漢文句法を身体にしみこませよう!(基本知識編)

 

このページは、「網羅的に復習しきれない」と言う高校3年生のために、確認すべき基礎事項をできるだけ簡易な形で整理し、ドリルすることを目的としたものです。

 

 

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再読文字 

否定

疑問反語
詠嘆・使役・受身
仮定・限定・累加
比較・選択・抑揚・願望

 

 

 

5 詠嘆形

 

基本知識(空欄補充)

 

詠嘆形には三つのタイプがある。

 

■①文末に詠嘆の助字を用いる形

文末に「➀」と読まれる詠嘆の助字を用いる。「哉・矣・乎・夫・也・与・邪」など様々な字が当てられる。これらは疑問反語の終尾詞群だとして理解し、その用法の中に詠嘆も含まれていると考えればよい。特別なフレーズとして「已矣」「宜矣」(「矣」は別字も当てられる)がよく登場するが、前者は「②」と読まれ、(③)という解釈。後者は「④」と読まれ、(➄)という解釈である。

 

■②文頭に感動詞を用いる形

もうひとつは、文頭に「➅」と読まれる「嗚呼・噫・嗟・唉・干嗟・嗟乎」などの字が用いられる。覚えきれないが、文章を読む中で雰囲気を捕まえたい。感動詞は独立性が強いので、「ああ」の後に読点が打たれていることが多い。また文末に先ほどの詠嘆の助字を伴う形もある。これらは読めれば、それで大丈夫。

 

→【ここまでの空欄補充】

■➀かな・②やんぬるかな・③これまでだなあ・④むべなるかな・➄もっともだなあ・■➅ああ

 

 

③疑問・反語の形を用いる

疑問・反語の形を用いて詠嘆を表すケースであり、これが大事。「どうして~だろうか」の形であるが、「(➀)~ことだ」と意味がとれれば詠嘆形である。

ゾA也豈ニA哉不亦A乎の三つの形を覚えておきたい。

不亦A乎という形は「亦たAならずや」と読み、「なんとAではないか」という詠嘆を表す。論語に不説亦乎という有名な言葉があり、「②」と読み、(③)と解釈するが、「説」の読み方とともにこの例文で覚えてしまいたい。何ゾA也なら、例えば、是何楚人多也は「④」と読まれ、「(➄)楚の国の人が(➅)」という解釈になる。豈ニA哉は例えば「豈不誠大丈夫哉」なら「⑦」と読み、「(⑧)本当の優れた男(⑨)」と解釈する。

 

★特に何ゾA也豈ニA哉が白文で出題される場合、文脈に従い、疑問、反語、詠嘆のいずれであるか判断することが求められる。

 

何ゾA也は、例えば、是何楚人多也は、反語で「⑩」と読むことができ、疑問の読みは、基本的には詠嘆と同じ「④」の読み方となろう。

 

豈ニA哉については反語というイメージが強いが、疑問や詠嘆も表す。

詠嘆の場合の特徴は、ひとつは、文末が【否定語の終止形+や】と読まれること。疑問であれば【連体形+か】が基本(詳しくは疑問形の解説を見てください)、反語であれば【未然形+ん・んや】が基本である。

二つ目は、「豈」が「豈不・豈非」のように否定語と結びつくこと。これが詠嘆の必要条件だが、ただ十分条件ではなく、否定語と結びついていても疑問や反語の場合はある。ややこしいが、「不・非」を伴わなければ詠嘆ではないということである。

三つ目は、詠嘆であるので、豈ニA哉のAにあたる部分は、状態や様子を表す、形容詞・形容動詞・体言+「なり」であることが多い。

→以上のことを整理すると、豈不A乎は「⑩」と読まれ、豈非A哉は「⑪」と読まれ、ともに「何とAではないか」という解釈をする。くどいが、例えば、豈不哀乎は、詠嘆で「⑫」と読まれ、反語なら(⑬)、疑問なら(⑭)と読まれることになる。

 

細かな読みわけまできちんとわかっていなくてもよいと思うが、疑問、反語、詠嘆が近接した表現で、文脈によって考えなければいけないということは覚えておきたい

 

→【ここまでの空欄補充】

■➀なんと・②またよろこばしからずや・③なんと喜ばしい・④これなんぞそひとのおほきや・➄なんと・➅多いことだ・⑦あにまことのだいじゃうぶならずや・⑧なんと・⑨ではないか・★⑩あにAならずや・⑪あにAにあらずや・⑫あにかなしからずや・⑬あにいはざらんや・⑭あにいはざるか

 

 

簡易な例文でおさらい

■読んで訳してみよう。(解答は上記文中にあるものもありますが、リンクページで例文の該当番号を見て下さい→例文解答ページ

 


 

■白文でも読んでみよう。

40・嗚呼、天将棄予

41・呉王曰「善哉」

42・是何楚人多也

43・不亦説乎

44・豈不哀乎(詠嘆で読もう)

45・豈不言乎(反語で読もう)

46・豈不言乎(疑問で読もう)

 

 

 

6使役形

 

基本知識(空欄補充→解答は末尾に)

 

使役は「人を使って何かを(➀)」という表現である。文語文法では使役を表すのに(②)(③)(④)の助動詞を用いるが、漢文(あるいは漢文訓読長の文章)では専ら(➄)が用いられる。

