群馬県立館林美術館「たてびレポート」展示室1 星素子展示『館林バトン&エアハグ』会場風景。
館林美術館開館20周年を記念し制作した「お祝いロールケーキ」のオブジェが会期2日目の夕刻、
しぜんに生まれたスポットライトで浮かび上がりました。「祝福されているみたい…!」と会場に
いた方々と歓びあいました。時間や季節によって陽射しは移ろい作品の見え方も変化していきます。
こんにちは。現代美術家(言葉アーティスト)星素子です。9/18(土)に館林美術館開館20周年を楽しむ「たてびレポート」(展示室1〜4)が始まりました!おかげさまで準備期間での小中学校へのワークショップ授業や地域イベント等から設営まで多くの方々に協力いただけて展示室1にて星素子展示『館林バトン&エアハグ』もスタートすることができました。
500㎡以上ある展示室1では、館林滞在や1本1本えがかれたバトンを通して館林の人たちや参加者の想いなどが詩的に映るインスタレーション作品、新旧オリジナル言葉アート作品群、公開制作作品、参加型BOX(会期中いつでも参加OK!)などを、最終日の11/7(日)までお楽しみいただけます。
群馬県立館林美術館 たてびレポート(展示室1〜4)の案内垂幕。
船のカタチをしている展示室1は、展示室2・3・4とは独立していて
少し離れた奥の場所にあります。この展示室1に一目惚れしたのです。
変化しつづける展示室1の様子を、少しづつレポートしていきたいと思います。
展示室1に入ると、広い会場を回遊しながら体験いただく手がかりとなる「館林バトン&エアハグ ZONE MAP」があります。参加いただいた館林の自然や人の魅力が多様に表れた漢字のバトンや、常にかすかに動いているロール芯など全体や細部を、バトンの林を歩くように注意深く「五感」で体験してみて。そこには写真にはうつらないものやうつりにくいものがいろいろあるのではないかと思います。
星素子展示『館林バトン&エアハグ』ZONE MAP(展示パネル3)
手がきのMAPで展示室1のゾーニングを解説しています。
初日と2日目、公開制作で美術館に参上!初日からワークショップ授業や館林市日本遺産「里沼」をテーマとした地域イベントのBOX、美術館BOXで参加いただいた方も来てくれました。自分や友達、家族がつくったバトンを見つけては「あった!あった!」と喜ぶ笑顔が印象的でした。
ロール芯のバトンには、この地ならではの地域性や個性が多様なまま表れています。そこにある同じと違いを発見したり、そこから触発されて参加型コーナーでMYバトンをつくっていかれる方も。4つのBOXに付けられた4つのお題からロール芯を素材とした漢字のバトンをつくり箱に入れて参加できます。想いを込めてつくられたバトンは適宜インスタレーションに加えていきOURバトンになる予定です。
いまはコロナ禍で以前のように自由に人と会ったり、ふれることも難しくなり、人と人との距離感も変容しています。今回の展示ではそうした現在の距離(distance)や関係性(relationship)を意識したインスタレーション空間となっています。1つひとつのバトンは離れているけれど、想像する心で自由に繋げて、漢字を感じて。
星素子展示『館林バトン&エアハグ』子どもたちのバトンZONEの展示風景より。
ワークショップ授業でつくった自分やクラスメイトのバトンを見つけて喜ぶ児童。
●準備期間に館林市の小中学校(館林市立第一小学校、館林市立第五小学校、館林市立美園小学校、館林市立第十小学校、館林市立多々良中学校、館林市立第一中学校でのワークショップ授業(16学級)やBOX参加によって集まった子どもたちの「未来に手わたしたいバトン」が入口近くで見られます。
●丸いカタチは作家が館林市「里沼」に浮かぶ蓮からインスピレーションをうけてインスタレーション。ここにも天然のスポットライトが移ろいます。●「私もワークショップしたかったな」という参加校以外の児童も来てくれました。いつかできるといいなと思います。●作家は言葉アートを軸に開発したエデュケーション・プログラムと一貫したコンセプト「未来に手わたしたいバトン」によりバトンプロジェクトを発案企画・構想し継続的に取り組んでいます。今回できなかった学校や施設へも機会やご依頼がありましたら適宜おこないたいと思っています。
入ってすぐに見えるのは《館林の子どもたちのバトン》ゾーン。館林の小学生中学生が館林バトンのワークショップ授業やBOX参加でつくってくれた子どもたちの想いが伝わるバトンはここにありますよ!
