印刷技術 高感度UVインキ | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

最近ね、高感度UVインキを使う時に、一番、軟らかいインキを使うだとか、

それでも気に入らないので、一番軟らかいインキを、更に軟らかくして使うだとか

言う話を、ちょくちょく耳にする様に成ったんですわ。まぁ、工場環境とか、様々な

条件の違いは有るかと思うんですが、それってね、決して良い事ではないですよ。

 

前にも書きましたが、高感度UV機のオペレータさんってね、油性機出身の方が、

ほとんどかと思うんですよ。長年、油性のインキだけを触って来た人が、初めて

高感度UVのインキを触ると、「なんやコレッ!メッチャ硬いやんけぇ~ッ!」って

成るかと思います。そんな時に、ピッキング(紙剥け)とか、ヒッキーとかが頻発し

てしまうと、「やっぱ、コイツ硬過ぎやでぇ~」と、成ってしまいますわねぇ。

 

「ヘラ当り」っていう言葉が有ってね。インキをヘラで触った時、触ったオペレータが

硬い!と感じるか、軟らかい!と感じるかは、この「ヘラ当り」って言う、手触りの

感覚で決められてしまう場合が多いかと思うんですよ。油性インキと高感度UVの

インキを比べた時、一番大きな違いは、フロー(流れやすさ)なんですわ。

 

例えて言うなら、油性インキは「蜂蜜」の様に、ドロドロと流れる感じ。それに対して、

高感度UVインキってヤツは、マーガリンかバターの様に、ボソッとした感じで、流れ

難いですよね。この流動性の良し悪しが、ヘラ当りに対して、メッチャ影響してしまう

ので、油性インキに比べて、高感度UVインキは「硬い!」って言うイメージを持って

しまいがちなんですが、実はね、それはチョッと違うんですわ~。

 

一般的に、硬いインキってのは、イコール、ピッキングが起きやすい。って成るかと

思うんですが、実は、ピッキングを起こす一番の要因は、インキの「タック」(粘り気)

なんですよ。このタックってのは、全体的なインキの硬さとは無関係だって言う話は、

以前にも書いたんですが、油性インキと高感度UVインキってのは、まさに、コレなん

ですわ。ヘラ当りで軟らかいと感じる油性インキでも、けっこう、タックが高かったり、

ヘラ当りで硬いと感じる、高感度UVインキでも、タックの低い物も有るんですわ。

 

油性インキは「油」で作られてるから流動性が良い。それに対して、高感度UVインキ

ってのは、「硬化開始剤」って言う「粉」が多目に入ってます。「油」対「粉」ではねぇ、

こりゃ、ヘラ当りに大きな差が出るのは当たり前ですよね。ですから、ヘラ当りだけで

判断してしまうと、軟らかめの高感度UVインキを選択する事と成ったり、それだけじゃ

まだ気に入らないので、添加物を入れて、より軟らかくしてしまったりって具合です。

 

でもね、再三書いている様に高感度UVってヤツは、水幅が狭く、良好な許容範囲が

本当に狭いんですよ。そんな状態なのに、軟らかめのインキや、それを、より一層、

軟らかくして使ってしまったら、こりゃ簡単に汚れが出てしまいます。その汚れを防ぐ

ために、湿し水が多目に成ってしまう。多目の水で、網点の素抜けが出たりだとか、

チリ汚れが止まらなく成ってしまったりとか、こりゃ、負のスパイラルへの扉を、自ら

開けるようなものなんですわ。

 

「いやでも、高感度UVはインキを軟らかくしないと、ベタのツブレが悪いし、ヒッキー

も出やすいから、やっぱり軟らかめを使うべきじゃないの?」 ・・・う~ん、確かにね、

高感度UVのベタって、あまり良くない物が多いですよね。でも、それって、ブランの

問題も大きいんですよ。高感度UVは、UV用のブランを使いますよね。

 

油性のブランで刷ると膨潤して(インキが乗った部分だけ、ブランが膨らんでしまう)

から、UV専用のブランを使う事に成るんですが、このブラン、油性の物と比べたら、

こりゃやっぱり印刷品質的には落ちます。実際に高感度UV機に、膨潤覚悟の上で

油性のブランを使ったら、ベタも網もキレイだったりしますもんね。

 

でもね、ブランよりも何よりも、基本的には、やはり、湿し水の使い方なんですよ。

UV用のブランでもね、湿し水をシッカリ絞ってやれば、ベタも良く成りますし、何より

ヒッキーの出方等は、メッチャ良好に成ります。高感度UVは水幅が狭いですから、

油性よりも、メッチャ、シビアに湿し水を絞ってやる事が必須なんですわ。

 

その、水を絞ると言う事の為にも、硬めのインキを選択しなくちゃアカンのですわ。

軟らかいインキ使って「咬両端が汚れる~」とか言う前に、一度、硬めって言うか、

普通の硬さのインキで刷ってみて下さい。そんな汚れなんて、出やしないから。

 

自分が長年経験して来た油性と、高感度UVは、全く違うんだ!って言う発想を

出発点にして、とにかく、油性よりも、超~シビアに湿し水を絞るんだ!と言う

強い信念を持って、高感度UVを扱ってやって下さい。