漢文句法を身体にしみこませよう!(基本知識編)

 

このページは、「網羅的に復習しきれない」と言う高校3年生のために、確認すべき基礎事項をできるだけ簡易な形で整理し、ドリルすることを目的としたものです。

 

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否定

疑問反語

詠嘆・使役・受身

仮定・限定・累加

比較・選択・抑揚・願望

 

 

11 比較形

 

 基本知識(空欄補充)

 

比較形は無論、二つ(以上)のものを比べて比較する形。次の三つの形を覚える。

 

①A於B

前置詞として用いられる「➀・②・③」を用いた表現。これらは、「時間」「場所」「対象」「目的」「起点」などを表し、「ニ」とか「ヲ」とか「ヨリ」などという送り仮名を引き出してくる働きがあるが、比較の場合にも用いられる。「於・于・乎」があることによって、比較の対象となる語に「④・➄」という送り仮名が取られる。「モ」は強めだからどちらで読んでも意味は変わらない。
同じ形が受身形で動詞と「於・于・乎」が組み合わされることで「~➅~ル(ラル)」という受身の意味が引き出されてくることも大事)。受身の場合、Aは動詞だが、比較の場合には状態を表す形容詞がAに来ることが基本。例えば
冬寒於秋であれば(⑦)と読む。意味は言うまでもない。

 

→【空欄】➀②③於・于・乎・④➄より・よりも・➅に・⑦ふゆ、あきより(も)さむし

 

②A不如B

「不如」、あるいは「不⑧」であっても同じ。「AはBに(⑨)」と読み、「AはBに(⑩)」という意味。いわゆる劣等比較の表現。難しいことを考えるより、百聞不如(⑪)、「百回聞くことは(⑫)」で覚えてしまえば大丈夫。

 

→【空欄】⑧若・⑨しかず・⑩及ばない・⑪一見・⑫一回見ることに及ばない

 

■三つ目は最上級の形。これには二つの表現がある。

③A莫B於C

「AはCより(も)B(なる)はなし」という形で、「AでBよりCなものはない」という意味を取る。「水莫大於海」であれば「水、海より大なるは莫し」と読まれ、「水に関しては(⑬)」という意味になる。禍莫大焉なら「⑭」と読まれ、「不幸でこれよりひどいものはない」という意味になる。

 

→【空欄】⑬海より大きいものはない・⑭わざわい、これよりだいなるはなし

 

③A莫如B

最上級のもうひとつの表現。「如」の位置に「⑮」という字が使われても同じ。これを「AはBに(⑯)」と読み、「AではBに(⑰)」という意味を取る。例えば、衣莫若新、人莫若故なら「いはあたらしきにしくはなく、(⑱)」と読み、「衣服は新しいものに及ぶものはなく、(⑲)」という意味になる。いいことばだ。

 

→【空欄】⑮若・⑯しくはなし・⑰及ぶものはない・⑱ひとはふるきにしくはなし・⑲人は古なじみに及ぶものはない

 

 

簡易な例文でおさらい

■読んで訳してみよう。(解答は上記文中にあるものもありますが、リンクページで例文の該当番号を見て下さい→例文解答ページ

 

 

 

■白文でも読んでみよう。

70・冬寒於秋

71・百聞不如一見

72・水莫大於海

73・衣莫若新、人莫若故

 

 

 

12 選択形

 

基本知識(空欄補充)

 

選択形は二つのものを比べてどちらかを選ぶ形。「二つを比較して、どちらかと言えば○○だ」というニュアンスである。いろいろバリエーションがあって複雑そうに見えるが、ざっくり言ってしまうと、「」が「➀ろ」と読まれ、「与其B」が「そのB(②)りは」(このときの「其」は語調を整える働きであり特に意味を取らないで構わない。)と読まれる事を押さえておくことが一番大切だ。

 

→【空欄】➀むし・②よ

 

①寧A無B・寧A不B

これは「寧ロAストモBスル無カレ(Bセズ)」と読まれる。理屈を覚えようとするより、次の例文を暗記してしまえばそれでいい。「寧為鶏口、無為牛後」。(③)と読み、「鶏口(小さいものの頭)」になっても「牛後(大きいものの尻)」になるなとしている。

 

→【空欄】③むしろけいこうとなるとも、ぎゅうごとなるなかれ 

 

②与其B~の形

与其B寧A(其のBセンよリハ寧ろAセン(セヨ))

与其不如A(其のBセンよリハAするに如カず)

与其孰与A(其のBセンよリハAに孰与(いづ)レゾ)

このような形があるが、「与其A」(Aよりは)に(Bの方がよい)ことを示す「寧」「不如」「孰与(孰若)」が組み合わされているだけなので、そのそれぞれをしっかり理解できていれば大丈夫。

与其不孫也、寧固なら「④」と読み、意味は(不孫=尊大・固=頑固)「⑤」となる。

また、与其有楽於身、孰若無憂於其身なら「⑥」と読まれ、(⑦)という意味である。

 

→【空欄】④そのふそんならんよりは、むしろこなれ・➄尊大であるよりはむしろ頑固である方がよい・⑥その身に楽しみあらんよりは、その心に楽しみあるにいづれぞ・⑦肉体的な楽しみよりは、心に心配がない方がよいのではないか。

 

 

簡易な例文でおさらい

■読んで訳してみよう。(解答は上記文中にあるものもありますが、リンクページで例文の該当番号を見て下さい→例文解答ページ

 

