エストロゲンの多彩な作用について。情報提供しています。
 
今回は、エストロゲンは、十二指腸の健康を守っているという話です。十二指腸は、胃の幽門の先の部分でしたね。ここには、胆汁,膵液など、いろいろな成分が出ています。もちろん、塩酸が含まれる酸性度の高い胃液もでています。そしてこの強い酸を中和するために、十二指腸では、重炭酸塩がでます。エストロゲンが、アルカリ性の重炭酸塩を増加させて、十二指腸潰瘍を防いでいるのではないか?と推論されています。
 
十二指腸潰瘍は、男性に病気が多く、男性は、同じ年齢の女性と比べると、十二指腸潰瘍になりやすいです。しかし、女性は、60歳を過ぎると、男性と同率に十二指腸潰瘍になります。今回の論文は。20-29歳、及び60-69歳の中国人の検討です。

論文の内容は、ボランティアの男女をあつめて、十二指腸にチューブを入れ、十二指腸液の重炭酸塩を比較した中国発の成績です。原典は、Gastroenterology 2011;;141:854です。
 
著者らは、消化器症状を訴える6万人の中国人のコホート式の疫学調査で、十二指腸潰瘍の頻度は、約8%と報告しています。十二指腸潰瘍の有無は、性差が著明で、中国男性は中国女性と比べ、20-30代で5倍、40代で4倍、60代では、1.3倍であることを示しています。ピロリ菌の感染は、年齢を問わず、20代から80代の人たちの約半分に、感染がみれていました。つまり、女性は、ピロリ菌感染からも、守られています。
 
この実験では、20代、60代の男女の十二指腸に、3袋のバルーンカテーテルを入れて、生食で洗いながら、塩酸やエストラジオールをいれて、十二指腸液の重炭酸塩の動向をみています。
 
推定通り、エストロゲンは、酸を中和する重炭酸塩の分泌を促す作用があり、エストロゲンを投与すると、十二指腸の重炭酸塩が増加しました。
 
エストロゲンが増加する排卵前の女性の方が、月経前の女性より、多くの重炭酸塩を分泌していました。60代の女性では、十二指腸の重炭酸塩は、男性並みに低下していました。しかし、十二指腸に、エストロゲンの1種であるエストラジオールをいれると、男女共、同程度に、重炭酸塩は増加しました。
 
20代女性では、重炭酸塩がもともと高く、エストラジオールを投与すると、さらに重炭酸塩が上昇するのですが、60代では、元々の十二指腸液重炭酸塩が、男女で差がなくなります。しかし、60代男女の十二指腸に、エストラジオールを入れると、男女共、重炭酸塩が上昇しました。
 
このことから、腸の細胞は、エストラジオールを感じ取って、重炭酸塩を分泌する機能があることがわかりました。
 
この実験は、非常にシンプルな結果です。しかし、男性の十二指腸潰瘍が多い原因が、どの程度エストロゲンによる性差に帰するのか、不明な部分が残ります。この論文の著者は、アルコール、タバコの嗜好などの、男女差は、十二指腸潰瘍の性差との、関連はうすいであろうと述べています。
 
この実験の対象となった男女は、病気のない、ピルなどを服用していない健康人としていますが、検査前には、少なくとも1週間、アルコールやたばこは取っていない男女であると、書かれています。すなわち、喫煙しない、アルコール歴の無い人を、対象に選んだのではないようです。
 
ピルを長期に服用をする女性は、エストロゲン量を人工的に変化させてしまうために、胃腸系の健康維持に望ましい効果を及ぼさないかもしれません。