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片岡大志Official Blog

シンガーソングライター 音楽プロデューサー 片岡大志のオフィシャルブログです。

 

 

年内のライブのお知らせです。



 

●2019年11月23日(Sat)

@酒田 ブルースヒロ

『晩秋の山形!酒田・新庄

音楽グルメ旅!~ラクダ体験付き~』

17:30 Open 18:00 Start

Music Charge 3800yen(1dr付)

【出演】

片岡大志/都会のラクダ/

ミッキースナフキー/ペケキングテリー/kana

 

●2019年11月24日(Sun)

@新庄 CAFE LABO

『晩秋の山形!酒田・新庄

音楽グルメ旅!~ラクダ体験付き~』

17:00 Open 17:30 Start

Music Charge 3500yen(1dr付)

【出演】

片岡大志/都会のラクダ/

ミッキースナフキー/ペケキングテリー/kana

 

●2019年12月4日(Wed)

豪徳寺leef room

19:00 Open 19:30 Start

Music Charge 2000yen(+2 order)

【出演】

片岡大志/山口進(夜ハ短シ

岩崎けんいち/大友マサノリ

 

 

●2019年12月21日(Sat)

@鹿児島「赤とうがらし」

19:00 Open 19:30 Start

Music Charge 2500yen(1dr付)

【出演】

片岡大志/ココムーンペリ/BUNTA

 

 

 

冬が来た。

きっと冬だろう。息が白かったから。

コートを取りに行かなくちゃ。

クリーニング屋のおかみさんは

「ウチの店を冬物置き場にして」

かわいい眉をひそめるだろう。

 

 

11月8日は早稲田RiNenにて

片岡大志Special Bandでした。

 

 

浦清英(Key/Sax)

宮川剛(Drums)

内田充(Gt)

有瀧敬之(Bs)

湯浅佳代子(Tb/Syn)

 

会場の早稲田RiNenは、オープンから

まだ一年半の新しいライブハウス。

運営スタッフは一昨年に閉店になった

池袋・鈴ん小屋の面々だ。みんな顔馴染み。

 

 

フルバンドのライブは半年ぶりだったけど

凄腕メンバーに助けられて、良いライブに

なりました。新曲「Book.Movie.Music」

初披露もありました。これが本当のホント

「こんな風に演りたかったのよ!」ってな

ご機嫌なバージョンでお届けできました!

 

 

久しぶりに演奏した、比較的新しい楽曲

「一番遠い宇宙」は、固定メンバーになって

からの、バンドアンサンブルの中でも編曲の

完成度が高いと思う。これはレコーディング

意欲が湧きます。来年!何とか頑張りたい!

 

 

 

 

「片岡大志Special Band」ライブから

中二日で迎えた、’19年11月11日(Mon)

猫耳クラブ・コンサート」は、

今月いっぱいで38年の歴史に幕を閉じる

青山プラッサ・オンゼでの開催でした。

 

 

ヨースケ@HOMEの逝去から四ヶ月半。

ユキノTomomiも、僕もヨースケの不在を

忘れた日はなかったし、ヨースケがいない

猫耳クラブのことを、アンサンブルのことを

思い浮かべるだけで震える想いだったけれど

 

 

この夜に集まって下さった満員の猫耳部員、

はんだすなお(Key)と、湯浅佳代子(Tb)

全員に助けられてライブを完遂できました。

 

 

プラッサに響いた

「今夜はブルーが多すぎる」

あの歌声を忘れることはないでしょう。

 

 

僕ら猫耳クラブは、ヨースケの思い出も

楽曲も一緒に連れていきます。プラッサでの

数々の愛おしい記憶も連れていきます。

皆さん、本当にありがとうございました。

 

 

 

この夜のライブでも話したけれど、

僕と青山プラッサオンゼとの

出会いは、2000年まで遡る。

 

 

青山通りのブルックス・ブラザース

隣のビルに、所属していた事務所が

移転したとき、そのビルの近所に小さな

ブラジル音楽専門のお店を見つけた。

 

 

好奇心旺盛だった僕は、その後

TOYONO”さんというブラジリアン

アーティストと出会って、彼女や

Saigenji”のライブを観るために

プラッサに通うようになりました。

 

 

ときを同じくして、女将クラウヂアの

一人娘・花梨ちゃんがロンドンの大学へ

留学しました。当時、頻繁に渡英していた

僕は、日本米やら鮭の缶詰やらをトランク

一杯に詰め込んで彼女に差し入れました。

クラウヂアに報告すると「ありがとうね」

「アタシの息子に認定してあげるわよ」と。

 

 

プラッサオンゼのオールスター・メンバーが

揃い踏みとなったTOYONOさんのアルバム

「pelicano heaven(ペリカーノヘヴン)」に

制作プロデューサーとして参加できたことは

大切な記憶です。僕は自分の関わった作品の

中でも3本の指に入るくらい好きな作品です。

 

('07年8月23日@青山プラッサオンゼ)

あのレコーディングに参加したメンバーは、

竹中俊二(Gt)マルコス・スザーノ(Perc)

塩谷哲(Pf)岡部洋一(Perc)渡辺剛(Key)

中西俊博(Vio)沼澤尚(Dr)佐野聡(Tb)

クラッシャー木村(Vio)松原秀樹(Bs)

八尋洋一(Bs)C シルバースタイン(Bs)

Saigenji(Vo)そりゃ名盤になるわけです。

 

プラッサオンゼへ「観に行く」側から

「演る」側になったのは、2006年のこと。

 

拠点としていた渋谷のクラブハウスが

閉店になったと、クラウヂアに伝えると

「ウチで演ればいいじゃないの!」と

言ってくれました。南米音楽じゃないけど

いいの?「良い音楽ならアタシが許す」。

 

あれから13年間。

僕は大切なライブのほとんどを

青山プラッサオンゼで演奏しました。



 

あの空間には「音楽の神様」がいます。

素晴らしい演奏が鳴り響いたときに

聴衆の気持ちが高まったときに

「音楽の神様」は現れて

魔法をかけるように

会場を包み込み

音楽は眩しく

輝きだして

祝福され

やがて

ひとりひとりに宝石を残してくれるのです。

 

そのいくつもの宝石は、いまも

記憶の引き出しの中にしまってあります。

いつでも取り出して、眺めることができる。

 

 

歴代のアルバイトの面々。

プラッサで出会ったミュージシャン。

プラッサで演奏したミュージシャン。

ブラジル音楽常連のお客さま方々。

お店に通って下さったお客さま方々。

クラウヂア。花梨ちゃん。
僕は本当に幸せな時間に恵まれました。

 

たくさんの音楽の喜びを、愛を

本当にありがとうございました!


2019年11月16日 片岡大志


 

 

この金曜日(11月8日)は

片岡大志スペシャルバンド!

@早稲田RiNen
お待ちしています!

 

そして来週の月曜日(11日)は

猫耳クラブコンサートです!


 

このところ、わき目もふらず

ライブに間に合わせるべく

新しい歌を作っていました。

 

歌を作ること。もう三十年以上も

続けているのに全然飽きることがない。

 

初めて歌を作ったのは14歳のときだった。

ギターを教えてくれた友達の家で

コードに合わせて、即興の冗談を

ちょっと口ずさんでみただけ。

僕らは、頰に詰め込んだおやつを

吹き出しながら笑ったっけ。

 

「これはオリジナルっていうんだぜ」

興奮して友達が言ったとき

「これがオリジナル?マジ?」

なーんにも取り柄のなかった自分が

ちょっと認められたような気がして

あのとき、嬉しかったなあ…。

 

35年前のあの日から、どういうわけだか

シンガーソングライターを名乗るようになり

プロデュースだとかを頼まれるようになって

いまでは「歌ってどうやって作るんですか」

そんなことを訊かれる先生をやってるとか、

むむ…。人生って何が起こるかわからない。

 

 

新しい歌を作るのは楽しい。

〆切がなければ。

だけど〆切がなければ、完成しない。

創作には「作り手の時間が含まれてる」

そのことに気づいたのは、

三十代を過ぎてから。

 

時間には、その時点での作り手の年齢や

経験が含まれている。それから作り手の

移ろいやすい感性や価値観の定位置も。

作ってるときの時代背景も含まれます。

創作に費やすことの許される期間も同じく。

 

そのときに作った創作物には

これら作り手の「時間」が含まれている。

 

そのことに気づいてからは、尚のこと

「タイムレス(Timeless)」な歌作りに

ついて考えるようになった。

 

歌う者の、聴く者の年齢を問わず

時代を問わず、記憶を問わず

普遍性を兼ね備え得る「歌作り」って?

