私のカシジェーストーリー 1
みなさま、初めまして。“カシジェーの女王”こと田中えりです。神村酒造感謝祭にてカシジェーとは、沖縄の伝統酒、泡盛の蒸留粕です。泡盛は、沖縄の在来菌である“黒麹”を自然発酵させて造られるお酒。カシジェーには、黒麹由来のアミノ酸、クエン酸が多く含まれ、栄養が豊富であるにもかかわらず、その多くが廃棄されているのが現状です。琉球王朝時代には養生食として用いられていましたが、現在では一部の離島を除いて、出回ることはありません。そのカシジェーを、食素材として復活させようと活動しています。同じく神村酒造感謝祭にて。泡盛の女王と共演私がなぜ、カシジェーを復活させようとしているのか、今日はその経緯についてお話ししますね。私は2008年に東京から沖縄県那覇市に移住し、程なくして地元のウエブマガジンでフォトライターの仕事を始めました。その取材や趣味で通っていた琉球料理教室で、沖縄の料理や伝統行事、習慣などを知るにつけ、その独自性、都会との違いに驚きました。私が感動した沖縄の暮らしの知恵や、家族や親族、ご先祖や子孫への想いなどの尊さを伝えたくて、2022年に「沖縄いつもの家族ごはん」(講談社)という、家庭料理とそれにまつわる家族の物語本を出版しました。Amazonで購入できます!沖縄 いつもの家族ごはん 急がない、競わない、癒しの暮らし方 | 田中 えり, 田中 えり |本 | 通販 | AmazonAmazonで田中 えり, 田中 えりの沖縄 いつもの家族ごはん 急がない、競わない、癒しの暮らし方。アマゾンならポイント還元本が多数。田中 えり, 田中 えり作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また沖縄 いつもの家族ごはん 急がない、競わない、癒しの暮らし方もアマゾン配送商品なら通常配送無料。www.amazon.co.jpその本の取材で訪れたのが、日本最西端である与那国島でした。與那覇有羽さんという、唄者で地謡、民具作家である方のお家を訪ねました。与那国らしいお料理を、とリクエストしたところ、“カシジェーの和物”を作って振る舞ってくれました。取材時の有羽さん同島では酒造所に瓶を持っていっておくと、蒸留日にカシジェーを入れておいてくれます。連絡が来たら酒造所に取りに行き、昔から大好きでカシジェーを楽しみにしているオバアらの家に届ける、と嬉しそうに有羽さんは言っていました。有羽さんちのカシジェーその食べ方ですが、スライスした新鮮な魚介と庭に自生している薬草を刻んでボウルに入れ、そこに豪快にカシジェーを回しかけます。そこに醤油をちょっと。豪快に和えて、冷蔵庫で馴染ませます。「和物は普通、和えてすぐに食べるけど、これは敢えて時間を置くわけさ。なんでかって、野菜から野菜汁が出ていい塩梅に薄まったカシジェーを最後、こうやって飲み干すんだよ」と、有羽さんは両手で器を持ち口に運びました。有羽さんの「カシジェーの和え物」私は、そもそもその泥のような見た目と、その調理法や食べ方の豪快さに目を丸くしました。けれど、食べるものが少なかった島での貴重な栄養源であり、それを余すところなく体に取り入れる食べ方、亜熱帯の島でカシジェーのクエン酸が生魚の防腐に役立つことなど、理にかなった知恵に、やはり痛く感動しました。これが私とカシジェーとの出会いです。2019年7月のことです。その様子は自著「沖縄いつもの家族ごはん」に掲載しています。そしてこのお料理は現在、私の開催する“カシジェーのひるげ”でも少々アレンジを加えて“琉球セビーチェ”として、お出ししています。私が見た島の暮らしや、有羽さんから教わった暮らしの知恵も、必ずお伝えしています。つづく