昨日、ご紹介した論文と同一医学雑誌JACIに、喘息発症に関連する遺伝子構造についての論文があります。生まれながらの遺伝子のかたちが、病気の発症に影響することを示す結果です。

インタフェロンγ産生の能力は、喘息発症を免れるために重要な鍵となることが、今回のデータでも証明されたことになります。JACI2011;128:524
 
簡単に紹介します。
 
米国には、小児のアレルギー研究に、重要な方向性を与えてきたコースト研究があります。これは、生下時より子どもたち289名を追っていくコホート研究です。喘息の発症は、インタフェロンγの能力が大いに関係し、ウイルスを殺す力の低い子どもでは、喘息が発症しやすいことが指摘されています。
 
小児期の喘息は、ウイルス感染をいかにじょうずに治せるかが、大事な要素です。すみやかにウイルスをノドや気管支から追い出してしまえば、炎症は長引きません。しかし、ウイルスの追いだし作業がじょうずにできないと、ウイルス感染が遷延し、反復します。又、ウイルスに限らず、抵抗力の弱い気道は、細菌が増えやすくなっていて、その制御にも手間取ります。その結果、気道炎症が続き、喘息になりやすい気管支となります。

今回のコースト研究では、対象の子どもたちが生まれた時の臍帯血と、1歳になった時の血液の、インタフェロンの産生能を調べています。その後、この子どもたちをずーと追跡して、3歳になった時、さらに、8歳になった時に、喘息症状があるかをチェックしています。

すると、予想通り、男女共、インタフェロンγの産生が良い子どもでは、喘息発症が抑えられていました。インタフェロンγが上手に作れれば、喘息になりにくくなるとする予想通りの結果が得られました。

インタフェロンγの産生は、インタフェロンγ遺伝子が作業して、インタフェロン蛋白を合成します。遺伝子は、両親から、1個づつもらった対の染色体の塩基構造から成ります。この塩基の並びには、若干の個人差があり、塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)の一部が、対の遺伝子同志(相同遺伝子)で、塩基の種類が異なることがあります。
 
遺伝子の特定の一部分で、対となるDNA塩基が、母方、父方からのそれぞれ対の部分が、同じ塩基ならホモ、違う塩基ならヘテロと呼びます。この塩基の種類が同じか、違うかで、インタフェロンγをつくる能力が影響をうけることがわかりました。
 
つまり、同じ塩基(ホモ)か、違う塩基か(ヘテロ)かで、インタフェロンγの量に違いが出てきます。
女性では、ホモの子どもが、インタフェロンγ産生が悪く、男性では、ホモの子どもがインタフェロンγ産生が良かったのです。すなわち、この子どもたちが8歳になった時の、喘息の有無を見てみると、女性では、ホモの人に喘息が多くなり、男性では、ヘテロの人に、喘息が多くなっていました。

今回の研究では、遺伝子の特定部分の塩基が、同じ(ホモ)か、違う(ヘテロ)かで、インタフェロンγ産生能に、男女で全く逆の影響が出ることがわかりました。
 
遺伝子の型の違いが、蛋白合成能力に、男女で全く逆の影響を与えるというのは、興味ある結果と思われます。
人の腸は、どのように機能的な均衡が保たれているか、まだ、よくわかっていません。
 
腸内細菌の役目は、食物残さを発酵させ、脂肪酸を産生し、ビタミンを合成し、さらに、腸の細胞の成熟にもかかわっています。さらに、栄養物を体内に吸収させていく過程で、腸内細菌がどのようにかかわるかについて、今の栄養学、生理学では、まだ、解明が不十分です。
 
従って、一度、破綻した腸機能、例えば慢性腸炎などがおきてしまうと、その治療は、いまだ、試行錯誤です。腸の病気は、比較的、自然治癒力が期待でき、腸に内在する自然治癒力が戻れば、腸内細菌と腸は、再度、友好関係を保つようになると思われます。密に接触している腸内細菌と、腸の免疫細胞は、お互い相手を刺激せず、相互に許し合う(寛容)関係になっていないと、腸の健康は、達成できません。
 
現在、ヨーグルトが、生活習慣病やアレルギーを予防するなどの宣伝が先行しているが、まだまだ、データは確立していていません。ヨーグルトに含まれる菌が定着するには、腸において、いろいろな条件が必要となり、むしろ、ヨーグルト菌だけが増殖したら、腸の健康は保てません。特定の菌の増殖は、腸の健康を脅かすものだからです。
 