 

「タイムレス(Timeless)」=普遍性。

時代背景や、作り手の事情を翻訳解説する

必要なくいつも通用する「本当のこと」。

 

歌を作るときに念頭に置くこと。

 

「本当のこと」を「提案」する。

「提案」する価値のある

「本当のこと」が創作には不可欠だ。

「表現」=「提案」だから。

 

歌を作るときに念頭に置くこと。

 

普遍性を携えたメッセージは

わかりやすいはずだ。そして音楽を

伴うなら、当たり前のようにココロと

身体が動かされるものでなくっちゃね。

 

新しい歌ができました。

明日のライブで演奏します。

愛するバンドに助けてもらいます。
彼らは表現者だから、
僕の意図を瞬時に理解してくれる。

そしてサウンドに変換してくれる。

 

「本当のこと」がわかりにくい世の中だ。

何を信じたらいいのか、わかりにくい。

 

本当のこと=「普遍性」はシンプルだ。

時代とともにファッションは変わっても

身体に纏うものであることは変わらない。

「変わりゆく」中の「変わらない」を

捉えること=「タイムレス(Timeless)」。

 

んー。もっと簡単に伝えらないものか…。

おっと。だから歌うってことなのか。

明晩お目にかかりましょうー。

 

片岡大志より

 

久しぶりのBlog更新!

まずは宣伝させて下さいね!

今週木曜日!

●10月17日(木)24時~

 

FM-NACK579.5「富澤一誠 Age Free Music!」

ゲスト出演しています!久しぶりの

一誠さんとの対談!どうぞ聴いて下さい!

(写真のワタクシ、髪が寝起きです…)

 

 

●11月8日(Fri)@早稲田RiNen

片岡大志 Special Bandです!
これを読むかもしれない若い聴衆に向けて

補足すると、バンドメンバーは超一流です。

素晴らしい夜をお約束しますヨ!!

 

 

●11月11日(Mon)@青山プラッサ

猫耳クラブのコンサートです。

これを以ってプラッサ最終公演です。

みんなで歌いましょうね!

 

 

今年の都内でのワンマンライブは

この2本だけです。どうぞ遊びに来て下さい。

出版記念に快気祝い?+新曲発表!です。

 

それから発売中の

●「独学シンガーソングライター歌作り気づきノート」!

売り上げを順調に伸ばしているようで、

本屋さんに行くたびに、音楽コーナーで

自分の本を見つけます。ホント嬉しひ…。

「とってもわかりやすくて面白い」との

メールもたくさん頂いています。

まだお手に取っていない方は是非!!

 

 

 

 

台風19号…。凄かったですね…。

僕の住んでいる湾岸地区では、昼間から

携帯電話の非常アラームが鳴りっぱなし。

 

「避難勧告」と言われても、避難所が

自宅よりも海抜が低いので、開き直って

様子見にしました。それにしても情報が

いち早く入手できる世の中になりました。

 

まずは午後の降雨量を調べながら

各河川の水位をインターネットの

ライブモニターで睨みつつ、Twitterの

リアルタイム情報を検索で選り分けて

現在状況を判断。停電したらアウトだけど

それでも充電があって、電波さえあれば

数時間は粘れます。十年前とは大違い。

 

結果的には大丈夫でしたが、荒川堤防が

決壊していたらと想像すると恐ろしい。

多くの地域に水害が出たとのニュース。

被害の最小限と早い復旧を祈ります。

 

 

 

台風19号の最中、

「台風は大丈夫?」と届くメールで
「体調は大丈夫?」と訊かれました。

 

先月の入院騒動から三週間が過ぎて、

再検査にも行ったけど、異常なし。

 

「小腸の炎症からくる腸閉塞」との

診断で「胃腸には気を付けましょうね」

強面の担当医がニヤリと笑いました。

 

ホッと安心して、病院から自転車を

走らせると秋のにおい。

何故だか。どうしてだか。

どっと切ない気持ちになりました....。

 

 

 

 

退院後の9月末には、板橋ファイト

大野賢治市川セカイ小関峻

一緒にライブ。入院明けってことも

あって、ちぇ、身体に力が入りにくい。

 

 

オーケンとセカイはさすがの完成度。

胸のトキめく素晴らしい音楽だった。

小関クンはいい兄貴分に恵まれたね。

打ち上げのホルモンで、入院の恨みを

晴らすべく、コテンパンに呑み倒した。

 

 

 

 

毎年、この時期になると

僕の大学では「グランプリ」という

音楽オーディションが行われています。

大学イベントと侮るなかれ、審査員には

メジャーメーカー・音楽プロダクション

各社のプロデューサーを招いて開催してます。

 

去年から、大学のポップス音楽分野には

Sing Like Talking」の藤田千章氏が

准教授に着任して下さっていて、僕らは

二人三脚で大学仕事に立ち向かっています。

 

数多のエントリーの中から選ばれた

上位3組。今年は全組、僕と藤田氏の

教え子でした。これは本当に嬉しかった。

 

Riku『The grim reaper』

LIED『Blossm』

いかう『Pink』

 

レコーディングは僕と藤田氏で担当。

でも基本的には学生たちが考えて制作。

映像はプロによる撮影と編集ですが、

全体の運営は学生が中心となって制作。

10月27日に行われる学園祭で勝者を

決定します。動画再生回数も採点に

含まれます!是非!ご覧下さいませ!

 

 

 

金木犀が咲きました。

台風19号が行ってしまうのを

待っていたかのように、翌々日。

 

この数年は、九月の半ば過ぎには

もう咲いていたのに。ここ近年の

おかしな気候に呆れて、咲くのを

やめちゃったのかと思ってました。

 

10月はライブがありません。

ライブのない10月なんて何年ぶりだろう。

真夜中には新しい歌を作っています。

この歌、一年越しで作ってるんだけど

きっとみんなに気に入ってもらえると思う。

(早稲田のライブのみで発表です)

 

それからカレー研究を再開しました。

インド食材店でごっそりとスパイスを

購入して、混合比を試しています。楽しい。

今年中に新しいレシピを公開したいなー。

以前のレシピはこちらと、こちら

 

 

 

この秋から靴を新調しました。

Dr.Martensのブローグシューズ

George Coxのラバーソウル

(こちらは良い中古を見つけました)

 

 

この15年くらい、マーチングローブと

ラバーソウル以外の靴を履いてない。

このふたつの靴=ブランドの利点は

・どんな服を着ても大抵は合うこと

・原点がRockだと主張できること、です。

 

ライブには、どうしてもラバーソウルで

挑みたい。普段履きでもRockは主張したい。

 

着るものにこだわりは、ほとんど無いから

足元だけ執着してます。僕もラバーソウルを

履いてるひとを見かけたら

「おお!あなたはRockな!ひとなんですな」

って思うからー!新しい靴!トキめくね!

 

10月15日未明

窓から金木犀の香る部屋から

かたおかだいし

 

まずは告知です!

今年の都内での片岡大志ライブは

この告知を含めた数本だけです。

是非!遊びに来て下さい!

