最終回!【消滅した大阪の公立楽団】その4「公立学校の〈吹奏楽部〉は将来、消滅する」
シリーズ最終回!
作家・土居豊の音楽批評特別編【消滅した大阪の公立楽団】
その4「公立学校の〈吹奏楽部〉は将来、消滅する」
※前段
その3「日本唯一の公立吹奏楽団をあっさり切り捨てた大阪市の愚行」
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12954979953.html
このシリーズの最終回だが、公立学校の〈吹奏楽部〉は将来消滅する、などと物騒なタイトルを書いたのは、これが筆者の結論だからだ。もちろん、論拠はある。先に、箇条書きにしておこう。
(1)日本の公立学校の「部活」は現在、外部委託が進んでいる
(2)部活の中でも多額の予算が必要な「吹奏楽部」は公立学校で維持できなくなる
(3)そもそも吹奏楽は資金の乏しい中でも音楽を楽しむためのものだった
(4)日本の戦後教育の中で肥大化した「吹奏楽部」の様式は、21世紀の日本では維持できなくなる
結論代わりの予想として、突飛なようだが、日本の公立学校の「吹奏楽部」は消滅し(外部委託され)、少人数の「ブラスバンド部」が残るだろう。
以上のことを、簡潔に説明していく。
(1)日本の公立学校の「部活」は現在、外部委託が進んでいる
これは、もともと日本の公立学校の「部活動」の成り立ちが、教員のボランティアに依存して成長してきた当然の結果だ。現状、学校現場には「働き方改革」が浸透し、教員はボランティアの部活顧問を拒否できるようになってきた。年間通じて活動内容が多い「吹奏楽部」は、野球部などの運動系部活に負けないぐらい、顧問の教員の負担が重い。したがって、今後は吹奏楽をやりたい生徒は市民バンドなどとの合併で、外部での活動に移行していくだろう。
(2)部活の中でも多額の予算が必要な「吹奏楽部」は公立学校で維持できなくなる
一方で、私立学校は潤沢な予算を「部活」に投入できるので、学校を世間に向けて宣伝できる優秀な「吹奏楽部」を、今後も維持しようとするだろう。どうしても学校で吹奏楽部に入りたい子どもは、有名な私立学校を目指すようになる(現状も、すでにそうなっている)。
(3)そもそも吹奏楽は資金の乏しい中でも音楽を楽しむためのものだった
このことは、意外に見落とされているのだが、吹奏楽の先祖である軍楽隊やブラスバンドは、なるべく安価に楽器をそろえられる利点を活かして、できあがってきた。軍楽隊の場合はもちろん、悪天候の中でも演奏できる能力が要求されたため、弦楽器ではなく管楽器で構成された。
英国などで発展したブラスバンドは、文字通り「ブラス(金管)」のバンドで、安い楽器でも大勢で演奏を楽しめる点が特徴だった。だから、英国ブラスバンドには金管楽器でも特に高価になるフレンチ・ホルンは含まれない。
ついでながら、米国で発展したスウィング・ジャズでも、主な楽器にフレンチ・ホルンが含まれないのは同じ理由だろうと考えられる。前世紀初頭の黒人たちが、比較的安価な管楽器を手にして音楽を作り上げてきた様式は、英国ブラスバンドの場合とよく似ている。
(4)日本の戦後教育の中で肥大化した「吹奏楽部」の様式は、21世紀の日本では維持できなくなる
したがって、現在、盛んに行われている「全日本吹奏楽コンクール」のような、高価な楽器を大量に用いた演奏様式は、将来の公立学校の部活としては不可能になるだろう。一部の富裕な私立学校や民間バンドで現在の吹奏楽様式は守られるかもしれないが、学校のバンドとしてはもっと簡素な様式に回帰すると予想する。故に、日本の公立学校の「吹奏楽部」は消滅し、少人数の「ブラスバンド部」が残ると予想するのである。