 

■白文でも読んでみよう。

74・寧為鶏口、無為牛後

75・与其不孫也、寧固  

76・与其有楽於身、孰若無憂於其身

77・新垣結衣孰与堀北真希  

→(後者に重きがある)

78・其生而無義、固不如烹 ※烹=にラルルニ

 

 

 

13 抑揚形

 

基本知識(空欄補充)

 

抑揚形の「抑」は「おさえる」という意味であり、「揚」は「あげる」という意味。すなわち抑揚形は、「AでさえBである」とまず程度の低い(軽い)Aを軽くおさえて言い、次に「ましてCはなおさらBだ」と程度の高い(重い)Cを強く揚げることで、「CがBだ」ということを(①)する表現なのである。

つまり「AでさえBである。ましてCはなおさらBだ」という表現。難しいことではなく、例えば「この問題はA君でさえ解ける。まして自分ならなおさら(簡単に)解けるはずだ」の表現と同じ。古典文法の副助詞「②」「③」の「類推」の用法(「だに~まい(し)て~」の構文)と同じである。これらは「~(④)」と訳し、より程度の重いものを「類推」させるのである。

 

→【空欄】①強調・②③だに・すら・④さえ

 

 

■抑揚形の基本は、A(ハ・スラ)B、況ヤCヲヤ。これは「⑤」と読み、「AでさえBなのだから、(⑥)Cなら(⑦)」という意味になる。文末に「乎」の字がなくても、「ヲヤ」を送り、「況ンヤ」に「ヲヤ」を呼応させる。晩秋寒、況冬乎なら「晩秋は寒し。(8)」と読み、「晩秋は寒い。(9)」となる。

 

→【空欄】⑤Aすら(は)B。いはんやCをや・⑥まして・⑦なおさらだ・⑧いはんやふゆをや・⑨まして冬ならなおさら

 

 

■いろいろなバリエーションはあって、前半部分「AハB」「AスラB」「Aスラ且ツB」「Aスラ猶(尚)ホB」「Aスラ且ツ猶ホB」などがある。鬱陶しいと思うかも知れないが、「且ツ」「猶(尚)ホ」は抑揚形ではその意味を訳す必要がないので、「AスラB」の形だと承知していればいい。

「スラ」は先程書いたように、「類推」を表し、「~(⑩)」と訳されると承知していれば問題はない。死馬且買之五百金、況生馬乎なら「死馬(⑪)且(⑫)之を五百金に買ふ。(⑬)生ケル馬(⑭)」と読まれるが、「死んだ馬(⑮)大金で買ったのだから、(⑯)生きている馬は(⑰)高く買うと思うだろう」と意味を取ればいい。

 

→【空欄】⑩さえ・⑪すら・⑫つ・⑬況んや・⑭をや・⑮でさえ・⑯まして・⑰なおさら

 

 

■一方で後半部分にもいくつかのバリエーションがある。

先ほどやった「況ンヤCヲ乎」の形の変形で況於C乎(況ンヤCニ於イテヲヤ)があるが、これは「況ンヤCヲ乎」が解っていればクリアできる。而ルヲ況ンヤCヲ乎となっていれば「而ルヲ」を(⑱)で訳せばいいだけだ。

また反語の形をとるケースもある。安C乎は「⑲」と読まれ、「⑳」という意味を取る。「何ゾ」「誰カ」など他の反語形が来ることもある。反語形を理解し、素直に反語の意味を取ることができれば、文意を読み損ねることはない。蛇足的に言えば「況ンヤ~ヲヤ」も「言おうか、いや言うまでもない」という反語表現である。

 

→【空欄】⑱逆接・⑲いづくんぞCせんや・⑳どうしてCするだろうか、いやしない。

 

 

簡易な例文でおさらい

■読んで訳してみよう。(解答は上記例文中にあるものもありますが,

リンクページで例文の街頭番号を見て下さい→例文解答ページ

 

 

■白文で読んでみよう。

79・死馬且買之五百金、況生馬乎  

80・庸人尚羞之。況於将相乎

81・富貴則親戚畏懼之、貧賤則軽易之。況衆人乎  

82・臣死且不避、卮酒安足辞

 

 

 

14 願望形

 

基本知識(空欄補充)

 

 願望にもさまざまなかたちがあるが、次の二点は押さえておく。

 

■願望形の代表的な形は文頭に「請フ~・願ハクハ~・庶幾ハクハ(庶ハクハ・冀ハクハ)~」を置く形である。「庶幾ハクハ(庶ハクハ・冀ハクハ)~」の読みは前の二つを合わせ、「➀ハクハ」と読む。これは読めることが大事。意味はどれも「(②)~」と訳すと記憶しておけばよい。

■大切なのは文末で、が「ン」という意志・希望の助動詞で結ばれていれば、自己の願望を表し、「(③)~(④)」と意味を取り、文末が(➄)形で結ばれていれば、相手への希望を表し、「(⑥)~(⑦)」と意味を取ることを押さえたい。

 

→【空欄】➀こひねが・②どうか・③どうか・④させてください・⑤命令・⑥どうか・⑦してください。  

  

簡易な例文でおさらい

■読んで訳してみよう。(解答は上記文中にあるものもありますが、リンクページで例文の該当番号を見て下さい→例文解答ページ

 

 

■白文でも読んでみよう。

83・王好戦。請以戦喩。  

84・願大王急渡。  

85・王庶幾改之。