 

●9月28日(Sat)@板橋ファイト!

オーケンとセカイとの唄会!

「Story Teller」

大野賢治/市川セカイ/O.A小関峻

お昼の12時半から始まります!

かなり楽しみな番組です。乞うご期待!

 

●11月8日(Fri)@早稲田RiNen

片岡大志 Special Bandです!

この夜には新曲披露を約束します!

今年の集大成になるライブを
お送りします!お楽しみに!

 

 

●11月11日(Mon)@青山プラッサ

猫耳クラブのコンサートです。

10月1日から予約を開始します。

部員の皆さん!お待たせしました。
みんなで一緒に歌いましょう!

 

 

 

 

十四月夜のこと。

ソファに寝転がって、

アガサクリスティーの

謎解きに夢中になっていると

もやもやと胃が痛い。

胃というか腹部全体が痛い。

 

痛い痛いと思っていたら

動けなくなるくらいの痛さが

押し寄せてきて、Give Up…。

 

「こりゃ入院レベルだな…」

痛みに震えつつ、シャワーを浴びて

身支度整えてから、準備万端119番。

 

ニッポンの救急車すごい!5分で到着。

初めての救急車。唸るサイレン。

連休中なので、あちこち救急を断られ

町外れの総合病院が受け入れてくれた。

 

 

レントゲンとかCTとか心電図とか

色々な検査をしたと思うけど、

鼻からチューブを胃に挿入された

あの瞬間の痛みと気持ち悪さは

忘れられない。冷や汗ぐっしょり。

 

痛み止め入りの点滴を打たれて、

そのまま意識がどこかへ旅立った。

 

後からわかったことだけど

「腸閉塞」だったんだそうで、

胃や腸に未消化の食物が残ってるのに

消化器官の動きが止まってたとのこと。

当直の医師は「緊急手術もあり得る」

ことを念頭に検査していたらしい。

 

「お食事は抜きにしますね」

「飲みものも止めましょう」

 

鼻から胃にチューブが入ってると

唾を飲み込むのも困難なので

それはどっちでもいい。痛いのさえ

なくなってくれたら何でもいい。

 

 

さて。困ったことになった。

数日後には大学が始まるし

新宿SactでのLiveもあるし

やらなきゃいけないことは

あ・れ・も・こ・れ・も…。

 

だけど。

8月下旬くらいから

何となーく

「体が重いなあ」とか

「やる気が出ないなあ」とか

「お酒が美味しくないなあ」とか

全体的な不調は感じてたんだよね。

「おいマズイぞ、自分」って

思っていたことが、やっぱり…と。

 

ここはもう開き直るしかない。

っていうか、断水断食してると

思考能力が低下するんですな…。

 

パソコンは持ってきたけれど

そもそもこの病院はWi-Fiがない。

もう、ライブのことも大学のことも

なんだかんだも、考えるの止め!
(新宿Sactのライブ欠場、すみません!)

 

人生初の入院。

最初の二日間のことは

ほとんど覚えてない。痛い。眠い。

眠れない。鼻チューブが気持ち悪い。

夢から覚めて、また眠っての繰り返し。

 

 

点滴ってすごいなあ。水とブドウ糖が

あれば、ひとって生きられるのね…。

なんて感心しながらも結局、断水断食は

四日間続いた。四日目はさすがに辛くて

こっそり売店に行って「ボンタン飴」を

買って、見つからないように舐めてた。

あのトロけるような甘さは生涯忘れない。

 

 

鼻チューブを抜いてくれた看護婦さんに

「ちょっとだけでいいから帰りたい」と

駄々をこねたら、数時間の外出許可を

出してくれた。すぐタクシーで自宅に戻り

シャワーを浴びて、本と着替えを用意して

レンタルDVDを借りて、煙草を一本吸った。

 

 

個室にはプライベートがあるので、それは

ありがたいんだけど、廊下を挟んだ対面に

大部屋の病室がある。この病院には老人が

多く入院していて、消灯時間を過ぎると

扉の向こうから陰鬱な合唱が漏れてくる。

 

「…ッタイ…ッタイ…イタイ…」痛いのだ。

「ヒー…フー…コワーイ…」怖いのだ。

「ゴフッ…ゴフッ…」咳が止まらないのだ。

「ダー…マダー…」看護士さんを呼んでいる。

 

混声合唱は、消灯から24時くらいまで続く。

小さな病院だから、何もかも聴こえてくる。

やがて日付が替わると、重たい瞼が閉じて

暗い廊下の隅々にまで、沈黙が行き渡る。

 

みんな痛いのを怖いのを寂しいのを

寝息で吐き出しながら、夢を見てる。

僕は眠らずに、まだ古い本を読んでる。

世にも美しい帆船に仕えた海賊たちが、

一人残らず絞首刑となる頁で目を閉じた。

 

 

点滴治療が終わり、左手首からチューブが

抜かれたとき、手縄を解かれた罪人の気分が

わかったような気分になった。自由になった!

病院食は味がないから、美味しいとは言えず

感想を書きにくいけど、食べ物でさえあれば

嬉しい気持ちで口に入れて噛むことができる。

 

入院七日目のお昼。二日ぶりに現れた

ボスキャラ的な担当医(推定48歳)が

「お腹痛いとか気持ち悪いとかない?」

「まったくないですね」

「ご飯は美味しい?」

「美味しくないけど、ありがたいです」

「排泄はどう?」

「すごーく快調です」

「だよね。レントゲンでもわかるし」

「退院したいんですけど」

「んー。仕事がたまってる?」

「ちょっと切羽詰まってきました」

「そっか。じゃあ、帰っていいよ」

 

そんなわけで自宅の仕事部屋にある

パソコンの窓のこちら側に到着。

たった一週間のことなのに、季節が

替わってしまったね。涼しいものね。

 

仕事机のパソコン画面を前にして

ウィスキーのオンザロックを用意した。

ああ。これは世の中で一番旨い飲み物。

煙草は三本までと決めて、火をつけた。

これはどちらでもいいかな。旨いけど。

 

要領を得てない気がしまくりだけど

これが人生初入院のレポート。さて。

仕事は山積みだけど、呑気にやろう。

 

 

本ざんまいの入院ってのは
実はちょっと楽しかった。
ウミガメのスープというクイズ本。
これは脳のトレーニングに役立った。
 

アイザックディーネセン。
夢にみたいに美しい文章。
同じページを何度でも読んでいられる。
69ページ目の
「船もあなたを愛してくれたの?」
この下りには、どうしても
お酒が必要だったから、もう一杯だけ。

皆さん。御心配おかけしました。
すぐ通常運転ってわけにはいかないけど
徐行運転、安全運転で参りますー。

9月23日 未明 片岡大志より

 

 

 

 

「独学シンガーソングライター 歌作り気づきノート/片岡大志著」

 

 

 

無事に8月30日に発売になりました。

あちこちからメールが送られてきて

 

「買いましたよ!」

「まだ届いてないー」

「本屋さんで見つけました」

「楽器屋さんにあったよ」

「芳林堂では平積みでしたよ!」

 

 

おお。平積み…。

売ってくれる気満々じゃないの!

か、買いに行かなくちゃ!