そもそもだが、戦後日本の「吹部」は、初めはどこも「ブラスバンド部」だったはずだ。英国ブラスバンドのように金管と打楽器だけで構成されているわけではないが、木管を交えての少人数バンドを、日本の学校現場で「ブラスバンド」と呼んだのだ。それを略して「ブラバン」と一般に呼ばれていた。現在では、「吹部」と縮めて呼ぶが、昭和の頃は「ブラバン」というのが一般的だった。
そんな将来の「ブラバン」は、おそらく最小限の木管と、比較的安価な金管楽器、基本的な打楽器で構成されるに違いない。現在、学校の吹奏楽では必須の金管楽器の中で、高価なフレンチ・ホルンは使われなくなり、戦後すぐの日本の「ブラバン」のように、アルト・ホルン(あるいはメロホン)が使われるだろう。金管の構成は英国ブラスバンドに近くなり、そこに比較的安価に入手できるクラリネット、フルート、サックスが加わる、シンプルなバンドに変化していくだろう。
このようにある意味悲観的な予想を結論としたのは、現在の公立高校のとある吹奏楽部をこの1年ほど、生徒に混じって観察した結果からである。
公立高校としてはその自治体内でも有数の人気校で、数多くある部活での成績も優秀であり、地元だけでなく通学可能な範囲から多数の受験生が集まる。入試の競争倍率は自治体内で常に上位であり、そこの吹奏楽部も古い伝統を誇る人気クラブである。
にもかかわらず、楽器事情は実に大変で、現在の標準的な吹奏楽に必要な楽器は備品としてある程度キープされているが、どれも非常に古くてあと何年「保つか?」という状態だ。
筆者は個人的に現役生徒に頼んで調査したのだが、高価な金管楽器の筆頭であるフレンチ・ホルンは、学校備品のものは古くて、いつまでまともに使えるか怪しいものが多い。中には完全に骨董品のホルンもあり、それらを総動員してかろうじて人数分の楽器を維持している。
他の金管楽器も似たような状況で、木管については、例えばクラリネットなどは、生徒個人で「楽器を買う」前提でそのパートに配属されるという話だ。
この自治体の公立高校予算は年々傾斜配分されつつあり、選ばれた一部の公立高校と、いずれ統廃合される可能性の高い高校とで、自治体からの扱いの差は部外者から見ても明らかにわかるほどだ。
この自治体は、日本全体としては経済的に上位にある。それでもこういった状態なので、いずれ日本全体で公立学校の「吹奏楽部」が立ち行かなくなることは、容易に想像できる。
そういうわけで、昭和から平成にかけて興隆を誇った日本の独特の学校吹奏楽という音楽ジャンルも、この先変化していくことだろう。ただ、そのこと自体は、悲しむべきでもない。音楽文化は時代を反映するものだからだ。
最後に、戯言だが、人気アニメ『響け!ユーフォニアム』のような大編成の吹奏楽部の物語が、この先、古典として22世紀まで視聴されているとするなら、未来の鑑賞者はその贅沢な楽器編成にさぞ驚くことだろう。
(この稿、終わり)
※前段まで
作家・土居豊の音楽批評特別編【消滅した大阪の公立楽団】
その1「大阪府音」を知ってますか?
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その2「大阪センチュリー交響楽団と、日本センチュリー響は実は同じ楽団」
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その3「日本唯一の公立吹奏楽団をあっさり切り捨てた大阪市の愚行」
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※筆者がゴーストライターで特集記事を書いた号の吹奏楽専門誌
「エプスタイン事件」、メーソンやSSなど古来からの秘密結社の仕組みを応用している?
調査結果公開された「エプスタイン事件」、メーソンやSSなど古来からの秘密結社の仕組みを応用している?
