2012年を締めくくり、現在進めているTPPの交渉について、交渉国の状況をまとめてみた。資料のつぎはぎの形態なので読みにくいかも知れませんがご容赦を。

「TPP交渉の現状」
 カナダとメキシコの参加が認められ、12月3日~12日、ニュージーランド(NZ)で15ラウンド交渉が行われた。海外の報道によれば、目に見える進展がなかった模様。次回16ラウンドは3月初旬シンガポールで開催。
主な争点は、オーストラリア(AU)がISDSに断固反対、NZなどが薬価上昇につながる米国提案知的財産権強化に対し反対、米国の酪農品保護に対するNZの要求など


廣宮孝信氏ブログに最近のTPP交渉状況と米国内事情が紹介されている。

http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-571.html
ニュージーランドのテレビ局「3 News」
Diplomats quiet on Trans-Pacific Partnership progress
外交官ら、TPPの進捗に言葉少な
http://www.3news.co.nz/Diplomats-quiet-on-Trans-Pacific-Partnership-progress/tabid/421/articleID/280153/Default.aspx
3 News Wed, 12 Dec 2012


「TPPに反対する人々の運動」さんのブログに、上記報道時のTPP交渉官の説明が翻訳されている。
2カ国が新規参加のTPP交渉は今──第15回ラウンドのステークホルダー説明会の記録
http://antitpp.at.webry.info/201212/article_3.html


「米国の議会の事情(TPA;Trade Promotion Authority)」
TPA解説
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/eco_tusho/tpa.html

 2012年11月6日の選挙により、改選後の上院、下院の議会が2013年1月より開会される。また1月20日には大統領就任式があり、二期目の政権の閣僚の指名と議会の承認がある。話題に上っているのは、国務、財務、国防、司法、商務、CIA、などの閣僚である。USTR(通商代表部;大使館の資格)のカーク大使(代表)も5月に辞意を表明している。その前1月に、オバマ大統領は通商関連部門(商務、USTRなど)のリストラ策を表明している。これまで50年にわたり米国の通商交渉を担ってきたUSTRの組織がどうなるか、まだ情報がない。組織変更があったとしてもオバマ政権はTPPを推進するだろう。
 TPPに関連する重要な問題は、合衆国憲法上、通商交渉権は議会にあること。50年前にUSTRを設立、実務を代行させた。プロスポーツで言えば、オーナーが議会、GMが大統領、監督が閣僚、コーチが大使という関係。これまで、外国との個々の通商交渉は、USTRが議会の了承を取りながら行ってきた。FTAなどの包括的通商交渉は、個々の問題を議会に相談しながら進めると、多くの議員の同意を取り付ける努力が必要で、実質不可能に近い。この問題を解決するため、大統領府(USTR)に、交渉遂行する権限を与え、批准時、個々の条文について採決せず、一括で採決するルール、大統領貿易促進権限(TPA、ファストトラック法)を事前に採決してきた。カナダ、メキシコとのNAFTAの時は、クリントン大統領がTPAを付与され、その後の多くのFTA(米韓も含む)は、ブッシュ大統領がTPAを付与された。TPAは2007年7月1日に失効した。これを復活させるため、TPP交渉のTPA法案が2011年9月に採決された。共和党が多数を占める下院では可決されたが、上院では賛成規定数(60票)に届かず、賛成45、反対55で否決された。
 2012年の選挙では(2013年1月からの議会)、下院は共和党が抑えたが、上院では、民主党議員が53名、独立系2名を会派に入れ、55名の多数派(現53名)、共和党45名となり、TPPに関するTPA法案の可決は困難である。オバマ大統領やUSTRが、TPAを獲得する見通しを持っているのか疑問である。現11カ国と合意に達しても、TPAがなければ、USTRは協定に署名できない。

選挙結果
http://www.politico.com/2012-election/map/#/Senate/2012/


「パブリック・シチズンの2012年選挙の分析」
FTAに反対する候補が勝利している。
候補の294のキャンペーンを調べている。このなかで唯一現貿易協定を支持するキャンペーンを行ったハワイ州知事の共和党リンダ・リンゲル候補が接戦と予想されていた上院議員選挙でヒロノ下院議員に26%(62.6%:37.4%)の差を付けられ敗北した。ヒロノ下院議員は、2011年の3つのFTAに反対した福島生まれの議員。
大統領選では、オバマもロムニーも中国の貿易問題に終始して、これまでのFTAについては言及しなかった。
ロシアとの貿易協定は今週議会で採決されるが、残った最大のテーマはTPP。オフショア(雇用流出)、日本の参加問題、バイ・アメリカン、政府調達など、2013年の議会は、大きな対立を引き起こすであろう。
ワラック氏曰く「train wreck:無茶苦茶」になるだろうと。
Kansas City Star紙(記事が消去されている。下記Public Citizenのレポート参照。)
http://www.kansascity.com/2012/11/14/3917301/post-elections-trade-deals-might.html
Public Citizen調査(上記記事の元のレポート)
http://www.citizen.org/documents/2012-election-report.pdf


「米国内のTPP反対運動」
パブリック・シチズンなどの市民団体に加え、労働組合や議員の活動が増加。特に、ISDSによる「バイ・アメリカン法」の廃止懸念が大きく取り上げられてきた。
これらの活動により、TPPの本質「米国に籍を置くグローバル産業が加盟国の主権を奪う契約であること」の理解が広まってきた。
(本ブログの過去の投稿に紹介)


「TPPの本質」
 城内実衆議院議員と関岡英之先生の対談{TPP参加への警鐘」が城内議員のブログに掲載されている。
「アメリカにとって有利な貿易・投資ルール域外に広げることだ。アメリカはNAFTAでは、南北で国境を接するカナダとメキシコにアメリカ型の貿易・投資ルールを飲ませた。それによってアメリカの企業が隣国であるカナダやメキシコで傍若無人に振る舞えるようになった。ISDS条項という国際協定上の強制力がある訴訟条項によって、アメリカ企業が相手国政府を訴えることができる強大な権限が与えられた。・・・今年3月に米韓FTAが発効した。韓国人が毒素条項と呼んでいるISDS条項がこのFTAには盛り込まれている。米国は『米韓FTAはTPPの予行演習』とみている。つまり、最終的にはTPPに持ち込みたいルールをまず米韓FTAに盛り込んだのであって、本当の狙いは韓国よりも日本なのだ。」
http://www.m-kiuchi.com/2012/12/01/sekiokahideyukisensei/