作家・土居豊の批評 その他の文章 -4ページ目

映画『すずめの戸締まり』評 ~ 本作は「星を追う子ども」のリベンジだ

映画『すずめの戸締まり』評 ~ 本作は「星を追う子ども」のリベンジだ

 

 

(以下、ネタバレします)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.11の映画であり、新海誠の震災3部作として総決算だといえる。

前2作と比べて、震災と被災者の思いを掘り下げる深度が半端なく深い。だからアニメ作品としてのエンタメ性がかなり割り引かれている。

細かいところから言うと、主役のすずめ自身のキャラクターが明確になっていない。彼女は、災厄に立ち向かうために作られた不自然なキャラクターに見える。同じく主役級の草太さん、彼も完全に役柄のために作られた人造人間的なキャラクターだ。この主役カップル2人が役柄に従属してしまっている分を、ドラマ面で補ってあまりあるのが、すずめのおばさんの環(たまき)と、草太の友人・芹澤くんだ。

中盤以降、ロードムービーとして東北へ向かうこの4人の中で、主役カップルが異世界と戦っている傍らで、環おばさんと芹澤くんは、実にリアルで存在感あるキャラクターとなっている。この2人がなければ、映画自体が嘘くさくみえただろう。

すずめの旅を助けてくれる四国の彼女と、神戸の親子が見事に脇を固めているし、環に惚れている職場の彼もいい。総じて本作は、脇役が生き生きとして作品を支えている。

その分、本筋は、嘘くさくなってしまう瀬戸際でからくもリアリティをキープしている。この物語自体が、辻褄合わせの無理矢理な作りになるギリギリのところで成り立っている。

新海誠はやはり限りなくプライベートな物語を書く創作者であり、風呂敷を広げすぎた場合はよく失敗する。本作は、危うくそうなるところをバランスを保った。

その意味で、新海誠のこれまでの唯一の失敗作といわれる「星を追う子ども」の後継作に、危うくなってしまうところだったが、絶妙なバランスで、本作は見事に「星を追う子ども」のリベンジを果たした。

 

最後に、そろそろ本作もネタバレ解禁のようで、批評記事や内容に触れた記事が出てきた。だが、もしまだ観ていない人は、可能な限り予備知識なしで観ることをおすすめする。

 

※参考記事

https://www.nikkansports.com/general/news/202212100000973.html

 

この記事によると、本作は、

《同作は、震災で母親を亡くした17歳の鈴芽(すずめ)が主人公。全国を巡り、地震を引き起こす「扉」を閉じていく冒険物語。》

なのだそうだ。

これ、間違えてない? それとも、地震を引き起こす「あれ」の正体をネタばらししないために、あえて間違えて書いてるの? だがその割には、「震災で母を亡くした」という重大なネタバレをやっている。単に、記者さんが映画の内容を理解できなかっただけかな。

2022年11月8日 皆既月食と天王星蝕

2022年11月8日 皆既月食と天王星蝕

 

https://youtube.com/shorts/NAdgLfvEVwo?feature=share

 

 

皆既月食が、400年ぶりに惑星蝕と重なる。天王星が、月蝕の後ろに。

皆既月食と、惑星蝕が同時に見られるのは、400年ぶりとのことだが、天王星の場合、400年前には見られなかったのでは?

とすると、今回は、人類初の天王星蝕と皆既月食ということでは?

1700年代以前は、天王星は発見されてなかったのなら、占星術では、どういう扱いだったのだろう?

土星までしかない形で、占星術が考えられていたのだろうか?

 

ともあれ、

皆既月食をリアルタイムで眺めている人とは、わかりあえる気がする。

天王星蝕に注目している人とは、もっと深く理解しあえる気がする。

これは、何百年も前からの真実だ。科学はそうやって国境を超えて人々を繋ぎ合わせてきた。

 

写真

(1)月食始まる前

 

(2)皆既月食中

 

(3)木星とコラボ

 

(4)皆既月食から姿をあらわす。火星とのコラボ

 

Jアラートだと、ふざけるな!

