印刷技術 ボルト、落とす | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

昔、三菱・菊半・4色機のオペレータだった頃、私は「ボルト落とし」の名人!

だったのですよ~(笑)。1E って言う機種ですから、こりゃ、かなり古い話し

なんですが、コイツ、胴間のステップを開けて、六角レンチで調整や分解を

する様な箇所がケッコウ有りましてね。

 

例えば、1胴目と2胴目の間のステップを開けて、そこへ半身に成って入り、

手を一杯に伸ばし、ボルトを緩めたり、締めたりする様な作業が有りまして。

暗くて狭い中での作業ですので、「あッ!」と言った瞬間にボルトがコロリン。

 

暗く狭い奈落の底へ、小さな小さなボルトが落ちて行くのですわ~。

いやいや、正直なところ、底まで落ちてしまえば、何ら問題は無いのですよ。

ボルトの予備は持ってましたから。・・・例えばですよ、このボルトがね、落ちて

行く時に、どこかに当たってハネて、例えば胴のギヤの所で止まってしまって

いたらアウトですよね。

 

次に印刷機を回転させた瞬間、ギヤにボルトが食込んで、ガッチン!とか、

大きな音を立てて、印刷機が完全停止してしまったら、こりゃ、その修理の

ために、どれだけの費用と時間が掛かるのか、考えただけでも恐ろしい(汗)

 

・・・私は「ギヤ」って書いてますが、これ「ギア」でも正解のようです。私は、

JIS規格に、「ギヤ」と表記されているので、それを採用している次第です。

ですから、くれぐれも「ギア」じゃないのかッ!とか言うコメントは、送って

下さらないように、お願いを致しまする~(笑)。

 

てなワケで、そんな狭く暗く、しかも超複雑な構成部品群が入り組む中で、

落としてしまった小指の先程の、小さな小さなボルトを、必死の思いで探す

事に成ってしまうワケなのですわ~。  これ、本当に大変な作業です。

 

圧胴の横あたりに、自分の頭を突っ込み、懐中電灯で照らして、ボルトを

探すのですが、まぁ、見える所には有りませんねぇ(笑)。見えない箇所には、

そ~っと手を突っ込んで、指先で探りながら、何とかボルトに触れようとする

のですが、これもほとんどの場合、無駄な努力に終わってしまいます。

 

まだね、銀色のボルトなら、マシなんですが、印刷機メーカーさんの策略

なのか、そう言う落ちやすいボルトに限って、黒色をしてるんですよねぇ~。

ですから、こりゃまぁ、本当に見付からないんですよ~。

 

「ボルトが落ちる瞬間、身体の全てを『耳』にして、落ちる場所を特定せよ!」

これ、その当時、メーカーの方から教わった極意です。落ちたと思った瞬間、

その行方を目で追おうとしても、まず無理だ。であるならば、全神経を耳に

集中して、転がって行く方向や場所を、音で特定せよ!との事なんですわ。

 

でもさ、こんな極意を伝授して下さるってのは、メーカーの方達も、ケッコウ、

落としてたって事なんですかねぇ? (笑)

 

確かに、この方法は効果が有りました(^^)v つ~か、先に「落とさない方法」

を考えろよ!って話なんですが、 ・・・私もね、いろいろ努力したんですよ。

落とさない様に、厚紙を敷いて、その上のボルトを外すとか、ウエスを敷いて

落ちてもウエスでキャッチするとか。でもね、何をやっても落ちる時は落ちる。

 

工業高校の機械科出身だったので、ボルトとかを扱うのはケッコウ好き

だったのですが、それは、ボルトを締めたり緩めたりする事が好きなので

あって、決して、ボルトを探し回る事が好きなワケではない!

って事をイヤと言うほど、思い知らされました~(笑)。