今回は解答作成の手順を説明していきます。
前々回の記事で説明したように、上智大学TEAP利用型の世界史論述においては、リード文を参考にしながら解答を作成する必要があります。(以下リンク)
出たとこ勝負だ!己の知識だけで突破してやるよ!という作戦は間違いなく身を滅ぼすわけですな。
2019年度の場合は、リード文の文字数は3000字を超えていて、読む気が失せるかもしれないけど、
しっかり読み込んで、上智大学様の提示する文章を要約すれば、世界史論述の方向性も決定できるわけです。
まず、読むべきは冒頭部分でしたね。
(リード文の全容については、徹底解説①を確認してほしい。)
冒頭部分 (以下引用)
フランスの作家·思想家ポール・ヴァレリーは, 1919年に発表された「精神の危機」のなかで次のように述べている。
現在、我々は次のような決定的な問題に直面している。
ヨーロッパは果たしてそのあらゆる分野における優位性を保っていけるだろうか、という問題である。
ヨーロッパは、実際にそうであるところのもの、すなわちアジア大陸の小さな岬の一つになってしまうのか?それともヨーロッパは、いまのところ、そう見えるところのもの、すなわち地球の貴意な部分、球体の真珠、巨大な体部の頭脳としてとどまり得るのか?
一次大戦後、「ヨーロッパの覇権は維持されたのか否か」という、問題提起から始まるわけです。
当然、この問題提起に対しての結論も確認する必要がありますね。
上智大学の問題作成者様の見解はリード文の最後に書いてありました。
(以下引用)
おそらく答えは排他的な二者択一ではなく、両方が同時に当てはまるようなものであるだろう。
その両義的な性格を押さえることが重要である。
結論は「両方」でした。(笑)
なるほど、両方か~。そうすると、至極単純な作戦が浮かび上がるわけですね。
一次大戦後、ヨーロッパ覇権が「維持された部分」、「揺らいだ部分」を列挙してみようと。
多分だけど、多くの受験生はこのレベルであれば辿り着く気がする。
しかし、この単純作戦であると、「ただ列挙ただけ」⇒「論点が見えづらい」⇒「結局何が言いたいのか分からない。」という「負のピダゴラスイッチ」に陥いる未来が容易に想像できる。気持ちいぐらいの負の連鎖が起きるっていうこと。
なので、もうちょっと細心の注意を払って、結論部分を読んでみたい。
読むべきはここ。
「両義的な性格を押さえることが重要である。」
この部分をしっかり加味していきたい。
「両義的な性格」というのは、つまり「両義性を有した性格」ということですね。
(それにしても、大学受験って「両義性」を問う問題好きだよね(笑))
「両義性」については、辞書を引てみるとですね、
「両義性」=一つの事柄が相反する二つの意味を持っていること。対立する二つの解釈が、その事柄についてともに成り立つこと。
なるほど。「列挙する歴史的事実」が有している「両義性」を指摘すれば、なんとか解答が導き出せそうな気がするね。
テーマは第一次世界大戦後のヨーロッパ覇権についてでした。
テーマに具体性を持たせていくと、
第一次世界大戦後=ヨーロッパはヴェルサイユ体制という新たな国際秩序を構築していく時期。
ヨーロッパ覇権=資本主義列強による植民地主義
このように置き換えてよいでしょう。
というのも、設問が指定するリード文波線部には、社会主義のソヴィエト評議会が資本主義列強の植民地主義を批判する箇所があります。
なので、一次大戦後に、ヨーロッパが覇権を維持したか否かの問題提起には関しては、「ヴェルサイユ体制のなかで、いかにして資本主義列強による旧体制の維持が目指されたのか。さらにそこに含まれる矛盾点。」を指摘していくと、その「両義性」について論じることができるしょう。
今回はここまで。
次回は解答作成の際の僕なりの葛藤を。
2019年 設問7
本文全体を読み、特に波線部に留意しながら、第一次世界大戦後の世界においてヨーロッパの覇権はどのような形で揺らぎ、どのような形で立て直されたと言えるのかを350字程度で論じなさい。
指定語句
ワシントン体制 旧オスマン帝国 サイクス・ピコ協定 委任統治 植民地
模範解答
一次大戦中にソヴィエトが無併合・無賠償·民族自決の原則の布告とサイクス・ピコ協定を暴露したことによって列強の植民地主義は国際的に批判された。しかし戦後のヴェルサイユ体制では、民族自決論はアジア・アフリカにに適用されず、旧オスマン帝国領に対しては英仏が委任統治を国際連盟から請け負うことで、植民地支配の再編成が行われた。アジア方面で反帝国主義運動が起こり、中国がヴェルサイユ条約に調印しなかったなど、列強への反発も見られた。また、ヴェルサイユ体制は国際協調を原則としながら、資本主義列強による旧体制の維持を目指した。さらにアメリカ主導のワシントン体制に英仏は協力的で、アジア・太平洋における列強の勢力均衡が目指された。一方で、米国の国際連盟不参加や英仏のドイツに対する報復的な態度は、国際協調主義の不完全さを示している。
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