作家・土居豊の批評 その他の文章 -4ページ目

教育ジャンル23位にランクイン!→ ”大阪府立池田高校吹奏楽部第59回定期演奏会を聴く”

大阪府立池田高校吹奏楽部の定演を聴きに行った記事が、アメブロ教育ジャンル23位!

お読みいただいた皆様、ありがとうございます。

 

 

大阪府立池田高校吹奏楽部第59回定期演奏会を聴く

大阪府立池田高校吹奏楽部第59回定期演奏会を聴く

 

 

 

 

 昨年の第58回に続いて、今年も「いけすい」定演を聴いた。その感想と、昨今の吹奏楽部の演奏会について少し書く。

 プログラムは以下のようなものだった。

 

 

1部

メモリーズ・リフレイン(伊藤士恩)

大いなる約束の大地〜チンギス・ハーン(鈴木英史)

宇宙の音楽(スパーク)

 

2部

演劇でつなぐジブリの音楽

 

3部

サウス・ランパート・ストリート・パレード

レ・ミゼラブル

青春の輝き

 

アンコール

ウィ・アー・ザ・ワールド

ディープパープルメドレー

 

 

 

 

 

 

 昨年もほぼ同じような構成だった。この高校の吹奏楽部は大所帯で、今年度は1年生を加えると100名を超える。それでいてメンバーは和気藹々とした雰囲気であり、指導者の橋本翔太氏の個性もあるのだろうが、どの曲でもメロディ重視のロマンティックな音楽作りをしている。

 今回、注目したのは、演奏会の組み立てが他校の場合と大きく違う点だ。

 昨年の場合も同じだったが、この高校の吹奏楽部の演奏会では、3年生のメンバー、特に幹部(部長や〜〜係といった部内の役職)だった生徒たちを労うための工夫が凝らされている。特に今年の場合、3部では3年生だけの演奏「青春の輝き」を最後に持ってきて、それぞれソロをとらせて卒業演奏のように作ってあった。ある意味、非常にセンチメンタルであり、卒業ステージそのものだ。あくまでも3部は3年生が主役であり、しかも幹部生徒のソロだということをちゃんと紹介する心づかいもあった。

 アンコールの「ウイ・アー・ザ・ワールド」では、今回特に、入学後長く闘病した部員の紹介もして、会場の涙を誘った。そうしてアンコールの最後の「ディープパープルメドレー」では、1年生も加わって総勢100名以上の大迫力で演奏会を締めくくった。

 このように、「いけすい」の定演は構成が完成されている。

 他校と違うかもしれないのは、顧問教師の個性が前面に出ている点だ。これは、観客が身内であることを前提にしないと成り立たない。指揮をする先生ならともかく、部活動の顧問の教師という役割は、校内と部活動関係の場所でしか通用しないからだ。一般の客にとって、この高校の顧問が誰先生であるかは、ほぼ関心の外だ。

 さらにこの高校の場合、指導者の音楽性も大きく影響している。どこの高校でもそうだとはいえないのが、指導者の存在だ。昨今は公立学校でも吹奏楽部に音楽教師だけでなく、指導者が雇われる例が増えたかもしれない。それでも、演奏会で全ての曲(劇などを含むポップスステージを除いてだが)を指揮するパターンは、それほど多くないだろう。生徒指揮者の役割がどの程度あるのか不明だが、この高校の場合、指導者の音楽性がバンドを強く引っ張っていることは明らかだ。その一方、2部の劇ステージは毎年ノリが良く、この高校の昔からの伝統が受け継がれているように思える。

 このバンドは、指導者に鍛えられて基礎がしっかりできている。大編成の難しい楽曲でも、中音部がよく分離して聞こえ、低音部の支えも確かなものだ。トランペットとトロンボーンの金管群の響きも、鮮やかな音響で振り切れた演奏振りだ。

 

 

 

 

 

 さて、今回の演奏会で気づいたことがいくつかある。

 まず、この定演が今年の夏の吹奏楽コンクールのリハーサルにもなっている点だ。定演の会場、豊中市文化芸術センターは、実はコンクール会場でもあるのだ。この会場でやった今回の定演第1部で、池田高校吹奏楽部はコンクールの課題曲と自由曲(だと思われる)曲を演奏した。こういうラッキーな学校は「いけすい」だけではないかもしれないが、コンクール会場の同じホールで、課題曲も自由曲も演奏できる機会は得難い。

 もう一つは、演奏会の構成が非常にうまくできていることだ。吹奏楽専門の真面目で難しい曲は、第1部に集約させてある。2部は劇を含んでリラックスできるステージ。第3部はノリのいい曲で盛り上げ、ラストをお別れムードでしんみり浸らせる構成だ。