Jアラートだと、ふざけるな!と言いたい。

NHKをはじめ、民放まで一斉に特番に切り替わる、なんだこの露骨な煽りは。

国会始まってすぐ、忙しい朝にこの空騒ぎ。これで防衛費爆増を正当化するシナリオだろう? 危機を煽って防衛予算を青天井にしようとする姑息さ。

無能な岸田に日本は任せられない。

(写真はNHK)

 

 

 

ところで、Jアラートをまじめに聞いて屋内や地下に避難していた人には、遅刻証明は出るのか? なんと、新幹線まで停めやがった。忙しい朝に空騒ぎさせて、危機を煽って防衛予算を国会に認めさせるやり口は、安倍晋三がかつて何度もやった手口だ。騙されてはいけない。

結局、アラート鳴らした時にはミサイルは太平洋へ通過したのだそうだ。またこのパターン。そもそもミサイルが日本上空を通過するのは弾道が高いだろうから、その時点で屋内避難の必要はないとわかるはず。なのに危機を煽って防衛予算を正当化する、何回このやり口を繰り返すのか。

 

(動画はNHKニュース)

 

https://youtu.be/zlkXbxdMQYQ

 

https://youtu.be/DCDzg9SRMMg

 

北朝鮮からの弾道ミサイルで本当に日本が攻撃されるなら、岸田内閣がやるべきは、旧統一教会の教祖さまにお願いして北朝鮮に交渉仲介してもらうことだ。政権に統一教会どっぷりのやつらが大勢いるんだから、さっさと教祖さまに電話したらどうだ? そもそも、そのための自民党だったはず。

 

会見で、防衛大臣が「反撃能力」?とコメントしていた。中距離弾道ミサイル、それも潜水艦発射に対する反撃とは? 日本の自衛隊にそんな攻撃能力を持たせていいはずがない。それをやるなら国防軍に改変しなければ。だが、その国民的合意はない。

今回、ミサイルは3千キロ離れた公海上に着弾。それを東北(NHK)や岩手県(民放報道)から3千キロ離れたなどと表現するのはまやかし。フェイクだ。むしろ、グアムから〜〜キロ、というべき。このミサイルは岩手県や東北を狙ったものではないからだ。

NHKの報道で、今回自衛隊はミサイルの破壊行動を取らなかった、と言っていたが、宇宙空間を通過する中距離弾道弾を破壊する手段を、自衛隊は持っていないのでは?それとも密かに上空に防衛衛星でも持っているのか?

 

最後に、

Jアラートを岸田内閣、自公政権が国会対策やスキャンダル潰しに使うこのやり口がなぜダメかというと、「オオカミ少年」効果になるからだ。

いざ本当に危機が迫ったとき、またか、と我々が危機感を持てなくなる。

実際、太平洋戦争中の空襲警報も、たび重なると人々はいちいち逃げなくなった。安倍政権以来、Jアラートを鳴らし過ぎたせいで、もはや本当に危険だとは思えなくなった。そう思わせた安倍政権とその後継の自公政権の罪は重い。

今まさに統一教会疑惑の渦中にある、萩生田元文科大臣を決して許さない

今まさに統一教会疑惑の渦中にある、萩生田元文科大臣を決して許さない

 

#大学入試に怒る保護者 

というタグで、

#共通テスト

を延期してセンター試験に戻すようにネット活動した2年前、当時の文科大臣が、今まさに統一教会疑惑が出ている萩生田氏だった。

この人を、私は決して許さない。

なぜなら、自分の子どもがまさしく共通テスト初年度受験で、散々苦労させられたからだ。

ついには、コロナ感染拡大の渦中で、感染対策もろくにされないままの危険な受験をやらされた。ちょうど今、20歳の学年だ。

彼ら彼女らには、新成人としていよいよこれから参政権を十分に行使してほしいのだが、ぜひとも、2年前の萩生田大臣や安倍晋三内閣による、大学受験大混乱を忘れないでほしい。当時、自分たちがどんな苦労を強いられたか思い出してほしい。

 

 

※参考

萩生田文科大臣の #身の丈に合った受験 発言を許さず、#大学入学共通テスト中止 を!

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12539239827.html

 

引用

《萩生田大臣は、予備校と大学受験本番を並べて話をそらしている。

次に、裕福な家庭は有利、と明言している。

さらに、英語民間試験利用について、決定的な「身の丈」発言が次に来る。

発言の最大の問題点はこれだ。

萩生田大臣は、英語民間試験利用を「2回を選んで」と言っているが、実際は、1回も受けられずに国公立大の受験機会を失うパターンが想定されるのだ。その制度上の欠陥を、文科大臣は知っていてごまかしているのだろうか。

