漢文句法を身体にしみこませよう!(基本知識編)
このページは、「網羅的に復習しきれない」と言う高校3年生のために、確認すべき基礎事項をできるだけ簡易な形で整理し、ドリルすることを目的としたものです。
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■再読文字
■否定
■疑問反語
3 疑問形 ・ 4 反語形
基本知識(空欄補充)
A 疑問形と反語形
疑問反語は文書読解のKEYであり、大事にしたい。まず、疑問形と反語形は基本的に同型であると考えてみよう。疑問は「~(だろう)か」と疑問を投げかけ、反語は、「~だろうか」という疑問の形で相手に問いかけながら、「いや、決して~でない」と反対の内容を強調して表現する句法である。そのどちらを取るかは文脈によって定める。古典文法における「係り結び」と同じだと考えればいい。疑問形・反語形とも、基本的には三つの形がある。
①疑問詞・終尾詞がある場合
②疑問詞があり終尾詞がない場合
③終尾詞のみの場合
B 疑問詞
まず、基本的な疑問詞を取り上げてみたい。これらの疑問詞はその読みと意味を確実に覚えておきたい。とりあえずここでは疑問形の例文を中心に紹介する。
■人物を問う場合は誰カ・孰カを用いる。古文でもそうだが、読みは「➀カ」で濁らない。英語で言えば「②」に当たる疑問詞。
誰加衣者(誰カ衣ヲ加ヘシ者ゾ)は(③)という意味になる。また、「誰ガ」(例:誰ガ家)となった場合は、英語では(④)に相当する。
→【空欄】➀たれ・②who・③誰が衣をかけたのか・④whose
■事物を問う場合は何ヲ(カ)・奚ヲ(カ)。読みは当然「➄ヲカ」。英語で言えば「➅」に相当。
於斯三者何先(斯ノ三者ニ於テ何ヲカ先ニセン)なら(⑦)という意味になる。
→【空欄】➄なに・➅what・⑦この三つの中で何を先にしようか
■場所を問うときは安・何・悪・焉などの漢字が当てられ、これを「⑧クニ(カ)」と読む。英語の疑問詞では(⑨)。
今蛇安在なら「⑩」と読み、(⑪)という意味になる。
→【空欄】⑧いづ・⑨where・⑩いまへびいづくにかある・⑪今、蛇はどこにいるのか
■理由を問う場合は何ゾ(胡・奚・曷・寧などの字も当てられる)。あるいは何為レゾ。これは「⑫レゾ」と読む。また、「安クンゾ・悪クンゾ・焉クンゾ」(他に烏・寧なども)「⑬クンゾ」と読まれ、理由を問う。英語では当然(⑭)。「⑮~か」と訳す。
何為不去也は「⑯」と読み、「⑰」という意味。
君安与項伯有故(項白は人物、故は古なじみ・知り合い)は「君(⑱)項伯(⑲)故有る」と読まれる。
→【空欄】⑫なんす・⑬いづ・⑭why・⑮どうして・⑯なんすれぞさらざるや・⑰どうして去らないのか・⑱いづくんぞ・⑲と
■分量を問う場合、幾あるいは幾何が用いられる。「幾何」の読みは「⑳」。英語では(㉑)に相当し、「㉒か」という訳。
幾年であれば、「㉓か」となり、人長幾何(人ノ長ハ幾何ゾ)であれば、人の身長は「㉔か」という意味になる。
→【空欄】⑳いくばく・㉑how・㉒どれくらい(どれほど)・㉓どのくらいの年・㉔どれくらい(どれほど)
■比較・選択を問う場合は、孰を用い、「㉕レカ」と読む。英語の疑問詞では(㉖)。
創業守成孰難は「創業と守成は(㉗)」と読まれ、「創業(新しく起こすこと)と守成(守っていくこと)とでは(㉘)か」という意味になる。
「誰か」を表す「孰」と同じ字であるので、送り仮名があれば送り仮名で、白文の場合は文脈で「孰カ・孰レカ」を読み分ける。
→【空欄】㉕いづ・㉖which・㉗いづれかかたき・㉘どちらが難しいか
ここまで英語の疑問詞5W1Hに寄りかかって整理してみた。このほかにも疑問詞はまだあるが、これらが基本であるのでしっかりマスターしたい。
■ただ、これら以外にどうしても注意が必要な疑問詞がある。A・何如(何若)と、B・如何(奈何・若何)。似ているが、「何」の位置がAとBでは逆になっている。「何」とセットになる字は「如・若・奈」と変化するので、「何」が上にあればA、「何」が下にあればBという覚え方が単純で分かりやすい。四つの点で注意が必要。
◆ひとつ目は読み。両者とも「➀」と読まれる。ただ、Bの場合には「②」と読まれることが多いと承知しておくと、疑問詞としての働きを押さえる上でもよい。
→【空欄】①いかん・②いかんせん
◆二つ目は問う内容の違い。Aでは(③)を問い、(④)と解釈する。Bでは(➄)を問い、(➅)と解釈する。
以五十歩、笑百歩、則何如は「逃げたのが五十歩であるという理由で百歩逃げたものを笑ったとしたら(⑦)」という意味であり、如若何なら「⑧」と読まれ、「⑨」という意味になる。
→【空欄】③状態・④どうであるか・➄方法・⑥どうするか・⑦どうであるか・⑧なんぢをいかんせん・⑨おまえをどうしようか
◆三つ目は、今の「如若何」に見られたように、Bの形で目的語を取る場合は、その目的語は「如(奈・若)」と「何」の間に挟み込まれるということ。例えば。次の意味になるように、次の漢字を並べ、読んでみよう。