※米国の公式調査資料
https://www.justice.gov/epstein
BBC報道
https://www.bbc.com/japanese/articles/c8x9nrd29z8o
CNN報道
https://www.cnn.co.jp/usa/35243404.html
ジェフリー・エプスタイン : 億万長者の顔をした怪物
ジュリー・K・ブラウン著 ; 依田光江訳
ハーパーコリンズ・ジャパン, 2022.3
https://ci.nii.ac.jp/ncid/BC13361633
文春記事
https://bunshun.jp/articles/-/81428
https://bunshun.jp/articles/-/81429
https://bunshun.jp/articles/-/81430
https://bunshun.jp/articles/-/81431
ネットで話題の「エプスタイン事件」調査結果報告について、詳細には読んでいないが、報告についてのさわりを読むだけでも、筆者には思い当たる特徴があった。それは秘密結社の仕組みだ。
古くはフリーメーソン、20世紀にはナチのSSなど、秘密結社的な組織には、共犯関係によって結束を固める方法がある。
エプスタイン事件の場合、その目的がいまだよくわからないが、超富裕層ばかりが集まって、共犯関係によって結束を計っていることは明白だ。
ネットでは、この事件の内幕を暴露しようとした映画に、故キューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』があるという説も書かれていた。あの映画の場合は、原作がシュニッツラーであるため、そうとばかりもいえないが、映画の中でやっていることは確かに似ている。
シュニッツラー『夢小説』
共犯関係で結束を図る例には、古くはドストエフスキー『悪霊』もあり、欧米の秘密組織ノウハウとしては、古くからあったのではないかと思われる。
今回のエプスタイン事件の場合、内容があまりにおぞましいため、調べる気がなかなか起こらない。だが、この事件が単なる小児性愛やサディズムの問題ではないことは、はっきり認識するべきであろう。行われた犯罪行為の中身が目的なのではなく、おそらくは口封じと秘密の保持、権力の保全が、この事件に関わった超富裕層たちの共通の目的なのだと考える。
ところで、筆者がこの事件に注目したのには理由がある。規模はずいぶん小さいが、この事件と同じような案件をモチーフにしたミステリー小説を、筆者はかなり前に書いて上梓しているからだ。
この事件について何も知らないまま、似たような事件を小説で扱った自分に、我ながら感心している。鋭い着眼点だったのではあるまいか。
残念ながら、発売後、全く売れず、話題にもならず、それっきりになった小説だが、今なら、少しは読んでくれる人がいるかもしれない。
そこで、本作を筆者のnoteで期間限定で、前半だけ連載してみよう。
気になった方は、以下の各サイトからご購入ください。
↓
※『彼女たちのフーガ』土居豊 作
《元・高校教師で吹奏楽部顧問だった著者は、この小説の中に実話に近いエピソードを多数盛り込んでいる。本作に描かれる衝撃の事件に近いようなことは、今も起きているかもしれない。
この小説に描かれる吹部のメンバーたちは、爽やかでも清々しくもない。だが、その分、リアルである。10代の連中は、10代であるというだけでやっぱり愛すべき存在だ。》
BOOK☆WALKER版
kindle版
https://www.amazon.co.jp/dp/B07TV3R2DJ/ref=sr_1_1?qid=1561986237&s=digital-text&sr=1-1
【本作の内容について】
《高校吹部と学校教育界を知り尽くした著者による、初の長編ミステリー。
元・高校教師で吹奏楽部顧問だった著者は、この小説の中に実話に近いエピソードを多数盛り込んでいる。
もっとも、時代設定は少し昔なので、今の高校生たちや、高校の先生たち、教育委員会などがこの小説のままであるとはいえない。
けれど、本作に描かれる衝撃の事件に近いようなことは、今も起きているかもしれない。
小説中で描かれる吹奏楽部の姿も、かなり事実に近い。
ところで、最近、吹奏楽部を題材にした青春小説や漫画、アニメ、ドラマが次々と発表されている。
その一つのピークは2016年、『響け!ユーフォニアム』第2期と『ハルチカ』という吹奏楽アニメ作品が2つ揃い踏みしたことだ。
だが、高校の吹奏楽部の内実は、あんなに爽やかではない場合が多い。
著者自身が体験した数十年前の吹奏楽部でさえ、そうだった。ましてや、いまのようにコンクール至上主義に走る吹部が、あんなに清々しい物語で終始できるとは思えない。
かつて、吹奏楽はアニメやドラマ、映画の題材として敬遠されていた。あまりに登場人物が多くなること、管楽器を絵で表現する難しさ、などが理由だろう。
その流れが変わったのは、指揮者とピアニストの青春を描いた『のだめカンタービレ』からだと思われる。アニメ版もドラマ・映画版も、音楽描写が本格的で、多数の楽器や演奏風景を見事に再現していた。