この英語民間試験利用の仕組みは、事実上、経済的に苦しい高校生が国公立大受験するのを門前払いしている。

この動画で、萩生田文科大臣の発言を追うと、

(1)「あいつ予備校通っててずるいよな」→(2)「裕福な家庭の子が回数受けてウォーミングアップ」→(3)「身の丈に合わせて、2回受けて」

と言う流れだ。

「身の丈に合わせて2回」と言うが、大学新共通テストの英語民間試験利用は、受験生が民間試験を2回とも受けられないかもしれない欠陥があり、制度自体が破綻している。つまり、大臣は「富裕な高校生はウォーミングアップできる」ことを認め、そうでない学生は「2回」受けろと言っているが、仕組みを理解していないのではないだろうか。英語民間試験利用の現状は、2回どころか一回も受けられず受験生が国公立大学の受験機会を奪われる可能性があるということを、知っていて発言しているのなら、ますます罪深い。

大学新共通テストが高校生の経済的格差を広げる結果になるのは明らかであり、根本的に間違った制度だ。

この動画での、

#身の丈に合った受験 という萩生田文科大臣の発言は、誤解の余地なく、高校生の家庭の経済的な身の丈のことを言ってる。言い換えると、経済的な「 #身のほどをわきまえて受験しろ 」という意味だ。裏返すと、経済的に「 #身のほど知らずな受験はするな 」という意味になる。そこに、萩生田の本音が透けて見える気がする。

萩生田文科大臣が、大学新共通テストについて破綻している事実を知っていてそう言っているなら、救いがない。大臣を、政権を交代させるしかない。》

 

※参考

実際に大学新共通テスト、英語民間試験利用に直面している現場の学生や先生、保護者からのDM公開を中心に、9月末から10月半ばまでの、様々な関連ツィートをまとめてみました。ツィート利用を許可いただけたら幸いです。

https://togetter.com/li/1419060

 

※参考

「大学入学共通テスト 英語民間試験導入を考える」(視点・論点)

2019年10月16日 (水)

立教大学 名誉教授 鳥飼 玖美子

https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/414086.html

 

※参考ブログ

大学新テスト英語民間試験の共通ID発行申込案内、TOEICが表に入っている!(まとめました)

 

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12527814444.html

 

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(1)土居豊の音楽小説『メロフォンとフレンチ』

 

https://bookwalker.jp/de974fa0d0-bb72-4f01-b665-cac9c7259fce/?_ga=2.224024991.523969655.1642153124-1513163038.1642040185

 

《楽器不足の中でステージを実現していく吹奏楽大好き高校生たちの友情と恋の青春》

 

※発売当時、ラブストーリー1位!

 

 

『メロフォンとフレンチ』あらすじ、キャラクター、作品背景などを紹介

https://note.com/doiyutaka/n/n64f59ad3b2f3

 

 

 

※関連記事

イチカシ吹部自殺事件をきっかけに、全国吹奏楽コンクールの異常な過熱と長時間練習の誤りを考える

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12747757096.html

 

【コロナ第7波、吹奏楽コンクールで棄権(コロナ感染と思われる)続出・甲子園の高校野球もコロナ感染続出で試合日程変更】

https://note.com/doiyutaka/n/nbbf2058fceed

 

 

 

 

(2)『メロフォンとフレンチ』の前作!音楽小説『ウィ・ガット・サマータイム!』(土居豊 作)

 

https://bookwalker.jp/de6c5f7f12-9f7d-4914-bd67-000c63cc50a8/?_ga=2.87758878.783377174.1586495988-1573749936.1586495988

 

《吹奏楽好きの方、ジャズ好きの方、80年代に学生時代を過ごした方、昭和の青春群像を懐かしみたい方、あるいは、これまでの吹奏楽もの小説に不満足な方、新しい吹奏楽ものを読みたい方、ぜひ!》

 

 

 

(3)土居豊の伝奇小説『禿(かぶろ)〜平家物語異聞1』

 

https://bookwalker.jp/de09e06e1b-9c35-43cd-96c5-92940653476e/?_ga=2.198801835.523969655.1642153124-1513163038.1642040185

 

《パンデミックの渦中、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、アニメ『平家物語』も放映。混迷の時代を生き抜く手がかりを人々は求めている。

誰もが中学校で一度は習った『平家物語』。世界が滅びに瀕しているような今、人々はもう一度、耳を傾けたくなったのだ》

 

 

 

(4)土居豊の学園ミステリー『彼女たちのフーガ』

 

https://bookwalker.jp/de30137cf7-e52e-47c7-be07-3df145638fc6/?_ga=2.178418338.783377174.1586495988-1573749936.1586495988

 

《元・高校教師で吹奏楽部顧問だった著者は、この小説の中に実話に近いエピソードを多数盛り込んでいる。本作に描かれる衝撃の事件に近いようなことは、今も起きているかもしれない。