生まれたての赤ちゃんの腸は無菌ですが、産道や、あかちゃんにふれた人の手の菌は、赤ちゃんへうつっていき、あっという間に腸内細菌相は、つくられます。そして、種類の異なる菌が、多様に縄張り争いをしている状況が、腸の健康状態です。
 
今までも、腸内細菌の研究は、アレルギー予防の観点から、世界中から研究報告されていますが、今回は、コペンハーゲンからです。生後すぐの乳児を、半年ごとに追跡して、どういう子どもがアレルギーになっていくかをチェックしたコホート研究を紹介します。JACI  2011;128:646
 
1か月、12ヶ月の乳児約300人から、便をとり、腸内細菌を培養したり、DGGE PCRという方法で調べています。この方法は、菌の多様性をチェックできる19S rRNA部分を分析して、培養不可能なタイプの腸内細菌を調べる方法です。
 
調査対象の乳児の便の腸内細菌を、生後1カ月と、12ヶ月で調べます。1か月の時に出ていた便と比べて、生後12カ月の便では、明らかに腸内細菌の多様性は進んでいた(菌の種類が増えていた)。

そして、その腸内細菌の多様性が獲得できた子どもでは、その後のアレルギーの発症を抑えられていたとの結果がでた。特に、有意差を持って明らかだったのは、7歳時の鼻炎で、1か月、12ヶ月の時の便の腸内細菌が多様であった子どもは、アトピー性皮膚炎が7割に減っていた、さらに、この研究では、子どもの好酸球の増加や、IgEの産生と、腸内細菌多様性との関連が証明できた。
 
しかし、6歳児の喘息、0-7歳時のアトピー性皮膚炎の発症については、腸内細菌の多様性との関係を見出せなかった。

このように、アレルギー性疾患と腸内細菌の関連が、鼻炎に限定的であった理由として、論文の著者は、腸内細菌の多様性を証明するための技術がまだ、十分でなかったからではないかと、考察している。同一菌種に属する菌でも、さらに、菌がひとつひとつ微妙に変異している可能性があり、今回、用いた手法では、そこまでの多様性を証明できなかったと述べられている。著者は、腸内細菌は、特に、この多様性が腸の健康維持に大事と結論している。
 
今までも類似の研究はありましたが、論文によっては、必ずしも、腸内細菌とアレルギー発症との関連をもとめていません。KOALA研究では、1か月の乳児の腸内、大腸菌とクロストリディウム菌の存在は、2歳のアトピー性皮膚炎の発症と関連したと報告しています。
 
他の論文では、腸内細菌の多様性が失われる病気として、肥満をあげており、7歳時の肥満とブドウ球菌の腸内繁殖との関連が指摘されています。
病気の説明には、医師の個人的見解というのがある。それが、しばしば、一般論として通用してしまうことがあると思う。人々は、医師が言ったから、正しいと思いこむのである。
 
まして、テレビに出る役職のある医師が語る言葉であれば、周りの出演者などが、“初めて聞いた”などと、感心して聞いてしまう。そして、それが、確立した医学理論であると,、誤解してしまうのである。
 
一般的に、NHKの健康番組などでは、おおむね、医療人の間で、コンセンサスが得られた医学的知識が紹介されている。 しかし、たまには、そうでもないことがある。
 
つまり、一般の医師が聞いたら、“えっ!、それって、あなたの意見にすぎないのじゃないの?”というような解説内容だ。人柄にもよるが、医師は、しばしば、個人的解釈を話すものなのだ!
 
先日も、そのようなことがあった!“内臓冷え”という言葉が紹介されたのである。
 
医師の個人的見解は、有る程度まで、許容範囲であるとは思うが、私は、健康不安をあおるような言葉には、抵抗を感じる。個人的な解説が、常識として信じられてしまい、健康不安があおられてしまうことがあるからである。
 
人々は、その言葉を聞いた時から、病気になる。がん検診で、スクリーニングにひっかかった時から、がんの気分になるのに似ている。不安神経症が悪化するのである。
 
女性は、冷えと言う言葉を使う。しかし、実際の症状は、個人差が大きく、混とんとしたものである。
 
不安を感じやすい女性の脳は、不安が、全身症状として反応してしまうのだ!
 