筆者はかつて、吹奏楽ものの映像作品や小説、漫画をピックアップした雑誌記事の特集を担当したことがある。その誌面で自分が挙げた吹奏楽もの作品に負けじと、筆者自身も、音楽小説を書き続けてきた。
そんなわけで、本作は『響け!』と『ハルチカ』に負けない吹奏楽小説になった、と自負している。
2019年7月
『彼女たちのフーガ』 改訂版(旧版・『五月丘高校吹部日誌』)刊行に際して
土居豊》
作家・土居豊の音楽批評特別編【消滅した大阪の公立楽団】3「日本唯一の公立吹奏楽団」
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作家・土居豊の音楽批評特別編【消滅した大阪の公立楽団】
その3「日本唯一の公立吹奏楽団をあっさり切り捨てた大阪市の愚行」
※前段
その2「大阪センチュリー交響楽団と、日本センチュリー響は実は同じ楽団」
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12954869363.html
自治体直営のプロ吹奏楽団というものは、明治以来、いくつかあったようだが、昭和の戦後までずっと存続したのは、大阪府の大阪府音楽団と、大阪市の大阪市音楽団の二つだったようだ。府音が改組されて管弦楽団になってからは、大阪市音楽団は日本で唯一の自治体直営のプロ吹奏楽団だった。それが2008年の橋下徹・大阪府知事誕生以後、二重行政解消の掛け声や、文化芸術分野への税金支出を減らそうという主張の結果、大阪府の楽団支援削減に続いて、大阪市の公立楽団無用論がどんどん進められていった。結果的に、伝統ある大阪市音楽団は廃止され、紆余曲折ののちにOsaka Shionとして民間楽団に生まれ変わった。
その後、自助努力の成果で現在まで活動継続できているが、本当なら大阪市の楽団としてさらに発展しているはずだったのは、かえすがえすも惜しいことだった。
それというのも、大阪市音楽団は廃止になるまで、以下のように着実な活動ぶりを続けていて、大阪府内の子どもたちの音楽啓蒙だけでなく、世界的な吹奏楽曲の初演も熱心に行なっていたのだ。
※懐かしい大阪市音楽団の定期演奏会
※参考ブログ
(2005年8月)山下一史指揮・大阪市音楽団定期演奏会
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12556749974.html
※参考音源
ヴァンデルロースト-交響詩「スパルタクス」-大阪市音楽団
http://www.amazon.co.jp/dp/B00006LF5I
※参考音源
スパーク-宇宙の音楽-世界初演ライヴ-大阪市音楽団
http://www.amazon.co.jp/dp/B000BKTDPM
※この時の定演で、人気曲のスパーク『宇宙の音楽』が大阪で初演された
※スパーク自身による『宇宙の音楽』解説。作曲家自ら初演会場に立ち会っていた
この2005年初演の吹奏楽曲『宇宙の音楽』は、作曲家スパーク氏の人気ぶりも相まって、その後順調に吹奏楽レパートリーに定着した。
初演から20年後の2025年でも、大阪府吹奏楽コンクールでも自由曲として演奏されている。演奏した大阪府立池田高校吹奏楽部は、コンクールに先立って5月に大阪府豊中市の新しい市民ホール(文化芸術センター)で開催した定期演奏会でも演奏した。
ちなみに筆者は、池田高校によるスパーク『宇宙の音楽』をこの時の演奏と、夏のコンクールでの演奏、それも北摂予選と大阪府大会の2度、合計3回も聴いた。初演に立ち会っていた筆者としては、感慨深いものがあったのだ。
※参考ブログ
大阪府立池田高校吹奏楽部第59回定期演奏会を聴く
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12902164338.html
吹奏楽コンクール・大阪北摂の結果と感想、さらに批判と提言
その1
https://note.com/doiyutaka/n/nec1d607eae8b
その2
https://note.com/doiyutaka/n/nc98addb0faae
レビュー「吹奏楽コンクール大阪府大会」〜高校Aの3部を途中まで聴いた
https://doiyutaka.hatenadiary.org/entry/2025/08/10/121423
毎年、数多くの吹奏楽曲が作曲され、初演されるが、その中で10年、20年と生き残って演奏され続ける曲は多くはない。もちろん、それぞれの作曲者の人気度合いも影響するが、『宇宙の音楽』のようなやたら難しくて親しやすいとはいえない曲が、20年後も演奏会やコンクールで演奏されているのは貴重だ。この曲を初演した大阪市音楽団や指揮者の山下一史氏にとっても、一つの大きな成果だったといえるだろう。
そういった長年の音楽・芸術分野での貢献を全く考慮せず、伝統ある公立吹奏楽団をあっさり潰した政治判断は、長い目で見てやはりマイナスだったと言わざるを得ない。
今となっては、民間吹奏楽団としてのOsaka Shionが少しでも活躍の場を増やし、長く存続し続けることを願うのみである。
※2005年の大阪市の「たそがれコンサート」
※今となっては貴重な、故・秋山和慶指揮の大阪市音楽団の演奏
※参考ブログ
2012-01-20 17:37:32
吹奏楽日本一の大阪が、貴重なプロ吹奏楽団を潰すとは!
