なぜ「大企業や金持ちに増税して消費税減税」は今のところ実現しえないのか
世の中のいろいろな仕組みにおいて、なぜこのようなことになっているのか不思議だ、というような話は、大体何か理由があってそうなっている。
例えば、ここ30年ほどの国際的な課税状況を見ていると、明らかに法人税が低くなり、その分を消費税で穴埋めしている。正直なところ、大企業を中心に様々なテクニックを駆使して税逃れをする、という傾向は強まっている。実は和光市もそれで苦しんできた。一方で、各国とも、消費税は上がり、負担感も強まっている。
では、大企業により強力に課税して、その分消費税の負担を減らせばよいのではないかということは、普通の人間なら誰でも思いつくことである。
しかし、現実はその真逆に行っている。なぜそうなってしまうのかというと、大企業や高所得者は、税を逃れるための様々なテクニックを駆使するし、また、それを受け入れるタックスヘイブンという国があるからである。国際的に協調して税制を整えたらどうだ、ということも普通の人間なら誰でも思いつく(もっとも、国際的な協調はより困難な時代である。これまた誰でも気づくことである)。
しかしながら、他国に特定の税制を強要するということはなかなか難しい。極論を言うと、アメリカが核兵器で脅迫したとしても、うまくいくとは限らないのである。
つまり、様々な「おかしいよな」「あるべき姿と違うよな」という話には、大体できない理由があったりしてそうなっているのである。
もちろん、できない理由を鵜呑みにして放置するのであれば、政治には全く存在意義がないことになる。容易ではない現状を踏まえて、より、ましな実務を求めて工夫をしたり改善をすることが政治家には求められている。
当然のことながら与党はそれがわかっているから正面からそれに対応せずに、弥縫策により個別対応してきたわけである。あくまでも弥縫策である。
野党は責任はないし、多くの野党は政権を取るなどさらさらないので、できないことをいかにもできるように単純化してわかりやすく宣伝するのである。
また、ポッと出の新興政党は、そもそも実務がわかっていないので「僕の考えたすごい発明政治」を安易に訴えてしまうが、実務がわかっている人にとっては「だから素人とは」と言うことになるわけである。
では何を信じて、何を基準に政治家や政党を選べば良いのだろうか。それはもう、明確な基準等で語れるものではない。
ただ、組織の中に一定の行政の実務経験や、政治家としての実務経験がある人が揃っていないと、非現実的なことを訴えた上で、結局任期を無駄に過ごすと言うことになってしまうだろう。
大企業に多く課税し、消費税を下げる、と主張している政党のうち、具体的な手順や実務を掲げない政党は信用できない。
私自身、そのようなことが可能なのであれば実現するべきだと考えている。
しかし、それは容易なことではない。ただ、弥縫策の与党とどっちがいいかというとどっこいどっこいかもしれない。結局のところは個人を見るしかない。
できないことをできるように公約する政治家は嘘つきなので、地獄の火の中に放り込みましょう。
追記 技術的な話ですが、まあまあイケてる解として消費税増税があります。赤字にしてある企業(これがめちゃくちゃ多い)でも消費税は払いますし、金持ちはやはり、より多くの消費をしますので。ちなみに逆進性云々は分かっていますので、いちいちご指摘いただかなくても結構です。
図はすべて 諸富徹(2020)「"金持ちほど税金を払わなくていい"世界中で"富裕層への減税"が進む深刻な理由~ますます広がる"課税格差"のなぜ」プレジデントオンライン より