女性がよく訴える“冷え”の、医学的実態は何なのか?手足が冷たいなら、末梢循環不全などの症状であり、心不全、交感神経興奮などで、末梢血管の血流が少なくなって起きてくる。
 
手足の冷え、あるいは実際に冷たくないが、冷えていると感じていること、これは、精神科領域においてなら、不安神経症の範疇に入るだろう。

内臓冷えの説明として、テレビの映像では、耳の奥にセンサーをいれていたような気がする。しかし、こうした手法や、内臓冷えの概念は、まだまだ、医師の間では、議論がある病態であると思う。

この番組のせめてもの救いは、冷えの治療は、体を動かすこと、運動をすることであると、紹介されたことだ。これなら、不安神経症でも、効果が期待できることがある。
 
漢方薬で使われる“未病”と言う言葉。この言葉も、罪つくりな言葉である。私には、この言葉は、健康不安をあおる何もの以外でもない。
 
恐い!恐い!と、長く脳にインプットされると、頭でっかちの人には、病気が起きている。例えば、食物アレルギーでは、こうした思いこみがおきる危険がある。

本来の食物アレルギーは、医学的にも機序が解明され、病気の元を“物”として、証明できる。しかし、こうしたアレルギーが元凶でなく、しばしば、思いこみ食物アレルギーがある。

乳児期におきたアナフィラキシー症状から親が立ち直れず、その子どもが、年長になるまで、ずーと、親が食べさせない。その結果、その子どもは、除去していた食品が恐くてしかたなくなるである。

成人でも、一旦、食後にひどい目に会ったと思いこんだ食物をその後、ずーと食れなくなることが起こりうる。
 
体調が悪い、やる気がおきない、などの症状は、内臓冷えと言う言葉を信じた時、増強するだろう。

私の拙著“女性ホルモンという名の神話”で、不安神経症の女性を描いた。 この中でも、冷えの概念が語られている。
 
小説の中に出てくる化学物質過敏症の女性は、家庭内のつらい日常生活を、化学物質過敏に転嫁していた!医師から診断をもらうことにより、さらに、この女性の不安症状は悪化してしまった。しかし、この女性の病気は、環境が改善することにより、化学物質過敏症の症状は消えていくのである。
 
私は実際に、化学物質過敏症と診断した書面を見たことがあるが、その中身は、納得できる内容ではなかった。かつ、病院名はかいてあるものの、公印は押していなかった!私の勝手な推定であるが、この医師のそばの医療関係者も、この診断書の内容に、抵抗があったのではないだろうか?
 
今は、ありとあらゆる健康情報、病気の情報がでている。医師の言葉にも、おかしなものや信じられないものがある。中には、私の無知に基づく誤解もあるだろう。しかし、どのような立場であっても、健康不安をあおる情報に振り回されないで欲しいとつくづく思うのである。
日本の健康調査でも、女性の冠動脈疾患の罹患は、男性よりはるかに低い事を書きました。

9月16日の本ブログ
追跡期間中に、発症が確認された病気は、男性43,889人のうち、
脳溢血は765人 (1.7%)、
冠動脈疾患379人(0.86%)、
全心血管性疾患1707人でした。(3.9%)
 
同じく、女性61,039人のうち、
脳溢血は685人(1.1%)
冠動脈疾患256人(0.42%)、
全心血管性疾患の1432人でした。(2.3%)
以上が、日本の文科省研究です。

他のアジア、オセアニアの女性たちではどうでしょうか?今回は、アジア人における冠動脈疾患による死亡についてです。
 
J Womens Health (Larchmt). 2005 ;14(9):820-8.  PMID: 16313209
すでに論文になっている39のコホート調査における冠動脈疾患による死亡の男女差をまとめました。アジアから32本。オーストラリア・ニュウジーランドから7本のコホート調査です。
 
年間、のべ400万人の追跡ができました。
この間に、1989人 (うち女性は926 人)が、冠動脈疾患で死亡しました。
男性の死亡リスクは、女性の2.05倍でした。(95%信頼区間1.89-2.22)。
喫煙者は、男性では54%、女性では7%でした。

高血圧の有無と冠動脈疾患死亡との関連をみると、血圧が10mg上がるごとに、女性は男性の15%に、冠動脈疾患死亡率が上がることが示されました。
 
この論文では、喫煙などの疫学的因子を考慮しても、女性の冠動脈疾患疾患による死亡が男性より少ない理由が特定できないとしています。
 
女性に冠動脈疾患が少ない理由として、従来、エストロゲンの心保護作用が言われてきました。しかし、本当にそうなのでしょうか?エストロゲンは、冠動脈を拡張させる作用や、抗炎症作用があります。しかし、真の因果関係はまだ、明らかになっていないと思います。