皆さん、ありがとうございまーす。

 

この本を書き始めたのは

去年の夏の終わり頃。

その半年前くらいから

シンコーミュージック社の担当氏と

「本を出してみる?」と話し合ってました。

 

僕の主宰している音楽教室〈唄小屋〉が

6年目を過ぎて、大学の先生の仕事に

本腰を入れるようになって、それまでの

サウンドプロデュースという仕事内容も

含めて、ソングライティングの基礎を

「一冊の本にまとめてみたい」と

考えたのがきっかけというわけです。

 

だけど本なんか書いたことがないから、

まずは書いてみなくちゃわからない。

 

どのあたりの読者層を意識したらいいのか、

実用的に読んでもらえる事柄は何なのか、

音楽をどこまで文章化すれば、わかりやすく

なるのか、書いては書き直しての繰り返し。

 

 

何しろ、楽器があって音を鳴らせる環境なら

「こうだよね?」と伝えられるところを

文章で再現しようとしても、なかなか難しい。

この一年間、ホントに試行錯誤の連続でした。

本文に挿入されてる挿絵も、元は手書きね。

 

 

結果としては、3倍くらいの原稿を書いて

その1/3くらいの内容に落ち着きました。

 

原稿書きの終盤戦、二十代前半の駆け出しの

頃の自分を思い出してました。「あのときも、

行き当たりばったりでアルバム作ってたな」と。

 

完成形が見えてくるのは、第四コーナーあたり。

スタッフもプロデューサーも内心真っ青。

だけど、作ってみないとわからないことが

多くって、それは今回も同じだったのでした。

 

兎にも角にも。初心者ながらに。

初の書籍が発刊できたことは嬉しい限りです。

買って下さった方々の音楽の参考に少しでも

なったらいいなーっていうか、本当の気持ちは

買って下さった方、ひとりひとりのところへ

行って直接レクチャーしたいです!ああ、でも

それじゃ、本にした意味がないってことね…。

 

 

本には掲載できなかったけど

GiGS編集部の皆様、連載ではお世話になりました!

原稿への意見をくれたミュージシャン仲間に感謝!

譜例を一緒に考えてくれた細野クン、ありがとう!

煮詰まっていたときに協力してくれた学生に感謝!

シンコーの動画もアップされてます!

 

 

 

大阪にHOMEとなるライブハウスが

オープンしました。東梅田AZYTATE

京橋セブンデイズで、ブッキングを

担当していた快賊よっくんが独立開業。

 

オープン前に「お祝いに行くからね!」と

快賊に伝えたら「山口進の来る日に」と

すぐにブッキングをしてくれました。

さすがの快賊、動きが早いのなんのって。

 

梅田の繁華街からちょっと離れたところ

雑居ビルの4階にAZYTATEを発見。

ステージも内装もBARも、どこをとっても

お客さんの目線で、出演者の目線で、

音響を司る快賊の目線で作られていて

快賊よっくんの敏腕ぶりはお見事!

 

 

8月は祝宴ライブが目白押しだったようで

快賊は少々バテ気味だったけど、嬉しい

悲鳴だよね。出演者一同、しっかりと

快賊流儀に乗っ取って演じ切りましたよ。

 

 

閉演後、僕らはお店でお祝いを言い訳に

馬や鹿みたいに呑んだあと、三々五々に

散らばって、山口進と揚子江ラーメンへ。

 

 

僕は昼に食べた揚子江ラーメンが

「絶品だった」と山口進に勧めて、

それを美味そうに食べるヤツの横顔を

肴に、またうまい酒を飲んだ。

こんな風にひとつ思い出が増えていく。

新しいアジトが出来たからね。また来るよ。

 

 

この秋はライブが少ないです。

ちょっとそんなときもあります。

久しぶりに曲作りでもしようかな。

なんて思ってたら、新宿SACTから連絡。

建吾くんが一緒だというので快諾。

でも、九月はこの2本限りですー。

28日のスリーマンはかなり楽しみだヨ!

 

●2019年9月18日(Wed)

新宿SACT~13周年イベント

Open 19:00 Start 19:30

Music Charge 2500yen 当日 3000yen +Order

出演:hacto/鈴音/片岡大志/建吾

 

●2019年9月28日(Sat/お昼)

板橋ファイト!

Open 12:00 Start 12:30

Music Charge 3000yen +Order

出演:片岡大志/市川セカイ/大野賢治/OA小関峻

 

 

おまけのラーメンコーナー!

九段下「二階堂」に行けば

間違いなく美味しいものしかありません。

この日は8月上旬だったけど

「冷やし担々麺」をオーダー。

 

 

おわ。こりゃイタリアン?

それともエスニック?

ってな感じのルックスに相反して、

味はしっかり担々麺なのよねー。

ラーメンは進化する食べ物ですね。

 

8月は地元の雄

一之江ラーメン二郎に3回訪食!

 

 

このルックスは王者の貫禄。

二郎はやっぱりすごいね。

コールは「全部マシ!」ニンニク

アブラ・ヤサイ・カラメだけど

麺は半分…。思えば遠くへ来たもんだ…。

 

 

本の感想など、お待ちしています!
「これがちょっとわかりにくかった」だとか

「これは参考になった!」など
教えて頂けるととてもありがたいです!
どうぞよろしくお願いしまーす!

9月1日未明 片岡大志より

 

まずはお知らせです!

片岡大志、初の書籍・単行本が

8月30日に全国発売になります!

 

 

「独学シンガーソングライター

歌作り気づきノート」

(シンコーミュージック社刊)

 

発売するのが「CD音源」じゃなくって

「本」っていうのが不思議な気持ち…。

アマゾンでも予約もできますし、

こちらはシンコーミュージックの通販

お近くの書店でも御予約購入できます!

どうぞよろしくお願いしまーす!

 

それから20日の火曜日!

大阪にてライブです!

東梅田AZTATE(アジテイト)

快賊ギルドのヴォーカリストこと

〈よっくん〉が遂にお店をオープン!

そのお祝いに駆けつけてきます。

夜ハ短シの山口進も登板します!

 

 

さて。このブログを

どこから書いたらいいものか。

ほとんど誰とも連絡を

取り合っていなかったものだから

話し方を、思い出さなくちゃ。

 

気がついたら、夏が来ていて、

だけど夏の熱気は、

どこか他人事のようで。

「日々の仕事」「〆切仕事」という

ノルマの水の中に潜っていると

空が雨でも晴れでも嵐でも

ほとんど関係ない。そんな感じ。

 

 

だけど、何とか乗り越えた!

夏を取り戻しに行かなくちゃ!

今夜はそんな気分だよ。

真夜中なのに外では蝉が鳴いている。

 

 

話を少し戻して、8月1日のこと。

富山県黒部市にあるホテルアクアの

リニューアルオープンイベント。

Tomomiと落合シェフのディナーショー。

 

 

Tomomiは素晴らしい演技だった。

中嶋ユキノはんだすなおと僕は

精一杯のサポートをしたよ。

 

 

終演後に喫煙所で

輪っかを浮かばせていたら

よく来て下さるお客さまが

「大変だったんだね」というもので

「でも楽しいショーになりましたよね?」

そう請け合ったら「そうだね。本当に

楽しかった。ありがとね」と伝えてくれた。

これで一歩前進。花に水をあげなくちゃね。

 

 

 

8月17日はギタリスト・内田充さんの

25周年記念ライブ@六本木CLAPS。

内田さんのギター人生がひしひしと

伝わってくる愛に溢れたイベントでした。

 

 

出演者の方々が本当に素晴らしくって、

演奏中、バンドメンバーひとりひとりが

「これだね」「ここだよね」「いま、ね」

「よし、いくぞ」「いい音だ」「やるねえ」

そんな風に、音楽の会話を楽しんでいる。

 

僕も演奏中にも、彼らの声が聴こえてきた。

初めて演奏する僕の歌を「この歌は、こう」

「だよね?」「そうだ、それがいい」音が

歌に呼応してくれる。それは各自じゃなくって

バンド全体の意識が、ひとつの目標を持って

音楽を成り立たせようとしてくる。すごい。

 

こんなに息の合ったバンドのセッションに

混ぜてもらったことはないです。光栄でした。

内田さん!25周年!おめでとうございます!

