並列助詞の「と」「か」「や」について | ボラとも先生のブログ

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このブログは日本語ボランティアを始めた人、やっている人が疑問に感じたこと(特に文法など)について説明するために作りました。

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ボラQ42:教科書に「AB」という表現が出てきたのですが、「AB」、「AB」との違いがよくわかりません。どうやって説明したらいいでしょうか。



ボラとも先生A42:簡単に言えば、①「AB」は「ABの2つだけ」、②「AB」は「ABのどちらか1つだけ」、③「AB」は「たくさんあるうちのAB」ということになります。


①「ビールとワイン」…ビールとワインだけ、日本酒やウイスキーはない。

②「ビールかワイン」…ビールかワインのどちらか1つ。

③「ビールやワイン」…ビールとワインは代表として挙げたが、同種のものがまだある。


以下に注意すべき点を挙げておきます。


AB」ではABも名詞でなければいけません。「と」が結び付けられるのは名詞だけなので、動詞や形容詞などの「述語」を結び付けるにはテ形を使います。また、文と文を結び付ける場合は「そして」や「それから」を使います。「そして」と「それから」の違いは、時間の前後関係を意識するかしないかです。「その後で」というように意識した場合は「それから」を使いますが、そうでなければ「そして」を使います。


④「ご飯を食べ学校に行きました。」(動詞+動詞)

⑤「お寿司は安くおいしいです。」(形容詞+形容詞)

⑥「ご飯を食べました。そしてそれから学校に行きました。」(文+文)


ただし、以下の例文⑦のように、動詞と動詞を「と」で結び付ける場合もありますが、この「と」はテ形と同じように述語と述語を結び付ける「接続助詞」で、上記の「並列助詞」とは意味・用法が違います。単に2つの動詞を結び付けるのではなく、「と」の前の動詞が「と」の後ろの動詞の条件を表していて、「~するときはいつも(必ず)…する。」という意味になります。ただし、この接続助詞の「と」はもう少しあとで勉強するので、初級の最初で教える必要はありません。


⑦「まっすぐ行く公園があります。」


次に「AB」ですが、「か」は「AとBのどちらか一方」を選ぶ(二者選択)するときに使います。上記の「と」とは違って動詞や形容詞などの「述語」も結び付けることができるのですが、「述語」を「か」で結び付ける場合はいろいろな条件があるので、初級では「と」と同じようにABが名詞で、動詞の主語か目的語の場合に限ったほうがいいと思います。


⑧「明日はAさんかBさんが来ます。」(主語)

⑨「私はときどきビールかワインを飲みます。」(目的語)


この場合でも、「か」は終助詞の「か」と同じように話し手にとって未知の情報を表すため、選択結果が分かっているときには使えないことに注意してください(以前の記事№38参照)。


⑧´「昨日はAさんかBさんが来ました。」(?)

⑨´「私は昨日、ビールかワインを飲みました。」(?)


上記の⑧は未来のことであり、この文の話し手にとって「Aさんが来るかBさんが来るか」はまだわかっていないため、問題ないのですが、これが⑧´のような過去の文になると、どちらか一方が来たという意味になってしまい、少しおかしな文になってしまいます。どちらかが来たことがわかっているなら、「Aさんが来ました。」または「Aさんしか来ませんでした。」と言うのが普通だからです。


また、⑨は習慣を表していて、「ビールかワイン」の二者択一ではなく、ビールを飲むこともあるしワインを飲むこともあるという意味なので、問題ないのですが、⑨´は昨日のことなのにどちらを飲んだか覚えていない(ほど酔っていた)という意味になってしまいます。


また、AとBが「名詞+です」または「形容詞+です」という文型の疑問文の場合は、以下のように「ですか」を繰り返す必要があることに注意してください。そして、この種の疑問文には「はい」「いいえ」で答えられないことにも注意が必要です。


⑩「あの人はAさんですか、Bさんですか。」→「Aさんです。」

⑪「A先生はやさしいですか厳しいですか。」→「厳しいですよ。」


最後に「AやB」ですが、基本的に2つ以上のものがある場合に例としてAとBを挙げるわけですが、会話ではAとBの2つしかないのに「AやB」を使うことがあります。


⑫「最近の若い人は右手や左手に指輪をたくさんつけています。」


指輪は手の指にするものですから、「右手と左手」と言うべきところを⑫のように言う人もいるようです。


さらに、「や」は同種のものの一部分(普通は2つ)を挙げることから、「AやBなど」のように「など」を付け加えることができますが、「AとB」、「AかB」はそれで全部なので「など」を付け加えることができません。


また、「や」は「と」と同じように名詞しか結び付けることができません。しかし、あとで習う「~たり、~たりします」という文型は2つ以上の動詞を結び付けて、2つ以上の動作(できごと)の中から代表的なものを例として挙げるという、「や」と同じような働きがあることを知っておくと便利です。