前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト -6ページ目

多党化、不安定化の時代へ?参議院選を踏まえての個人の感想

参議院選から一夜明けて、雑感をメモしておきます。あくまでも緻密な分析ではなく、各選挙区の票の出方を見た中での個人の意見です。
まず、選挙区の結果から、自公で小選挙区を取っていく戦略は、野党側の出方次第ですが終わったな、ということです。野党側の協力体制や考え方によってはまだ、次の総選挙では自公はそこそこ取れるかもしれませんが、野党側も今回の選挙区の数字は踏まえてくると思います。
立憲はやはり野党第一党としての得票はしましたが、連合の支援が大きく、ここからの伸びしろはさほどないでしょう。
次に、第三極としての公明党、共産党、維新の存在感の決定的な低下です。全国的には地方組織が脆弱な維新ですが、大阪では相変わらずしっかり票を取ってきましたが、その背景には盤石の地方議員の組織がありました。
また、公明党と共産党はかつてはライバルでしたが、共産党は地方組織が崩壊しつつあるところであり、それが今回の得票にも大きく響きました。公明党も前回の統一地方選で異変が観察されていましたが、まさにその流れの中で今回の選挙結果がありました。
新興政党ですが、国民民主は山尾の乱のダメージでかなり得票が減ったと言われています。その通りだと思います。これからの地方選での地道な擁立で立て直しを図ってくるものと思います。
参政党は地方選挙でコツコツと全国津々浦々の地域に進出して、また、駅頭や辻立ちなどの地道な戦術を重ねてきて上でのブームでしたので、セオリー通りの勝利だったものと思います。地方選挙では今後、台風の目となるでしょう。かつての公明党の強さを彷彿とさせますし、元吹田市議の神谷氏は地方での公明党の戦略を研究し尽くしているのではないかと思います。
れいわも地方選に積極的に打って出てきましたが、候補を擁立できなかった選挙が多くて、そこが参政党との決定的な差となりました。
チームみらい、再生の道、保守党はどこも空中戦型でしたが、再生の道は石丸さんが出なかったことが決定的な戦略ミスだったのではないかと思われます。ただ、チームみらいは当選者を出せましたので、今後の展開次第で3年後もあるのではないかと思います。保守党はツートップの癖が強すぎるのですが、北村さん次第といったところでしょうか。結局テレビ有名人は強いですね。
社民党は結果的にラサール石井さんを出して、話題を呼んだことなどが功を奏し、生き延びましたね。
次の総選挙がいつになるかはわかりませんが、先に統一地方選が来る可能性がそこそこあります。統一地方選に向けて、国民民主党、参政党は徹底的な候補擁立を行うことと思います。

ちなみに、自民党ですが、これまで隠れ自民だった保守系無所属の自民系候補を自民党候補として大量に擁立する、という戦略がありうると思います。ただ、大量落選もあり得ますのでそこは博打になります。まあ、やらないでしょうし、候補も今の自民だと逃げだすでしょうね。むしろ、参政党に一定数が逃げ込みそうです。
自公の反転攻勢という視点で考えると、決定打はなくて、日本の政界は多党化、不安定化していくのではないかと思います。
自公に活路があるとしたら野党の協調がないこと、どこかの野党がやらかして自滅することぐらいです。
私は無所属の地方議員に地域で活躍してもらい、地域課題を解決してもらうことが地域活性化につながると考えていて、国政選挙の文脈で地方選挙が利用されることには批判的なのですが、ここしばらくの地方選挙では国政政党の候補者が幅を利かせることになのではないかと思います。
地方議会では誰がどこの公認を取りに行くか、誰にどこが声をかけるか、という話が飛び交い、ざわざわするでしょうね。
頑張れ、純粋無所属の地方議員。
以上、個人の感想です。

 

