昨夜、赤い色素成分カルミン酸によるアレルギーの話しをしました。昨夜の症例のじんましんの原因を決めることができた理由は、患者さんが、赤い色素の食べ物を食べた後に、病気が起きやすいと言ったためであると書かれていました。
 
患者さんの症状の気付きというのは、病気の原因をさぐる時に、真に大事なものです。引き続き、今夜も、2011年33巻の皮膚病診療のアレルギー特集号からの話題提供です。
 
今は、健康食品なるものが多く出回っています。効能は、免疫を活性化させるなどとした、生体活性作用を謳っています。しかし、免疫活性物質とは、本来、免疫細胞が排除したいと判断した物質であるわけで、そうしたものが、本当に健康に良いとは思えないような気がします。
 
アガリスク、ブクリョウ(漢方薬)などのきのこなどは、カビの一種です。そうした物質が体に入った時、人間は、カビを排除しようと(危ないので)、生体反応を起こすのではないでしょうか?短期的には、体に刺激を与えても、長期的には、臓器に負担をかけるような気がします。
 
本日は、ローヤルゼリーによるアレルギーです。(皮膚病診療 2011;33:511)
 
この論文によると、日本では、今まで、学術雑誌に、ローヤルゼリーによるアナフィラキシー(全身型の重症アレルギー)の型を呈した9人が報告されています。多くの患者さんは、1時間以内に全身アレルギー反応が出ていますが、3時間後に出た人もいます。食物依存性運動誘発アナフィラキシーと呼ばれる型の患者さんもいました。
 
年齢は、20-30歳の若い人に多いです。女性7名、男性2名です。ローヤルゼリーを飲む人は、女性の方が多いのかどうかわかりませんが、一般論ですが、アレルギー反応は、異物の排除能の高い女性におきやいです。
 
効能が医学的に証明されているわけではありませんが、伝統ある健康食品は、それなりに生体になんらかの作用を持っているものがあります。ローヤルゼリーの成分で、人に反応を起こす成分は、メージャーRJ蛋白1、メージャーRJ蛋白2と呼ばれる物質です。しかし、その他の蛋白部分で反応する場合もあるようですが、現時点では、ローヤルゼリーが持つ人への生体活性物質について、不明な点が多いようです。
 
ミツバチの唾液腺の分泌物であるローヤルゼリーは蛋白、脂肪、糖、ビタミンなどの生体活性物質を多様に含みます。ハチにとっては、生命の維持に大事な物質であることは、間違いはありません。
 
一般的に、アレルギーの発症は、以前、何度か、その物質に接していて、感作されていることが必要です。たとえば、ローヤルゼリーの場合であれば、何度か、以前に飲んでいて、IgE抗体をつくっているなどの経過が必要です。
 
しかし、実際には構造的に似た物質に接してアレルギーが成立していれば、ローヤルゼリーは初めて食した場合でも、症状が起きてしまうことがあります。
 
この論文で検討されているローヤルゼリーアナフィラキシーを起こした方は、若い男性でしたが、祖母に、体にいいからとローヤルゼリーを勧められ、初めて接取した後に、強い症状に襲われています。
皮膚病診療という医学雑誌2011年33巻に、アレルギーの特集号があります。さまざまなアレルギー反応の原因を、医師たちが熱心に追求しています。すでに、このブログでは、アニサキスアレルギーや、ピーナッツアレルギーの紹介をしました。
 
原因不明の蕁麻疹などは、その原因追究は難しいものです。食物が原因であることが明らかにできるのは、蕁麻疹のごく一部です。それでも原因不明とされる蕁麻疹の中には、原因がわかるものがあると思います。
 
今の食品などには、さまざまな人工的な操作が入っています。例えば、保存性を高めるために、果物などに、遺伝子操作により、保存蛋白質の強化されていたりします。
 
2011年33巻のアレルギー特集号の515ページには、関西医科大学の先生方が、赤い色素であるコチニール(カルミン酸)に対してアレルギー反応を起こした方を紹介しています。
 
この論文によると、外国のお菓子などに、この色素が添加されているそうです。
 
原因検査検索を受けた患者さんは、外国製のマカロンに反応して、全身の蕁麻疹ができた方です。過去にも、カルミン酸の含まれていたアイシャドー、いちご牛乳に反応がみられたそうです。普通、アレルギー反応は、一過性で軽快する即時型アレルギー反応が多いのですが、そうした経過とは異なり、マカロンを食べてから4時間くらいしてからも、症状が進行して、かなり悪化したようです。
 
カルミン酸は、日本でも、食品添加物として認められているようです。カルミン酸のアルミニウムレーキは、カルミンと呼ばれ、これも添加物の赤い着色料として用いられています。カルミンは、日本では食品には許可されておらず、化粧品には規制が無いそうです。
 
カンパリソーダ、ジュース、ハム、かまぼこ、着色かまぼこ、魚肉ソーセージ、人工かに、ヨーグルト、パスタなどの食品に使われ、それ以外に、化粧品などにも使われることがあるようです。
 
コチニール色素とは、どういうものかというと、中南米の砂漠のサボテンに寄生するカイガラムシ科のエンジムシのメスを風乾させたものを、アルコール抽出したものだそうです。なにやら、すいぶんな物質であったという印象です。
 
即時型アレルギー反応は基本的に、蛋白の成分に、人が反応するので、コチニール色素も、もとの虫由来の蛋白に、人間が反応するようです。
魚、エビ・カニに弱いという人は、少なくありません。
私たちは、魚屋、すし屋に入れば、食べるだけではなく、多くの魚由来たんぱく質を吸い込みます。
そんな時でも、多くの人では、アレルギー反応が起きないように調節されていますが、一部の人に、アレルギーが生じ、やがて、人によっては、治っていきます。
エビ・カニで、アナフィラキシーが起きても、どうしても食べたいと思う人は、アレルギーを克服してしまう(減感作)人もいます。
 