むしろ、男性の生きざまが、心臓に負担をかけているような気がします。男性の特性とされる、リスクを恐れない、征服欲・支配欲が強い、などは、男性の心臓に、大きな負担をかけているのではないでしょうか?
このブログは、最近の海外の病気の情報をお届けしようとしています。
 
内容や用語が、若干難しくなっています。興味を感じられた読者が、街かどからの健康情報発信のソースにご利用いたくなどして、このブログがお役に立てれば、ありがたいです。今後も、よろしくお願いします。
 
本日は、誰にでも知っていただきたい健康情報をお届けします。ソースは、Lancet Oncol. 2008 Jul;9(7):649-56,PubMed18556244 から で、喫煙と肺がんの関連です。
 
女性では、男性と比べ、喫煙者、非喫煙者共に、肺がんの発症が増えています。多くのがんが、男性に多く発症することを考えると、女性にとって、肺がんは注意すべき病気であると言えます。カッコ内は、95%信頼区間です(統計学的数値で、この数値範囲が95%の信頼がある)。発がんは、高齢者で増加することから、発がん率の計算には、多因子を考慮し、疫学的な計算を行っています。
 
米国National Institutes of Health (NIH)-AARP コホート研究です。1995-6年に、男女を募集し、2003年まで、追跡しました。

50-71歳の279 214人の男性と、184 623人の女性が調査対象となりました。 肺がんは、男性4097人、女性2237 人でした。10万人当たりの発症率は、非喫煙男性 20.3 (95% CI 16.3-24.3) (99 個のがん) 、非喫煙女性25.3 (21.3-29.3) (152 個のがん)の数値となり、女性は男性の1.3倍! (1.0-1.8) となりました。
 
1日2パック以上のたばこを吸う人たちでは、10万人当たりの発症率は、男性1259.2 (1035.0-1483.3)、女性1308.9 (924.2-1693.6) iと、激増しました。

女性は男性の90%のたばこ量で、肺がんになっていました、(0.8-0.9)
 
元喫煙者については、吸った量と年数は、発がんに関係しました。

肺がんの組織学的な種類の分類では、腺がん、小細胞がん、未分化がんは男女で差がなく、扁平上皮がんは、男性は女性の2倍に発症しました。
Journal Allergy Clinical Immunolは、アレルギー領域において、アレルギー学の先端を走る医学誌です。2011年、9月号に、高齢者の喘息の特集がありました。(JACI2011;128:S4)
 
米国での人口高齢化に伴う喘息の罹患の上昇に対し、医療でできること何か?について、かかれた総説です。
 
日本でも米国でも、喘息発症は、小児と高齢者に多くなっています。小児喘息は、年齢と共に改善することが多く、20-30歳には、喘息の人は少なくなります。そのため、この時期に、喘息発作の起きる人は、要注意ということになります(つまり、しっかり、治療した方が良い)。
 
小児の喘息は、改善していく理由は、気道免疫の成熟によるものです。すなわち、気道(気管支)は、過剰な反応をおこさず、風邪、肺炎などの呼吸器病からは、身を守る働きが完成するからです。しかし、その後は、加齢により、獲得した免疫機能が破綻するようになります。つまり、人は、加齢をすると、気管支が過剰に反応して、ぜーぜーとなったり、呼吸器病が重くなったりしてしまうのです。症状を起こさないで、静かな健康状態を維持することができなくなるのです。
 
小児期に喘鳴(ゼーゼー)をおこさせるRSウイルス感染症という病気があります。この病気は、ほどんどの小児が、2歳までに感染し、感染後は抵抗力を得ていきます。幼児になると、RSウイルス感染症にかかったとしても軽い風邪症状で終わるのですが、下の子どもに感染させて、乳児は重くなって、入院したりしてしまいます。
 
このRSV感染症は、老人で、再び、肺炎の原因になります。孫からRSウイルスをもらったり、病院で、知らない間に、うつされてしまうこともあります。
 
人間は、一度、獲得した抵抗力を、やがて、失っていくのですが、若い時に直せた結核やB型肝炎が再発したりします。
 
Journal Allergy Clinical Immunolの総説では、加齢による、細胞の老化現象に焦点をあてて、今までに行われ、確証の高い老化研究を、簡単に紹介しています。
 
動物の細胞は、分裂できる回数が決まっています。人間の細胞を、一時的に分裂しない環境にして、再び、分裂できる環境に戻してあげると、細胞は、再び、分裂しますが、分裂できる回数は、一定です。
 