 

■①使役の助字

この「➄」に当たる字として「➅・⑦・⑧・⑨」などがあり、これらを使役の助字と呼ぶ。それぞれ順に「人を使って~させる」「人に命令して~させる」「人に教えて~させる」「人を派遣して~させる」というニュアンスになるが、基本的に「・・に~させる」と訳せれば問題はない。

 

■②使AB

これらの使役の助字を用いた使役形の典型として大切なのは「使AB」(Aは人物など、Bは動詞の未然形)という表現。「A(⑩)B(⑪)」と読まれる。よく間違うのは、つい「Aニ~」と読んでしまいがちになること。

もう一つ、「AヲシテBセシム」と覚えて「使人書」を「人をして書かせしむ」と読んでしまいがちになるが、「Bセ」は動詞の未然形をサ変で代用しているだけなので、「使人書」は「人をして(⑫)」が正しい。まとめとして一つ読んでみると、有使涓人求千里馬者は「⑬」と読まれる。

 

■③使役を暗示する字から使役を読む

使役の助字がなくても、「命・説・召・属」などの使役を暗示する動詞がある場合、送り仮名に「しむ」を送り、使役の形にして読む表現。「命じて~させる」「説得して~させる」「呼び招いて~させる」などの意。例えば命故人書之なら「⑭」と読み、説夫差赦越なら「⑮」と読む。

 

■その他、文脈上使役に読む場合もあるが、「シム」が送られていれば自然と使役であることが理解できるので、特に注意する必要はない。

 

→【空欄補充】

■➀させる・②③④す・さす・しむ・➄しむ■➅⑦⑧⑨使・令・教・遣・⑩をして・⑪せしむ・⑫書かしむ(書せしむ)・⑬けんじんをしてせんりのうまをもとめしむるものあり■⑭こじんにめいじてこれをしょせしむ・⑮ふさにときてえつをゆるさしむ

 

 

簡易な例文でおさらい

■読んで訳してみよう。(解答は上記文中にあるものもありますが、リンクページで例文の該当番号を見て下さい→例文解答ページ

 

■白文でも読んでみよう。

 

47・有使涓人求千里馬者

48・命故人書之

 

 

 

7 受身形

 

基本知識(空欄補充)

 

受身は「人に何かを(➀)」という表現。文語文法では受身を表すのに「②・③」の助動詞を用いるが漢文でも同じ。

 

■①受身の助字

これに当たる字として「④・➄・➅・⑦」などがあり、これらを受身の助字と呼んでいる。「見」という漢字に傍線が引かれ読みが問われていたら、まずこの「る・らる」であって、そこでもし「み(る)」と答えてしまう人は小学校に戻るべきだ。厚者為戮、薄者見疑なら、「あつきものは(⑧)」と読まれ、信而見疑、忠而被謗なら「しんにして(⑨)」と読まれる。受身形ではまずこれを大事にしたい。

 

■②為A所B

受身の大切な慣用表現として「為A所B」という形がある。これは「⑩」と読まれ、(⑪)という意味になる。先即制人、後則為人所制は「先んずれば即ち人を制し、後るれば則ち(⑫)」と読み、「他人より先行すれば人を制圧でき、後れを取れば(⑬)」という意味。ちなみに「為A所B」は「AのためにB(⑭)」と読むこともできる。

 

■③A於B

もう一つ受身形で注意しておきたい形がある。それは置き字「於(于・乎)」を用いた表現。前置詞の「於(于・乎)」は、「時間」「場所」「対象」「目的」「起点」などを表し、「ニ」とか「ヲ」とか「ヨリ」などという送り仮名を引き出してくる働きがあるが、受身の場合にも用

いられる。例えば、辱於奴隷人之手は「⑮」と読まれるが、動詞と「於」が組み合わされることで「~ニ~ル(ラル)」という受身の意味が引き出されてくる。もう一つ例をあげると、人喰虎なら「⑯」と読まれるが、人喰於虎なら「⑰」と読まれ、全く違う意味になるという具合である。

蛇足的に補足すると、比較形のところでまた触れるが、「A於B」という形は比較の場合にも用いられ、その場合は、Bの送り仮名として「⑱」や「⑲」が取られる。「A於B」という形に受身形、比較形の用法があることは知っておくべきである。

 

■その他に、文脈上受身に読む場合もあるが、「る・らル」が送られていれば自然と受身であることが理解できるので、特に注意する必要はない。

 

→【空欄補充】

■➀される・②③る・らる■④➄⑥⑦見・為・被・所・⑧りくせられ、うすきものはうたがはる・⑨うたがはれ、ちゅうにしてそしらる■⑩AのBする所と為る・⑪AにBされる・⑫人の制する所となる・⑬人に制圧される・⑭Bせらる■⑮どれいじんのてにはずかしめらる・⑯ひととらをくらふ・⑰ひととらにくらはる■⑱⑲より・よりも

 

 

簡易な例文でおさらい

■読んで訳してみよう。(解答は上記文中にあるものもありますが、リンクページで例文の該当番号を見て下さい→例文解答ページ

 

■白文でも読んでみよう。

 

49・信而見疑、忠而被謗

50・先即制人、後則為人所制 

51・辱於奴隷人之手

52・人喰於虎 (・人喰虎)