IgEを見つけても、その評価は難しいことがあります。一人一人の病気で出方が違うので、原因を証明するのは、困難な仕事です。
 
魚アレルギーは、魚成分に含まれるヒスチジンなどの生体活性物質による病気もあります。
この反応は、IgEが無くても、アレルギー類似の反応が起きてきます。
 
典型的なアレルギーの原因である、IgE抗体は、蛋白質のごく一部の構造に結合できるようになっています。食物アレルギーでは、IgEが結合する食物蛋白構造が、壊れたり、消えたりするので、アレルギー反応もばらついて起きることを紹介しました。
 
IgEの産生も、本来は、体を守るためです。免疫細胞は、その構造物が体内に侵入した時、危険と判断して、すばやくその構造物を見つけられるように、マーキングするための物質(抗体)をつくっているのです。
 
日本人が、ダニに対して、容易にIgEを作ってしまう理由は、長い歴史があり、ダニの表面構造を排除すべき構造物と判断しているためでしょう。ダニの成分と、回虫の卵成分と似ているとか(免疫細胞が、ダニを回虫卵と間違えてダニIgEをつくってしまうとか・・)、線虫の成分と似ているとか、いろいろ理由は考えられます。
 
人に寄生する生物体が体内に入れば、人は、すばやく異常を見つけて、排除する必要があります。人に病気を起こす寄生虫といえば、回虫ですが、現在、単発的に発症する患者さん以外には、日本から寄生虫病はなくなりました。今、虫と言えば、魚についているアニサキスに注目すべきではないでしょうか?
 
アニサキスは、日本のみではなく、生に近い魚を食するイタリア料理のアンチョビなどでも、病気が起きていることを、以前のブログで書きました。
 
アニサキスのついた魚を食べると、激しい胃痛がおきることは有名です。従来、激しい胃痛は、アニサキスが胃の粘膜にかみつくという説明がありましたが、今は、これもアニサキスの分泌する物質(Ani s 1)に対するアレルギー反応ではないかの説に、置き換わりつつあるようです。
 
つまり、アレルギーということは、アニサキス蛋白質に対して、人がIgEを作るということなのです。さらに、病気の理解を難しくさせるのは、アニサキスによるアレルギー反応は、激しい胃痛ではなく、人によっては蕁麻疹の形をとることがあるからです。
 
この違いは、どこからくるのでしょうか?医学雑誌の皮膚病診療2011;33:483です。

アニサキスは、多くの蛋白構造を持ちますが、人にアレルギーを起こす部分については、分泌抗原であるAni s 1、筋肉蛋白であるパラミオシン(Ani s 2)、トロポミオシン(Ani s 3)が代表的です。その他に、Ani s 4という蛋白分解素阻害物質があり、アニサキスによりアナフィラキシーを起こした人に、Ani s 4特異IgEが検出できるようです。Ani s 4は、熱に強く、消化酵素にも強く、胃腸管で吸収されて、好塩基性細胞の激しい反応(脱顆粒)を起こします。これらの蛋白質は、いずれも、アニサキスの体を構成している蛋白質や、生物として機能するための分解酵素などの機能蛋白です。
 
これらの成分に対して、私たちの皮膚の細胞が反応して、蕁麻疹になってしまうのですが、アニサキスのどの成分に反応してしまうかは、人により異なってきます。さらに、アニサキス蛋白が体内で、どのように処理されるかでも、その後のイベント、胃痛か?蕁麻疹か?の違いが起きてくるようです。
 
激しい胃痛を起こしやすいAni s 1は、アニサキスが分泌する主要な抗原物質です。この蛋白質は、熱や冷凍に弱く、加熱や冷凍処理の魚であれば、Ani s 1は分解されているので、Ani s 1アレルギーはおきにくくなります。
 
トロポミオシンは、アニサキス筋肉に含まれる蛋白質で、甲殻類アレルギーでも、しばしば、症状を起こす元となる筋肉構成蛋白質です。えび・カニ以外にも、イカ、タコなどの軟体動物の筋肉トロポミオシンがあり、蛋白構造的には異なるものの、一部は類似しています。
 
回虫の仲間である線虫であるアニサキスは、ゴキブリ、ユスリカなどの生物とも、一部に類似した蛋白構造を持ちます。私たちは、こうした構造物を、できるだけ、すみやかに体内から排除したいのです。
 
 
先ほど、小麦の加水分解産物によるアレルギーの話しをしました。論文によると、この方は、小麦食品は食べられるとのことでした。
 
ここで、アレルギーに関して理解しておきたいことは、私たちは、食品に含まれる蛋白質のごく一部に反応しているという事実です。

反応する蛋白質部分は、人によって違います。加熱卵に感応する人、加熱しない卵のみに反応する人などの違いがあります。人は、卵の外の部分にでている蛋白質部分に反応するのですが。加熱により、卵の外側の構造が変化してしまうと、もはや、加熱後は、反応しなくなります。しかし、そうならない人もいます。
 
一般的に、加熱すると、反応しにくくなるのですが、ピーナッツの場合は、かえって反応しやすくなることがあることは、以前のブログに書きました。加熱することにより、内部の蛋白部分が外に出てきてしまうので、その部分に反応してしまう人がいるのではないかと、考えられているようです。
 