 

 

 

本の話の続き。

ああ…。校了までがホントに長かった。

完成原稿が工場に送られたのは16日午後。

最後の最後までジェットコースターだった。

 

僕自身、本の執筆は完全な初心者で、

わからないことばかり。完成までの行程も

原稿上の専門用語も〈?マーク〉の連続で、

なかなかに難儀な仕事でございました。

 

書いてみて思ったことは色々あるけれど、

それは長くなるので、執筆後記的な記事は

実際に読んでもらってからにしましょう。

 

 

「独学ソングライター歌作り気づきノート」

面白い読み物になっていると思います。

「なるほど。歌っていうのは、こんな風に

成り立っているのか」と、歌を作ったことが

ない読者にも、興味深く読んでもらえるんじゃ

ないか思います。この本を世に出して下さると

決めて下さったシンコーミュージックに感謝!

それから自分に!よく頑張りました◎

 

 

(2019年4月6日 富山県黒部市桜花園にて 猫耳クラブ)
 

「大阪にやってきた」という歌がある。

友部正人さんの歌だ。

 

新大阪駅のプラットホームに

降り立つと、時々聴こえてくる。

 

 南に下る道路には 避難民があふれ

 僕は10トントラックで 大阪へやってきた

 インターチェンジは 雨の匂いでいっぱい

 だから僕は やせながら濡れて立つ

 

はじめて、新大阪駅に降りたあの日も

今日と同じように、耳鳴りのように

 

 

 大阪にやってきた

 やせながら濡れて立つ

 

 

そう聴こえてきた。

26年も前のことなのに、鮮明に覚えてる。

 

東京は冷たいミストだったから

急いで新幹線に乗り込んだときには

ちょっとばかり濡れてたかもしれない。

 

だから

大阪へと移動する間

両肩を抱きしめて眠っていたよ。

東京を離れて、100km、200km離れて

容赦なく300km離れて、400km離れて

500km離れたときには眠りの中にいて

目が覚めたときには、昨日と同じように

ゆきと、ともからの

グループメールがたまっていたよ。

あれから毎日、そんな感じ。

 

 

 大阪にやってきた

 やせながら濡れて立つ

 

 

6月の金曜日の夜こと。

業界筋からの電話で告げられたとき

痛みもなく、身体から内臓がごっそり

滑り落ちたような感じがした。

電話を置いた後で、魚みたいに

口をぱくぱくしてる僕をみて

僕の研究室にたむろしてた学生達は

びっくりしてた。僕が

びっくりしてるのをみて

みんな驚いていた。

おれが一番、驚いていた。

 

ゆきに電話。ゆきに電話。

ゆきはすぐ応じた。

すぐ会いに行った。

地下鉄の出口を駆け上がって

地上でゆきは待ってた。

 

僕らはまだ断定してなかったから

そのことは話題にもしないで

「最近どう?」とか言いながら

行きつけの店に行った。

 

「ヨースケの携帯にさ、電話してみようぜ」

手元に置いたケータイを前に

ゆきは迷ってる。

「本人が出れば〈間違い〉で済みますよね」

「うん。〈間違い〉で済むと思う」

時間が止まってるみたいに

向かい合わせで、ケータイを見つめてた。

 

電話に出たのは奥さんだった。

きっと数えきれないくらいの

電話があっただろうに、

僕らの着信には応じてくれた。

声を聞いたら、力が抜けてしまったから

ゆきに端末を手渡した。

その電話は、ゆきが「てきぱき」と

やってくれた。ゆきは「てきぱき」

できるんだって驚いた。驚きばかりだ。

 

ともは海外にいた。

メールをしたら「これから本番なのよ」

短い応答が返ってきた。

 

ともの本番が終わるまで

おれとゆきは、

ジョッキの氷が溶けるのを見てた。

見飽きると、次のジョッキを

注文した。感情的になるのは我慢した。

 

店の壁時計とケータイの時計を見てた。

ともと電話が繋がった。あのさ

 

 

「ヨースケが死んじゃったんだよ」

 

 

「え?」「え?」って、

ともが何回も言うものだから

ゆきに替わってもらった。

それ以上の説明はできなかったんだ。

ゆき、ごめんね。とも、ごめんね。

 

https://www.youtube.com/watch?v=nSoh0sGbkA8&feature=youtu.be

 

その数日後の月曜日

お別れしてきたよ
顔にさわってきたけど冷たかった
髪はふさふさだったよ
居眠りしてるみたいだった
みんな夢じゃなかった

 

不思議なことが。
ヨースケの同級生と外で煙草を吸ってたら
「ピシッ」と鋭い音が鳴り、白い光が弾けた。
1秒後に一発だけ
凄まじいカミナリの音が響いた。

僕らの輪の、50cmそばにあった
郵便ポストに落雷したんだ。

ポストに手を置いていたら
きっと即死だっただろう。


だって、僕らはその瞬間、
空気中の電気だけで、
身体がシビれて、落雷の音に
悲鳴を上げて、屋内に逃げたんだから。

 

あれは、ヨースケ?
そこにいるのか?
なにか言い残したことを伝えようとしたのか
僕らを助けてくれたのか

わからない
お前がいなくなったことも、
まったく訳がわからない

 

 

 大阪にやってきた

 やせながら濡れて立つ

 

 

僕らは歌をうたうのが仕事だから

どんなことがあっても

歌をうたいます。

新幹線から降りて、グループメールをみた。

 

 

「今日もしっかり演ります」

「おれもしっかり歌うね」

「はい」

「とも。やぎたちのことをお願いね」

「はい」

あれから毎日、そんな感じ。

 

僕らはしっかり手を繋いでるのに

そこにはヨースケがいない。

 

https://www.youtube.com/watch?v=0xC5t_090QY

 

 

吉田文人センパイ、ごめん。

せっかくのお祝いライブのレポートに

こんな感傷的なブログになっちゃって。

 

大阪のライブは楽しかったな。

キタムラリョウと中村僚太

大好きな仲間だから、会いたかったよ。

僚太とのギター談義は、本当タメになる。

おれはキタムラリョウが好きなんだ。

それは聴いたらわかるよ。必ず、ね。

 

吉田センパイ、ありがとね。

来場者数、百人越えだっけ?

センパイの人間力だよね。

その仲間に混ぜてもらえて光栄でした。

知り合ったみんなもありがとね。

「愛」しかなかったね。

そんな夜のために

オレたちは歌ってるんだよな。

最後のあたりはあんまり覚えてない。

久しぶりに夢も見ないで眠ったぜ。

ありがとね。

 

それは七夕前日の話。

翌日の七夕当日は広島県は福山市にいた。

 

到着するなりクルーに

「あー、ラーメン食べたい」って駄々こねて

そしたら駅前の尾道ラーメン

連れていってくれた。

 

 

みんなが駐車場に駐めている間に

駆け出して、すぐにお店を見つけたよ。

地図も何もなかったけど

おれにはギャラクシー理論があるから

場所はすぐにわかるんだ。

 

 

ギャラクシー理論によれば

「そばにいる」んだし、

「離れていてもわかる」んだよ。ベイビー。

 

その日は「唄小屋」の生徒さんでもある

きょうこさんのライブのお手伝いだった。

海の見える、素敵なお店だったよ。

 

 

お客さんもみんなあったかくって

ライブも大成功だった。

夜には備後弁講習会と、お好み焼き。

 

真夜中に

「七夕なんだから天の川が見たい」って

また駄々をこねたらしい。

 

福山市内から離れた鞆の浦へ

キョーちゃんが車を走らせてくれた。

海沿いで車のヘッドライトを切ると、

真っ暗。空を見上げたら銀河が見えたよ。

 

どの星々も、

煙のようにしか見えない天の川も、

原初はすべてが

同じ「点」だったなんて

そんなことが信じられるかい。

 

天の川銀河の中心まで3万光年。

時速1000mの超音速ジェット機で向かうと、

1光年=1000000年(百万年)