寿命の長い動物は、分裂できる回数が多くなっています。しかし、この総説によると、寿命の長さは、DNAだけが決めているわけではないようで、そのたとえとして、DNA構造があまり異なっていない、マウスとコウモリの寿命を比べています。DNAの塩基配列は、0.25%しか違わないのに、マウスの寿命は2年、コウモリは25年あるそうです。
 
老人の皮膚から取った繊維芽細胞を培養すると、若い人の皮膚からとった繊維芽細胞とくらべ、分裂できる回数が減少しています。ベータガラクトシダーゼという物質が、老化した細胞では増加していますが、若い細胞には見られず、ベータガラクトシダーゼは、細胞年齢を知るマーカーとして、知られています。
 
炎症は、本来、生体を守るための変化ですが、加齢によっても、炎症が起きてきます。有名なマーカーとして、老人で増えているインタロイキン6があります。このサイトカインは、弱った老人で増加しています。
 
動物の細胞は、酸素をエネルギー元にしています。しかし、この酸化ストレスは、細胞を弱らせてしまいます。
 
線虫をもちいた実験によると、人工的に線虫遺伝子を操作して、酸化ストレスを減らすための物質であるスーパーオキサイド・ディスミュターゼ(活性酸素を分解する酵素。生体内では肝臓、副腎などに存在する。SOD)を強化させると、線虫の寿命は長くなります。
 
ディスミュターゼとカタラーゼの遺伝子強化により、線虫の寿命が1/3伸ばせるそうです。しかし、残念ながら、これに一致するヒトの遺伝子は、まだ確定されていません。又、マウスでは、食糧制限をすることにより、寿命を。1/2程増やすことができます。
 
公衆衛生が改善すると、平均寿命は延ばせます。しかし、人の寿命が120歳が最長であるのは、知られています。今後、この寿命が伸ばせるかは、不明ですが、公衆衛生の改善で、最高寿命を延ばすのは、無理かもしれません。むしろ、生物としてのヒトを弱らせてしまうような気がします。
エストロゲンの多彩な作用について。情報提供しています。
 
今回は、エストロゲンは、十二指腸の健康を守っているという話です。十二指腸は、胃の幽門の先の部分でしたね。ここには、胆汁,膵液など、いろいろな成分が出ています。もちろん、塩酸が含まれる酸性度の高い胃液もでています。そしてこの強い酸を中和するために、十二指腸では、重炭酸塩がでます。エストロゲンが、アルカリ性の重炭酸塩を増加させて、十二指腸潰瘍を防いでいるのではないか?と推論されています。
 
十二指腸潰瘍は、男性に病気が多く、男性は、同じ年齢の女性と比べると、十二指腸潰瘍になりやすいです。しかし、女性は、60歳を過ぎると、男性と同率に十二指腸潰瘍になります。今回の論文は。20-29歳、及び60-69歳の中国人の検討です。

論文の内容は、ボランティアの男女をあつめて、十二指腸にチューブを入れ、十二指腸液の重炭酸塩を比較した中国発の成績です。原典は、Gastroenterology 2011;;141:854です。
 
著者らは、消化器症状を訴える6万人の中国人のコホート式の疫学調査で、十二指腸潰瘍の頻度は、約8%と報告しています。十二指腸潰瘍の有無は、性差が著明で、中国男性は中国女性と比べ、20-30代で5倍、40代で4倍、60代では、1.3倍であることを示しています。ピロリ菌の感染は、年齢を問わず、20代から80代の人たちの約半分に、感染がみれていました。つまり、女性は、ピロリ菌感染からも、守られています。
 
この実験では、20代、60代の男女の十二指腸に、3袋のバルーンカテーテルを入れて、生食で洗いながら、塩酸やエストラジオールをいれて、十二指腸液の重炭酸塩の動向をみています。
 
推定通り、エストロゲンは、酸を中和する重炭酸塩の分泌を促す作用があり、エストロゲンを投与すると、十二指腸の重炭酸塩が増加しました。
 
エストロゲンが増加する排卵前の女性の方が、月経前の女性より、多くの重炭酸塩を分泌していました。60代の女性では、十二指腸の重炭酸塩は、男性並みに低下していました。しかし、十二指腸に、エストロゲンの1種であるエストラジオールをいれると、男女共、同程度に、重炭酸塩は増加しました。
 
20代女性では、重炭酸塩がもともと高く、エストラジオールを投与すると、さらに重炭酸塩が上昇するのですが、60代では、元々の十二指腸液重炭酸塩が、男女で差がなくなります。しかし、60代男女の十二指腸に、エストラジオールを入れると、男女共、重炭酸塩が上昇しました。
 