先ほど、小麦の加水分解産物に反応してしまうが、小麦は食べられる人を紹介しましたが、まさに、そうしたアレルギーです。この人は、RAST検査では陽性に出ませんでした。これは、RAST検査で試薬として用いられた小麦蛋白には、この患者さんが反応する蛋白部分は含まれていないのです。
 
検査は、100%でなく、検査で陽性になるのは、患者さんが反応する蛋白質部分と、検査で用いられた蛋白部分がたまたま一致した時に、反応が出るのです。
 
ペットアレルギーなどでも、実際には飼っている動物に、反応している(IgEを作っている)が、検査では、アレルギーが証明できないことがあります、ペットなどでは、同じ名前の動物でも産地や種類が違うと、試薬に含まれる蛋白質が違うので、患者さんの血液中のIgEが反応しないのです(すなわち、検査精度が低いのです)。
 
実際には、アレルギー検査が拡大解釈されていて、それでアレルギーがすべてわかると、誤解されていたりします。
 
IgEが発見された頃(約45年位前)には、すべての反応がIgEアレルギーで説明できると誤解された時期がありました。しかし、その後、研究が進むにつれ、アレルギー反応はさらに複雑であり、その解明は、現在も進行形です
 
それでは、なぜ、RASTは、大事な検査としてこんなに普及しているのでしょうか?それは、個人差があるものの、蛋白には、多くの人が共通して反応しやすい部分があるからなのです。それを、主要抗原と言います。
 
例えば、ピーナッツは、7S-グロブリンのArah1、2S-グロブリンのArah2、11S-グロブリンのAra h3などがあります。これらは、ピーナッツに含まれる複雑で多種な蛋白質の代表です。しかし、人々は、それぞれ、違うピーナッツ構造に反応します。たとえば、Ara h3に反応している場合、検査試薬にAra h3が含まれていないと、検査では反応がでません。
 
花粉症は、植物花粉に対する反応ですが、植物の1種に反応が始まると、連鎖的にどんどん、他の植物にも反応が広がることがあります。春の花粉症から、始まり、1年中の症状に変化したなどです。一方で、人によっては、1種類だけの花粉症だけが起こり、やがて治ってしまいます。
 

人のアレルギーが複雑であることは、皮膚病診療のアレルギー特集号で、症例が紹介されています。今度は、ピーナッツに対するアレルギー反応のある人の話しです。
 
この方は、花粉症があり、びわ、リンゴ、さくらんぼ、モモによる、口腔アレルギー症候群があります。これらの果物を食べると、口の中がかゆくなります。果物成分に対して、IgEをもっています。花粉症があるために、植物成分にIgEを作りやすくなっていて、花粉と似た構造をもつ果物由来の蛋白質部分にも、連鎖的にIgEを作り、アレルギー反応をしてるのです。しかし、果物では、口の中がかゆくなるだけで、強いアレルギー反応は起こしません。
 
この方が、ピーナッツを材料とした豆腐という形態を食べた時に、強いアレルギーの症状がでました。この方のピーナッツアレルギーの原因は、ピーナッツに含まれているAra h8であることが、検査で判明しました。
 
Ara h8は、植物が、共通に持っている蛋白質です。この方の血液は、Ara h8に対するIgEが高くなっていました。そして、大豆と一緒に、にがりで固めて豆腐となった状態の時に、アレルギー反応を起こすのであろうと推定されました。
 
この方は、普段、ピーナッツが食べられる人で、豆腐以外の食べ物なら、Ara h8を処理できる能力を持っています。しかし、豆腐の形態となった時には、強くアレルギーを起こすらしいのです。皮膚病診療:33;479
 
食物アレルギー反応は、毎回、同じ量で同じ反応をおこすわけではありません。アレルギー蛋白質が、体内でどのような処理をうけるかにより、アレルギー反応は変化するようです。どうすると食べられ、どう料理すると危険なのかを見極めるのは、個々の人で違い、難しい病気と言えると思います。
 
食物アレルギーの検査が陽性なら、食べない方がよい、検査陰性なら食べられるというような誤解が、いまだにあります。検査はあくまで、参考程度の意味しかありません。検査の数値が高ければ、反応する可能性が高くなりますが、数値が高くても反応しないこともあります。私たちの体には、アレルギーにならないように、止める作用も働くからです。幸い、最近は、検査で食べられるか?食べられないか?を決めるという方法方は、とらなくなってきています。
 
どの人が、どの位に、アレルギーを防ぐ機能をもっているのかは、個人差が大きく、さらに、不確定要素が加わります。
巷では、アレルギーと言う言葉を、必ずしも、厳密な意味を考えて使っているわけではありません。人々が、アレルギーそのものを理解しようと思っても、一般向けの良い教科書があるわけでもなくし、やっぱり、よくわからないということが多いと思います。しかし、実際に起きたアレルギーの病気をひとつひとつ、考えていくと、アレルギーへの理解は進むかもしれません。
 
最近、起きたアレルギー関連の事件に、茶のしずく問題があります。
開発した業者は、こうした事態を予想しなかったでしょう。添加した小麦蛋白の作用により、肌がしっとりとして、商品開発の勝利だったはずと思います。もし、この商品がそれほど売れなかったなら、反応する人がもっと少なく、こうした騒ぎにはならなかったかもしれません。この事件を契機に、アレルギーがもっと、身近になったような気がします。そうした意味では、大事な出来事だったような気がします。
 
食品、化粧品には、動物、植物由来の蛋白質が、“かくし味”として入っています。それのどれに、反応する人が多いのか?これは、商品が売れて、多くの人が使って(食べて)みないとわからないのではないでしょうか?
 