この小説に描かれる吹部のメンバーたちは、爽やかでも清々しくもない。だが、その分、リアルである。10代の連中は、10代であるというだけでやっぱり愛すべき存在だ。》

 

 

 

(5)『供犠 トリオソナタ2』 土居豊 作

https://bookwalker.jp/deac474bfd-d064-4c37-a840-438a531bda9e/?_ga=2.111416066.783377174.1586495988-1573749936.1586495988

 

《青春のひと時をともに過ごした高校時代から十数年後、同級生は謎の教祖となっていた。彼の危険な行動がかつての仲間たちの人生を狂わせていく》

 

 

 

(6)『トリオソナタ1』 土居豊 作 

https://bookwalker.jp/de03452778-ac12-4e02-b0a9-570d8f9dfe06/?_ga=2.187924142.783377174.1586495988-1573749936.1586495988

 

《幻の昭和64年、20世紀末のウィーンに学ぶ若き音楽家たちの青春!》

 

ギャツビーはなぜグレートか?

ギャツビーはなぜグレートか?

 

 

この夏のシーズン、宝塚歌劇の「グレート・ギャツビー」はコロナによる休演で観ることができなかった。残念だ。

 

※参考記事

https://kageki.hankyu.co.jp/news/20220729_1.html

 

ちなみに、昨年の夏は、宙組【Musical『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』】を観劇した。

※過去記事

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12685886696.html

 

 

そこで、というのもおかしいが、以前から考えていたフィッツジェラルド『偉大なるギャツビー』(最初の映画化邦題は「華麗なるギャツビー」)に関して、ギャツビーはなぜグレートか?という考えを書いておきたい。

 

20世紀アメリカを代表する作家の一人であるフィッツジェラルドについては、『ギャツビー』という代表作の名を、村上春樹『ノルウェイの森』で知ったのが最初だった。

大学生だった当時、春樹作品を順々に読んでいく中で、春樹に大きな影響を与えたというフィッツジェラルドも、読んでみようと思った。しかしその頃は、もう一つピンと来なかったというのが正直なところだ。

その後、ロバート・レッドフォード主演のハリウッド映画『華麗なるギャツビー』を観て、一応は納得した。春樹が『ノルウェイの森』の中に重要なアイテムとして「ギャツビー」のモチーフを導入している意味も、なんとなくわかった気がした。

けれど、どうにも引っかかっていたのは、なぜあの主人公が「グレート」と呼ばれるのか?という点だった。

みじめなピエロの役どころで殺されてしまうギャツビーの、どこがグレート、偉大だというのだろう?

20代当時の自分には、そのあたりがしっくりこなかった。

けれど、今となってみればわかるのだ。

これは突飛なたとえに聞こえるだろうけど、ギャツビーが「グレート」だというのは、『ジョジョの奇妙な冒険』第4部における、東方仗助の口癖である「グレートだぜ」に、似ているのだ。

いや、これでは何を言っているのかわからないかもしれない。このたとえがピンとこない人には、もう一つ、例をあげよう。ギャツビーが「グレート」なのは、シューベルトの交響曲「ザ・グレート」に通じるのだ。

ますます意味不明だ、と言われそうだが、例に挙げたこれら2つの「グレート」は、高貴さ、黄金の心、というようなイメージに通じるのだ。

同じように、フィッツジェラルドの「ギャツビー」も、貧しい出自ながら、高貴な魂、黄金のような魂を持っている。

ハリウッド映画化でド派手に描かれた、ギャツビーの屋敷のパーティーや金づかいが荒いイメージが先行すると、彼の何がグレートだかわからなくなる。ただの田舎出身の成金に思えてしまう。

そういう点で、最初の映画化邦題の「華麗なるギャツビー」は、作品のイメージを大きくねじ曲げてしまった。

ギャツビーの生き様は、決して華麗なのではない。とことん愚直で、生真面目なのだ。あまりに愚直すぎて、最期は悲劇に終わる。生真面目すぎたゆえの悲劇、これは、フィッツジェラルドが生きた20世紀前半の時代の空気にマッチしていたに違いない。

けれど、それだけではない。「ギャツビー」の生き様、作品の醸し出す空気感は、どういうわけか、はるか時代を超えてまさに今、現代の日本にも、こわいぐらいにしっくり当てはまる。

ジェイ・ギャツビーという地方出身の青年の生真面目な生き方、高貴な魂のありようは、私が初めて作品に接した1990年代にはむしろ時代と真逆な感覚だった。その当時の自分がギャツビーという作品を理解できなかったのも、時代感覚とあまりに違いすぎたせいではなかったか、といまになって思う。

