漢文句法を身体にしみこませよう!(基本知識編)

 

このページは、「網羅的に復習しきれない」と言う高校3年生のために、確認すべき基礎事項をできるだけ簡易な形で整理し、ドリルすることを目的としたものです。

 

他の句法へのリンク

再読文字 

否定

疑問反語
詠嘆・使役・受身
仮定・限定・累加
比較・選択・抑揚・願望

 

 

 

8 仮定形

 

基本知識(空欄補充)

 

仮定形は基本的には「もし~(➀)」という順接の場合と、「たとえ~(②)」という逆接の場合がある。形としては仮定の副詞や接続詞を用いたもの、文脈から仮定を表す場合などがあるが、例によってポイントを簡単につかむとすれば、仮定を表す漢字が読めるかどうか、古典文法の仮定条件の「ば」が意識できるかどうかの二つに整理して考えたい。

 

①仮定を表す字

仮定を表す字(副詞・接続詞その他)が読めれば基本的に問題なく意味が取れるのが仮定形である。

 

如シ

仮定形では「③シ」と読む。若シも同じ。読めるかどうかだけが問題。

ただ気をつけなくてはならないのは、「」にはたくさんの読みがあって同じ如シ・若シであっても、例えば「山を為るが如し」など比況形では「④シ」と読むし、百聞不如一見など比較形では「如(若)ク」は「➄ク」と読まれる。また「若」は「お前」という意味で「➅」とも読まれ、「如」は動詞として「⑦ク」と読まれたりもする。文脈に良く注意してどの読みを取るか考えなければいけない。

読みの問題や白文の問題では、基本的に「もし」は文頭に置かれやすいこと、下に「もし」を受ける接続助詞「バ」の存在(あるいは、「ば」の示す条件のニュアンス)を確認することが必要である。

 

苟クモ

「⑧クモ」と読む。これは僕らの語感になく、意識して覚えなければいけないかも知れない。基本的に順接の仮定を表し、「(⑨)~ならば」という意味である。

 

縦ヒ

「⑩ヒ」と読む。もちろん(⑪)という意味をとればいい。逆接の仮定を表している。鬱陶しいが「縦」のほかにも「仮令・只使・縦令・設令・仮設・仮使」なども「たとヒ」と読まれる。似たような字の組み合わせであるとも言えるが、覚えきれないぞ!とも思う。かなが送られていなければ「(たと)ヒ」~「トモ」という二つの送り仮名から類推しよう。

 

雖モ

「⑫モ」と読む。これも読めてしまえば何でもない。逆接の仮定で「たとえ~(⑬)という意味。「雖」に返る直前の字には必ず「ト」が送られるので、「ト雖モ」と覚えてしまうと良い。

■以上が仮定形で読めて欲しい字だが、他にも例えば「微カリゼバ」は「(⑭)カリセバ」、「不者ンバ」は「(⑮)ンバ」などは覚えておきたい。

 

 

②接続助詞「ば」

他にも仮定形には様々な形がある。例えば「AヲシテBせシメバ」「今Aバ」「Aバ則チB」(「レバ則」の形をとることが多い)など。しかし神経質になり過ぎずとも、文脈をたどる中で「バ」の存在が自然と仮定であることを教えてくれる。「バ」は接続助詞で、古典文法で(⑯)形+「ば」が(⑰)条件、(⑱)形+「ば」が確定条件を表すとことを学習した。これに従えばよい。

ただ、漢文においては、その読みが江戸時代に整備されたこともあって、このあたりの区別が厳密ではなく、未然形+「ば」はもちろん、「已然形」+「ば」も慣用的に仮定条件に用いられる。従って、如詩不成が「如し詩成らざれば」と読まれても仮定を表すことになる。

混乱するかも知れないが、如詩不成は普通、「如し詩(⑲)」と読まれるが、これは「如し、詩ならずは」(「ず」+係助詞)、を漢文的な読み方で読んだものだ。同じように、連用形+「んは」の形で「なくんば」「ずんば」「べくんば」のような読みがあることも読み慣れて承知しておきたい。

 

→【ここまでの空欄】

➀なら・②としても・③も・④ごと・➄し・➅なんぢ・⑦ゆ・■⑧いやし・⑨もし・かりにも■⑩たと・⑪=たとえ~■⑫いへども・⑬としても■⑭な・⑮しからず■⑯未然・⑰仮定・⑱已然・⑲ならずんば

 

 

簡易な例文でおさらい

■読んで訳してみよう。(解答は上記文中にあるものもありますが、リンクページで例文の該当番号を見て下さい→例文解答ページ

 

 

 

■白文でも読んでみよう。

53・如詩不成、

54・苟能充之、

55・縦彼不言、籍(人名)独不愧(はズ)於心乎

56・雖有舟、

57・越官則死(ころされ)

58・民無信不立 

59・非其君不事

60・使臣用之、則君反制於臣矣

61・今王必欲致士、先従隗始  ※隗=人名

 

 

 

9 限定形

 