食品化学の進歩によっても、人々は人工的な加工物質に、さらされるようになりました。味を良くする、舌触りをよくするためなどに、人工的な加工成分を、食品に添加する場合があります。
 
今までの人類が食べてきた状態とは、違う状態となって、私たちの胃腸に入ってくるのです。こうした時、免疫細胞は、新参物質として身がまえます。しかし、多くの人では、新しい成分は、消化液で分解されしまうので問題は起きないのですが、一部の人では、アレルギー反応となる人がいます。新種の食品を食べていくうちに、腸の免疫細胞がIgEをつくってしまうのです。

小麦には、炭水化物の代表的な食品ですが、他に蛋白質も含まれています。小麦は、自らの品質を保持する(植物として生き残る)ための蛋白質を作ります。小麦アレルギーとは、私たちがそれに反応してしまう病気ですが、アレルギーを起こす代表的な小麦蛋白は、グルテンと呼ばれています。
 
特に、その中でもω-5グリアジンと呼ばれる蛋白質が、私たちにアレルギーを起こす成分として有名で、食物依存性運動誘発アナフィラキシーという病気の原因となることが多いです。パン・うどんなどの小麦を食して運動することにより、強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が起きる病気です。
 
ひとつの事例を紹介します。これは皮膚科診療という医学雑誌に載っている論文で、横浜市大皮膚科の先生方が書かれたものです。皮膚科診療2011:33;475

豚の角煮の中にはいっていた小麦成分に反応した人において、アレルギーの原因を解明しています。
豚の角煮を食べて、両眼の周囲が、パンパンに腫れた人の事例です。この症状は、血管運動性浮腫と言います。医師による熱心な調査で、この方は、豚の角煮に含まれていた小麦加水分解産物に反応していたことが判明しました。
 
この方は、総IgEも低く、RAST検査(アレルギー検査で特異IgEを調べる)でも、小麦、グルテンには反応がでませんでした。
 
しかし、この方の皮膚を使った検査では、豚の角煮に反応がでました。豚の角煮のうちのどの成分に反応したのかを調べるのは、難しい作業となります。その食品に入っているあらゆる成分を、ひとつひとつ、チェックしていかなければなりません。まさに手作業で検査をくりかえす必要があり、患者さん側もいろいろな検査への協力を求められます。検査にかかる費用は、病院持ちでが多いです(保険の対象にできない)。
 
医師らは、製造元から、材料をとりよせ、アレルギーの原因をチェックしていきました。そして、小麦の加水分解産物に、患者さんが反応していたことをつきとめました。この成分に対して、患者さんが特異IgEを作っていたことを証明できました。
 
論文によると、豚の角煮には、塩酸と水酸化ナトリウムで加水分解して得た小麦成分が添加されていました。こうすることにより、添加後の食品は、水に溶けやすくなり、味や保存性が良くなり、パンや麺類なら、粘りが出て、加工しやすくなるそうです。
 
フランスからの論文報告では、レバーパテ、フォアグラパテなどにも、小麦の加水分解成分が、含まれていて、反応する人が紹介されています。食品以外に、化粧品などにも、小麦の加水分解成分が添加されています。この小麦加水分解産物は、人にIgEの関与する1型アレルギーを起こす性質があるようです。
 
“茶のしずく石鹸“事件も、小麦蛋白でした。特に、皮膚から小麦成分が入ることで、消化管より、さらに、人にアレルギーの反応が起きやすくなります。消化管の免疫細胞は、毎日、大量の外来物質に接しているので、侵入物(食品のこと)が危険であるかの見分け能力に優れているのです。
食物アレルギーは、IgEが関与する反応です。IgEは、難しい専門用語ですが、アレルギーを持つ人には、検査の説明に使われていますので、多くの人がおおよそを理解していると思います。
 
昨今は、学校給食の現場でも、食物アレルギーで除去食を用意しなければならない子どもが多くなり、現場の関係者の悩みは大きいです。しかし、食物アレルギーがあると主張する親御さんの理解が十分でないことがあります。例えば、油や揚げ物にアレルギーがあると主張する場合などです。理論的には、油で起こる反応は、アレルギーではありません。野菜や果物には、多くの生体活性物質が含まれ、こうしたものに反応する場合も、アレルギーではありません。本物のアレルギー反応は、食べた後にでる反応の一部です。
 
本当にIgEの関与する反応であるかについては、原因となる食べ物と、血液を反応させる検査をして、確かめます。アレルギーを起こす食物は、IgEを結合する構造部分と、結合できる能力が必要です。食物(表面の一部分)とIgEの結合物が、アレルギー細胞を活性化させる能力を持つかを、実験で確かめなければなりません。
 
アレルギー反応を起こす元である好塩基球と、食物蛋白のIgE結合物を、反応させて調べる実験が必要です。しかし、普通は、そこまで調べることはありません。食べて何かが起きれば、アレルギーだろうと言うことが多いのです。ですから、いろいろな誤解が起きてくることになります。
 
巷では、アレルギーと言う言葉が独り歩きをしています。原因のわからない皮膚の反応は、多く、アレルギーと言われますし、老化による変化もアレルギーなどと言われてごまかされてしまうことがあるかもしれません。
 
食物アレルギーの原因となる成分に関しては、研究が進んできていますので、その一端を紹介します。以前、8月21日のこのブログで紹介したピーナッツアレルゲンの記事と似ています。
 