https://ameblo.jp/takashihara/entry-11141030894.html
引用
《吹奏楽日本一の大阪が、貴重なプロ吹奏楽団を潰すとは! 橋下大阪市長は、音楽に疎いのかもしれないが、大阪市の音楽団は、吹奏楽の世界では、非常にユニークかつ重要な存在である。日本にはプロの吹奏楽団というのは数えるほどしかないが、その中で、東京佼成ウィンドオーケストラやシエナウィンドオーケストラと並んで、稀有な楽団である。その一つのあらわれとして、世界で活躍中の吹奏楽作曲家の新作を、初演してきた。
子どもたちの吹奏楽活動の目標として、日本の誇るプロ楽団があるのは、いうまでもない。いいお手本があって、はじめて子どもたちは、いい演奏を目指してがんばるのである。世界で活躍する売れっ子作曲家の新曲を、大阪市音楽団が初演できるのも、日本で一番古いプロ吹奏楽団という伝統と実力があってのことなのだ。
残念ながら、吹奏楽団というものは、オーケストラ以上に、独立採算が難しい。それでも、吹奏楽団が、日本中の音楽好きの子どもたちや、吹奏楽ファンに愛されていることは、間違いのないところだ。行政の文化政策は、音楽文化を切り捨てるのではなく、さらに育成していくことにお金を使ってほしいと思う。》
※参考記事(2012年1月20日読売新聞)
【橋下市長、音楽団解散を示唆…財源は習い事券に
大阪市の橋下徹市長は19日、市役所で報道陣に対し、交響吹奏楽団「大阪市音楽団」の存廃について、「一から考える。存続の結論ありきでは考えない」と述べ、解散を検討することを明らかにした。同楽団は1923年に創設され、園児や児童向けの鑑賞会、中学高校での吹奏楽の指導などを行っている。市は運営費の約9割に当たる約4億3000万円(2010年度)を負担している。橋下市長は同日の市議会決算特別委員会で「(行政が)音楽団を抱える必要はない」と述べ、助成を打ち切る意向を表明。代わりに、浮いた財源などを原資に、子どもが学習塾代や習い事などに使えるクーポン券の支給制度を新設する考えを示した。】
ちなみに、日本は世界でも珍しい吹奏楽大国だが、ほとんどは学校や職場・市民の吹奏楽アマチュアの演奏である。実際に長く活動できているプロの吹奏楽団は日本には数えるほどで、それもバックに宗教団体があったり、スポンサーがある場合がほとんどだ。
次回、最終回では、日本の吹奏楽文化の今後について、まとめておく。
(次回に続く)
作家・土居豊の音楽批評【消滅した大阪の公立楽団】 その2「大阪センチュリー交響楽団
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作家・土居豊の音楽批評特別編【消滅した大阪の公立楽団】
その2「大阪センチュリー交響楽団と、日本センチュリー響は実は同じ楽団」
※前段
その1〜「大阪府音」を知ってますか?
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12954800447.html
前段で書いたように、全国でも珍しい大阪府の公立楽団だった大阪府音楽団は、オーケストラに発展改組され、大阪センチュリー交響楽団となった。この楽団については、筆者はあまり縁がなかった。
それというのも、当時、クラオタとしての筆者は、地元大阪の楽団では朝比奈隆指揮の大阪フィルハーモニー交響楽団にハマっていて、そのライバルとなった大阪センチュリー響の演奏会には、ほとんど行かなかった。
一方で、市民合唱団に入っていたので、大阪府内の4つ目のプロ・オケである大阪シンフォニカーとは、市民合唱の共演でたびたび一緒にステージに立った。しかしなぜかセンチュリー響とは、合唱の場面でもご縁がなかった。
それでも、新しい楽団の素晴らしい演奏ぶりは伝え聞いていた。同じ公立の交響楽団として、近隣には京都市交響楽団もあり、関西には公立の優れた楽団が、先発の老舗オーケストラの牙城を脅かす発展ぶりを見せていた。
筆者も、のちに指揮者の山下一史氏の取材で演奏会通いを繰り返すようになってから、山下氏が指揮した大阪センチュリー響の演奏を聴いた。
この時の演奏について、迂闊にも演奏評を書き残さなかったので、実際はどうだったか今ひとつ思い出せない。せっかく、ピアノのティエンポのサインももらえたのに、残念なことだ。けれど、山下一史氏の指揮するシューベルトの交響曲第8番(旧、9番)「ザ・グレート」については、満足のいく演奏だった記憶がある。当時、世間で流行りつつあった古楽器派の解釈が影響して、シューベルトの交響曲も、ハイドンやモーツァルトのように快速でアクセントを多用する演奏が増えていたのだが、山下氏は持ち前のロマン派的な演奏ぶりで、たっぷりとメロディーを歌わせる抒情的な演奏をしてくれたように記憶している。