このゾーンは館林市日本遺産の「里沼」や城沼ハス花クルーズ体験でのインスピレーションから、里沼に浮かぶ蓮をイメージしてインスタレーションをつくっています。身近な水辺を連想する人もいるかもしれませんね。そうっと、のぞきこんで1つひとつのバトンを見てみると、面白い発見があるかもしれません。
その奥にあるのは「館林美術館開館20周年」を記念してつくった大きな《お祝いロールケーキ》のオブジェです。現在は準備期に美術館BOXで集められたバトンがついています。「参加できるバトンBOX」に入れてくれたバトンも追加していきますよ。設営時には「美術館サポーター」さんたちにも協力いただき、大きなロールの周りにびっしりと沢山の紙のロール芯が周囲につけられています。(みなさん自分ごととして協力してくれました)そんなサポーターさんも会場にきてくれて、お手製の鬼滅の刃柄のマスクをプレゼントしてくれました。次の公開制作に着けていこうかな♪
■公開制作予定:9月は毎週土曜日、10月は日曜日を予定しています。
■10月3日にワークショップを開催予定。(美術館HPからご予約申込)
作家が発案企画・構想し実践をすすめる「バトンプロジェクト」のコンセプトは「未来に手わたしたいバトンとは?」。今回は「館林バトン」として館林の地域から考え、地域と共に歩んできた「館林美術館」から発信する試みです。なかには漫画・アニメも未来に手わたしたい!という想いが表れたバトンも複数あったりします。こうした現代社会を映すバトンもまた「美術館の今、アートを楽しむ(たてびレポート)」を体現しているようにも思われます。
星素子展示『館林バトン&エアハグ』会場風景。公開制作より(9/19)
即興で1本1本ロール芯が増えていっています。
最終日はどんな作品になるのか?お楽しみに!
《公開制作》は100号のキャンバス2作品を中心に、色んな技法を公開しながらおこなう予定です。現在は週末に大きなキャンバスの前を通る来場者さんたちと対話やコミュニケーション(Dialouge)しながら、即興(improvisation)で制作をすすめています。制作に没頭して気づかないこともあるかと思われますが、ご来場の際に作家を見つけたら、気軽に声をかけてみてくださいね。
2日目、作家がキャンバス上のロール芯でえがく模様に「人間みたい」「ソーシャルディスタンスの人に見える!」なんて話したりしてバトンを即興で加えていきました。作家が正方形に「4つのバトン」を置いてみると「何だか楽しそうだから近くに置きたい」という方や「それをちょっと離れたところで見て楽しみたいです♡」という方のバトンが加わったり。「俺はこの空いているスペースに最初に置きたいからココに決まり!」「お〜、ブルーオーシャンですか〜!笑」なんて和やかに対話を交えつつ、来場者ご自身を投影したかのようなバトン(紙ロール芯)が加わっていきました。毎週末、変化していきますよ。
『館林バトン&エアハグ』参加できるBOXゾーン会場風景。
お題から習いたての漢字をバトンにかいてくれた子も。
BOXの中には「自由」というお題も用意していますよ^^
※衛生面でのコロナ対策のため備え付けの消毒液で手を洗ってからかいていただいています。また、
本来バトンプロジェクト(地域バトン)はRE-USEシリーズでもあるため例えば2年前の中之条ビエンナーレでの「中之条バトン」やパリでの「PARISバトン」等では、使用済みのロール芯を作家が1つひとつ拭いてきれいにしてから使用していましたが、今回は特別に静岡県のリサイクルトイレットパーパーの製造企業(静岡県の丸富製紙)に、ご理解ご支援・提供いただき未使用品を用意しています。
《参加型できるBOXコーナー》では、ご家族連れからお一人様まで色んな人が参加してくれていました。BOX毎につけられた4つのお題からつくって箱に投入いただいたバトンは、毎週末、お祝いロールケーキやインスタレーションに追加していきます。