30000光年=30000000000年(3百億年)

くらい離れてる。気の遠くなるような

距離だけど、あそこにある物質と

同じもの(物質)で、僕らはできている。

 

天の川を見上げながら

その遥か彼方の光が届いてる事実に

どこかの本で読んだ

「宇宙は出来すぎてるくらい出来すぎ」

という言葉を思い出した。

 

つまり、奇跡って言える確率でしか

この宇宙は存在しないってこと。

宇宙が生まれたときに10億分の1の

「素粒子のズレ」が育まれなかったら

物質は反物質に相殺されて、

この宇宙は終了してた。

 

この地球に生まれて、身体と意思を持って

空気の分子振動の音色を奏でるってこと。

整数倍の空気振動に生じる心地よさを

感じるってこと。それは音楽のことだよ。

 

そんな話をしていたら

ヨースケは「うんうん」って

猫耳女子は「意味わかんない」って

みんなで笑ったんだ。

 

 

原稿書きしながら

誰にも会わないで

大学の人々以外とは誰にも

会わないままで過ごしてると

 

心が凍っちゃったのかな

新宿でライブがあるってわかってるのに

力が全然入らない

無気力なままで「何とかこなそう」とか

無感動な気持ちのまま会場入りして

 

 

でもね

すげえヤツらを相手にしたら

それどころじゃないよな

 

戸田大地はすげえ。ダイナマイトだよ。

あんなパフォーマンス、真似できないね。

 

木下徹はすげえ。染み入る。

演奏力も世界感も、繊細で美しい。

 

ナチュラルキラーズは凄まじい。

目が覚めた。「命をかけてる」

ロックを観た。本当の意味で

倒れるまで歌えるヤツを初めて観た。

 

臼井嗣人はすげえ。

泣いちゃうよ。泣かないように

トイレに逃げた。逃げたけど手遅れ。

 

おれもちゃんとやろう。

ちょっと遅れ気味に思った。

素晴らしい若手を前に

おれはおれ

とかよぎったけど

そんなことを思わせてくれる

シンガーに出会えて嬉しかった。

 

おれが持っているのは物語だけ。

ずっとそれだけ。

それを全力で置いてきたよ。

持ち帰ってもらえたなら

それで、よかった。

 

色んなことが未定。

だけど、ちょっとの間だけ許してね。

未定があることを

幸せだと思いながら。

 

(2011年11月2日@よみうりホール
アドリアーナカルカニョートの楽屋にて)

 

かたおかだいしより

7月16日の夜

 

 


 

ひと雨降るごとに、

夏が近づいてきますね。

夏ものの新しいシャツを買いに行きたひ…。

 

雨ニモ負ケズ、脇目モフラズ

原稿書きはまだ続いています。

近いうちに色々とインフォメーション

できると思います。頑張ってます。

 

この週末は博多でライブでした。

「シンガーソングライター達の交流戦
二0十九年 東京〜福岡」

このライブ、本当に楽しみにしてました。
福岡ドームを見下ろして到着!



 

昨年の春に出会った

「カトウナオキ」と「永瀬ともえ」

この二組のシンガーに、また会いたい!

また聴きたいって思ってました!

 

僕の九州遠征をいつも世話して下さる

軍神さんの計らいで再会が実現しました。

 

博多は赤坂にある「TUPELO」は

グリルレストラン&ミュージックバー。

お店に入ると、音楽好きにはたまらない

雰囲気。それもそのはず、オーナーの

藤城氏もシンガーソングライターでした。
 


 

カトウナオキ」を名乗る二人組は、

カトウナオキ(Gt/Vo)&陽栄(Pere)。

このふたり、最高にナイスガイ!

笑いに満ちた豪快なMCと、パワフルで繊細で

完成度の高い演奏というギャップが凄い。

 

永瀬ともえ」親しみをこめて=ともちゃんは

歌う絵本のようなシンガーソングライター。

この夜は矢田イサオ(Pf)とのDuoでした。

 

ともちゃんは「今夜は、この後の出演者に

楽しく盛り上がる曲はお任せして、とっても

悲しい歌を中心にお送りします」と表明すると、

ピアノが分厚い物語の表紙を、そっと開いた。

 

一曲目の「我が麗しき恋物語」という

シャンソンで、演奏はいきなりトップギアに。

矢田さんのピアノは、古き良き時代の

繁栄と歓喜と、その陰につきまとう

不運と悲劇とを、優雅に編んでいく。

 

その美しくて儚い時代の情景を背後に

ステージには、主人公がひとりきり。

その独白のような歌、歌のような台詞、

役者のようで歌手のようで、そのどちら

でもある彼女のパフォーマンスは、僕が

「ずーっと聴いてみたかった」歌だけど

「誰も聴かせてくれたことのなかった歌」

だったのでした。こんな感動は久しぶり!

 

「カトウナオキ」の二人組は、

お客さんの楽しませ方を、本当によく

わかってる。MCでは会場が爆笑の渦。

音楽の作法を備えているということは、

音楽を届ける術を備えているということ。

 

ナオキくんは身長190cm以上はあって

立ち姿がとても絵になる。僕はちょうど

ギターの弾き方を原稿に書いてたので、

視線はナオキくんの弾くギターの左手に

釘付け。演奏力の高い奏者の指の動きは

無駄がないんだよね。「そうそう」と

効率的な指使いにいちいち頷いたりして。

 

ライブを楽しみすぎて、自分の出番が

来ても、すぐに演奏側に戻れなかったな…。

というわけで、いきなり陽栄くんを

巻き込んでセッション的に演奏開始。


 

さらに矢田イサオさんを無理やり呼んで

譜面もないのにピアノを弾いてもらったりと

いつもの「やりたい放題」モードが発動。

 

永瀬ともちゃん&矢田さんピアノと

「恋」をデュエットしました。

これがとってもうまくいったので、さらに

上機嫌に。アンコールのセッションまでに

予定になかったことが次々と起こり…。

 

どれだけ楽しい音楽の夜だったかは

写真をご覧の通りです。お客さんにも

たくさん歌ってもらって大団円!

 

その後もみーんなお店に残って

テーブル囲んで、お酒片手に語り合い。


 

なんか素敵な話をいっぱいした記憶は

あるんだけど…、皆んな教えて!

この三組で「また集まろうね!」って

約束したことはちゃんと覚えてます!
 

こんな素敵な音楽の夜に巡り逢えるなら

ずっと旅を続けよう。どこへだって行って

音楽を伝えることにしよう。そして愛しい

音楽の同志と、また乾杯する日々を送ろう。

 

 

【おまけのラーメン~博多編】

 

もちろん、ラーメン食べる気満々

だったわけですが、博多ラーメンは

麺量が少ない(その代わり替え玉)から

連食(しかも6軒!)しちゃうよね。
アテンドしてくれた軍神さんも

もりもり食べさせる気満々だったし…。

 

達磨ラーメン本店

昔ながらの博多ラーメン食堂です。

オールドクラシックな豚骨ラーメン。


 

クリーミーなスープは、直球ど真ん中。


 

「これが食べたかったのよ」という

満足度の高いラーメンでした。





 

二軒目の「基峰

こちらもクラシック博多ラーメン。

珍しい中太麺と、しっかり炊き上げた

豚骨スープは、地元のソウルフード。


 

テレビが野球中継していて、ホークスに

ホームランが出た瞬間、店にいる全員が

口々に喜んでいたのが微笑ましかった。


ほとんど記憶にないんだけど、
写真だけはちゃんと撮ってるんだよね。
4軒目「長浜家」のラーメン。
正直、味は覚えてないッス。。


 

ラーメン住吉亭」これが6軒目ラスト。

大迫力のネギとキクラゲが売りの老舗。

到着した丼をみて、ひっくり返るかと思った。


 