現在、21世紀前半の日本では、まさしくギャツビーのような、恵まれない出自であって高貴な、黄金の魂を持つ若者たちが大勢いる。このグレートな若者たちは、まるでフィッツジェラルドの描いたジェイ・ギャツビーそっくりだ。ギャツビー的な青年たちが、生真面目に、愚直に努力を重ね、夢を追い求めたあげくに破滅していく様子を、そこここに見かける。

フィッツジェラルド自身は想像もしなかっただろうけど、ギャツビーのグレートさは、21世紀の日本の若者に、その悲しすぎる悲劇とともに受け継がれてしまっているのだ。

最後にもう一つ、小説『グレート・ギャツビー』で最後の方に出てくる、ギャツビーの年老いた父が語る、子ども時代のジェイの習慣、子どもながらに向上心に溢れ、良い習慣を日夜努力しているその様子は、今の日本の子どもたちと同じだ。今の日本の子どもたちもまた、幼い頃から日夜お勉強に駆り立てられる。本来あるべき子ども時代の幸福な永遠の遊び時間の代わりに、細分化された課題と義務の時間割、スケジュールに縛られて、まるでジェイ・ギャツビー少年のように将来の出世に邁進する。

その先に、まさしくギャツビーのように生真面目ゆえの悲劇が待ち受けていると知らずに。

 

※参考

土居豊の村上春樹研究本

《本書では、村上春樹作品に引用された世界の名著を紹介しています。世界で愛読される村上春樹の小説を通じて、世界の有名文学のエッセンスをレクチャーする内容です。

村上春樹が折にふれて述べている「物語力」こそ、困難な時代を生き抜く力となるにちがいない、と筆者は考えています。》

 

村上春樹で味わう世界の名著 (土居豊)   

https://www.amazon.co.jp/dp/B06XMZPW3B/ref=cm_sw_r_tw_dp_FCHC4SCZN5A7CWF1CXH5

 

《第6章「『ノルウェイの森』より、村上春樹とフィッツジェラルド」》

 

 

2022年夏、ハルヒの聖地を久々に訪ねた

2022年夏、ハルヒの聖地を久々に訪ねた

 

今年、「一身上の都合で」(千反田える的に言ってみた)、しばらく対外活動ができなかった。

 

※出典:京アニのアニメ『氷菓』

 

「涼宮ハルヒ」にふさわしい、よく晴れた夏の日。聖地・西北を訪ねた。

 

 

この「にしきた公園」の時計塔も、今や完全に風景に溶け込んで、これがハルヒファンの熱意で復活したものとは、知られていないのではないか。

 

 

アニメ聖地に選ばれたこの場所、なぜか(大人の事情で)認定証が証券会社のウィンドーの中に設置されている。ハルヒのイラストが、すでに色あせてしまっている。

 

 

アニメに登場した場所から移転しているこの喫茶店、珈琲屋ドリームも、原作者の谷川流が常連だった頃とずいぶん変わったのだが、それでもママさんの豪快な接客と、ランチセットのお得感は変わらない。

 

 

 

それでも、この数年来の日本経済の危機が、ハルヒ聖地にもじわじわ悪影響をもたらしている。この老舗喫茶店も、数年来の珈琲豆の値上がりに、苦しめられている。さらに昨今の物価高が追い討ちをかける。

ファンとしては、これからもハルヒ聖地を応援していく。

 

※記念のTシャツ寄せ書き、珈琲屋ドリームのどこかに飾られています。探してみましょう!

 

 

※過去の記事より

まさかこの後、京アニがあんなことになるとは…  →「西宮が涼宮ハルヒの聖地に公式認定された」

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12609676702.html

 

 

※この動画は、アニメに描かれた旧店の移転前最後の日の記録です

谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』の文学散歩2

北口駅〜SOS団いつもの喫茶店 編

https://youtu.be/_IskRrrwRUE

 

谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』の文学散歩〜北高 編

https://youtu.be/boegdTtkvME

 

谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』の文学散歩3

長門有希の図書館 編

https://youtu.be/FdWkkTlQB1U

 

アニメ『涼宮ハルヒ』の聖地・兵庫県立西宮北高校の統廃合の報道について、雑観

アニメ『涼宮ハルヒ』の聖地・兵庫県立西宮北高校の統廃合の報道について、雑観

 

※参考記事

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202207/0015471893.shtml

 

(2022/7/15 11:10神戸新聞)