※左のサインが、ティエンポのサイン
※当時のセンチュリー響は、このように座席表を載せてくれていて、演奏者の名前が分かりやすかった
また、大阪センチュリー響を、当時売れっ子だった女性指揮者・西本智実が指揮した演奏会にも行ったことがある。この時の演奏も、批評を残していないのだが、ブラームスの交響曲第1番は、この指揮者にはやや荷が重かったような印象だった。
※参考記事〜大阪センチュリー交響楽団について
(産経新聞9月25日)
【大阪センチュリー交響楽団、独自にスポンサー探し
大阪府の橋下徹知事が大阪センチュリー交響楽団への補助金支出に難色を示している問題で、同交響楽団が独自にスポンサーを探す方針であることが24日、分かった。知事との考え方の違いから「自立」の道を探ることになる。今月上旬に橋下知事とセンチュリー関係者が面会、意向を伝えて了解を得ているという。橋下知事はこれまで、府が補助金を支出する条件として、コンサートホールでの演奏活動よりも、学校や病院などを訪問して鑑賞会を行うなどの「直接サービス」を最優先させるよう訴えてきた。しかしセンチュリー側は「これまでも鑑賞会などを行ってきたが、人件費の保証もないまま、それらのサービスに特化することは非現実的」として、従来通り、ホールでの定期演奏会や依頼公演などの収益事業を継続したいとの意向を示していた。(後略)】
https://ameblo.jp/takashihara/entry-10364696691.html
《さて、話を大阪センチュリーにもどしますと、「直接サービス」に力を入れて、コンサートなどの「間接サービス」は二の次に、というのが知事の意見でしょう。しかし、これは本末転倒というものです。オーケストラが、本業であるコンサート演奏を後回しにして、出前サービスの演奏ばかりやっていたら、たちまち演奏の質は、がたおちになります。スポーツに例えると、わかりやすいと思います。たとえば、プロ野球選手が、本業である野球の試合を二の次にして、子どもへの野球教室ばかりやっていたら、プロとしての腕前は落ちる一方でしょう。残念ながら、出前演奏ばかりやらされるオーケストラは、本来の実力を失い、演奏の魅力を失います。そうなれば、出前される方も、レベルの低い音楽を聴かされて、別にうれしくない、ということになりかねません。
もし、大阪府に「本物の音楽演奏」を「出前」できるオーケストラが必要なら、「出前」の何倍もの労力を、本業であるコンサート演奏に注ぐ必要があります。もっとも、そもそも大阪府にオーケストラは不要、ということなら、なにをかいわんや、ですが。》
その後、大阪センチュリー響が大阪府から切り捨てられて、民間の楽団、日本センチュリー響となってからは、遅ればせながら演奏会に何度も行くようになった。
もちろん、かつての大阪府音楽団とは完全に別物になってしまったのだが、現在の日本センチュリー響を、筆者は特にその本拠地のある大阪府豊中市の市民、地元民として応援している。
以下、日本センチュリー響の筆者による演奏評をいくつか振り返っておく。
※筆者による日本センチュリー響の演奏評
2014年12月(演奏会評)日本センチュリー交響楽団創立記念日定期演奏会・飯森範親指揮、アラベラ・美步・シュタインバッハー(Vn独奏)
https://ameblo.jp/takashihara/entry-11962903357.html
2016年4月(演奏会評)飯森範親指揮・日本センチュリー交響楽団によるマーラー交響曲9番を聴く
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12148541718.html
2020年6月(演奏会評)「ハイドン・マラソン19」コロナ後初めてのフル編成オケ・演奏会の記録
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12605656856.html
※飯森範親の始めた「ハイドン・マラソン」は、全交響曲を網羅してすでに終了している
2020年12月(演奏会評)日本センチュリー交響楽団第251回定期演奏会 秋山和慶指揮、ブルックナー交響曲第4番
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12644770011.html