世界の研究施設では、ピーナッツ蛋白のアレルゲン性が、加熱により、どのように変化するのかを調べています。そして、加熱分解したピーナッツ蛋白と、世界中から集めたピーナッツアレルギーの患者さんから提供してもらった血清と、患者さん由来白血球(好塩基球を含む)を反応させます。そして、食べ物に由来するアレルゲン物質としての能力(アレルギーを起こさせる能力)を調べています。
 
一般的に、熱を加えると、蛋白質は構造を変化させます。卵やミルクなどは、十分に加熱すると、人にアレルギーを起こしにくくなるのです。これは、蛋白質を構成する一部分(ペプチド)が、IgEを結合しにくくなったり、アレルギー細胞を脱顆粒させる能力が低下するのです。しかし、加熱して変性後の蛋白質を取りだして研究するのは、生の蛋白質を扱うのに比べて、難しい作業になるそうです。
 
最近、糖が結合した蛋白質は、アレルゲンが高まるのではないかと報告されています。実験で、糖化したピーナッツ蛋白質は、アレルギーが高まるかかが調べられています。日常的には、炭水化物などと一緒に料理したりすると、ピーナッツがアレルギーを起こしやすくなる事と、関連付けられると推定されます。
 
ピーナッツの場合も、熱により構造が変化し、モノマーと呼ばれる短い部分が多くなります。加熱後、蛋白内部に隠れていた新たなペプチド部分が表面にでてきて、IgEと結合してしまうことがあるのではないかなどが、考えられています。

しかし、現時点では、研究ごとに、多少、加熱による影響については、研究結果が異なっているようです。

論文を紹介します。PLoS ONE 2011;6:e23998
Ara h 1とAra h 2/6、Ara h7は、ピーナッツアレルギーを起こす主要な抗原となっています。ピーナッツAra h 2/6、Ara h7は、プロラミンスーパーファミリーと呼ばれ、2Sアルブミン成分が、蛋白構造を強固に保ちます。αヘッリクスと呼ばれる構造を多く持つので、熱に対しても、変化しにくいのです。
 
この論文では、患者血液(患者のIgE)と、ピーナッツを反応させて、生ピーナッツ由来蛋白のAra h 2/6が、加熱により、IgEを結合できる能力を変化させるのかを調べました。
さらに、患者由来白血球と反応させて、患者由来白血球が増殖して、加熱蛋白や、糖化蛋白が、どの位の量のサイトカイン産生をするかを調べました。
 
生、加熱、糖と混ぜて過熱の処理後に、アレルギー能力を比較しています。

実験の結果、ローストピーナッツ由来の、Ara h 2、Ara h 6 は、アレルギー能力を維持していました。一方、生ピーナッツ由来のAra h 2/6では、加熱により、IgE結合性や、サイトカイン産生能は、有意に低下しました。この研究では、生ピーナッツ由来Ara h 2/6は、加熱や糖添加の処理により、アレルギーを起こしやすくなるとの結果にはなりませんでした。
 
著者らは、生ピーナッツに存在する蛋白質は、加熱後もそのまま変性せず存在していて、この部分に、人はアレルギー反応を起こしてしまうのだろうとしています。
昨今、食物アレルギーの治療は、食べて治す時代になった事を紹介してきました。
 
従来、食物アレルギーの治療として、厳密な除去が進められてきた理由は、食べると、アレルギーが進むと信じられていたからでした。確かに、厳密除去後に、負荷して (食べてみて)、もはや、症状が治まっていた場合、除去の成果と考えられてきたと思います。
 
しかし、実際には、治療の効果か?自然に治まったのか?は、確かめようがありません。食べても、食べなくても、食品に対するIgEの産生は、多くの例で数値が減少していきます。本来、IgEの産生は、アレルギーを起こすためではなく、生体を守るために進化してきたからでしょう。
 
一般的に、乳児期の食物アレルギーは、派手な症状がでることがあります。感作された食品(アレルギー食品)を食べた赤ちゃんが激しく吐いたり、顔色が悪くなってぐったりするなどは、しばしば起きます。こうなっても回復が早いのが、乳児期の特徴です。しかし、こうしたイベントが家族に与える精神的影響は絶大で、その後、家族は、長く離乳食の導入に躊躇するようになります。
 
医師が食品負荷を進めても、なかなか決心のつかない家族は、乳児期のアナフィラキシー(特に牛乳)を経験した家族に多いです。
 
負荷をしない子どもたち(食べないでいる子どもたち)のグループでは、その後も、アレルギーの状態が続きやすいとの論文を紹介します。
 
ここで、考慮すべきは、負荷ができない子どもたちは、基本的に病気が重いと考えられ、減感作が難しい子どもが含まれます。親や子供の性格も関係してきます。食物アレルギーの減感作治療は、リスクがゼロではありません。医師らが、卵アレルギーが遷延している子どもと家族を励まし、減感作療法をおこなった成果に関する論文です。耐性獲得とは、食べられるようになることを、意味します。

Eur Ann Allergy Clin Immunol. 2006 Apr;38(4):113-7
特異IgEが高く、卵を食べないでいる卵アレルギーの30人の子供の経過を検討しました。1歳までの、卵の特異IgE値は、平均28.3 KU(A) /L,  0.6から 100 KU(A) /L以上 (IgEが極めて高い) のレベルに分布しました。負荷テストを拒否したグループの子どもたち(6人)では、IgEは、8 KU(A) /Lを超えていました。
 
(家族が)負荷テストを拒否した群の子供は、1歳では、IgEは、51.7 + 38 KU(A) /L で、調査終了時、3歳前後では、 19.7+13 KU(A) /L となっていました。負荷テストを拒否したグループ6人は、ミルクに対するアナフィラキシーを経験した親たちで、5人は、以前としてミルクアレルギーも持っていました。
 
