漢文句法を身体にしみこませよう!(基本知識編)

 

このページは、「網羅的に復習しきれない」と言う高校3年生のために、確認すべき基礎事項をできるだけ簡易な形で整理し、ドリルすることを目的としたものです。

 

 

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再読文字 

否定

疑問反語
詠嘆・使役・受身
仮定・限定・累加
比較・選択・抑揚・願望

 

 

2 否定形


2A 一般的な否定形

 

基本知識(空欄補充)

 

一般的な否定の形については改めて意識せずとも大丈夫であろう。

不・弗は「ず」、は「あらず」、無・莫・勿・毋は「なシ・なカレ」。毋は注意して覚えておきたい。毋妄言は(➀)と訓読する。これら否定語は、基本的に返読されるから、動詞(用言)から返って読まれる。

ついでに言えば、「目的語・補語」→「動詞(用言)」→「助動詞」→「否定語」と返読されることを覚えておくと白文を読む場合に非常に役に立つ。「不可与金豚」ならば(②)だと簡単に読める。  

 

→【空欄】➀まうげんするなかれ・②かねをぶたにあたふべからず

 

 

2B 部分否定

 

基本知識(空欄補充)

 

部分否定は副詞の示す意味の一部を限定的に否定する句形。そう言うと難しく感じるが、例えば「必ず」という副詞を使い「A明日は必ずしも雨ではない」と言った場合には、「B明日は必ず雨だ」と言った場合に対して、明日が雨ではない可能性も含む表現となる。「必ず」という副詞の意味の一部を否定したことになる。このAの形を(➀)否定と言い、それに対してBを(②)否定と言う。

注意すべきポイントは二つ。

 

■ひとつは「副詞」と「否定語」の位置関係。全部否定か部分否定かは、副詞と否定語の上下の位置関係によって決まる。すなわち、C「必不有」とD「不必有」という関係である。副詞が否定語の上にあるCの場合を(③)否定と言い、否定語が副詞の上にあるDの場合を(④)否定と言う。

これがコンガラガってしまう人は、否定語はその下の内容を否定していること考えればよい。Cの場合、否定されているのは「➄」であり、「必」という副詞は否定の対象外である。Dの場合に否定されているのは「➅」という状態であり「必」という副詞が否定の対象範囲になっている。否定語が副詞を否定していれば(⑦)否定、していなければ(⑧)否定である。

 

→【空欄】➀部分・②全部・③全部・④部分・➄有・➅必有

 

 

■もうひとつは「送り仮名」。部分否定の場合には全部否定に対して副詞の送り仮名が変化する。

常ニ→常(⑨)

必ズ→必(⑩)

甚ダ→甚(⑪)

俱ニ→俱(⑫)

尽ク→尽(⑬)」といった具合である。

ただ鬱陶しいことに「復タ」は例外で慣用的に部分否定の場合でも「復タ」と読まれる。

 

→【空欄】⑨ニハ・⑩ズシモ・⑪ダシクハ・⑫ニハ・⑬クハ

 

 

■「不復~」についてはその意味も例外的で、①部分否定的に「(⑭)~ない」と訳す場合と、②「(⑮)~ない」という否定の強調を表す場合がある。(文脈がなくわかりづらいと思うが)遂迷、不復得路は「遂に道に迷って、(⑯)」という意味になり、来此絶境、不復出は「此の絶境に来て、(⑰)」という意味になる。

 

→【空欄】⑭二度とは・⑮決して・⑯二度とは道を見つけられなかった・⑰決して出なかった

 

■また、否定語は「不」だけでなく「未」「無」「非」なども用いられる。不善之人、未必本悪であれば「不善の人、(⑱)」と読まれ「悪いことをする人も全てがもともと悪人なのではない」という意味である。

 

→【空欄】⑱いまだかならずしももとあくならず

 

 

C 二重否定

 

基本知識(空欄補充)

 