【涼宮ハルヒの「北高校」に再編の波 モデルの西宮北高が統合へ ファンの巡礼地どうなる?】

 

 

 

 

 

 

先に結論を言う。

兵庫県立の高校が統廃合されるというのは、政治選択の結果だ。兵庫県知事が維新の会の一派になってしまった時点で、こういう学校統廃合の流れは確定したといえる。

それについては、以下の筆者ブログ記事を参照していただければよい。

 

※参考ブログ

【2021年度大阪府公立高校入試の倍率、確定。高倍率と定員割れの格差を作ったのは維新の会の教育政策だ】

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12660782281.html

 

【2020年春の大阪府立高校の難関大学合格結果を考察した。この10年の維新の会による大阪府教育改革はこれでいいのか?】

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12589793890.html

 

 

【(まとめ)2019年の大阪府立高校入試と大学入試の結果で、維新の会教育改革失敗が証明された】

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12450639923.html

 

 

 

だが、それはそれとして、アニメの聖地が失われるというのは、世界中のファンにとって大いなる悲劇だ。

だからといって、兵庫県の県民の税金でできている公立高校の統廃合を、たまたま作品の舞台とされ、原作者の出身学校だからといって、第三者がどうこういえるものではない。

大人しく、あきらめるしかない。

むしろ、これまで、実在する学校をアニメの舞台にしてくれたことに感謝してみてはどうだろう?

というのも、たいていのアニメ作品の舞台とされる学校は、モデルではあっても架空の学校で、背景画もいろんな部分をつなぎ合わせてデフォルメされるのが常だ。

その点、原作者の出身高校であり、原作の描写にもそれらしい描き方がされている西宮北高校の例は、稀有な例外なのだ。

アニメ化の際のロケハンでも、ロケハン映像が示すように、克明に西宮北高校の画像がアニメ背景に取り込まれていく。

あの高校の、あの場所に、本当にハルヒたちはいたのだ、という限りなくリアルな作品描写へつながった、ロケハンと原作のミックスが、これまで、世界的にも人気の高いこのアニメ作品のファンを、聖地巡礼という究極の作品鑑賞へ誘ってきたのだ。

残念ながら、おそらく今年中に、西宮北高校がどうなるか決定される。どんなに卒業生や関係者が署名活動などをしても、その決定はまず覆らない。そのことは、上記のブログで書いたように、大阪府立高校の統廃合の事例を見ても明らかだ。

兵庫県民が維新の会の首長を選んだことで、高校統廃合にGOサインを出してしまったということになる。

 

今後、どういう結果になろうと、世界中のハルヒファンには、自重をお願いしたい。決して、あの「校舎侵入事件」の二の舞を出さないでほしい。

これまで聖地巡礼の場所があってくれたことに感謝して、これからも作品を愛していこうではないか。

 

 

 

 

 

 

 

※参考動画

 

※涼宮ハルヒの聖地巡礼動画

【谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』の文学散歩〜北高 編】

https://youtu.be/boegdTtkvME

 

 

(この動画は、アニメに描かれた旧店の移転前最後の日の記録です)

【谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』の文学散歩2

北口駅〜SOS団いつもの喫茶店 編】

https://youtu.be/_IskRrrwRUE

 

 

【谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』の文学散歩3

長門有希の図書館 編】

https://youtu.be/FdWkkTlQB1U

 

 

※参考書籍

土居豊の「涼宮ハルヒ」論

『ハルキとハルヒ 村上春樹と涼宮ハルヒを解読する』(大学教育出版)

https://www.amazon.co.jp/dp/4864291276/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_tS.ACb5NX4Y2X

 

イチカシ吹部自殺事件をきっかけに、全国吹奏楽コンクールの異常な過熱と長時間練習の誤りを考える

イチカシ吹部自殺事件をきっかけに、全国吹奏楽コンクールの異常な過熱と長時間練習の誤りを考える

 

※参考記事

千葉県の市立柏高校 飛び降り自殺 背景に長時間部活動(産経2022/3/25)

https://www.sankei.com/article/20220325-ESX3WTI3FVJT5GYBR7P2PD22SQ/

 

 

上記の記事、本来なら柏市と同市立柏高校(イチカシ、と略称する)は吹奏楽部を一旦休部にし、問題を徹底究明する義務があったはずだ。

部活動が原因で自殺したかもしれない部員を、その事件究明を放置したまま、よくも平気で音楽がやれたものだと呆れてしまう。

イチカシの吹部だけがそういう闇を隠していたのではないのかもしれないが、教育の場としても、音楽活動の場としても、自殺者を出したままで活動を続けていられた神経を疑う。

完全に同調圧力のせいで、大人も子どもたちも人間の心を失っているに違いない。

一体、そんな人間がやる音楽が優れた音楽になるだろうか?

