印刷技術 水舟の水流 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

印刷機の湿し水ってのは、冷却タンク(ウチのTOP-ONE 等)で冷やされ、

エッチ液等を混入されて、冷却タンク ⇒ 印刷機・水舟 ⇒ 冷却タンクって言う

具合に循環していますよね。(軽オフ機等、循環していない物も有りますが)

 

循環している物が、正常に循環しなく成ってしまえば、こりゃ色々な問題が

発生する事と成ってしまいます。人の血液循環が悪く成ってしまえば様々な

病気に掛りやすく成ってしまうってのと同じですわね。・・・循環のホース等が

汚れで詰まってしまえば水舟まで湿し水が行かなく成るか、どこかの箇所で

オーバーフロー(水が溢れる)してしまうって言う感じです。

 

そこでですねぇ、チョッとコダワリを持って、見て頂きたいのが、水舟の中の

水流の勢いなんでわ~。水舟ってのは、冷却タンクから送られた湿し水が

大きな受け皿に成って、そこに水ローラーが浸かっている部分ですよね。

 

この水舟って部分、印刷機メーカーによっても、機種によっても、湿し水の

送られ方が違います。印刷機の操作側に湿し水供給のホースが付いてて

そこから、水舟に湿し水が送り込まれ、駆動側の排水口から排出されて、

冷却タンクに戻って行くってのが一般的な構造なんですが、送り込まれて

排出されるって事は、水舟内にある程度の水流が出来上がるって事です。

 

実は、この「水流」ってのがケッコウ大切なんですよ。勢いが強過ぎたら、

湿し水が水舟から溢れてしまって大変な事に成ってしまうから、こりゃね、

絶対にアカンですよね。んじゃ、弱過ぎると何かアカン事が有るのか?

って話に成るんですが、これがね、いろいろアカン事が有るんですわ。

 

まずね、湿し水ってヤツは、冷却する温度ってのが、重要な要素の一つに

成りますよね。「水舟内で15℃」ってのが一つの基本で、その15℃を確保

するために、冷却タンク内の冷却温度を10℃に設定したり、9℃に設定し

たりと言う具合です。・・・この水舟内15℃って言うのはね、これもまた色々、

理屈が有るんですわ~。(って、この話を書くと長く成ってしまうんですが)

 

水ってのはね、冷却すると「粘度」が上がります。湿し水は、調量ローラーで

絞られて、出来るだけ薄くて均一な水膜を作りたいんですよ。この絞るって

言う工程の時に粘度が高い方が、より薄く均一な水膜を作る事が可能なん

です。だから湿し水の事だけを考えたら、水舟内15℃よりも、10℃の方が

より良いのかも知れませんが、これがまた、そう簡単な話じゃないワケで。

 

「温度」って言う要素で、メッチャ変化してしまうのが、インキでしたよね。

インキは25℃で使う事を基本に設計されています。温度変化に対し敏感な

インキを安定して25℃で使う為に良好なのが、水舟内15℃の湿し水温度

だったって言うワケなのです。つまり、むやみに冷やし過ぎちゃ、インキには

良くない状況に成ってしまうって事なんですわ。

 

でも、勿論その逆に、むやみに暖か過ぎてもアカンって事ですよね。

そこで問題に成るのが、水舟内の水流の量なんですわ。本当にチョロチョロ

としか出てないようでは、こりゃ夏場など、水舟内で湿し水が暖まってしまい

ますよね。せっかく冷却してるのに、暖まってしまうほどの、チョロチョロ水流

ではアカンです。出来れば暖まる前に排出してしまいたいんですよ。

 

と言うような状況から導き出された、基本的な水流の量って言うのがですねぇ

「水舟内で、波立たない程度に、出来るだけ多く!」って事に成ったんですわ。

これね、ケッコウ大切なんですよ。湿し水ってヤツは、油類など様々な汚れが

入って来ます。この汚れが長年、蓄積して行くと、湿し水を送るホースの内側

に溜まってしまって、送り込む量や、戻るスピードが変わってしまうんですわ。

 

例えば、半年に1回とか、専用の洗浄剤などを循環させて、ホース類の中とか

洗浄してやるとイイんですが、それでもやはり、新品の時と比べれば、水流は

徐々に悪く成って行く事と思います。この水流はね、印刷機の各ユニットごとに、

調整するバルブとかが付いていますから、簡単に調整する事が出来ます。

 

最近は、無処理版に成って来たでしょう。コイツね、乱暴な言い方をするとね、

湿し水の中へ、現像カスを排出する場合が有るんですよ。こんな時に水流が

弱くて水舟内に現像カスが蓄積してしまう様だと、汚れ等の原因に成る場合

も有りますから、そうした事のためにも、水舟内の水流チェックって言うのは、

こりゃケッコウ大切なんですわ。