残りの24人は、30 + 9か月の時点で、負荷テストをおこなったところ(4人は誤食)、即時反応が全員に見られました。
 
入院検査では、20人中14名に反応がありました。4名は、3-4歳で耐性獲得(卵アレルギーが消失して、食べられるようになった)に成功しました。続いての6人も耐性となりました。
 
6か月の乳児期に、IgE100以上あった小児でも、7歳で食べられるようになりました。
 
一度も負荷テストを行わないグループの子供にくらべると、負荷テストをしている子供の方が、IgEは低下していました。

 
現代人は胃腸が弱いです。不潔な食物が無くなった、食中毒が減ったなど、食品の衛生状態が良くなってくると、人の胃腸は弱くなります。病原体から腸を守るしくみが成長していかないのです。
 
若い人の胃腸の病気、慢性腸炎などが増えています。すぐ結果を求められる今の競争社会が、繊細な若い人の胃腸に負担をかけています。しかし、人の胃腸の健康がどのように保たれているかは、今でもまだ、よくわかっていません。どの部分の腸の働きの、何が破綻すると、どんな病気になるのかがわかりません。それを解明するには、起きてしまった病気から、いろいろ考えるしかありません。
 
小児期の食物アレルギーは、多くの場合、自然な調節が働き始め、病気は消えていくのですが、ごく一部の人では、慢性の胃腸炎が続き、その結果、好酸球性胃腸炎という病気が起きます。
 
人は、病気を治すための手段として、体内に炎症を起こしますが、起こした炎症は、うまく沈静化しなくてはなりません。それに失敗すると、病気が起きてきます。炎症が、炎症を呼び、症状は慢性化します。腹痛、下痢、血便、体重減少、腸の狭くなる(手術を要する)などの病気が起きてきます。
 
現代人のクローン病、潰瘍性大腸炎などの病気も、慢性炎症によるものです。腸内細菌の種類と量のバランスが乱れて、増えた一部の腸内細菌に過剰に反応して、腸の構造が壊れていくのではないかと推定されています。腸炎は、骨髄移植後に拒絶反応(DVHD)の一部としても起きていきます。
 
骨髄移植後の病気から、健康な人の胃腸の働きのヒントが得られます。臍帯血を用いた移植後腸炎は、クローン病と似た部分があるようです。今日は、臍帯血を用いた移植が、一般の移植拒絶反応とは異なり、むしろ、クローン病に類似した病気を起こしてくることを書きます。食物アレルギーやクローン病のように、最近、増加している腸の病気を理解するために、大事な病気と思えるからです。
 
多くの骨髄移植を手掛けている米国のデータです。N Engl J Med 2011;365:815
骨髄移植では、他人から採った骨髄血を、病気の人に入れますが、この時に骨髄血ではなく、臍帯血を用いる場合があります。周りから骨髄血の提供をうけられない状況の人たちが、この臍帯血による移植となることが多いようです。
 
論文の病院では、104人が臍帯血を用いた移植治療をうけましたが、このうち10%に、慢性腸炎が発症しました。移植後、88日から314日から、下痢を主体とする腸炎が出てきています。血便や腸の狭窄は少なく、水性下痢と体重減少が特徴です。そして、臍帯血移植後腸炎の特徴は、抗生剤にある程度反応してくれるという点です。一般的な拒絶反応(DVHD)との違い、このタイプの慢性腸炎では、免疫抑制剤による治療効果が低いのです。
 
つまり、臍帯血を用いた移植後の腸炎は、より生理的な炎症に違いのではないかと、推定できます。クローン病のように、本来、反応しないタイプの腸内細菌に、過剰に反応するようになっているのはないかが考えられます。
 
臍帯血移植後腸炎では、治療として用いた抗生剤は、バランスを失って増殖した一部の腸内細菌に対して殺菌効果を発揮しているであろうと推定できます。一般的に、健康人の腸内細菌は、正常な胃腸の働きに貢献してくれていますが、それが一歩間違えば、病気を起こす元となります。臍帯血移植後の慢性腸炎に、多く使われる薬は、抗生剤のメトロニダゾール(文末参照)、フルオロキノロンです。
 
一般的な拒絶反応(DVHD)による腸炎では、細胞があちこちで死滅してしまい、腸のひだひだの深い谷の部分の上皮細胞が消失してしまいます。臓器移植後に起きる一般的な拒絶反応は、腸の構造そのものが壊れていくので、最終的には。腸の狭窄や閉そくなどが起きてしまいます。
 
しかし、臍帯血後拒絶反応では、腸炎は軽度です。むしろ、臍帯血移植後腸炎では、腸に好中級が増えたり、肉芽腫などの塊が作られます。腸内で増加する菌に対して、それを抑え込もうとする反応が主体と思われます。
 
難しい話になってしまい恐縮ですが、病気の出方の違いから、腸の健康が維持されている仕組みの理解につながります。健康人と病気の人の腸の反応の違いを知ることで、腸の多様性を知ることができるのです。
私たちの体は、体に内在する微生物との免疫的な監視バランスの結果として、健康が保たれています。そして、必ずしも、外から病原体がやってくるわけではないのです。安全な食の提供について議論する時にも、いろいろな腸のしくみの解明が進む必要があります。
 
 
補遺:2007年8月23日、日本では、抗トリコモナス薬として認可されていたメトロニダゾール(商品名:フラジール内服錠)に「 胃潰瘍・十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ感染症」の適応が追加されました。
食物アレルギーが子どもたちの重要な病気として意識され始めた時から、その治療の基本は除去食でした。
 