Aこれをどうしよう
【何・如・之】
→漢字並び替え(⑩)・読み(⑪)
Bわが民をどうしたらよいだろう
【吾・如・民・何】
→漢字並び替え(⑫)・読み(⑬)
C人に死があるのをどうしよう
【死・何・有・奈・人】
→漢字並び替え(⑭)・読み(⑮)
→【空欄】⑩如之何・⑪これをいかんせん・⑫如吾民何・⑬わがたみをいかんせん・⑭奈人有死何・⑮ひとにしあるをいかんせん
◆四つ目は、反語の場合には、B「如何(奈何・若何)」しか用いられない。
有名な虞兮虞兮奈若何なら、(⑯)と読み、(⑰)と訳されるのがそれである。
→【空欄】⑯ぐやぐやなんぢをいかんせん・⑰虞よ虞よお前をどうしようか。いやもはやどうすることもできない
C 終尾詞
終尾詞には、乎・邪・也・哉・与などがあり、文末におかれ、「⑱」または「⑲」と読まれる。古典文法で考えれば、(⑳)助詞の文末用法に当たり、日本人としての語感を持っていれば普通に理解できる。ただ、Dに示す終尾詞の読みわけは大切。
→【空欄】⑱や・⑲か・⑳係
D 疑問形・反語形の基本的な読みわけ
★疑問形
■疑問詞・終尾詞がある場合
【疑問詞・・連体形+終尾詞「や」】と読む。
例えば何為不去也は(①)、何不憎乎であれば(②)と読む。「や」という読みは終止形につく場合ではないかと思うかもしれないが、「ぞ・・連体形」で文が終止していると考え、「や」を添える。
■疑問詞があり終尾詞がない場合
【疑問詞+係助詞・・連体形】で読む。
今蛇安在であれば(③)と読まれ、創業守成孰難であれば(④)と読まれる。係り結びを考えればよい。
■終尾詞のみの場合
基本的には【・・連体形・名詞+「か」】である。ラ変動詞に終尾詞がある場合は【・・終止形+「や」】と読む。
不足乎であれば(⑤)と読むのが基本。聖人在乎なら(⑥)と読まれる。
→【空欄】➀なんすれぞさやざるや・②なんぞにくまざるや・③いまへびいづくにかある・④そうぎょうとしゅせいといづれかかたき・➄たらざるか・➅せいじんはありや
★反語形
→基本的な反語のパターンも、基本的に疑問形と同形である。次に疑問形と同じ形で示すが、反語の文末は「⑦・⑧」が基本(例外あり)であり、【(疑問詞)・・未然形+「ン・ンヤ」】という読みをすればいいと考えれば負担が少ない。
①「疑問詞・終尾詞がある場合」は、【疑問詞・・未然形「ン」終尾詞「や」】と読む。燕雀安知鴻鵠之志哉なら(⑨)と読む。
②「疑問詞があり終尾詞がない場合」は、【疑問詞・・未然形+「ン(ヤ)」】と読む。子安能為之足は(⑩)となる。「ン」としても良いし、「ヤ」まで添えて「ンヤ」としても良い。
③「終尾詞のみの場合」も、【・・未然形「ン」終尾詞「や」】と読む。吾不生也であれば、(⑪)と読む。
そのほかにもいろいろな読まれ方がある。人長幾何(疑問:ひとのたけはいくばくぞ)、如何不涙垂(反語:いかんぞなみだたれざらん)など。読み慣れる中で体にしみこませたい。
→【空欄】⑦ン・⑧ンヤ・⑨えんじゃくいづくんぞこうこくのしをしらんや・⑩しいづくんぞよくこれがあしをつくらん(や)・⑪われいきざらんや
E 反語特有の形
反語には、疑問形にはない反語特有の形がある。次の四つである。
■「豈~乎」
反語の代表的な形として頻出する。豈遠千里哉なら「①」と読まれ、(②)という意味になる。
「豈」については反語だけでなく、疑問や詠嘆の用法もあるので、注意したい。これについては4詠嘆形の説明の★に示してあるので参照されたい。
→【空欄】➀あにせんりをとほしとせんや・②どうして千里の道のりを遠いと思うだろうか(いや~)
■「敢不~」
「あへて~ざらんや」と読まれる。「敢」は「しいて~する」くらいの意味だから、敢不言乎は「③」と読み、「どうして(わざわざ)泣かないだろうか」という意味になる。
この形で注意が必要なのは、この「敢不」(カンフ)に対し「不敢」(フカン)という形があること。「不敢」は「しいて~しない」という否定形。不敢泣であれば、「④」と読み、解釈は(➄)となる。敢不泣ならば反語である。全く意味が違うので特に白文では注意したい。
→【空欄】③あへていはざらんや・④あへてなかず・➄しいて(決して)泣かない
■「独~乎」
「独」は「ただ」とか「一人」という意味があるが、「乎」「哉」を伴うと反語になる。だがら、「ただ一人~」とつい訳してしまいたくなるが、それは正しくない。独畏廉将軍乎であれば「ただひとり廉将軍を畏れようか」という意味ではなく、(⑥)という解釈になる。
→【空欄】⑥どうして廉将軍を畏れようか
■「何不~」
これは再読文字の説明で一度触れた。「蓋」あるいは「盍」。読みは「(⑦~(⑧)」。「勧誘・詰問」の意味を表す。何不秉(とリテ)燭遊であれば、「⑨」と読み、解釈は(⑩)となる。
→【空欄】⑦なんゾ・⑧ざル・⑨なんぞしょくをとりてあそばざる・⑩どうして灯火を手にして遊ばないのか、遊べばよいのに
簡易な例文でおさらい
■読んで訳してみよう。(解答は上記文中にあるものもありますが、リンクページで例文の該当番号を見て下さい→例文解答ページ)