保守党が漏れていたので追記。東京は実務能力が高いだけに小坂さん残念でした。

なぜ「大企業や金持ちに増税して消費税減税」は今のところ実現しえないのか

世の中のいろいろな仕組みにおいて、なぜこのようなことになっているのか不思議だ、というような話は、大体何か理由があってそうなっている。
例えば、ここ30年ほどの国際的な課税状況を見ていると、明らかに法人税が低くなり、その分を消費税で穴埋めしている。正直なところ、大企業を中心に様々なテクニックを駆使して税逃れをする、という傾向は強まっている。実は和光市もそれで苦しんできた。一方で、各国とも、消費税は上がり、負担感も強まっている。
では、大企業により強力に課税して、その分消費税の負担を減らせばよいのではないかということは、普通の人間なら誰でも思いつくことである。
しかし、現実はその真逆に行っている。なぜそうなってしまうのかというと、大企業や高所得者は、税を逃れるための様々なテクニックを駆使するし、また、それを受け入れるタックスヘイブンという国があるからである。国際的に協調して税制を整えたらどうだ、ということも普通の人間なら誰でも思いつく(もっとも、国際的な協調はより困難な時代である。これまた誰でも気づくことである)。
しかしながら、他国に特定の税制を強要するということはなかなか難しい。極論を言うと、アメリカが核兵器で脅迫したとしても、うまくいくとは限らないのである。
つまり、様々な「おかしいよな」「あるべき姿と違うよな」という話には、大体できない理由があったりしてそうなっているのである。
もちろん、できない理由を鵜呑みにして放置するのであれば、政治には全く存在意義がないことになる。容易ではない現状を踏まえて、より、ましな実務を求めて工夫をしたり改善をすることが政治家には求められている。
当然のことながら与党はそれがわかっているから正面からそれに対応せずに、弥縫策により個別対応してきたわけである。あくまでも弥縫策である。
野党は責任はないし、多くの野党は政権を取るなどさらさらないので、できないことをいかにもできるように単純化してわかりやすく宣伝するのである。
また、ポッと出の新興政党は、そもそも実務がわかっていないので「僕の考えたすごい発明政治」を安易に訴えてしまうが、実務がわかっている人にとっては「だから素人とは」と言うことになるわけである。
では何を信じて、何を基準に政治家や政党を選べば良いのだろうか。それはもう、明確な基準等で語れるものではない。
ただ、組織の中に一定の行政の実務経験や、政治家としての実務経験がある人が揃っていないと、非現実的なことを訴えた上で、結局任期を無駄に過ごすと言うことになってしまうだろう。
大企業に多く課税し、消費税を下げる、と主張している政党のうち、具体的な手順や実務を掲げない政党は信用できない。
私自身、そのようなことが可能なのであれば実現するべきだと考えている。
しかし、それは容易なことではない。ただ、弥縫策の与党とどっちがいいかというとどっこいどっこいかもしれない。結局のところは個人を見るしかない。

できないことをできるように公約する政治家は嘘つきなので、地獄の火の中に放り込みましょう。

 

追記 技術的な話ですが、まあまあイケてる解として消費税増税があります。赤字にしてある企業(これがめちゃくちゃ多い)でも消費税は払いますし、金持ちはやはり、より多くの消費をしますので。ちなみに逆進性云々は分かっていますので、いちいちご指摘いただかなくても結構です。

図はすべて 諸富徹(2020)「"金持ちほど税金を払わなくていい"世界中で"富裕層への減税"が進む深刻な理由~ますます広がる"課税格差"のなぜ」プレジデントオンライン より

参議院選では元市長の候補に期待して損はない、多分

東修平(大阪、無所属)、泉房穂(兵庫、無所属)、梅原克彦(比例、保守)、宜保晴毅(比例、再生の道)、堂故茂(富山、自民)、豊田俊郎(千葉、自民)、中田宏(比例、自民)、野田国義(福岡、立憲)、藤井信吾(比例、国民)、宮本和宏(滋賀、自民)、望月良男(和歌山、自民系無所属)…共通項が分かりますか?

そう、皆さん、立候補中の元市長の参議院議員候補です。


参議院議員候補の中で、「元市長」には独特の経験値があります。それは単なる「元市長」という名前の経歴ではなく、毎年の予算編成や決算の帳尻を合わせるという、自治体のトップとしての責任を担ってきた経験があるからなんですよね。

それに対してピーチクパーチク言ってきた元地方議員も行政の経験値としてはまあまあなんですが、議員は責任は取り得ない立場。だからまあまあ。


ちょっと一緒に考えてみましょうか。

①予算の編成の流れと執行の現場を知っている
市長は、限られた財源の中で住民サービスを維持・向上させるために、厳しい選択と調整を毎年やっています。3期生だと12回、4期生だと16回やっているんですよ。まあ、なかには惰性の人もいるでしょうけどね。