しかし、欧米では10年位前から、日本では5年位前から、この流れに変化が出始めました。従来、除去食は、短期間で留めるとの原則はありましたが、日本では、あまり守られませんでした。
 
しかし、いよいよ、食物アレルギーは食べて治すとする、減感作療法が盛んになってきました。実際にどのように減感作を進めて良いのか、混乱があるようです。減感作のために病院に入院して、ある程度、食べられるようになってからも、自宅で悩んでいる家族や子どもたちの姿があります。又、近所のかかりつけ医から、食べて良いと言われても、どう進めていいのかわからないとの声などを聞きます。

従来の母親たちには、いかにしておいしい除去食をつくるのかに、主眼がおかれていましたが、それが様変わりしてきています。今は、反応する量を避け、いかに体を慣らしていくのかが注目されるようになりました。現在、試行錯誤が続けられています。特に、軽症な子どもでは、入院しないで、母親の調理のやり方にまかされていることがあります。
 
減感作療法による食物負荷(少しづつ食べさせていく)の基本は、良く加熱して少量づつ増やすのが原則です。
難しいのは、食物に対して必ずしも厳密に体が反応するわけでなく、多くの子どもではばらつくことと思います。こうした反応は、実は、主治医が予想できるわけではありません。主治医がどのようにやりなさいと詳しく指導してくらないと嘆く母親もいるようですが、医師も、それほど、予想がたつわけではありません。血液の検査は参考程度です。
 
本当に要注意なのは、微量で確実に強く反応する一部の子どもたちです。どの程度のアレルギーなのかは、主治医とよく情報交換をする必要があります。アレルギーの重症型のアナフィラキシーは、年長児で起きやすくなっています。免疫が発達すると、反応も強く起こるのです。
 
そうしたアレルギーのあった子どもが、以前は反応した食物を食べるのですから、再び、何か反応することはあります。しかし、皮膚のぶつぶつで終われば、大丈夫という気持ちで良いと思います。そこで、増量をやめ、少し、足踏みをします。皮膚につくと赤くなる食べ物でも、食べれたりすることもあります。個人差が大きいのです。

欧米では、生まれた時から、子どもたちを追跡していく疫学研究が盛んです。緻密に計画された疫学研究は、年余にデータが追跡されていきます。こうしたデータを勉強しながら、日本の子どもでは、どのように食物解除をしていくのか、考えていきましょう。

一つ論文を紹介します。 Pediatr Allergy Immunol. 2002;13 Suppl 15:23-8.
デンマークのオーデンセ大学病院では、1995年より研究を開始し、子どもたちが15歳になるまで観察しました。1,749人の新生児を、新生児コホートとして追跡し、アトピー児と、非アトピー児について、吸入あるいは食物抗原の感作率を次のような数値で示しています。

     アレルギー無い児   アレルギーある児
1.5歳    3%             8%
5歳     10%            39%
10歳    12%            30%

注釈:日本では、アレルギーの無い子どもの、アレルギー感作率を調べるのが難しく、データがありません。デンマークの子どもとの比較は、なかなか難しいです。一般的に、日本のアレルギーの子どもと比べると、この数値は低いという印象をもちます。この論文では、10歳の喘息の子どもたちの感作陽性率は、53%としていますが、わが国では、喘息児では、86-95%はダニRASTが陽性となっています。
 
又、ミルクアレルギーは、1歳で2.2%としていますが、これも日本に比べて低値です。日本では、子どもがミルクで反応すると、すぐにやめてしまう場合が多いので、ミルクアレルギーが自然に治まっていても、除去を続けることが多いのです。卵の解除も、外国に比べ遅れています。

論文に戻ります。
牛乳アレルギー(ミルク不耐性を含む)に注目して、経過を追いかけました。アトピーの遺伝、環境要因なども、詳しく調べました。親へのアンケートは、6、12、18ヵ月に、さらに子どもが、5歳、10歳、15歳の時点で行いました。 アレルギー検査は、皮膚プリックテストとIgE測定(ファルマシアCAP)をしました。

 一旦、ミルクアレルギーの診断がついた子どもたちの場合は、ミルクを飲ませるのを止め、ミルク除去としました。子どもが生後12ヵ月になるとミルクを飲ませてチャレンジテストをしました、そして、ミルクアレルギーが継続している子どもの場合には、半年ごとにチャレンジテストをして、治ったかどうかを確かめました。

276人が生下時に無作為に選ばれました。ミルク除去して負荷を行う検査をすることにより、確実なミルクアレルギーと診断されたのは、当初、ミルクアレルギーが疑われた子ども117人のうちの39人でした。1歳の時には、ミルクアレルギーは、2.2%の頻度でしたが、1歳台で56%、2歳台で77%、3歳台で87%、5歳台で92%、15歳台97%の子どもで、ミルクアレルギーが消失しました。

アレルギーがあった子どもでは、喘息と鼻結膜炎が増加しました。反復性の喘鳴は20%でした。生後18ヵ月でアトピー性皮膚炎(14%)と食物アレルギー(7%)が続きました。 医師が診断した喘息は、5歳の2%、10歳の9%の頻度でした。 鼻結膜炎は、1.5歳の1%から10歳の9%まで増加しました。
 
何らかのアトピー性疾患の罹患率は、1.5歳で20%、5歳で14%、10才で25%まで上昇しました。 吸入や食物アレルゲン検査で、陽性になる頻度は、1.5歳、5歳、10歳の時点で、アトピーがある子どもでは8%、39%、30%、非アトピーの子どもでは3%、10%と12%でした(上の表参照)。アレルギー感作が最も高いのは、10才の喘息のある子供たちで、その陽性率は53%でした。
本日、NHKでアンチエイジングの番組を放送していました。人類は、たくさんの薬をみつけました。薬は、病気を変化させる物質です。薬は、体内のイベントを変化させることができます。
 
