印刷技術 「ダンドウ」? | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

先日、久し振りに「ダンドウ」という言葉を聞きました。

もう30年以上も前の話に成るんですが、この「ダンドウ」って言葉には、

チョッと苦い(?)思い出が有りましてねぇ~。30年以上も経って再び、

しかも、地元の名古屋ではなく、ここ京都で聞くとは思いませんでした。

 

今時の印刷機は操作ボタンの所に、絵文字?の様なシンボルマークが

書かれていますよね。国際規格に基づいた世界共通のマークだとか言う

話を聞いた事も有りますが、本当のところは正確に把握していません。

 

私が30歳代頃までの国産印刷機はね、そこに漢字の表記がされてたん

ですわ。「運転」「停止」「寸動」「逆寸」「給紙」「送り」なんて感じでしたね。

 

今は安全基準上、無く成ってしまったんですが、昔は「運転」よりも超遅い

超スロー連続回転をさせるボタンが有ったんですよ。例えばブラン洗浄の

時に使うような超低速連続回転です。・・・あ、昔はブランの自動洗浄機が

無かったので、オペレータがブランを手拭きで洗浄するのが普通でした。

 

ブラン洗浄を、自分の手で行うワケですから、当然の様に安全カバーを

開けた状態です。つまり、この超低速連続回転は安全カバー等を開けた

状態でも止まる事無く回転し続ける機構だったんですよ。今時の印刷機の

安全基準からしたら、カバーを開けた状態でも回り続けるなんて、こりゃ

飛んでも無い話しなので、こんな機構、無く成っても当然ですわね。

 

でもねブランを毎回、手拭きしてた人間にとって、この超低速回転ってのは、

こりゃ必要不可欠な物だったんです。この超低速回転の事を私よりも年上の

人達は「ダンドウ」と呼ぶ人が多かったんですわ。 ・・・そんな30数年前の、

ある日の事です。印刷機メーカーの方が、印刷機の修理に来てました。

 

「おい成田、あの鍛冶屋(印刷機メーカーの修理の人の事)よぉ。アホだぞ!

『ダンドウ』の事を『カンドウ』って呼びゃ~がってよぉ。何に『感動』するんだ?

感動して涙でも流すんかッ!って、オレ、そう言ったったわ~(笑)」

 

いやいや、間違った言い方を長年して来たのは、あんたの方なんだけどなぁ。

しまったなぁ、オレが早目に正確に教えておけば、こんな事で恥をかく事は

無かったのになぁ。まぁイイや、今からでも遅くは無い。この際、この年寄りに

シッカリ教育をする事にしよう。

 

ねぇねぇ、んじゃ逆に聞くけどさぁ、『ダンドウ』って、どう言う意味?「はあ~ん、

おみゃ(おまえ)今更、何言っとる。『暖かく回る』で、ダンドウって言うに決まっ

とるがや!(がや⇒名古屋弁・~だろう)」・・・んじゃさぁ暖かく回るって他には、

涼しく回るとか、冷たくとか、熱く回るとかってのが有るの?

 

「何を屁理屈言っとるッ!そのボタンのとこに『ダンドウ』って書いたるがや!」

あ、いやいや、「暖動」じゃないでしょう。これ「いとへん」で、「緩動」だからさぁ、

「カンドウ」って読むのが正解でしょう。野球で「緩急自在のピッチング」とか

言うじゃん。その「緩急」の「緩」だから、「緩く(ゆるく)動く」ってのが正解だよ。

 

「んでも、おみゃ、みんな『ダンドウ』って言っとるぞ」 オッチャンらさぁ、中学は

卒業してんだろう。まぁ授業中に遊んどったかも知れんけどさぁ、こんな漢字、

中学で習う漢字やぞ。それをイイ歳して、「ダンドウ」とか言っとったら恥ずか

しいと思わなイカンわ!しかも「暖かく回る」とか、ええ加減にしとかなかんッ!

 

昔の印刷現場の先輩方って、こんな人達が多かったんですよ。まじめに勉強を

して来なかったから、普通の漢字すら読む事が出来ない。誰かが「ダンドウ」と

言ってしまえば、右に習えで、何の疑いも無く「暖かく回るからダンドウ」だと覚え

てしまう。・・・こいつら、本当に頭悪いよなぁ~。とか思ってたんですが、そう言う

人に限って、将棋とか麻雀とかには、やたら頭の回転が速くて、全く勝てません。

その頭の回転の速さの半分でイイからさぁ、印刷技術の勉強に使えよ~。

なんて、いつも思っていましたわ~(笑)。