このことから、腸の細胞は、エストラジオールを感じ取って、重炭酸塩を分泌する機能があることがわかりました。
 
この実験は、非常にシンプルな結果です。しかし、男性の十二指腸潰瘍が多い原因が、どの程度エストロゲンによる性差に帰するのか、不明な部分が残ります。この論文の著者は、アルコール、タバコの嗜好などの、男女差は、十二指腸潰瘍の性差との、関連はうすいであろうと述べています。
 
この実験の対象となった男女は、病気のない、ピルなどを服用していない健康人としていますが、検査前には、少なくとも1週間、アルコールやたばこは取っていない男女であると、書かれています。すなわち、喫煙しない、アルコール歴の無い人を、対象に選んだのではないようです。
 
ピルを長期に服用をする女性は、エストロゲン量を人工的に変化させてしまうために、胃腸系の健康維持に望ましい効果を及ぼさないかもしれません。
体内の物質で、善玉、悪玉という考え方は、しばしば、誤解を招きます。悪玉コレステロールは、悪玉との名にかかわらず、細胞膜の構成成分であり、生命現象に必須のものです。しかし、一定以上に増加をすると、循環器病には、マイナスです。
 
しかし、元々、脂肪のつきやすい女性の体の場合は、コレステロール低下療法は、男性程の治療改果はありません。
 
女性に必須の、エストロゲンは、様々な作用を持つことを紹介してきました。今日は、悪玉エストロゲン、善玉エストロゲンについてです。
 
エストロゲンが低下すると、女性に病気が起こるという事実は、卵巣摘出マウスなどで、証明されています。単純に、マウスを、人間にも適応し、女性ホルモンの効用が、拡大解釈されています。
 
アンチエイジング時代の昨今、テレビコマーシャルなどで、美しい女性たちが出てきて、頬をぽんぽんと叩き、アンチエイジングを説く広告が多いです。彼女たちは、20代も、40代も、ずーと美しいのです。
 
昨日のテレビでも、40歳と20歳の女性を分けるというバライティ番組がありました。回答者は、20代女性を、40代と間違えることが多く、番組は盛り上がっていました。40代女性がすぐわかってしまったら、番組の意味がありませんから・・・。女性たちを選んできたデレクターは、若く見える40代女性を、十分に吟味して選んだでしょう。
 
20代に見える40代女性たちの特徴は、まず、美人であること、目力があること、頬や顎のラインがすっきりしていること、顔の皮膚が美しいこと、顔の表情を動かさないこと、背が高く、足はほっそりと長いことなどでした。
 
20代の女性は、20代に見えない老け顔の女性を選べば、良いのでしょうが、そうした女性は出演したがらないでしょうし、映像的にもつまらないです。普通の顔の女性を、テレビで、さがすのが難しいです。この番組に出ていた20代女性たちも、容姿に自信のある若々しい美人揃いでした。
 
さて、”女性ホルモンが低下すると病気になる”という啓発活動は、相変わらず盛んです。このブログは、女性たちが、そうした考えにふりまわされないために、女性ホルモンにまつわる話題を、いろいろな形で提供しています。多様なエストロゲン作用を理解してほしいです。
 
一般的に、性ホルモンは、免疫機能を低下させます。エストロゲンは、抗炎症作用があります。膠原病などでは、閉経後には、症状が改善する場合が多いのです。
 
耳慣れない病名かもしれませんが、本日は、“肺高血圧症”の話しです。高血圧というと、末梢の血管に起きてくる病気をイメージしますが、今回は、心臓から肺へ血液を送る肺動脈の圧が上昇し、心臓から血液が流れにくくなってしまう病気です。Umar らAm J Respir Crit Care Med2011;184:715
エストロゲン受容体ベータが、肺高血圧症と関係していそうだというデータをだしています。

心臓が悪いと、肺高血圧がおきてきますが、今回は、心臓病の続発症ではなく、肺の血管そのものに起きてくる病気です。肺動脈の血管細胞が、どんどん増えてしまい、血管の壁が太くなり、内腔がせまくなってしまいます。すると、肺に血液が流れなくなります。しかし、心臓は、なにがなんでも、肺に血液を送り込まなくてはならず、そうでないと、酸素不足で生命を維持できなくなるからです。
 
心臓は、強く縮んで、必死で血液を肺に送ろうとします。最初は、筋力アップさせて、筋肉を膨らませながら、がんばりますが、やがて、心臓は疲れ、血液を送り出す力は弱って行きます。その結果、肥大した心臓は、働きが弱ります。これが、心不全と呼ばれます。