基本知識(空欄補充)

 

限定形はその名の通り、「(➀)~(②)」と「限定」する表現である。ただ、古典文法の副助詞「のみ」に限定と(③)の意味があるように、漢文においても文脈によっては(③)のケースもあることも少し頭に入れておこう。限定形については限定形を表す副詞、文末の用いる助字が読めればそれで基本的に問題はない。

 

①限定の副詞

限定形を表す副詞には二つあって、一つは「④ダ」と読まれる副詞。「惟・唯・只・徒・但・祇・特」などの字がこれに該当する。もう一つは「独」で「➄リ」と読まれる。ともに「➅」という送り仮名を取り(省略される場合もある)、「(⑦)ダ~(⑧)」「(⑨)リ~(⑩)」という読みで、「(⑪)~(⑫)」という意味を取ればよい。

また限定の副詞に呼応して「ノミ」という送り仮名が送られる場合は、限定の副詞の次の字に送ることを基本とする。

 

②文末の助字

文末に用いる助字は「⑬」と読まれる字の一群である。基本的な限定の助字は「⑭」。それに接続詞の「而」をつけて意味を強めた「⑮」。それに強意の助字である「矣」をつけて更に意味を強めた「⑯」も「ノミ」と読まれる。また「而已」の「ジイ」という音を借りた当て字として「⑰」「⑱」も「ノミ」と読まれる。この他にもこれらの字を組み合わせたものもあるが、この五つの基本をしっかり頭に入れよう。

 

→【空欄】■➀ただ・②だけ・③強意■④た・➄ひと・⑥のみ・⑦ただ・⑧のみ・⑨ひとり・⑩のみ・⑪ただ・⑫=だけ■⑬のみ・⑭已・⑮而已・⑯而已矣・⑰⑱耳・爾

 

 

簡易な例文でおさらい

■読んで訳してみよう。(解答は上記例文中にあるものもありますがリンクページで例文の街頭番号を煮て下さい→例文解答ページ

 

 

■白文でも読んでみよう。

62・惟有黄昏鳥雀悲

63・今独臣有船

64・此妄言耳 

65・夫子之道、忠恕而已矣

 

 

 

10 累加形

 

累加形もその名のごとく、あることの上に更に他のことを付け加える表現であり、形として否定語+限定の副詞と、反語+限定の副詞という二つのパターンがある。覚えるのに大変な句法だが、基本的には否定形・限定形・反語形が組み合わされたものだと考え、それぞれの句法に従えば大丈夫と考えるといい。

 

①否定語+限定の副詞の場合

「不」「非」という否定語に「たダ(惟・唯・只など)」「独り」という限定の副詞が組み合わされ、「(➀)~(②)、~だ」という意味になる。このとき注意しなければならないのは「惟・唯」などが「たダ」ではなく、「たダ(③)」と読まれるのが累加形の特徴であることだ。「たダ」が「たダ(③)」と読まれることで強調されている。「不唯~」は「たダ(④)~(⑤)」と読まれ、「非唯~」なら「たダ(⑥)~(⑦)」と読まれ、ともに「(⑧)~(⑨)、~だ」という意味になる。例えば、不惟愛之、憎之ならば「⑩」と読み、「ただこれを愛するだけでなく、憎むのだ」という意味になる。

 

②反語+限定の副詞の場合

「豈ニ」「何ゾ」という反語を表す字が、限定の副詞と組み合わされ、「(⑪)~だけだろうか、いや~(⑫)」という意味になる。この場合でも限定の副詞が「惟ダ・唯ダ(など)」である場合には「たダ」ではなく、「たダ(⑬)」と読まれることに注意しなければならない。「豈唯~」なら「(⑭)ニ(⑮)ニ~(⑯)」と読まれる。例えば、豈唯愛ならば、「豈に唯に愛するのみならんや」と読まれ、(⑰)という意味になる。「何独~」は「何(⑱)独(⑲)~(⑳)」と読まれる。例えば。何独愛ならば「㉑」と読まれ、「どうして愛するだけだろうか、いや愛するだけではない」という意味になる。「独リ」が反語で用いられるときには「~だけ」という意味をとらないことも押さえておこう。

 

→【空欄】■①ただ・②だけではなく・③に・④に・⑤のみならず・⑥に・⑦のみにあらず・⑧ただ・⑨だけではなく・⑩ただにこれをあいするのみならず、これをにくむ■⑪どうして・⑫だけではない・⑬に・⑭あ・⑮ただ・⑯のみならんや・⑰どうしてただ愛するだけだろうか・⑱ぞ・⑲り・⑳のみならんや・㉑=なんぞひとりあいするのみならんや

 

 

簡易な例文でおさらい

■読んで訳してみよう。(解答は上記文中にあるものもありますが、リンクページで例文の該当番号を見て下さい→例文解答ページ

 

■白文でも読んでみよう。

66・不惟愛之、憎之  

67・豈唯愛 

68・臣不惟能造舟、而又能操舟 

69・故郷何独在長安