ところで、

イチカシ吹奏楽部の部員自殺の件、吹奏楽コンクールが遠因であるかもしれないということを考えるにつけ、不思議に思う。なぜ全国吹奏楽コンクールはこんなに過熱してしまったのか?

下記に紹介する拙作にも描いたように、80年代はじめにはまだ、吹奏楽コンクールはそこまでの行事ではなかった。

おそらく、バブル期が境目なのだろうか。80年代後半には、すでに吹奏楽コンクールの過熱はあった。

具体的には、こういう流れだ。大阪府内の中学高校吹奏楽部の場合だが、80年代初めにはまだ参加校が少なかった。だから、大阪府地区大会ではなく、いきなり大阪府大会に最初から参加していた。

ところが、このすぐ後の時期から、地区大会が必要になるぐらい参加校が急増したのだ。

これは、一つには、バブル期に入り、中間層の公立中高生徒にも、手頃な楽器が入手しやすくなったのが一因ではなかろうか?

それというのも、公立中高の吹奏楽部の活動には、楽器や指導者への報酬などの費用が通常の部活動よりも多くかかる。学校の部活動予算は基本的に大差ないのだが、伝統校であれば部活動を支える目的でPTA予算を使う場合があり、またOB・OGの金銭的、人的な支援も手厚いのだ。しかし、中堅以下の学校では、なかなかそうはいかないのが普通だった。

それが80年代後半、バブル期全盛になると、中堅校でも保護者の収入の増加に伴って、吹奏楽部員の楽器や指導者の確保もしやすいようになってきたのではあるまいか。

そこで、新規に中堅校が吹奏楽コンクールに参入していく場合、やはり学校の知名度を上げるための競争原理が前面に出てくることになりやすい。そうして、90年代以降になるとますます吹奏楽コンクールが過熱し、競争に勝つための長時間練習、パワハラ体質と集団心理が加速したのではないか。

ちなみに、吹奏楽コンクールを題材にしたエンタメ作品が、各ジャンルで頻出し始めたのもその後のことだ。

私は自分自身が雑誌の特集で記事を書いたのでよく知っているが、吹奏楽を題材にしたエンタメ作品が急に増えてくるのは、90年代後半からだ。

 

※参考

https://ameblo.jp/takashihara/entry-11095270550.html

 

 

 

それまで、吹奏楽部は漫画やアニメ、映画などの題材になりにくかった。小説でもなかなか取り上げられなかった。ところが吹奏楽コンクールの過熱と並行してエンタメ作品で吹奏楽ものが増えてくる。視聴者、読者の嗜好が競争原理のエンタメに傾斜したコンクールものを求めるようになってきたタイミングと一致しているのではあるまいか。

こうして吹奏楽コンクールものの頂点として、2010年代半ばに京アニ『響け!ユーフォニアム』が満を持して登場したのだ。

 

最後に、

以下の拙作小説は、コンクール重視の吹奏楽への反論だ。

 

 

土居豊の音楽小説『メロフォンとフレンチ』

https://bookwalker.jp/de974fa0d0-bb72-4f01-b665-cac9c7259fce/?_ga=2.224024991.523969655.1642153124-1513163038.1642040185

 

《楽器不足の中でステージを実現していく吹奏楽大好き高校生たちの友情と恋の青春》

 

『メロフォンとフレンチ』あらすじ、キャラクター、作品背景などを紹介

https://note.com/doiyutaka/n/n64f59ad3b2f3

 

※noteでは第1章まで無料で読めます

https://note.com/doiyutaka/n/ncc9940cce1a4

 

『メロフォンとフレンチ』の前作!

