印刷技術 ニップ確認 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

ローラーのニップ(接触幅)を確認、調整する。そんな事、印刷機オペレータなら、

当り前のように、しなきゃ成らない事ですよね。・・・ではこの確認・調整を、いつ

やるか?って話なのですが、大半の人は、「調子が悪いなと感じた時」とかって

答えます。「普段なら出ない汚れが出るんだよ~。あ!ニップ見ようか」ってね。

 

既に調子が思わしくない状態に成ってしまっている。だからニップ確認をする。

これって、メンテナンスじゃなくて、「修理」ですよね。メンテナンスって言うのは、

「不具合を未然に防ぐためにやるべきもの」であって、少しでも不具合が発生

してから行うのは、こりゃ、メンテではなくて、修理の部類に入るのですわ。

 

私の場合、ローラーのニップ確認・調整を毎日、行っていました。

 

ローラーニップを見る時って、どうやってるの?って訊くと、この回答も様々です。

「ウチはローラーに、白インキを撒いて、それで見ています」・・・こりゃまた古い

やり方ですなぁ~。確かに白インキだと、ニップは見やすいですわなぁ。んでさぁ、

その白インキは、どうやってローラーに撒くの?「ヘラでローラーに着けてます」

 

ヘラでローラーに着けるか。・・・ローラーニップってさぁ、インキの膜厚(ローラー

上のインキの厚み)によって変わってしまうと思わない?ローラー上に、沢山の

インキが乗ってればインキの厚みが厚く成るから、ニップも太く出てしまうよね。

だから、ローラー上のインキ膜厚が、丁度ベストな状態で見るのがイイよね。

 

「でも、丁度ベストな状態に成るように、ヘラで着けるってのは難しいですよ~」

イヤ、だからさぁ、ヘラで着けなくてもイイじゃないの~。それにさ、わざわざ、

白インキなんかを使うから、手間が掛かり過ぎて面倒に成ってしまうんだよ~。

小さな照明器具(懐中電灯とか)をウマく使って、光を当ててやれば、墨でも

藍でも、きっちりニップを確認する事が可能だよ。

 

それにね、ベストな状態のインキ膜厚ってのも、実は簡単に得る事が可能なん

ですわ~。だってさ、普通に印刷してる時って、ほぼ正常なインキ膜厚で印刷

してるワケでしょう。まぁ中には、メッチャ濃い盛りの印刷も有るかも知れんけど、

普通のカラー印刷なら、ほぼ正常な膜厚の範囲内で刷ってますよね。

 

であるならば、その印刷が終わった直後は、ローラー上のインキ膜厚もベストな

状態だって言えますよね。・・・だから私の場合1日の最後の仕事が終わった後、

そのタイミングで、必ずニップを見るって事にしていました。

 

その見方も、版面にローラーを下してニップを見ると言うやり方よりも、版面を

ベタにして、つまり、ローラーを版面に下した状態で印刷機を回転させて、版を

ベタの状態にして、印刷機を停止させ、5秒ほど待ってから、ローラーを上げて、

その時に版面に残ったローラーの跡(ニップ)を見るって言う、やり方の方が

正確で簡単なんですよ。

 

版をベタにせず、ローラーを版面に下して、5秒待ってからローラーを上げて、

版に着いたニップを見るってのは、エアーシリンダー等を介して、ローラーを

機械的に着けた時のニップに成ってしまうんですわ。これね、エアシリンダー

だとか、その他、機械的な部分の動き等に問題が有るとね、正確なニップが

出てくれない場合が多いんですわ。

 

それに対して、先に版面にローラーを下して、印刷機を回転させ、版をベタ

にして、それから印刷機を停止させて、5秒待ってからローラーを上げるって

言うやり方は、実際の印刷状態を再現してる状態から、ローラーを上げるって

言うやり方ですから、より正確なニップを見る事が出来るんですよ。

 

まぁ、版をベタにせず、ローラーを版に下して、寸動で少し回転させて、5秒

待ってからローラーを上げて、そのニップを見るってやり方も有りますよね。

これもケッコウ正確なニップを見る事が出来ますが、これだとローラーの跡が

イッパイ着いてしまって、何度もやってると、何がなんだか分からなく成って

しまいます。先に版をベタする方法なら、調整後の確認も、またベタにして

からローラーを上げての確認に成りますので、毎回、ローラー跡は一つだけ。

この方が、一番、楽に正確なニップを見る事が出来ると思いますよ。

 

版をベタにせずにニップを見る方法と、ベタにしてからローラーを上げる方法、

その両方を同じ胴でやってみるとね、意外なくらいにニップが違ってしまう事

が有ります。この場合、より正しいのは、ベタにしてからローラーを上げた時の

ニップだと言われています。慣れれば、ベタにしてローラーを上げる方が簡単

なので、是非、試してみて下さい。