※秋山和慶は日本センチュリー響のアドバイザー就任後、程なく惜しくも没してしまった
※筆者は秋山和慶を長らく愛聴していたので、亡くなったのは非常に残念である
最後に、現在の日本センチュリー交響楽団は、大阪府音時代を含めて楽団誕生以来最高の人気を誇っているようだ。その理由は、なんといっても、世界的人気の作曲家・久石譲が同団の指揮者になったからだ。
久石譲といえばジブリ、誰でも「トトロ」の歌を歌えるはずだ。けれど、ジブリアニメの作曲家である久石譲と、オーケストラ指揮者としての彼とを、同列に評価することは難しい。実のところ、筆者は彼が指揮するようになってから、地元民ではあるが、日本センチュリー響の演奏会から足が遠のいている。
以下のように、超辛口の批評を書いて、音楽ファンに同団の久石譲指揮による演奏に警鐘を鳴らしたのだが、今でもこの記事がアメブロの中で高評価を得ているところを見ると、どうやら同じように違和感を覚えた聴衆が多かったのかもしれない。
※参考ブログ
(超辛口批評)久石譲指揮・日本センチュリー交響楽団のベト7、佐藤晴真のスメラ
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12699974266.html
第257回日本センチュリー交響楽団定期演奏会
久石譲 指揮
佐藤晴真 チェロ
久石譲:Encounter for String Orchestra
スメラ:チェロ協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調
とはいえ、大阪府音楽団以来、長い歴史のある同団が、このまま一時の人気に乗って本来のオーケストラとしての実力を失ってしまうことなく、飯森範親時代に「ハイドン・マラソン」で培った基本的なアンサンブル能力をしっかりと保持して、さらに優れた楽団へ発展していくことを、長年のファンとして切に願っている。
(次回は、大阪市音楽団について)
作家・土居豊の音楽批評特別編【消滅した大阪の公立楽団】 その1「大阪府音」を知ってますか?
作家・土居豊の音楽批評特別編【消滅した大阪の公立楽団】
その1〜「大阪府音」を知ってますか?
現在、大阪府と大阪市で、大阪維新の会の代表である吉村府知事と、同じく維新の会の横山市長が、ちょうど高市総理の仕掛けた解散総選挙に合わせて同時選挙を仕掛けている。すでに2度も住民投票で否定された大阪都構想を、3回目の住民投票に持ち込みたい思惑だという。筆者は大阪府の生まれ育ちだが、2008年の橋下徹大阪府知事時代以来、橋下府政とその後の維新の会による大阪府支配の進行に一貫して反対してきた。その大きな理由の一つは、橋下&維新による大阪の伝統ある文化芸術の否定と切り捨て政策だ。
この突然のダブル(大阪市はトリプル)選挙の機会に、過去の筆者の記事を引用しつつ、かつて大阪にあった音楽文化の伝統について、語っておきたい。
今となっては、大阪の音楽の伝統として吹奏楽(と管弦楽)があったと言っても、信じないかもしれない。だが、事実なのだ。日本で唯一、公立吹奏楽団が二つもあったのが大阪府と大阪市であり、大阪府民の子どもたちは自分たちの公立楽団から、贅沢な音楽指導とお手本演奏を無料(あるいは格安で)で享受できた。もちろん、今でも大阪府には、大阪府立淀川工科高校吹奏楽部のような、公立でありながら全国一の実力を誇る学生吹奏楽の伝統がある。そういう音楽の伝統は、やはり公立楽団による教育効果が大きかったのは間違いない。
ところが、2008年、橋下府知事になって以来、「税金の無駄」という切り捨てで、大阪府立の交響楽団である大阪センチュリー交響楽団(大阪府音楽団の後継)が府から切り離され、大阪市音楽団も大阪市から切り捨てられた。両楽団は、幸いその後も民間団体として活動を継続している。だが、公立楽団だった両団が大阪府民に提供できていた音楽貢献は、やはり目減りしたと言わざるをえない。
さらに、橋下府知事以後の大阪維新の会の府政、教育改悪によって、大阪府立高校の数がどんどん減らされる一方、私立高校授業料無償の政策で、無理な競合を強いられた大阪の公立高校は次々統廃合の対象になっていった。吹奏楽部が全国一の実力を誇る府立淀川工科高校も、定員割れを起こしている有様だ。もしこのまま、大阪府独自の条例に従って定員割れのために統廃合されるとしたら、全国一の吹奏楽部も先々、消滅しかねない。
※参考ブログ
大阪府立高校、定員割れ多数。なんと寝屋川・八尾・鳳も!
