最近ね、高感度UVインキを使う時に、一番、軟らかいインキを使うだとか、
それでも気に入らないので、一番軟らかいインキを、更に軟らかくして使うだとか
言う話を、ちょくちょく耳にする様に成ったんですわ。まぁ、工場環境とか、様々な
条件の違いは有るかと思うんですが、それってね、決して良い事ではないですよ。
前にも書きましたが、高感度UV機のオペレータさんってね、油性機出身の方が、
ほとんどかと思うんですよ。長年、油性のインキだけを触って来た人が、初めて
高感度UVのインキを触ると、「なんやコレッ!メッチャ硬いやんけぇ~ッ!」って
成るかと思います。そんな時に、ピッキング(紙剥け)とか、ヒッキーとかが頻発し
てしまうと、「やっぱ、コイツ硬過ぎやでぇ~」と、成ってしまいますわねぇ。
「ヘラ当り」っていう言葉が有ってね。インキをヘラで触った時、触ったオペレータが
硬い!と感じるか、軟らかい!と感じるかは、この「ヘラ当り」って言う、手触りの
感覚で決められてしまう場合が多いかと思うんですよ。油性インキと高感度UVの
インキを比べた時、一番大きな違いは、フロー(流れやすさ)なんですわ。
例えて言うなら、油性インキは「蜂蜜」の様に、ドロドロと流れる感じ。それに対して、
高感度UVインキってヤツは、マーガリンかバターの様に、ボソッとした感じで、流れ
難いですよね。この流動性の良し悪しが、ヘラ当りに対して、メッチャ影響してしまう
ので、油性インキに比べて、高感度UVインキは「硬い!」って言うイメージを持って
しまいがちなんですが、実はね、それはチョッと違うんですわ~。
一般的に、硬いインキってのは、イコール、ピッキングが起きやすい。って成るかと
思うんですが、実は、ピッキングを起こす一番の要因は、インキの「タック」(粘り気)
なんですよ。このタックってのは、全体的なインキの硬さとは無関係だって言う話は、
以前にも書いたんですが、油性インキと高感度UVインキってのは、まさに、コレなん
ですわ。ヘラ当りで軟らかいと感じる油性インキでも、けっこう、タックが高かったり、
ヘラ当りで硬いと感じる、高感度UVインキでも、タックの低い物も有るんですわ。
油性インキは「油」で作られてるから流動性が良い。それに対して、高感度UVインキ
ってのは、「硬化開始剤」って言う「粉」が多目に入ってます。「油」対「粉」ではねぇ、
こりゃ、ヘラ当りに大きな差が出るのは当たり前ですよね。ですから、ヘラ当りだけで
判断してしまうと、軟らかめの高感度UVインキを選択する事と成ったり、それだけじゃ
まだ気に入らないので、添加物を入れて、より軟らかくしてしまったりって具合です。
でもね、再三書いている様に高感度UVってヤツは、水幅が狭く、良好な許容範囲が
本当に狭いんですよ。そんな状態なのに、軟らかめのインキや、それを、より一層、
軟らかくして使ってしまったら、こりゃ簡単に汚れが出てしまいます。その汚れを防ぐ
ために、湿し水が多目に成ってしまう。多目の水で、網点の素抜けが出たりだとか、
チリ汚れが止まらなく成ってしまったりとか、こりゃ、負のスパイラルへの扉を、自ら
開けるようなものなんですわ。
「いやでも、高感度UVはインキを軟らかくしないと、ベタのツブレが悪いし、ヒッキー
も出やすいから、やっぱり軟らかめを使うべきじゃないの?」 ・・・う~ん、確かにね、
高感度UVのベタって、あまり良くない物が多いですよね。でも、それって、ブランの
問題も大きいんですよ。高感度UVは、UV用のブランを使いますよね。
油性のブランで刷ると膨潤して(インキが乗った部分だけ、ブランが膨らんでしまう)
から、UV専用のブランを使う事に成るんですが、このブラン、油性の物と比べたら、
こりゃやっぱり印刷品質的には落ちます。実際に高感度UV機に、膨潤覚悟の上で
油性のブランを使ったら、ベタも網もキレイだったりしますもんね。
でもね、ブランよりも何よりも、基本的には、やはり、湿し水の使い方なんですよ。
UV用のブランでもね、湿し水をシッカリ絞ってやれば、ベタも良く成りますし、何より
ヒッキーの出方等は、メッチャ良好に成ります。高感度UVは水幅が狭いですから、
油性よりも、メッチャ、シビアに湿し水を絞ってやる事が必須なんですわ。
その、水を絞ると言う事の為にも、硬めのインキを選択しなくちゃアカンのですわ。
軟らかいインキ使って「咬両端が汚れる~」とか言う前に、一度、硬めって言うか、
普通の硬さのインキで刷ってみて下さい。そんな汚れなんて、出やしないから。
自分が長年経験して来た油性と、高感度UVは、全く違うんだ!って言う発想を
出発点にして、とにかく、油性よりも、超~シビアに湿し水を絞るんだ!と言う
強い信念を持って、高感度UVを扱ってやって下さい。