しかし、現在、体は異常はなく、正常に働いている時、さらなる正常へと導く物質(薬)は、発見されていません。老いによる変化を止める薬もありません。
 
巷には、アンチエイジングの幻想を持たせる商品が溢れています。一部の医者らもアンチエイジングを信じ込ませようと、宣伝をしています。その医師は、うそを言っているというより、思い込んでいるのです。
 
NHKに出演するような医師は、根拠の無い言葉は言いませんが、一般の出演者には、根拠のないアンチエイジングを、しゃべらせています。判断するのは、テレビを見ているあなたですというNKHのスタンスでしょうが・・・。
 
検査数値で、あなたは何歳という評価も、馬鹿げています。元々、検査数値で人の年齢を割り出すなどという作業はできないのです。そうしたあいまいな人工的数値に、一喜一憂してなるものか!です。

但し、基本的健康法、標準体重、アルコールタバコなし、ストレスなし、生きがいありは、重要です。

保険外のアンチエイジング治療も、根拠のうすいものです。短期的によさそうでも、長期的にはマイナスの物質も多くあります。
 
人類は、いまだ、正常の維持のメカニズムを掌握はしていません。人の体を正常たらしめているメカニズムは、まだまだ、わからないのです。アンチエイジングの保険外治療の根拠や問題点を、みつめるスキルを獲得していきましょう・・・・。アンチエイジングを唱える人の(知的)レベルがわかるようになりましょう。
 
議論をしていけば、現時点のアンチエイジング理論は破綻すると思います(つまり、まだ、根拠はない!)

アンチエイジングの代表とされる性ホルモンが、大きな副作用を持つことは、何度も、このブログで御紹介しています。
 
肥満対策も、心臓に良い効果をもたらすものの、痩せている人に、病気が多くなるという日本の疫学データの紹介をします。痩せている人では、ストレスが多くあることにご注目ください。Stroke. 2005 Jul;36(7):1377-82.

1988~1990年に、文部省により行われた疾病と体重に関する疫学研究は、JACC Studyと呼ばれます。これは、40~79歳の日本人男女104,928人(43,889人の男性と61,039人の女性)を対照に、肥満の程度(BMI)と、冠動脈疾患やガンなどの発症頻度との関連を調べた研究でした。女性の参加者が多いので、病気の数は、参加人数に比例して、増加します。
 
肥満指数(BMI とは、体重を身長の二乗で割った値、kg/m2)です。年間の追跡人数と、追跡年数を掛けた数値は、1,042,835人/年となりました。病気発症の追跡は、1999年の末まで、12年間、継続的に行いました。太っている人は、心臓病予防として、減量が勧められます。一方、やせている人では、どのような病気がふえてしまうのでしょうか?この研究では、やせた人で増えたのは、脳出血でした。

実際の論文の結果です。

結果:
対象となった人を、BMI別に6群にわけました。やせた群は、BMI18.5以下の群とし、正常群は、BMI21-22.9と23-24.8の2群に、BMI25を超える肥満群は、MBI25-26.9の群と、BMI27を超える2群としました。全部で、5群あります。BMIが正常な群に属する人の特徴は、学歴が高く、メンタルストレスが低い特徴がありました。

BMIが23を超えると、高血圧の男性が増えていきました。喫煙は、体重が増えるほど低下しました。やせている男性では、血圧は高くないが、メンタルストレスと、喫煙率(6割)は高いという結果でした。
 
肥満した人では、高血圧65%)、糖尿病の人(8.8%)が増えました。しかし、飲酒の程度は、肥満とやせの群で、同等でした。
女性では、肥満群(BMI27以上)に、高血圧(62%)、糖尿病(6.1%)でした。
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追跡期間中に、発症が確認された病気は、男性43,889人のうち、
脳溢血は765人(191人の脳内実質内出血)、
冠動脈疾患379人、
全心血管性疾患1707人でした。
 
同じく、女性61,039人のうち
脳溢血は685人(脳出血145人)、
冠動脈疾患256人、
全心血管性疾患の1432人でした。
 
これらの病気は、参加人数は、女性の方が多いにもかかわらず、病気の数は、男性の方が多い結果でした。
 
次に肥満との関係を検討しました。
BMI 23.0~24.9の人(正常群)を標準とし(1と設定)、それ以上のBMIの人を肥満者として、病気の発症頻度を見ました。
 
 
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BMIが27.0以上の人では、冠動脈疾患が増加し、その程度を多変量解析すると、相対危険度は、男性2.05倍(95%の信頼区間1.35~3.13)、女性1.58倍(95%の信頼区間0.95~2.62)でした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
脳溢血(実質内脳出血を含む)は、18.5kg/m2以下のBMI低値の人々で増加しました。多変量解析をすると、やせている人の全脳溢血の相対危険度は、標準体重の人と比べると、男性は1.29倍(1.01~1.49)に増加し、女性1.92倍(1.49~2.47)に増加しました。
痩せた人の 脳出血については、男性1.96倍(1.16~3.31)と、女性2.32倍(1.36~3.97)となりました。やせた人の脳出血リスク増大は、喫煙などの因子で調整しても、高いリスクのままでした。
 
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日本人の男性と女性において、肥満(高いBMI)は、冠動脈疾患が増加しますが、やせた(低いBMI)人では,、脳溢血が起きやすくなることが示されました。PMID: 15920029