スープはライト豚骨。麺はやや太め。

食べても食べてもなくならないネギに

途中からギブアップ気味になりました。
うーん、しばらくは博多ラーメンを
食べなくっていいかも...。


令和元年6月18日未明に 片岡大志より



(全力疾走のイメージ図)

暑い…。

もう夏が来ちゃったのかしら…。

気温30℃の福島県でこれを書いてます。

この週末は三日間かけて

山形県酒田市、新庄市、宮城県柴田郡と

巡ってきました。連日夏日だった。

 

さて、どこから書けばいいんだろう。

「令和」へと年号の代わった

この5月のことを振り返るとき

「とにかくキツかった」と

思い出すに違いない。全力疾走の毎日。

 

この夏頃に発刊予定の

本の原稿をひたすら書いてます。

ソングライティングについての本です。

 

「この本は夏に出る、出るはずだ」と

自分に言い聞かせて、

書いて書いて、直して直して

そんな感じで毎日を送ってます。

 

だからこの東北の三日間は

とにかく気分転換になりました。

文章書きから少し離れると

また色々と気づくだろうし、

歌についての本を書いてるんだから

歌っていう栄養をあげなくちゃね。

 

 

山形県酒田市にあるライブハウス

〈ブルースヒロ〉に集合したのは

ペケキングテリーミノルズ

中野三世、はんだすなおと片岡大志。

 

今回の東北ツアーは

新作「ペ・元年」をリリースした

ペケキングのレコ発ツアーでした。
 

うーん、この組み合わせは

はっきり言ってク・レ・イ・ジー。

だけど僕らの目的ははっきりしてる。

お客さんに楽しんでもらえる音楽を

届けること。そしてその通り、とても

素敵な音楽の夜に相成りました。

 

ペケキングとは今年二回目のツアー。

どこのライブ会場でも、お客さんを

爆笑の渦に巻き込み、しっかり存在感を

アピール。うーむ。腕が上がっとる…。

 

このツアーには膀胱チョップ

参加するはずだったんだけど、

残念ながらバンドは3月に解散。

中野三世は初のソロ出演だった。

シュールな台本とギャグセンス。

先々が楽しみになる内容だった。

 

東北初上陸のミノルズの破壊力に

みんな度肝を抜かれてましたね。

ラディカルマン=ミノル君と

ゴスロリ不思議少女=ミサミサ。

一度聴いたら忘れられない音楽。

 

片岡大志&はんだすなおも

好調快調絶好調。大好きなお店で、

大好きなお客さん方々と、大好きな

アーティスト。これだけの好条件が

揃っていたら、ね。うまくいかない

わけがないです。ブルースヒロに

集ってくれた皆さん!ありがとう!


 


翌日、僕らは酒田ラーメンの王者、
日本一美味しいワンタンメン
 




 

満月」を心から美味しく頂いて、

羽黒山の五重の塔経由で新庄市へ。

 

僕らの新庄市でのホームだった

〈スマイルエンジェルバー〉は閉店。

 

新たに演奏できるお店を探して

たどり着いたのは〈カフェラボ〉。

普段はカメラスタジオ兼カフェの

このお店のドアをくぐり抜けた瞬間

「今夜も大成功!」と直感しました。

 

スマイルで歌ってたツトム君が音響

機材を持ち込んでくれた。お店としても

まだ二回目の音楽イベントだったんだけど

スマイルの常連だったお客さんも皆んな

駆けつけてくれて、会場はわいわい賑やか。

 

結果は大成功!最後にはお客さん全員

総立ちで、手を繋いで踊り出すという

びっくりするほど幸せなライブになった。

これでまた新庄にも帰ってくることが

できます。みんなありがとうね!

 

ツアーと別れて、僕とすなおは

ミッキー扇の待つ宮城県船岡市へ。

サンセットブールバードは、この町の

音楽好きが集う素敵なライブハウス。

 

僕は二月の佐木伸誘さんとのライブぶり、

すなおは「都会のラクダ」のライブで

三月に訪れていたそうで、ミッキー扇の

計らいで、僕もすなおも準レギュラー。

 

オーナーのユウノジ氏は

(ブログでライブを紹介してくれてます!)

ロカビリーバンド「Good Rockin Daddy」の
ギタリスト。このバンドが実にカッコイイ!

 

ミッキー扇とのセッションを交えての

ライブ。三日目の僕とすなおは呼吸が

合う合う。っていうかすなおの反応の

速さが素晴らしい。気まぐれセッターの

トスを、Bクイックで対応してくれる。

 

心のどこかで「原稿…」と思いながらも

演奏に全力投球できた三日間だった。

今回のツアーに携わってくれた皆さんに

心から感謝を。明日からまた頑張れます。

 

 

鹿児島のコカリナ奏者、

からみゆかさんの2ndソロ作品

「Clear」が発売になりました。

アルバム発売のフライヤーに

コメントを書かせてもらいました。


 

風に流れるリボンのように

 

飛び跳ねるパレードの歓喜のように

 

月明かりの湖面の輝きのように

 

秘密が秘密のままであるように

 

美しいものを見つけた

 

美しいまなざしのように

 

映像的なメロディーが

 

「Clear」には閉じ込められている

 

鹿児島の素晴らしい演奏家と共に

 


 

この木笛で奏でられた美しいアルバムに

「Iris」という楽曲を提供しました。

「アイリス」とはアヤメの花名です。

僕にとってはヘッセの「アヤメ」であり

ブローティガン「西瓜糖の日々」の中に

読むことのできる詩情という意味です。

 

去年の半ばに作曲を依頼されて、

歌詞のないメロディーについて考えていた。

歌詞のないメロディーという考え方の

違和感についても考えていた。

 

ちょうど本を書き始めた時期に、

意思を持たないメロディーはない、という

当たり前のことに、改めて気がついた。

メロディーは、それ自体が言語だから。

 

言葉を持たないメロディーでも

ゆかさんが奏でると映像が浮かび上がる。

言葉という不自由から解き放たれて。

それは聴き手の想像力に訴えかける音色。

聴き手の白紙のキャンバスに飛ぶ鳥の姿。

 

そんなことをイメージしながら

ギターに触れたら、すぐにメロディーが

浮かび上がり、羽根をもらった旋律は

くちびるをギターを離れて、飛び立った。


 

このアルバムを是非聴いて下さい。
表題曲「Clear」では、僕がギターを弾いています。
この曲もまた詩情豊かな「歌」だった。


今月はホントに色々あった。
札幌「45」との赤坂でのライブは
とても素敵な時間だった。45応援してるよ!
「絵本の学校」での特別講義では絵本書きを
志すひとたちと、クリエイティビティについて
話し合うことができた。興味深い時間だった。
僕が主宰する音楽教室「唄小屋」の発表会も
あった。どのイベントも、ほとんどのひとが
表現を「伝える」ことについて考えていた。
そして「伝わる」ということ、その技術って
何だろうっていう話をしていたと思う。

 

 

おまけのラーメン。

山形県東根の「二代目高橋商店


 

人口比でラーメン店軒数日本一、

自家製麺率日本一の山形県で、

県民が選んだラーメン三本の指に入る

超名店。厳選された煮干し出汁の

スープはうっとりするほどの逸品。


 

縮れ太麺はむちむちぼかーん!

焼豚はトロントロン。こりゃ美味!


 

宮城県亘理町の「らーめん仙代

「燻製あさり節醤油」


 

グリーンスムージー、スピルリナを

練りこんだ自家製麺が印象的。


 

大量のあさりと煮干しを使った

出汁の旨味たっぷりのスープも秀逸。

ここもまた食べに来なくちゃだなー。

 

そうそう。美味しい珈琲も楽しんだ。
新庄のライブに珈琲を出店してくれた

新庄市の「bino」の珈琲は素晴らしい。

通販もあるみたいだからチェックして!