②決算で結果責任を問われる立場
毎年毎年使ったお金の一円一円に説明責任を持ち、議会や市民の厳しい目にさらされてきた経験は、他の候補にはない大きな財産です。1回目なんて必ず前の市長の予算の説明ですからね。

③現場感覚と政策実行力
机上の空論ではなく、実際に政策を動かし、選択と集中で結果を出してきた実務家としての経験値があります。予算を切るってのは、絶対的に無駄なもの以外は本当に嫌な作業ですよ。多少は役に立っていても、費用対効果を考えると切らざるを得ない、というものを切る。切るときは基礎自治体なので、関係者の顔が目に浮かぶ。しかし、それをやらないと本当に必要なことができないからその決断をやる。

参議院は一応「良識の府」と呼ばれ(大げさなんだよね。まったく。ちなみにこんなくだらないことを言い出したのは佐藤栄作センセw)、各自の経験値からくる冷静な議論と現実的な政策判断が求められます。いつクビになるかわからない衆議院議員が短絡的かつ近視眼的な議論をして判断し、参議院議員はそれを見識、学識、さらには任期が6年あることによる過度に世論に流されない視点でチェックするわけです。(地方)政府会計の責任者としての経験を持つ元市長は、国の予算や法案の審議においても、現場に根ざした視点と実行力で大きな役割を果たすことができるだけの経験が期待できます。

ということで、市政の現場で実際に責任を果たしてきた元市長だからこそ、国政でも信頼できる働きをしてくれる、はず(かもしれない)です。多分。参議院において、理想と現実をつなぐ架け橋となる存在として、元市長候補に期待してさほど損はないのです。元知事、元町長、元村長も同じ。まとめて元首長と呼びます。ぜひとも元首長にご期待くださいね。
(元市長の候補者は自分が思い出せる方を列挙しました。抜け漏れがあったらご指摘くださいね。)

外国人ラブの人も外国人排斥の人も極論が多くて困ります、というお話

外国人ラブの人も外国人排斥の人も極論が多くて困ります。

 

たとえば下記の議論、あーそっか、と素直な人は思いますよね。ところが国保(国民健康保険、保険証です。健保とか共済以外の人が入っています。基礎自治体の所管)ですが、外国人の保険料滞納率はものすごく高くて、自治体が大変苦労しています。板橋区で4割という報告がありましたが、これがまず、迷惑。さらに、外国人は母国に帰ったりして日本人よりも頻繁に回収不能になります。日本人でも逃げ切る人がいますけど、外国人は母国に帰ったりまず、払いません。つまり、若くて保険料を払わない外国人が国保に入るのは自治体にとっては回収が負担、回収できなくて大変、ということで迷惑なので、デポジットなり、出国時の補足の仕組みなり、次回入国審査でカード払いしない限り入国させないなり、雇い主の補償なり、特段の制度を検討する必要があります。そうでなければ国保なんて入ってもらわないほうが絶対にいいです。どうせ赤字で一般会計から補填しているのです。

ちなみに滞納率は4割としても過半数は払っているじゃないか、と言われるかもしれませんけど、全体で滞納率10%超の地域は少数派です。母集団の質として圧倒的にしんどいです。滞納整理ってのはそれ自体がものすごく事務費がかかる仕事であり、そういう集団は集団ごと何らかの対応をするのがセオリーです。

制度を知らないだけでは、という指摘もありますが、そういう人もいなくはないでしょう。しかし、特定の国の人は、踏み倒し指南のコンサルがいる説があるぐらい払いません。

ゴミのトラブルやご近所トラブルを含め、自治体にとって、外国人が多いことによる負担は大きいです。それは外国人を排斥するのではなく、政府が仕組みを作り、自治体にやらせるなら事務費も負担して、適切に対応しなければなりません。外国人比率が高い自治体は事務的な負担がものすごく大きいのです。

日本社会は外国人なしには成り立ちません。それならそれなりの対応を正面から社会全体で考える必要があります。

排斥はダメです。社会が回りません。

国政政治家をはじめ世間の自治体への解像度の低さは本当に残念です。


ある先生の発信から引用。攻撃が目的ではないのであえて名前は出しません。また、その他の部分については議論しません。
「「外国人による国保濫用」説について

R5年度の被保険者総数に占める外国人率は4%

なのに総医療費に占める外国人率は1.39%

つまり、比較的若くて健康な外国人が、日本の高齢者医療を支えてくれている実態は明らか。

外国人の国保加入禁止なんて、日本人の自爆行為!

