我が家の縁者には、慶應義塾、開成、灘などの出身者がいますが、これらの名門校の校風の共通点は自由や主体性を重んじるところにあります。

慶應と開成の共通点

特に慶應義塾と開成については、幕末に欧米を視察した進歩的な知識人が英国パブリックスクールなどを範として創立したという共通点があります。慶應義塾の創立者である福澤諭吉も、開成の創立者である佐野鼎も、共に万延元年遣米使節(1860年派遣)と文久遣欧使節(1862年派遣)に参加し、欧米に渡航しています。

 

なお、福澤諭吉は、万延元年遣米使節については使節団のメンバーではなく太平洋横断時に随行した護衛艦の咸臨丸に乗船しています。また、開成に関しては、その後、佐野鼎が早逝し、廃校寸前となっていたところを後に首相となる高橋是清が初代校長に就任して現在に至るまでの学園の基礎を築いたとされています。

慶應義塾と開成はいずれも校章が「ペンは剣よりも強し」をモチーフとした記章であるという点においても共通しています。さらに、慶應の三田会と同様、開成も開成会という同窓会組織が比較的強固です。三田会と開成会の類似性については↓のブログ記事が参考になります。

 


開成の特徴

上記ブログの開成に関する記事は、開成愛が強く表れているため、少し大げさに感じる部分もあるかもしれませんが、概ね実態をよく捉えているように思われます。開成会に関する記事のほか、↓の記事も開成を志望校として検討する際にはとても参考になると思います。

 

 

 

 

 

 

 

開成のネガティブな面にはあまり触れられていませんが、強いて挙げれば、次のような点があります。

  1. 学業面については鉄緑会をはじめとする塾頼みの部分が大きく、鉄緑会などに通わせない場合は極端に中だるみしてしまう可能性もあること。
  2. 自由で寛容すぎるが故にそのまま社会に出ると生きづらさを感じる個性なども矯正されずにそのままになりがちなこと。
  3. 女性との自然な関わり方を学ぶ機会が乏しいこと(中高一貫の男子校に共通するデメリット)。

なお、↓の記事において、開成の現校長の野水勉先生について「経歴だけ見ても、とんでもなく優秀な、スーパーエリート先生なのですが、このハーバード大の経験のおかげか、開成の英語教育が前校長時代とはだいぶ変わったようです」と評している部分に関しては、いくつかの点で誤解を招く可能性があります。

 

 

野水先生はハーバード大学に客員研究員として1年半留学していたのみですが、前校長の柳沢幸雄先生は18年間にわたってハーバード大学に研究員、助教授、准教授、併任教授として勤務していました。また、教育体制を変えて整えるためには一定の期間が必要です。これらの点を考慮すると、むしろ前校長の柳沢先生のおかげだと捉えた方が良いように思われます。野水先生はハーバード大学時代に柳沢先生と家族ぐるみの交流があったことなどを考えれば、そもそも野水先生が後任となったのも柳沢先生の強い影響があるのではないかと考えています。

 

慶應義塾の特徴

また、↓の記事で、慶應義塾の中学入試について、「慶應の入試問題は偏差値の割に非常に簡単です。筑駒や開成、渋幕、聖光、渋渋のように難解な思考力問題は出さないし、慶應と同じような偏差値帯の早稲田、海城、駒東などのような難しい問題も出しません。慶應の問題はミスをどれだけしないかの勝負です。つまり、学力があるけど、うっかりミスをするような人は求めていません。学校の指示にきちんと従い、ミスをしない子を求めています。」と言及している部分も、難問を出さないと言い切ってしまっている点などにおいてミスリーディングです。

 

 

たとえば2024年の慶應中等部入試の算数では、問題の難易度を易しい方からA、B、Cで評価しているコベツバの分析によれば、たしかに難易度Aの問題が多数を占めているものの、難易度Bも複数出題されているほか、開成や筑駒でも出題されていない難易度Cの問題も出題されています。

 

 

 


さらに、慶應の中学入試では、中等部の基本理念などからも明らかなとおり、「学校の指示にきちんと従い、ミスをしない子」よりも「自ら考え、自ら判断し、自ら行動できる子」を求めています。入試においてうっかりミスをすれば合格が遠のくのは開成の入試でも同じで、慶應義塾の入試が殊更ミスに厳しいわけではないと考えられます。


ただ、慶應義塾の中学入試が開成よりも学力以外のファクターを重視していることは間違いありません。慶應義塾は、次の言葉で示されているとおり、「気品の泉源、智徳の規範」「全社会の先導者」を輩出することを目的としています。

慶應義塾は単に一所の学塾として自から甘んずるを得ず。其目的は我日本国中に於ける気品の泉源、智徳の模範たらんことを期し、之を実際にしては居家、処世、立国の本旨を明にして、之を口に言ふのみにあらず、躬行実践、以て全社会の先導者たらんことを欲するものなり。

そのため、慶應義塾の中学入試において面接や体育の実技試験があるのも、親が「全社会の先導者」となるためには学力だけではなく「気品」と「強健な肉体」が必要であることを理解した上で、子育てにおいてもそれらを重視し、実践に努めているかどうかを試すものだと考えられます。

 

幼稚舎入試ほどではないにせよ、中学入試においても、慶應では、親の子育ての方針が慶應義塾の目的と概ね合致しているかどうかをチェックしていると考えられるため、親自身が「気品の泉源、智徳の模範」「全社会の先導者」となるように努めていると有利なように思われます。

 

・ ・ ・ ・ ・

 
慶應義塾も開成も、自由な校風と主体性を重んじる教育方針により、多くの優れた人材を輩出してきました。これらの学校に通うことは、生徒たちにとって貴重な経験と学びの場となりますが、それぞれの学校の特徴や課題を理解し、親の子育ての方針やわが子の性格に合った選択をすることが重要です。