割と労基法とは縁遠いネタばっかりだったので、

ちょっとは社労士らしく

今回は皆さん関心ありそうな『有給休暇』についてお話ししたいと思います。

 

有給休暇は当然皆さんご存知ですね。

簡単に言えば、みんなが働いてる日に給料もらってお休みできる特権です。

 

特権ですから誰でももらえるものではなく、

法律上は入社してから一定の要件をクリアすれば6ヶ月経過後に10日与えられます。

(以後は1年毎で付与日数は2年6か月までは+1日、これ以後は+2日で合計20日が上限)

ただ、会社の独自ルール(就業規則で定めている場合)で

例えば4月1日とか10月1日とかの節目に与えられたり、

入社と同時に数日付与なんてこともできます。

もちろん週当たりの勤務日数が少ないパートタイマーも

要件をクリアすれば有給休暇が付与されます。

だから、就業規則はちゃんと目を通しおきましょう。

(それ以外もいろいろ大事なことが書かれているので、

有給休暇のためだけではなく、就業規則を見る癖はつけた方がいいです)

 

ここで有給休暇のすべてを記載すると

いくらスクロールしても終わらないくらいの分量になるので、

(もうすでに結構な分量です、、、)

今回は皆さんが関心を持ちそうなところだけ説明します。

 

まず、ベーシックなところですが、有給休暇は翌年のみ繰越できます。

つまり付与された分は2年間経つと使っていようがいまいが消えてしまうわけです。

例示すると、

令和5年4月1日に10日与えられた有給休暇を6日使って、

令和7年3月31日まで残数4日あったとしても

この日をもってこの残数は消えてしまいます。

 

先ほど翌年のみ繰り越しといいましたが、

例えば、令和5年4月1日に10日(これを便宜上「前年分」といいます)、

令和6年4月1日に11日(これを便宜上「本年分」といいます)付与された場合、

仮にあなたが、令和6年5月1日に1日有給休暇を利用したら、

前年分から消化されるのか、それとも本年分から消化されるのか、

使う立場としては気になりますよね。

原則は前年分から消費されます。ここで「原則」といったのは、もちろん例外があるからです。

例外は「就業規則で本年分から先に消化する」と定めがあった場合です。

なので、やっぱり皆さん一度は就業規則を見た方がいいですよ。

知らずに本年分の有給休暇から減ってるかもしれませんので。

 

そこでちょっと不安になった方もいらっしゃるかもしれません。

もし経営者がこのブログを見て、

「本年分から先に消化する」と勝手に就業規則を変更したらどうしよう。。。

そんなンされたら、急に残数が減っちゃうじゃんと。

 

大丈夫です。就業規則は原則労働者に不利益に変更することはできません。

ここで「原則」と入れたとおり、これまた「例外」があるのですが、

今回のテーマとは異なりますし、

これをここで説明すると訳わからなくなるくらいちょっと難しいことですので今回は割愛します。

いずれにしても「本年分から先に消化」と一方的に変更してもまず不利益変更にあたり、

労働者との個別合意がなければその変更は無効となります。

 

社内の有給休暇申請書によく「使用目的」と記入欄があります。皆さんもこの欄に「役所に行くため」とか「授業参観出席のため」とか有給休暇取得の理由を書きますよね。

もし、「旅行のため」とか書いて、上司が忙しいから旅行という理由じゃ有給休暇を認められない、と言われたらどうでしょうか。

まず、大前提として会社は有給休暇の使用の拒否権はありません。有給休暇の利用を申請したら会社はそれに異議を申し出ることはできません。

が、例えばその日に有給休暇を取得されたら従業員が誰もいなくなってしまうような会社にとってかなりの問題となる場合(これを法律では「事業の正常な運営を妨げる場合」といいます)には、会社は有給休暇を別の日に使ってほしいといえます。これを「時季変更権」といいます。しかし、この時季変更権はかなりハードルが高いので、そうそう簡単には認められません。

だから皆さん有休取得の理由を気にせず提出してください。もし上司がこんな理由で与えられないと言われたらこんなセリフを返しましょう。「それ、労基法違反ですよ」

 

ただ、あまり調子に乗って「海外旅行するんで20日(4週)間連続で有休取ります」とかすると、結構まずいです。

というのも最高裁裁判例(裁判例も法的解釈の際に検討材料となります)で、

24日間連続有給休暇を申請した労働者に対しその期間を前半、後半と分けて

後半について会社が時季変更権を行使した事件で、会社の時季変更権を認める判断を下しました。

つまり、別の時季にとってね、と会社が言ったにも関わらず、勝手に休んだ後半部分は無断欠勤となり、会社が懲戒処分が下したことも認められたわけです。(詳しく知りたい方は『時事通信社事件』で調べてみてください)

では何日連続なら大丈夫なのか。これは完全に私見なので一切責任は持ちませんが、

この最高裁の判断からするとせいぜい2週間程度(つまり10日連続)ではないかと思います。

この辺が欧米のバカンスとは大きく違うところですね。

 

とまあ、ちょっと触れただけでもこれだけ有給休暇は検討する部分が多い題材です。

また、機会があればこの続き(有給休暇の半日取得や時間取得、産前産後休暇時の有給休暇とか)も解説したいと思います。