GiGSの連載も継続中!
「拝啓。独学ソングライターのあなたへ」
今月号も是非お手に取って頂けたら!


 

 

大学のある埼玉県川越市の田園にも

水が入りました。空が反射してきれい。


 

六月は博多に歌いに行きます。
ライブ情報の更新を急ぎますね。
 

夏がくるのかな。夏がくる前に

やっておきたいこと、たくさんあります。
やんなくちゃいけないことも、いっぱい。
お互いに頑張りましょうね!!

2019年5月28日未明 片岡大志より
 

 

 

ああ。そっか。

これは「平成最後の」

Blog更新ってわけだね。

 

明日以降は

「令和初めての」なんて

キーワードが飛び交うわけだ。

なんだか不思議(不思議?)な気分。

 

年号が変わることって

後々に振り返ったときに

2019年4月30日、あるいは

2019年5月1日のことを

「あのときは」って

話すときの目印になるんだろう。

 

二十年後くらいだか経った後で、

「平成」終わり間際の連休中は

「関西三都巡り」ツアーだったと

誰かに話したりするんだろうか。

 

 

イベンター〈ギグのつぼ〉は

何かと僕のことを気にかけてくれて

関西でのライブに巻き込んでくれる。

新宿JAMの閉店イベントで知り合ってから

これまでにずいぶん多くのブッキングを

組んでくれた。今回は京都・大阪・神戸。

 

雨上がりの京都、長岡京駅。

タクシーの運転手氏に「すずかげ」と

告げると「はいはい」と頷いて

住宅街の一角へと送り届けてくれた。

昭和な雰囲気の洋館の前には小川が

流れていて、大きな葉桜が枝垂れている。

 

小川を眺めながら、煙草を吸ってると

重田拓成くんが声をかけてきた。
(写真右から二番目)

彼の真っ直ぐな歌が好きだ。その歌は

折れそうな真っ直ぐを奮い立たせてた

二十代の自分を思い出させてくれる。

 

初めてご一緒した白田将悟さんは美声。

構成力の高い楽曲を、オベーションと

エフェクトとを巧みに操る名手だった。
(写真、僕の隣り)

 

戸田大地さんのロックンロール力は

圧倒的だった。それがどんなライブでも

彼の次に演奏するアーティストは気の毒だ。

(今回それはオレだった)音色は繊細、

表現はダイナミック、彼は京都の番長だ。
(写真右)

 

僕の演奏が終わると、やや年配の婦人が

「とーっても素敵だったわよ」とCDを

手に取って「サインを頂けるかしら」と

訊いた。その名前をアルファベットで

記して手渡すと、「ああ、嬉しいわ」

花咲くような笑顔でCDを胸に抱いてくれた。
 

 

大阪は曇り空。肌寒さに肩を丸めながら

谷町九丁目駅地下街のワンドロップへ。

和製ケビンという風変わりな名のシンガーは

「ひとりで立つ」ことについて高らかな声で

歌った。少年の面影をそのままに歌うケビン
には、いつもエールを送りたくなる。

 

市川セカイのことは短い文章で表しにくい。

彼は多くのことを一曲に込めるし、いちいち

僕はそれに感じ入るからだ。機会を探して

是非、セカイの演奏を聴いてみてほしい。

そこには詩情があり、知巧の技術がある。

 

 

KEEWOという金髪のライオンが奏でる

音色は美しい。音楽を美しく聴かせるという

技術を、KEEWOは狩りのように心得ている。

その鬣(たてがみ)を流麗になびかせる風の

響きを聴くと、風上の方向が目に見える。

 

こんな夜でも出番が最後、という役回りは

それだけで熱が入ってしまう。一曲目が

終わってから「まあまあ、落ち着いて」と

自分が言うのが聞こえた。音楽はぶつけあう

ものじゃなくって、分け合うものなんだから。


 





競馬が終わったばかりの神戸元町の駅前は

すごい人出だった。南京町の中華街は

小さな横浜を思わせる。小洒落た洋服屋や

カフェを何軒も横目に眺めながら、自分は

異邦人だと感じる。StingならEnglish-man

In New Yorkを歌うだろうって場面だ。

(Oh I’m an alien,I’m a legal alien)

 

繁華街を抜けたところにCafe de J’aimeを

見つけた。Since 1981と看板にあった。

「Jって呼んで下さい」とマスターは言う。

 

それを聞いて村上春樹の懐かしい小説を

思い出した。処女作「風の歌を聴け」は

神戸が舞台で、主人公は「J’s BAR」で

床にピーナッツ殻を撒き散らしていた。

 

SEIGAくんはガットギターで弾き語る。

淡々と歌う手元では、複雑なコードと

16分音符の多いリズムでナイロン弦が踊る。

 

コノハコトノハさんの日本語、音楽語は

変わってる。何がどう変わってるのかと

説明が難しいんだけど、彼女には「っ」の

使い方が印象的だと伝えた。もちろん

素敵だという意味で。香川のうどんの

作り方を指南した歌から教わりました。

「お婆ちゃんの手の柔からさくらいに練る」

 

てふてふさんのステージは、それが

どんなライブでも、その次に出演する

アーティストが気の毒(それはオレだった)

だと思う。「生きる」ってことを歌う

シンガーはどこにでもいるんだけど

彼女の場合は、そこに「生き抜く」が

加わり、さらにステージを縦横無尽に

飛び跳ねて(前転したのには驚いた)

「生きまくる」という具合になる。

一言添えると、やがていとおしい歌。

 

 

温かい雰囲気の中で、僕が歌い終えると

アンコールを頂きました。その厚意は

会場の皆さんにそっくりお返ししました。

「切手のないおくりもの」を歌うと

一秒で会場がひとつになった。こんな

名曲を書けるようになりたいものです。

 

その夜は、たまたま関西に来ていた

大柴広己くんがライブを観に来てくれて

深夜の打ち上げでも、あれこれと音楽話で

盛り上がった(最後のあたりは覚えてない)。

 

 

京都で大阪で神戸で、出会えたお客さま

皆さんに感謝を。谷町の夜にも話したけど

例えば、市川セカイの音楽の素晴らしさに

涙できる人の前で歌えることは光栄だった。

ギグのつぼ〉本谷さん、ありがとうね。

 

 

そうそう。その大阪の終演後に

ペケキングテリーが新作を手渡してくれた。

ペケキングの傑作ゴシップソングに対して

大友マサノリが演奏・編曲・エンジニア

として、実にいい仕事をしている。

 

僕は総監督のクレジットを頂いたけど

「いいじゃないの」と言ってただけ。

ペケ渾身の新作「ペ・元年」素晴らしい!

是非!怖いもの見たさで購入して下さい!


 

音楽誌「GiGS」への連載コラム

「拝啓。独学ソングライターのあなたへ」

新しい号が発売になっています。

こちらもどうぞよろしくお願いします!


 

さて。「令和」最初のライブは

赤坂ふらっとんカンティーナという

お店で札幌のアーティスト「45」に

招いて頂きました。是非遊びに来て!

 

 

おまけのラーメンコラム。

ここ数年で大阪のラーメンは

かなり進化を遂げていて、驚くような

お店が多いんだけど、このJunk Story

「塩トキメキ」は抜群だった。

 

地鶏とハマグリ出汁スープは豊満で

スープをすするレンゲが止まらない。


 

平打ちの自家製麺も何コレ凄イアルヨ!

 

どれだけ美味しかったかというと、

次の日も食べに行ってしまうほどでした。


 

こちらはトリュフを香味油にしたヤツね。

好みとしては鶏油の方が圧勝だったけど

主人の麺哲学がよくわかる逸品だった。

 

さて。さらば平成。

「令和」の世の中を素晴らしくするのは

ワタシタチヒトリヒトリノチカラデス。

 

平成31年4月30日

片岡大志より