肺高血圧症の病気は、女性は、男性の2-4倍に起きてきます。家族性の発症もあり、この場合は、女性の発症は、男性の約2.5倍です。この病気では、エストロゲンが悪さをしています。その原因として、BMPR2遺伝子の異常が指摘されています。BMPR2とは、bone morphogenetic protein receptor2の頭文字です。
 
この遺伝子異常は、体内酵素であるCYP1B1の異常と関連します。この酵素の働きが悪いと、エストロゲンが分解されて、16αハイドロキシエステロンhydroxyestronができてしまいます。この物質が、肺の血管を増やしてしまうのです。

治療法をさぐるために、マウスを使ってエストロゲン作用についての実験をします。マウスは、低酸素や薬剤によって、肺高血圧症を起こしてきます。この時、エストロゲンが十分にあるメスマウスでは、オスほど、病気が悪くなりません。卵巣摘出した(エストロゲンの無い)マウスを使って、人工的に肺高血圧症をつくります。そして、このマウスにエストロゲンを投与すると、マウスは、病気から回復します。
 
Umar らは、10日間のエストロゲン治療により、肺高血圧症が改善し、右心機能が改善したことを報告しています。メスマウスではいろいろな病気に、エストロゲンの保護作用が働くのです。

アレっと、思われると思います。エストロゲンによって起きてくる病気が、なぜ、エストロゲンで治療できるのか?ということですが・・・。
 
Umar らは、エストロゲン受容体ベータが、肺高血圧症と関係していそうだというデータをだしています。
肺には、エストロゲン受容体が多数あります。一般的に、エストロゲンが持つ炎症を抑える作用によって、肺の炎症と細胞増殖が抑えれてています。エストロゲンのβ受容体の働きを抑えてしまうと、エストロゲンの望ましい抗炎症作用は消失してしまうそうです。
 
この実験の結果、エストロゲンβ受容体の働きを調節して、血管の増殖を止めるための治療が、可能ではないかと、著者らは指摘しています。
 
解説
エストロゲンを感じる部分は、細胞のαとβ受容体があり、どちらの受容体に結合するかによって、その後に起きてくるイベントが変化します。エストロゲンを働かせる場合と、抑える場合があるのです。多機能物質としてのエストロゲンの役割が垣間見えます。
 
女性で、エストロゲンの効果の過剰評価は、受容体の問題を抜きに、議論されているからでしょう。良かれと思った治療が、女性にマイナスになっているのです。エストロゲンは多機能物質であるため、今後、エストロゲンの多様性を解明し、間違った使い方がされないよう、真に女性を助ける物質として研究されていくべきでしょう。
 
いずれにしろ、エストロゲンが低下すると病気になるとの単純な考え方には、振り回されないようにしましょう。
26日にカルミン酸の話しをしました。この赤い色素は、エンジ虫というサボテンにつくカイガラムシから色素を抽出したものと書きました。これは、論文より引用させてもらった知識です。
 
この話をある主婦の方に話したところ、この方は、以前に生協の役員をしていて、その話を聞いたそうです。その時、係員から、この赤い色は、虫からつくった天然の色素なので、人工色素とは違い、とても安全であると聞かされたそうです。
 
天然なものほど、危ないというのは、このブログをお読みいただいている方は、ご理解いただけると思います。天然なもの、そしてかつては、体内に入らなかったもの、これが胃腸の免疫細胞を動かす(活性化して、異物を排除する)正体かもしれません。免疫細胞は、病原体の構造を、すでに学んでいます。さらに、それ以外にも、免疫細胞は、新しい構造物を、危険と判断します。
 
エンジ虫は、確かに天然なものですが、以前は、食べたりはしなかったと思います。きのこなどにも、免疫活性物質があると思いますが、培養技術が進歩して、大量のきのこエキスの抽出ができるようになると、生体活性がさらに、高まる可能性があると思います。
 
科学技術の進歩により、昔は存在しない物質を、大量につくれるようになると、事件がおきやすいです。新たなる構造物は、アレルギー的には危険な可能性があります。
 
茶のしづく石鹸事件の経験からも想像できますが、かつての人類は、大量に小麦加水分解蛋白が、皮膚にくっついてしまうことなどは経験してないのです。
 
天然のものは、体に良いという説は、全く根拠がありません。天然神話が、かってに独り歩きをしています。もちろん、漢方薬もしかりです。漢方薬も、生体活性物質そのものですから、副作用はいろいろあります。食品やサプリをめぐる一般的な知識がもっと、広まってほしいと思います。
 