音楽小説『ウィ・ガット・サマータイム!』(土居豊 作)

解説動画をご覧ください!

https://youtu.be/ySKZY_Geh_0

 

https://bookwalker.jp/de6c5f7f12-9f7d-4914-bd67-000c63cc50a8/?_ga=2.87758878.783377174.1586495988-1573749936.1586495988

 

《吹奏楽好きの方、ジャズ好きの方、80年代に学生時代を過ごした方、昭和の青春群像を懐かしみたい方、あるいは、これまでの吹奏楽もの小説に不満足な方、新しい吹奏楽ものを読みたい方、ぜひ!》

 

 

 

最後に、

改めて、亡くなった柏市の高校生のご冥福をお祈りします。

 

 

土居豊の京アニ論を寄稿した『こころの科学とエピステモロジー』2022年号、J-STAGEにも

土居豊の京アニ論を寄稿した『こころの科学とエピステモロジー』2022年4巻1号、J-STAGEにも掲載

 

 

上記、

西宮で人文死生学研究会にゲスト参加させていただいてから、早くも4年。コロナ以前のあの夏の日、研究会の皆さんに「涼宮ハルヒ」ゆかりの地をご案内しつつ歩いたのが、ついこの前のように感じます。コロナ危機が終息したら、学会の皆さんともう一度、ハルヒ聖地巡礼の続きをやりたいと願っています。

筆者が寄稿した電子ジャーナル『こころの科学とエピステモロジー』2022年4巻1号は、前号からJ-STAGEにも掲載され、ありがたいことに筆者の拙論も検索上位に挙がっていたとのことです。

今回の論は、前回の試論から1歩進めて、「京アニ作品の死生観」論その1、としました。副題に、【ミステリーアニメの死生観〜『涼宮ハルヒ』とP.A.WORKSの『Another』、そして『氷菓』と長ったらしいものを付けてあり、このタイトルだけでもう結論のようになってしまいました。

京都アニメーションの作品を愛する多くの皆さんへお届けしたい論考です。ご興味ありましたら、ぜひアクセスしてみてください。

 

 

以下

 

掲載誌

『こころの科学とエピステモロジー』2022年4巻1号

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/epstemindsci/list/-char/ja

 

発行日: 2022/06/05 

公開日: 2022/06/05 

 

発行:心の科学の基礎論研究会

https://sites.google.com/site/epistemologymindscience/kokoro

 

編集委員長

渡辺恒夫 東邦大学(名誉教授/心理学・現象学)

編集部長(編集委員兼務)

荒川直哉 <NPO>全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(人工知能)

編集委員

水本正晴 北陸先端科学技術大学院大学(教授/分析哲学) 論文担当 田中彰吾 東海大学(教授/心理学・現象学) 論文・翻訳担当

村田憲郎 東海大学(教授/哲学・現象学) 論文・翻訳担当

松崎保美 元SF作家 書評・映像メディア時評担当 小久保秀之(編集部兼務) 明治大学(兼任講師/実験人間学)J-Stage担当

特別編集顧問

林辺光慶 フリー編集者(元講談社学芸局長)

 

 

J-STAGE

こころの科学とエピステモロジー4巻 (2022) 1号

映像メディア時評「京アニ作品の死生観」論その1【ミステリーアニメの死生観〜『涼宮ハルヒ』とP.A.WORKSの『Another』、そして『氷菓』】

土居豊(作家)

PDFでダウンロード

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/epstemindsci/4/1/4_103/_pdf/-char/ja

 

元ページ

https://doi.org/10.50882/epstemindsci.4.1_103

 

《著者情報

土居 豊 [日本] 責任著者

研究報告書・技術報告書

オープンアクセス 

発行日:2022/06/05

受理日: 2022/05/25

J-STAGE公開日: 2022/06/05》

 

 

 

 

 

 

※前号

電子ジャーナル『こころの科学とエピステモロジー』3号

https://sites.google.com/site/epistemologymindscience/

 

土居豊の担当した文章へのリンク

(1)『京アニ事件の深層―京アニ事件総論』

https://drive.google.com/file/d/1KAcE6n04c3W726AhAgcMRSUttvPKfVIl/view

 

(2)『京アニ事件の深層―「京アニ作品の死生観」試論』

https://drive.google.com/file/d/1bz3WOIykQOJUwpssYShbbdp60Ug-jllz/view

 

※前々号掲載の土居豊の文章へのリンク

映像メディア時評『人文死生学研究会番外編「涼宮ハルヒ」+付記:京都アニメーションお別れの会参列報告』

執筆者

土居豊(作家)

渡辺恒夫(東邦大学名誉教授/心理学・現象学)

三浦俊彦(東京大学文学部教授。専門は芸術学・分析哲学)

https://drive.google.com/file/d/1nLmDGHfDji2Si6u5kduqCCbbsv8OBXgq/view

 

※土居豊のYouTube動画

【(京アニ追悼番組)京アニ作品の死生観・試論〜プロローグ】

https://youtu.be/xZZrtN3V3Ro

 

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12687198180.html

 

 

※偶然にも今日、うれしいお知らせが!

 

京アニ代表作『響け!ユーフォニアム』続編製作&放映決定!