問題が日の当たる屋外のみならず屋内の展示物でも発生してる

ってのが昨今の事情なんですよ。屋内貼りのポスターでも、1日中、照明で

照らされる事に成るので、それを見込んで最初から耐光インキを使う場合も

有ろうかと思います。今までは何も言われなかったのに、突然、クレームが

入るように成って来た。こりゃ、何が原因だ?って探ってみると・・・。

 

例えば、ドラッグストアー内の照明が、蛍光灯から、LED照明に代わった。

なんて場合が有ります。蛍光灯の照明は、ボワッと明るいって感じですが、

LED照明の光は、直線的に放たれるので、これケッコウ、キツイんですよ。

ですから、耐光インキの刷り方が悪いと、退色がメッチャ速かったりします。

LED照明が普及し出した頃に化粧品関連の印刷物をやってましたから、

この照明の問題では、色調の見え方も含め、ケッコウ苦労をしました。

 

実は化粧品系の印刷物を担当していた頃は毎週の様にドラックストアーに

通ってました。今週は、こっちの店舗、来週は、あっち。などと場所も変えて

見回ったりしてたんですが、そうやって見てるとね、「ああ、これは、こんな

所で、こんなふうに使われるポスターだったのか」なんて気付きが有ります。

 

化粧品系ですから、印刷時には必ず、化粧品メーカーの方が立ち合いに

来られます。その時 「あッ、このポスターは、見本より少し明るめに刷って

下さい」って指示を受けた事が有ったんですわ。・・・ん?なんでだ~?

いつもなら、見本に忠実にって言う指示なのに、少し明るめに刷れ???

 

これも、そのポスターが実際に使われてる店舗を見に行って分かりました。

そのポスターの商品が陳列棚の低い位置に配置されていて、ポスターも

その位置に貼られていたんです。棚の上の方より少し暗めの位置に成る

ので、明るめの色調にしたかったってワケですね。

 

こう言う事が分かって来ると、次に「明るめにして下さい」って言われた時に、

「あ、掲示場所が下の方に成るんですか?」とかって言うと、もう担当さんは、

大喜びされます。「ええッ!成田さん、実際に見て来たんですかッ!」

「あ、はい、前回、そう言う指示を頂いたので、何故かな?と思って店舗さん

に行って実際に見て来たら、納得が出来ましたッ!」

 

立会いの担当さんと、こんな会話が出来るように成ると、こりゃ絶大な信頼を

得る事が出来ます。信頼関係が出来上がると、立会いの印刷がメッチャ楽に

成るんですわ。・・・自分の印刷物が実際に使われてる所を自分の目で見る。

もし暇が有れば是非、やってみて下さい。あなたの印刷物のレベルを簡単に

ステップアップさせる事が出来ますよ!(^^)v

「オレはさぁ、印刷オペレータだからさぁ、刷版やデータの事なんて知らんよ~」

・・・まぁ、普通の印刷オペレータの8割以上は、胸を張って、そう言いますよね。

でもね、知らないよりは知ってる方が絶対にイイと思いません?って言うかね、

自分が印刷機担当だとして、その前工程の事を全く知りもしないで、よくもまぁ、

印刷物を作ってるなぁ~。 などと私は考えてしまうんですよ。

 

例えば、化粧品系のパッケージだとか、パンフレットだとか、色調再現が非常に

厳しい印刷物が有って、例えばそこにアイドル歌手の顔写真が、アップで掲載

されてるような絵柄を刷るとしましょう。その顔写真の上には、赤ベタのデカい

コーポレートカラー(その化粧品メーカーさんの社名ロゴ)が有る。

 

アイドルの顔が赤く出てしまってはNGなので、少々紅を抑え気味にしてみた。

ところが、そうすると、コーポレートカラーの赤が弱く成ってしまうのでアウト。

こうした難しい印刷物は、広告代理店の担当さんとかが、立ち合いに来ていて、

アイドルの顔色も、コーポレートカラーも一切、妥協する事は出来ない。

 

顔とコーポレートカラーが、離れていれば、インキ壺のキー操作で何とか成るん

だけど、同じ壺キー上に二つの絵柄が並んでたら、こりゃもう妥協点を探すしか

手が無く、「アイドルの顔は少々赤いですが、コーポレートカラーの方も若干淡い

と言う、この譲り合わせの色調で、どうでしょうか?」なんて話に成るワケで。

 