サプリ、食品のマスコミ広告には、漠然とした根拠の無い効能に溢れています。一流メーカーの製品も、しかりです。恐らく、メーカー内部には、研究員などに知識のある人がいるのだと思いますが、商品として、売れれば良いの風潮になっています。もっと、人々が、健康食品の安全性に興味をもち、最近の食品化学の進歩の恩恵をうけられるようになってほしいです。
 
論文を読みますと、アレルギーや、皮膚炎など原因検索のために、医師らがメーカーに成分の提供をお願いしても、応じてくれないなどの記述があります。
 
安全性が高い食品は、天然のものであることに加え、長い間、人がそれをエネルギー元として、利用してきたことが大事です。
 
元々、食品には、生体活性作用があります。動物の腸は、食品を感知して、腸を動かします。動物自体が、食品構造を感じ取れるように、腸が進化しました。
 
従来、人が食べてきた食品は、活性物質であるものの、腸を動かしすぎないように、調節されています。腸内の免疫細胞と食品は、究極の協調(寛容と言う)状態となっています。消化・吸収作業を、スムーズに進ませるためです。
 
ですから、植物の遺伝子を改変して、保存性を向上させた食品、人工的に味を変えた(アミノ酸などの構造や含量を強化させた)などは、免疫細胞を刺激する可能性があります。つまり、人に、アレルギーやアナフィラキシーを起こすのです。
 
 
人は、多くの蛋白成分に反応します。これは、免疫細胞のなせる技で、異物が体内に侵入し、増殖をしようすれば、免疫細胞は、その異常構造を感知して、異物を排除できるようになっているからです。
 
一方で、免疫細胞は、侵入してきた異物と闘い過ぎると、体に悪い結果になることを知っているので、敵の異物と戦い過ぎないことも知っています。
 
体内に、帯状疱疹ウイルスや、脳内にJCウイルスなどが住み込んでいるのに、免疫細胞は、見て見ぬふりをしています。大量に吸い込む空気の中のカビも、肺の免疫細胞は、見逃しているという話を、以前のブログで紹介しています。腸内細菌もしかりで、一部の腸内細菌が増え始めて腸内の菌種の多様性が低下すると、腸は炎症が起きてくるという話を紹介しました。
 
これは、一人の個体で、免疫細胞が行っている妥協と協調です。さらに、生物全体にも、妥協と協調があります。誰かが、どこかの異物構造を察知して、排除に努めれば、その生物は生き残れます。
 
なぜ、一部の人だけ、カルミン酸に反応したり、ピーナッツやローヤルゼリーに反応するのかの答えが、ここにあります。危険を予知し、異物をみつけだしてつぶしておかないと、生命は異物にのっとられてしまいます。
 
危険物から逃れ、生き残るために、仲間の生物同志が違う能力を発揮し、その場に適合した誰かが生き残れば、それで十分です。必ずしも全員が生き残ることは必要ないのです。

昨今、紹介している医学雑誌 皮膚病診療ですが、この雑誌の論文は、アレルギーの勉強のための材料が満載されています。
 
ウニによる口腔アレルギー症候群となった20代男性の紹介です。(皮膚病診療201;33:519)
口腔アレルギー症候群という病気は、花粉症の人が、類似の構造をもつ果物・野菜により、口の中が腫れたり、いがいがを感じたりする病気です。今回は、花粉症から起きる口腔アレルギー症候群とは、違う発症機序のようです。
 
患者さんは、すでに、サケ・エビ・カニアレルギーのある20代の男性です。この方のIgE検査では、サケ・エビ・カニに対する反応が陽性でした。その他にも複数の魚介類にIgE抗体を持っています。
 
今回は、ウニを食べた直後から症状が出ました。上あごんの部分の軟口蓋に浮腫状(むくみ)となり、呼吸が苦しくなりました。
 
一般的なアレルギーによる呼吸困難は、喉頭浮腫とか喘息発作が多いようですが、今回はそれとは異なり、上あごの部分の粘膜が腫れて、空気の通りが悪くなりました。
 
論文によると、ウニによるアレルギーは、外国人も含めて、5人の症例があるそうです。生ウニ、加熱ウニ、共に症状のでることがあります。症状は、口腔内の症状が多いようです。
 
ウニの食用部分は、生殖腺とのことです。魚介類アレルギーの多くが、魚介の筋肉成分(トロポミオシンなど)に対するアレルギーであるので、この方のウニアレルギーは、筋肉ではないウニ蛋白に反応してしまったようです。