アイキャッチは、バスティーユ牢獄襲撃事件。

 

改革の主人公が国王から市民へと変わった「歴史的瞬間」である。



一橋大 2007 大問2


【問題文】

 

18世紀後半のフランスは、それまで絶対王政が行き詰まり、不安定な時代を迎えていたとされる。とりわけルイ16世(在位1774~92年)時代は多くの社会的矛盾や財政難が顕著となる時代であり、政府はそうした事態への対応を迫られていた。ルイ16世の即位からフランス革命勃発に至るまでの期間を取り上げ、その間、どういった問題が生じていたかを説明したうえで、政府はそれに対処するためにどのような改革を行おうとしたのか、そして、そうした改革はなぜ挫折したのかを述べなさい。

 

 

【解答のポイント整理】

 

①社会矛盾の説明ができているか

アンシャン=レジームの下では、第一・二身分である僧侶・貴族は免税され、第三身分の平民に重税が課されていた。そういった社会状況の中でも、市民階級は経済的に成長し、国家の経済活動の中核を担っていたわけだが、政治的には無権利であった。これがフランス革命前夜の社会構造の矛盾である。市民階級は旧体制への不満を募らせ、自由主義的改革を望んでいくようになる。(このときはまだ、改革の主体ではない。改革の主体はあくまで国王政府にあった。)

 

②財政難の説明ができているか

アメリカ独立戦争への参戦(~1783年)や旧体制下の莫大な宮廷費も問題であった。また1786年にイギリスと結んだイーデン条約によって、フランスはイギリス工業製品の輸入を認め、フランス工業は打撃を受け、これもフランス革命の一因ともなった。そのほかにも、農業不況など挙げても良い。

 

③政府の対応の説明ができているか

財政難だけでなく、イギリス経済に抵抗する上で、国王政府は自由主義改革、つまりは、経済活動の自由化を目指していく。

テュルゴーの登用。王室の支出の削減、同業組合の廃止、など提唱したが、特権商人たちも既得権を奪われることを恐れて改革に反対した。

ネッケルの登用。増税路線に踏みきり、また、国庫の赤字について報告した。

 

④政府の挫折の説明ができているか

特権階級の不満。課税対象の拡大化は、特権階級の既得権益を守る方向を促した。長らく王権の強化を背景に招集されなかった三部会であるが、免税特権廃止案を審議するために、1789年に開催された。議決方法を巡り、空転。

市民階級の不満。アメリカ独立戦争は初めて啓蒙思想が具体的に実現した政治的事件であったが、フランスでも新聞や雑誌で広く論じられ革命の思想的背景となった。そういったなかで、三部会における衝突や、保守派議員によるネッケルの罷免は、市民階級の国民議会の発足を決定づけた。これにより、国王主体の改革は挫折したと言える。

 

 

【目指すべき論旨】

 

財政難からの脱却と、イギリスに対抗するべく近代化を目指したルイ16世の諸改革は、特権階級・市民階級双方の不満を募らせることになり、国内の社会構造の矛盾を解決するどころか、むしろ特権階級と市民階級の対立を強化するものであった。この結果、市民階級の蜂起が生じ、国王主体ではなく、市民主体の近代化改革が展開されたと言える。

 

 

【生徒解答】

 

①ルイ16世が即位した時代、フランスはアメリカ独立戦争の財政的負担、イーデン条約によるイギリスからの安価な製品の流入で財政難に陥っていた。

 

フランスがなぜ財政難に陥っていたかは説明できている。ただ、財政難の脱却だけでなく、イギリスに対抗するための近代化政策というニュアンスがあってもよい。

 

アメリカ独立戦争は啓蒙思想の影響をフランスに強く与える。事実、テュルゴーやネッケルも「百科全書」の執筆をしている。どうしてもフランス革命から近代化改革が始まったと捉えがちだが、革命勃発前も国王政府が主体となって改革を進めようとしたことを留意しておきたい。だが、啓蒙思想を普及しすぎても国王や国王側近の立場が危うくなるというジレンマもまた着眼すべきだ。国王主体の改革を推し進めるうえでは、急進的な改革を進めるにも進められない。事実、「百科全書」は一時廃刊の危機に陥る。

 

また、フランス国内における社会構造の矛盾によって、国王の改革に対する特権階級・市民階級双方の不満を噴出させ、国王の改革を妨げる要因ともなるわけだから、「アンシャン=レジーム」下のフランス社会の説明を、あらかじめ済ませても良いだろう。

 

 

②財政難を打開するため、財務総監テュルゴーは自由主義的政策を展開したが、その内容があまりに過激であったために反発をくらい、失敗に終わった。

 

「あまりに過激であった。」はあまりに曖昧であった。少なくとも、どういった集団に反発を受けたのかは明確にしたい。テュルゴーの改革については上記を参照。

 

③代わって財務総監を務めたカロンヌは、すべての身分を課税対象とする政策を打ち出したが、特権身分として非課税対象だった第一身分、第二身分の反感を買って失敗した。

 

ルイ16世は貴族に課税するために三部会を開いたが、身分別の議会方式を主張する第一身分、第二身分と、一人一票の議決方式を主張する第三身分との間で対立が生じてまとまらなかった。

 

また、第三身分が立憲民主制を主張して国民公会を開いたので、ルイ16世はこれに反対して、ネッケルを罷免したが、王への反発はおさまらずにエスカレートした。こうして身分制や財政の問題が起因して改革が挫折した。

 

 

まず⑤に関して、国民公会ではなく国民議会としよう。国民公会・立法議会・国民公会の整理は頻出なので要復習。

 

③、④、⑤を通じて、特権階級と市民階級の対立の様子は読み取れたが、なぜ挫折をしたのかに関しては、議決方法の捻じれとネッケルの罷免による民衆の蜂起だけには、とどまらないはずだ。

 

財政難からの脱却と、イギリスに対抗するべく近代化を目指したルイ16世の諸改革は、特権階級・市民階級双方の不満を募らせることになり、国内の社会構造の矛盾を解決するどころか、むしろ特権階級と市民階級の対立を強化するものであった。この結果、市民階級の蜂起が生じ、国王主体ではなく、市民主体の近代化改革が展開されたと言える。そして、なぜ市民が革命の主体であったのか、思想的背景、経済的背景、人口比含め、明確にしてほしいところであった。

 

 

 

 

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