そうそう、「中之条ビエンナーレ2019」での“中之条バトン”(四万温泉の廃校教室が会場)で参加してくれた方も来てくれて。当時のバトンの交流が懐かしく思い出されました。2年前にはコロナ禍もなく、ある意味で「密」なワークショップ交流(低学年は体育館に集合)や制作滞在・参加型展示ができていたことが奇跡のようにも感じられます。当時、何人ものご来場者から「2年後も楽しみにしてます!」と声をかけていただいたのですが、現在は館林で新しいバトンを私が試みていることをお伝えしたいなという気持ちと今年の中之条を思う気持ちで一瞬胸がいっぱいになりました。今は移動するのもなかなか困難なご時世。長びくコロナ禍で新しい生活スタイルを模索しながらも疲労がたまったり、閉そく感が漂いがちだったりもしますが、そんな時代だからこそ「今アートにできること」があると信じて試みています。(遠方の方などに是非ご来場をとは言い難い時期ということもありレポートしようと思いました)
世の中には、言葉にならないものばかり。言葉にしたとたん指の先からこぼれ落ちてしまいそうな事象や感情もいっぱい。だから作家は詩のような絵のような言葉のような、意味よりも速くイメージを伝えるともいわれる「言葉アート」を開発探究して長年アート活動を続けています。原動力はいろいろありますが、作品鑑賞者やWS、参加型アートの参加者からいただいた声は本当に困難な時のエネルギーになってます。BigDrop(ブログ名)☆そして“言葉はほとんどの場合、言葉以外のことを表す”ため試みるほど面白く、作品(芸術表現)の発想やアート活動の構想も尽きません。また、2011年の東日本大震災を機に深く内省し、よりプロセスを重視して体験型参加型アートを地道に開拓してきました。そうしたアート活動を知ってくれていた美術館さんから今回ご依頼いただけたことにも感謝しています。
関わってくれた人や自然や すべてに感謝。
と、つらつら記していたら長くなってしまいました。
レポート1はそろそろこれにて。
よかったら「館林バトン&エアハグ」を見守ったり
ご参加いただけたら幸いです。
つづく☆
[関連リンク]
●館林バトンご案内ブログ https://ameblo.jp/sunfacemotoko/entry-12693448321.html
●「館林バトン&エアハグ」チラシPDF http://www.gmat.pref.gunma.jp/ex/taterepo/hoshimotoko.pdf
●館林美術館HP「たてびレポート」概要やアクセスなど詳細はこちらで!
◎10月3日にはワークショップが予定されています。美術館HPからご予約を受付中です!
●中之条ビエンナーレ国際現代芸術祭 2019 星素子CV
https://nakanojo-biennale.com/artist/motoko-hoshi
●「中之条バトン」のアートブログ
https://ameblo.jp/sunfacemotoko/entry-12540475787.html
□竹尾WEB(展示室1とミュージアムショップでは「活版」作品も多数展開されています)
https://takeopaper.com/special/anokono/detail/21091512.html
□art scape アートフラッシュニュース
PS(長っ…)
即興で「漢字バトン」を1本。
「寛」
理由:人は不完全。だからよりよいを目指すこともできる。
寛容の寛を書きました。なるべくお互い様のおおらかな気持ちをもって困難な時代をのりこえたいなと。人間って完璧ではない、という事は、幼少期から親しんだ茶道を通して学べたように思います。そのせいか私のインスタレーションはしぜんに「JAPAN」。展示室1でも作品から余白(間)や風の流れを感じていただけるかと思います。
※館林美術館は空調(換気)も万全です^^
周囲の自然との調和も素晴らしい館林美術館には、広大な芝生や水辺、「狐のカミソリ(橙色の花)」や「宇宙クロマツ(館林市出身の宇宙飛行士・向井千秋さん縁の木)といった自然や植物も楽しめます。先日100匹くらいのトンボが「宇宙クロマツ」の上空を旋回していました。(どういう現象でしょう?)さらに、そこの池にいるよと参加者がかいてくれた「亀」、「狸」(館林市には昔話「分福茶釜」の舞台の茂林寺があります)「鳥」「白」(渡り鳥や動物)といった地域や美術館縁の生き物も、未来に手わたしたい「バトン」に表れています。展覧会鑑賞の際には美術館のまわりを散策されても気分転換できそうです。
SNSやDMなどでご来場の方々からうれしいお便りいただきました。
エアハグ☆