 ただ、これは前述したように、客がほぼ身内である前提のステージ作りであり、その分センチメンタルさを100%出せるような全振りが可能だと言える。もし一般客がもっと多い前提であれば、校内行事のような演出はおそらく邪魔になるかもしれないからだ。

 ちなみに、筆者自身もこの高校に若干の関係があるため、校内行事のノリでしんみりと別れの演出をされても、他の保護者や卒業生の観客と同じ気持ちで雰囲気に浸ることができた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

※参考記事

 

大阪府立高校の吹奏楽部の演奏会がこんなに変わった?それとも変わってない?〜大阪府立池田高校吹奏楽部定期演奏会

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12851214037.html

 

 

 


 

小川国夫没後17年 追悼

小川国夫没後17年 追悼

 

※「アポロンの島」と「スプートニクの恋人」〜エーゲ海をめぐる小川国夫と村上春樹の差

 

https://note.com/doiyutaka/n/n27489b4a2376

 

《ギリシャの同じ風景を描いた小川作品と村上作品、いずれかを読むなら迷うことなく小川作品を読みたい。だがそれは万人に向く選択ではなく、小説の読書に慣れた人にだけ通用する。まだそれほど小説を読んでいない人なら、村上作品が無難だ。ただもし『スプートニクの恋人』を読んで感心したのなら、ぜひ、同じミコノス島を背景に描いた小川国夫の『アポロンの島』を読んでみてほしい。》

 

《小川文学は文字通り、読者を選ぶ。そのわずかな気配を察知できる者だけに、小川国夫の異界の扉は開かれる。それに対して、村上春樹の小説に描かれる異界は、誰にでも広く開かれている。だからこそ日本語読者のみならず、多数の他国言語への翻訳でも広く読まれているのだ。

 その意味で小川国夫の小説は、他国言語への翻訳ではよほど文体に繊細な感覚のある訳者でないと、元の文章に隠された異界への通路を他国の読者に感じ取らせるのは至難だ。幸い、我々日本人読者なら、注意深く読み込めば、小川文学の奥深い道筋を辿ることは可能であろう。心ある読者はぜひ、これからも小川国夫の小説を読み、異界へ続く通路を探索しようではないか。》

 

 

小川国夫と接していた日々を思い起こすたび、懐かしさと慕わしさがこみ上げてくる。

 

※小川国夫に案内されて藤枝近郊の海岸へ

 

 

 

※小川国夫『悲しみの港』の舞台となった小川(こがわ)港

 

 

 

※小川国夫を訪ねていくとき、いつも待ち合わせに使った藤枝駅前の喫茶店

 

 

 

※街道筋に面した小川国夫邸

 

 

※小川邸で、小沢書店版「小川国夫全集」にサインをいただく

 

 

 

※小川国夫のお供をして飲み歩いたあとは、必ずカラオケ

 

 

 

 

 

 

 

※過去記事

 

土居豊の文芸批評 特別編

【(追悼)小川国夫没後16年、今の若い人に薦める小川作品】

https://note.com/doiyutaka/n/n619268c7feb8

 

 

小川国夫没後15年

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12797439580.html

 

 

来年で没後15年、小川国夫を読む

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12736290617.html

 

 

※没後10年の記事

小川国夫の命日に寄せて 小川国夫没後10年・エッセイ「小川国夫のいた風景」

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12366773822.html

 

 

※筆者の小川国夫に関するブログ

作家・小川国夫の命日(4月8日)によせて

http://ameblo.jp/takashihara/entry-11507605937.html

 

 

小川国夫 没後17年

「アポロンの島」と「スプートニクの恋人」〜エーゲ海をめぐる小川国夫と村上春樹の差

(小川国夫 没後17年)

 

https://note.com/doiyutaka/n/n27489b4a2376

 

 

《村上春樹の描いたエーゲ海、ミコノス島(をモデルとしたらしき)島には、異国の臭いがない。一方、小川国夫が同じ島を描くと、「異国」どころか「異界」の香りが立つ。》

 

 

 

 

 

※過去記事

土居豊の文芸批評 特別編

【(追悼)小川国夫没後16年、今の若い人に薦める小川作品】

https://note.com/doiyutaka/n/n619268c7feb8

 

※筆者の小川国夫に関するブログ

作家・小川国夫の命日(4月8日)によせて

http://ameblo.jp/takashihara/entry-11507605937.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※文芸批評

マガジン「土居豊の文芸批評」

https://note.com/doiyutaka/m/m8acfd4c1e7cc

 

作家・土居豊が「文芸批評」として各種ジャンルの作品を批評します。

マガジンとしてまとめる記事は、有料記事です。まとめ読みができるのと、記事単独で買うより安くなります。

母校の定演に参加した