先日,このブログでもお話ししましたが,親子の面会交流を実現する全国ネットワークである「親子ネット」からお誘いをいただき,12月7日(土)に,東京の池袋で開催された講演会「離婚後親権制度について改めて考える」において,私が担当させていただいている東京地裁での離婚後単独親権制度違憲立法不作為訴訟のお話をさせていただきました。講演のタイトルは,「離婚後親権制度について改めて考える~憲法の視点から~」です。

 

 

 

 

親子ネットHP/2019年12月7日親子ネット講演会 離婚後親権制度について改めて考える

 

 

 

 

弁護士作花知志のブログ/12月7日に親子ネットで離婚後単独親権制度違憲立法不作為訴訟の講演を行います

 

 

 

 

講演会では,本年2月の国連による共同親権立法勧告の原動力となったCRC日本の福田雅章先生,ステップファミリー支援の第一人者であるSAJ緒倉珠巳先生の講演,さらには講師3名と国会議員の方々(三谷英弘衆議院議員,真山勇一参議院議員,串田誠一衆議院議員,円より子前参議院議員)によるパネルディスカッションが行われました。豪華なメンバーで,参加された方も喜んでくださったことと思います。

 

 

 

その講演会でもお話したことですが,私は現在の民法が規定する離婚後単独親権制度には,「欠陥」があると思っています。それは,次のようなことです。

 

 

 

元々,明治憲法時代は家制度に基づき,夫婦が離婚したら,子の親権者は父親がなっていました。父親が親権者というよりは,「生まれた子は家の子である」という思想です。

 

 

 

それに対して,現在の日本国憲法が制定された後,民法の改正がされた際に,その離婚後の親権者を,「父又は母」から選ぶ,という制度に変更されました。それが「男女平等」を唱う日本国憲法の理念に合致する,とされたからです。

 

 

 

ところが,離婚後親権者となった後,その単独親権者が死亡した場合,子の親権者はどうなるのか,という問題があります。そのような場合,離婚後親権者とならなかった者が,当然に親権者となるわけではないのです。実務の運用としては,離婚後の単独親権者が死亡した場合,後見が開始する,とされているのです。また,離婚後親権者とならなかった者が,親権者変更の申立を行うこと自体は実務で認められているのですが,その申立を行っても,当然に親権者の地位を回復するわけではないのです。

 

 

 

すると,当然問題が生じます。離婚後単独親権者となった者が死亡した後,未成年者である子の親権を行使する者がいなくなるのです。逆に,離婚後共同親権制度であれば,親権者の片方が死亡したとしても,もう片方が親権者であり続けるのです。

 

 

 

この問題(私は法律制度の「欠陥」だと思っています)が生じるにも拘わらず,現在の離婚後単独親権制度の法改正が日本国憲法制定後に行われたことは,当時は「親権制度」は「親の制度」であり,「親の間で男女平等が実現できれば問題はないのだ」と考えていたのだと思うのです。逆を申すと,「離婚後単独親権制度を採用することで,子の親権者がいなくなる可能性が生じる」という,子の福祉の保護を優先する考えがされていなかったのだと思うのです。

 

 

 

すると,女性の再婚禁止期間についての最高裁大法廷平成27年12月16日判決においても,「親子法は子の福祉の保護を実現するためにある」との判示がされているように,21世紀の現在では「親子法」が「子の福祉の保護」のための制度であるとされている中で,離婚後単独親権制度がもはやその要請を充たしていないことは明白ではないか,と思います。

 

 

 

そのようなお話を中心としたお話を,親子ネットの講演会ではさせていただきました。後日いただいた御連絡では,多くの方から,好評の御意見があったそうです。その御意見はきっと,私の講演そのものに対する評価というよりは,離婚後共同親権制度が,子の福祉の保護を実現できる制度であるということ自体に対する評価だったように感じています。12月7日は寒い日でしたが,それにも拘わらず講演会にいらしていただき,私の話を聞いてくださった方々に,改めてお礼を申し上げます。