出典:厚生労働省 全国高齢者医療主管課(部)長及び国民健康保険主管課(部)長並びに後期高齢者医療広域連合事務局長会議

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_54381.html 」

試論/ふるさと納税制度の6つの非合理性~ふるさと納税は学問的にはフルボッコである

導入以来、ふるさと納税を批判する論文が量産されていて、政治の世界からは見事に黙殺されています。残念なので、整理して界隈に読んでいただければと思い、駄文を書きました。

ふるさと納税は学者も官僚も大嫌い。なぜなら、基本が合理性のない○○だからです。ただ、「殺らなければ殺られる」(本文より若干歪曲して抽出)制度なので自治体は踊っています。事業者も踊っています。その陰で、手数料、広告費などどして本来、住民サービスに使えた巨額のお金が事業者の懐に流れ込んでいます。

これこそ参議院選で指摘すべきなんですよ。

 

では本文です。

 

1. はじめに
ふるさと納税制度は2008年の導入以降、寄付総額・利用者数ともに拡大を続けているが、学術的にはその制度設計および運用に多くの非合理性が指摘されてきた。その指摘は学会からジャーナリズム、政界まで幅広いが、ここでは、学術論文を中心に、ふるさと納税の非合理性について論点を整理する。ざっくりシステマティックレビューの考え方を援用しているが、適当につまみ食いしているだけであり、網羅性や学問的な厳密性はないものと考えていただきたい。


2. 検討方法
本レビュー(もどき)では、主として学術誌・専門誌・紀要等で公開されている主要論文を対象とし、①所得再分配機能の逆進性、②地域間財政調整機能の欠如・形骸化、③公的資源配分の非効率性、④租税原則・地方税原則との矛盾、⑤自治体間競争の過熱化、⑥制度利用の合理性と集団的非合理性、という6つの論点に分けて各論文の指摘を抽出した。各論文の指摘に重複が多いため、すべての論文の指摘を抽出してはいないことはご容赦いただきたい。

3. 主要論点の整理
①所得再分配機能の逆進性
橋本(2022)によると、ふるさと納税は高所得者ほど控除上限が大きく、返礼品の恩恵も大きいため、逆進的であり、所得再分配機能を弱めている。実証的にも、ふるさと納税が高所得層優遇の仕組みとなり、格差是正どころか格差拡大に寄与していることが示されている。
伊藤(2023)は、ふるさと納税が地域間の財源格差を縮小するどころか、人口1人当たりで見るとむしろ格差を拡大させていると指摘し、返礼品の内容が寄付先選択の主因であることから制度の再分配機能に疑念を呈している。
田口(2024)は所得階級別の実証分析で、ふるさと納税の利用が高所得層に集中していることを明らかにし、税負担軽減効果が高所得者に偏っていることを指摘している。

②地域間財政調整機能の欠如・形骸化
橋本・鈴木(2016)は、ふるさと納税が本来の地方交付税による財政調整機能を補完しないこと、むしろ財政力の弱い自治体への再分配機能が働いていないことを指摘している。

冨田(2017)はふるさと納税による税源移転の実態と、地方交付税制度による補填の限界、都市部自治体の純減収などを分析し、制度の偏在是正機能が限定的であることを論じている。

伊藤(2023)は、総額では格差縮小効果があるものの、人口一人当たりでみるとむしろ格差拡大効果が確認されていると述べている。

吉弘(2025)はふるさと納税には財政調整機能がないことが計量的に確認されてきたとし、返礼品重視の寄付行動が地域間再分配機能を損なっている点を指摘している。
 

③公的資源配分の非効率性
深澤(2021)はふるさと納税に大きく依存する自治体ほど、地方公共サービスの供給効率性が低下する可能性があること、また返礼品競争の激化のみならず自治体行動のゆがみが生じていることを実証的に示している。橋本(2024)は、寄付額の約半分が返礼品や事務費等の私的支出に充てられ、公共サービス財源が大きく減少している点を強調している。税収100で供給できた公共サービスが、ふるさと納税を通じて50程度に減少するという資源配分の非効率性が生じている。
吉弘(2025)はふるさと納税は本質的に税収を無駄にしている制度であり、寄付金の半分が返礼品調達やシステム費用、送付費用などに充てられていると論じている。