二重否定は否定語を二回重ねることで「~しないものはない」「~しないのではない」という強い否定を表す句形。これが基本。様々な否定語の重なりに慣れよう。ただ、必ずしも強い否定だけでなく、「~しないことはない」のような釈明的なニュアンスを帯びるものもある。

 

①否定語が連続して用いられる形

否定語には「ず」と読む「不」、「あらず」と読む「非」、「なし」と読む「無・莫」、「いまだ~ず」と読む「未)」などがあり、これらを重ねることで二重否定が作られる。

例えば次のような形がある。読んでみよう。

無不A→Aセ(➀)

無莫非A→Aニ(②)

非不A→Aセ(③)

非無A→A(④)

例えば、吾矛之利、於物無不陥也(「陥」は「とほす」)(➄)と読まれ、(➅)という直訳。(⑦)ことを強調した表現であり、強い否定を表し、非無賢人であれば(⑧)と読まれ、(⑨)という直訳で「国が滅ぶのは(⑩)」別の要因があるからだという釈明・弁明を表しているということになる。

 

→【空欄】➀ざる(は)なし・②あらざる(は)なし・③ざるにあらず・④なきにあらず・➄わがほこのりなること、ものにおいてとほさざるなきなり・➅通さないものはない・⑦すべて通す・⑧けんじんなきにあらず・⑨賢人がいないのではない・⑩賢人がいないわけではななく

 

 

②「不可」「不能」「不得」とともに用いられる二重否定

二重否定が「不可」「不能」「不得」など、不可能、禁止を表す表現とともに使われることもある。二重否定の原則に従って直訳していけば正しい解釈に辿り着けると思うが、「不可」「不能」「不得」等の表現は注意をしておきたい。次の各文を全てひらがなで書き下し、訳してみよう。

不可不行=読(➀)訳(②)

不能不行=読(③)訳(④)

不得不行=読(➄)

 

→【空欄】➀ゆかざるべからず・②行かなければいけない・③ゆかざるあたはず・④行かないことはできない・➄ゆかざるをえず

 

③特殊な読みをする二重否定

 

●AとしてBせざる(は)なし

「無A不B」を「AとしてBせざる(は)なし」と読む。この場合、Aという名詞が(➀)という送り仮名を取ることが大事。無夕不飲であれば「夕べ(②)」と読み、意味は(③)」である。同様に無人不泣は「④」と読み、無木不枯であれば「➄」と読まれる。

 

→【空欄】➀として・②としてのまざるはなし・③飲まない夜はない・④ひととしてなかざるはなし・➄きとしてかれざる(こせざる)はなし

 

●ずんばあらず

「不~不A」「未~不A」のように、「不」から「不」(「未」)に返って読む場合、最初の「不」の下に「あり」を補い(正確には、「ず」+「ん」(撥音便)+「は」(係助詞)+「あり」+「ず」)、「➀」と読む。特に否定語の間に副詞がはさまるケースについては注意しておきたい。次のようなものである。「ずんばあらず」を頭に置いて読んでみよう。

不敢不泣=「あへて(②)」=泣かないではいられない
未敢不泣=「③」=これまで泣かないことはない
不必不泣=「④」=泣かないとは限らない
未嘗不泣=「➄」=泣かなかったことはない

 

→【空欄】➀ずんばあらず・②なかずんばあらず・③いまだあへてなかずんばあらず・④かならずしもなかずんばあらず・➄いまだかつてなかずんばあらず

 

 

 

簡易な例文でおさらい

■読んで訳してみよう。(解答は上記文中にあるものもありますが、リンクページで例文の該当番号を見て下さい→例文解答ページ

 

 

 

■白文でも読んでみたい。

 

10・毋妄言

11・吾矛之利、於物無不陥也 

12・不能不行 

13・無夕不飲 

14・未嘗不泣

15・不必有 (必不有)

16・不倶戴天 

17・未能悉去 

18・不善之人、未必本悪