まぁそれでも、簡単にはOKを頂けませんわね~。・・・もしもこの時にね、刷版の

知識が有れば、「悪い、印刷機の方では限界だからさ、紅版、出力し直してくれ

んかなぁ。50%と25%の部分で、2%づつ落としたヤツで頼むわ~」なんて事

が提案出来れば、これ、すんなりとOKを頂ける色調が再現出来たりします。

 

まぁ、データ上でフォトショップで直すって方法も有りますが、アイドル歌手さんの

場合だと、データ加工は一切禁止!なんて事も有ります。しかし、そうした場合

でも、刷版出力で補正を掛けるって言うのは、こりゃ印刷機のコンデションとかの

都合だったりするワケですから、当然のようにOKですよね。

 

私の場合は昔から写真の趣味が有りますので、デジカメで撮る様に成ってからは

自分が撮った物を、自分でフォトショップを使って補正や加工をしています。また、

それが高じて、イラストレーターでレイアウトしたり加工した文字やタイトルを入れ

たりもします。刷版の方は、先日も書いたように、自分で刷る版を自分で出力して

いたような人間ですから、自現機の管理や清掃までやってました。

 

前工程の事を、全く知らないのと、少し知ってるって言うのでは、雲泥の差が有り

ます。印刷オペレータは刷るのが専門!ではなくて、前工程の事を理解して行くと

自分が今、刷っている印刷物を見る眼、評価する眼が変わって来るんですよ。

知識ってヤツは、無くて困る事は有っても、有り過ぎて困るって事は有りません。

 

自分が印刷する商品の知識に関しても、こりゃ知らないより知ってた方がイイ。

例えばトヨタ車の、簡易的なパンフを刷るとして、ボディ色がシルバーメタリックの

車と、ライトグリーンマイカの車が並んでいたとしましょう。印刷してみたら、この

二つの色調が全く同じだった。・・・これじゃクレームに成ってしまいますわね。でも

この二つの色の差が、どう違うのかを知っていれば、どうしたら良く成るのかを、

考える事が出来ますが、全く知らなければ、悩む時間が増えるばかりです。

 

「ええッ、オレ、車に興味ないから、そんなもん覚えられないよ~」・・・ですよね。

でも印刷屋は、いろんな商品に関わる仕事ですよね。ある時は食品だったり、また

ある時は、ただ白いだけの陶器だったり、真っ黒なタイヤだったり。そんな物達を、

一つ一つ全て理解し、覚えて行こうとしたら、こりゃもうメチャクチャ大変ですわ~。

 

でもね、私達のお客さんは、そうした、食品や陶器やタイヤで、飯を食べてる人達

なんですよ。そのパンフレットやチラシのデキが悪くて、売り上げが落ちてしまえば、

業績不振で、パンフレットやチラシの発注が止まってしまうかも知れませんよね。

そう成れば我々、印刷屋さんの仕事も無く成って我々の業績が悪く成ってしまう。

 

印刷物の安売りは、通販印刷さんに勝てません。でも、値段が高いと分かっていて、

それでも、普通の印刷屋さんに刷ってもらいたい印刷物って言うのは、お客さんの

方でも、メチャクチャ重要な印刷物なのですよ。であるならば、お客さんの満足度を、

より満たす事が出来る印刷屋さんの勝ちですよね。

 

これから先はね、普通の印刷屋さんが受注できる印刷物ってのは、難しい物とか、

面倒な物しか無いんだ!と思った方がイイんですわ。と言う事は、そうした難しい

物や面倒な物を刷る事が出来なくては、生き残って行けないって事なんですわ。

 

そうした事の第一歩として、お客さんの商品を知る。お客さんが何を求めているの

かを、営業はもちろん、印刷オペレータも充分に理解する事が必要だと思うんです。

だってね、お客さんの要望を、白い紙に印刷して表現する仕事は、製版や刷版の

人間ではなく、印刷機オペレータにしか出来ないんですよ。

 

理想的には、印刷機オペレータは、顧客ニーズは勿論のこと、製版、刷版、そして

後工程までをも理解する事が必要なのだと思っています。白い紙に色を着けるって

言う仕事は、印刷会社の中枢を担う仕事なのだと、誇りを持って勉強して下さいな。