④租税原則・地方税原則との矛盾
水田(2017)はふるさと納税が望ましい地方税の原則である応益原則や負担分任原則に反すると指摘している。
片上(2022)は納税者の意思で納付先を選べることが租税の強制性や地方団体の課税権の原則に反していると批判している。
吉弘(2025)によれば、ふるさと納税は公平・中立・簡素の租税原則や、応益性・負担分任性という地方税原則に反している。納税者の選択による税収移転が可能となり、地方自治体の財政運営の予見可能性や安定性を損なっている。

⑤自治体間競争の過熱化

土屋(2020)は自治体間で返礼品競争が過熱し、「税の奪い合い」競争に駆り立て、自治体間の対立・分断を惹起するものと指摘している。

島田(2023)はこの制度は、「税の奪い合いの仕組み」であるとし、特に、都市と農山漁村の自治体間の対立と分断を招くことを指摘するとともに、「やらなければ、やられる」のがふるさと納税制度であると指摘している。

橋本(2024)は自治体間の対立・分断、財政の非効率が顕在化しているとしている。
吉弘(2025)はふるさと納税を巡る競争の停滞とランキングの固定化、寡占化の進行について分析し、競争の過熱と制度の構造的問題を論じている。

⑥制度利用の合理性と集団的非合理性

嶋田(2019)は前述の通り、自治体が「やらなければ、やられる」状況に追い込まれ、参加を望まない自治体も税の奪い合い競争に駆り立てられる「囚人のジレンマ」的構造を指摘し、個々の合理的選択が全体として非効率な結果を招くことを論じている。

石川(2024)はふるさと納税の関係者のメリットとデメリットについて、ある者にとってのメリットは、他の者にとっ ては反対にデメリットとなる状況を対比している。
吉弘(2025)は、制度の恩恵を受ける納税者・自治体が多数派となるため、個人・自治体の合理的行動が全体最適を損なう「集団的非合理性」を生み出していると論じている。制度の抜本的見直しや廃止を求めるインセンティブが政治的に働きにくい構造となっている。

4. 総合的評価
今回、参考文献としたすべての理論・実証研究において、ふるさと納税は現行の税制・財政制度の合理性を損なう多重の問題を抱えていることが学術的に明確に示されている。①所得再分配機能の逆進性、②地域間財政調整機能の欠如・形骸化、③公的資源配分の非効率性、④租税原則・地方税原則との矛盾、⑤自治体間競争の過熱化、⑥制度利用の合理性と集団的非合理性のいずれの論点においても抜本的な見直しや廃止を求める調査結果となっている。
ふるさと納税制度は、学問的にはフルボッコである。

 

5. 参考文献
伊藤敏安(2023)「ふるさと納税は市区町村間の歳入格差をもたらしているか?」『修道法学』45巻2号, 27-36頁

田口方美(2024)「ふるさと納税の現状と課題―所得階級別・地域別考察―」『会計検査研究』 70 巻 p. 15-32
橋本恭之(2022)「所得再分配とふるさと納税」『関西大学経済論集』71巻4号, 385-401頁
橋本恭之(2024)「ふるさと納税制度の総括」『関西大学経済論集』74巻3号, 155-173頁

冨田武宏(2017)「ふるさと納税制度による税源の偏在是正機能と限界」『立法と調査』2017.3 No.386, 88-98頁

深澤映司「ふるさと納税の受入れに伴う自治体財政の効率性への影響」『レファレンス』848号,1-30頁

水田健一(2017)「『ふるさと納税』制度とその問題点」『名古屋学院大学論集 社会科学篇』53巻4号, 43-58頁
片上孝洋(2022)「『ふるさと納税』から見る自主財政権に関する一考察」『税法学』579号, 23-43頁
土屋仁美(2020)「ふるさと納税における返礼品競争の要因と問題点」『星稜論集』135号, 33-52頁

嶋田暁文(2019)「ふるさと納税再考―その問題点と制度見直しを踏まえて」『地方自治ふくおか』69号

石川和男(2024)「ふるさと納税をめぐる諸相(1) : 制度成立と運用による変容」『専修商学論集』 119号 ,11-37頁
橋本 恭之、鈴木 善充(2016)「ふるさと納税制度の現状と課題」『会計検査研究』54号, 13-38頁
吉弘憲介(2025)「ふるさと納税の政治経済学」『住民と自治』2025年5月号