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12889155541.html
2024年大阪府立高校の異常な倍率差、維新の会教育改悪はもう取り返しがつかない大混乱
https://ameblo.jp/takashihara/entry-12843455985.html
大阪府の子どもたちがかつて享受できていた音楽文化の豊穣さが、このままでは失われていくかもしれない。民間団体である日本センチュリー響(元の大阪センチュリー響・大阪府音楽団)と、Osaka Shion(元の大阪市音楽団)も、経営悪化していけば先行き、存続し続けられるとは限らない。
さて、このような前提の上で、今回からしばらく、大阪の二つの公立音楽団について語っておきたい。
まず、今となっては忘れられているだろう、大阪府音楽団、のちの大阪センチュリー響、現在の日本センチュリー響の前身について、筆者といささかの縁があったことを書いていく。
※資料
大阪府音楽団
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/35770/201301siryo.pdf
日本センチュリー交響楽団
※参考映像
https://youtu.be/FSmaTep8C0Q?si=DeL2PoDdy7lqYidh
《大阪センチュリー交響楽団の前身である大阪府音楽団は1952年(昭和27年)11月に大阪府により設立されました。府音(ふおん)は数少ないプロの吹奏楽団として長年活躍し親しまれていましたが、様々な理由により1989年(平成元年)3月をもって廃止が決定されました。その後同年5月に大阪府文化振興財団が設立され、大阪センチュリー交響楽団発足へつながってゆきます。
厳正なる内部オーディションにより、大阪府音楽団のメンバーも若干名採用となりました。
今回の映像は、大阪府音楽団最後の定期演奏会のものとなります。残念ながら映像の質はあまり良くなく、01:19:27あたりで音声がなくなっています。ご了承ください。
00:02:35 W.H.ヒル/聖アンソニー・バリエーションズ
00:11:38 R.ジェイガー/ダイアモンドバリエーションズ
00:27:45 A.リード/金管楽器と打楽器のための交響曲
00:51:57 阿部亮太郎/嵌め込み故郷
01:03:10 O.リード/メキシコの祭り》
この大阪府音楽団がまだ活躍中だった時代に、筆者は大阪府立の高校で吹奏楽部に入っていた。
当時の大阪の公立高校吹奏楽部は、全部で9つの学区に分かれている中の、偏差値の高い伝統校を中心に、各自治体でそれぞれ定期演奏会をやったり合同演奏を繰り広げていた。現在の高校吹奏楽のように、別雇用の指導者による指揮を実現している吹奏楽部は例が少なく、多くはOBOGがボランティアで指導したり、音楽教師が自ら指揮を振ったりしていた。そんな中で、当時の第2学区のトップ3校の一つだった筆者の母校は、生徒自身で指揮者を選び、時々OBOGに指導してもらいながら、独自に演奏会を開催したりしていた。
そんな母校に、偶然、当時の大阪府音楽団で指揮者だった人物が、高校の事務長として転勤してきたのだ。この人物は、今ではほぼ忘却されているが、かつては吹奏楽の模範演奏でレコードでも演奏会でも有名だった。そんな「偉い」先生が転勤してきて、母校の吹奏楽部の部員たちは当然、この先生を指導者に仰ぐだろうと思われた。ところが、この当時(昭和60年代・1980年代)の母校の気風は、学生自治の伝統を受け継いで、教師や指導者の指導に素直に従うということを拒否しがちだった。
そんなわけで、母校吹奏楽部は、有名な井町先生の指導を、かなり嫌々ながら受け入れたものの、どうしてもソリが合わなかったようで、この指導体制は数年で終わってしまった。
それでも、今となっては、当時の吹奏楽界で名の通った井町昭の指揮による演奏が記録されたことは、大阪の吹奏楽演奏の歴史に1ページを刻んだといえよう。
※井町昭
https://www.kansai-sui-kourosya.com/功労者紹介/
井町 昭(いまちあきら)
大阪府音楽団指揮者
歴代指揮者の後を受け継ぎ、大阪府音楽団のレベルアップに貢献。
参考音源
https://www.youtube.com/watch?v=qfOdeZOx5l0
吹奏楽名曲コレクション6 吹奏楽オリジナル名曲集 Vol.1
https://www.hmv.co.jp/artist_Various_000000000000075/item_吹奏楽名曲コレクション6-吹奏楽オリジナル名曲集-Vol-1_8452151
その後、大阪府音楽団はオーケストラに発展改組され、大阪センチュリー交響楽団となった。
次回は、このオケについて続ける。
(続く)



























