食物アレルギーが子どもたちの重要な病気として意識され始めた時から、その治療の基本は除去食でした。
 
しかし、欧米では10年位前から、日本では5年位前から、この流れに変化が出始めました。従来、除去食は、短期間で留めるとの原則はありましたが、日本では、あまり守られませんでした。
 
しかし、いよいよ、食物アレルギーは食べて治すとする、減感作療法が盛んになってきました。実際にどのように減感作を進めて良いのか、混乱があるようです。減感作のために病院に入院して、ある程度、食べられるようになってからも、自宅で悩んでいる家族や子どもたちの姿があります。又、近所のかかりつけ医から、食べて良いと言われても、どう進めていいのかわからないとの声などを聞きます。

従来の母親たちには、いかにしておいしい除去食をつくるのかに、主眼がおかれていましたが、それが様変わりしてきています。今は、反応する量を避け、いかに体を慣らしていくのかが注目されるようになりました。現在、試行錯誤が続けられています。特に、軽症な子どもでは、入院しないで、母親の調理のやり方にまかされていることがあります。
 
減感作療法による食物負荷(少しづつ食べさせていく)の基本は、良く加熱して少量づつ増やすのが原則です。
難しいのは、食物に対して必ずしも厳密に体が反応するわけでなく、多くの子どもではばらつくことと思います。こうした反応は、実は、主治医が予想できるわけではありません。主治医がどのようにやりなさいと詳しく指導してくらないと嘆く母親もいるようですが、医師も、それほど、予想がたつわけではありません。血液の検査は参考程度です。
 
本当に要注意なのは、微量で確実に強く反応する一部の子どもたちです。どの程度のアレルギーなのかは、主治医とよく情報交換をする必要があります。アレルギーの重症型のアナフィラキシーは、年長児で起きやすくなっています。免疫が発達すると、反応も強く起こるのです。
 
そうしたアレルギーのあった子どもが、以前は反応した食物を食べるのですから、再び、何か反応することはあります。しかし、皮膚のぶつぶつで終われば、大丈夫という気持ちで良いと思います。そこで、増量をやめ、少し、足踏みをします。皮膚につくと赤くなる食べ物でも、食べれたりすることもあります。個人差が大きいのです。

欧米では、生まれた時から、子どもたちを追跡していく疫学研究が盛んです。緻密に計画された疫学研究は、年余にデータが追跡されていきます。こうしたデータを勉強しながら、日本の子どもでは、どのように食物解除をしていくのか、考えていきましょう。

一つ論文を紹介します。 Pediatr Allergy Immunol. 2002;13 Suppl 15:23-8.
デンマークのオーデンセ大学病院では、1995年より研究を開始し、子どもたちが15歳になるまで観察しました。1,749人の新生児を、新生児コホートとして追跡し、アトピー児と、非アトピー児について、吸入あるいは食物抗原の感作率を次のような数値で示しています。

     アレルギー無い児   アレルギーある児
1.5歳    3%             8%
5歳     10%            39%
10歳    12%            30%

注釈:日本では、アレルギーの無い子どもの、アレルギー感作率を調べるのが難しく、データがありません。デンマークの子どもとの比較は、なかなか難しいです。一般的に、日本のアレルギーの子どもと比べると、この数値は低いという印象をもちます。この論文では、10歳の喘息の子どもたちの感作陽性率は、53%としていますが、わが国では、喘息児では、86-95%はダニRASTが陽性となっています。
 
又、ミルクアレルギーは、1歳で2.2%としていますが、これも日本に比べて低値です。日本では、子どもがミルクで反応すると、すぐにやめてしまう場合が多いので、ミルクアレルギーが自然に治まっていても、除去を続けることが多いのです。卵の解除も、外国に比べ遅れています。

論文に戻ります。
牛乳アレルギー(ミルク不耐性を含む)に注目して、経過を追いかけました。アトピーの遺伝、環境要因なども、詳しく調べました。親へのアンケートは、6、12、18ヵ月に、さらに子どもが、5歳、10歳、15歳の時点で行いました。 アレルギー検査は、皮膚プリックテストとIgE測定(ファルマシアCAP)をしました。

 一旦、ミルクアレルギーの診断がついた子どもたちの場合は、ミルクを飲ませるのを止め、ミルク除去としました。子どもが生後12ヵ月になるとミルクを飲ませてチャレンジテストをしました、そして、ミルクアレルギーが継続している子どもの場合には、半年ごとにチャレンジテストをして、治ったかどうかを確かめました。

276人が生下時に無作為に選ばれました。ミルク除去して負荷を行う検査をすることにより、確実なミルクアレルギーと診断されたのは、当初、ミルクアレルギーが疑われた子ども117人のうちの39人でした。1歳の時には、ミルクアレルギーは、2.2%の頻度でしたが、1歳台で56%、2歳台で77%、3歳台で87%、5歳台で92%、15歳台97%の子どもで、ミルクアレルギーが消失しました。

アレルギーがあった子どもでは、喘息と鼻結膜炎が増加しました。反復性の喘鳴は20%でした。生後18ヵ月でアトピー性皮膚炎(14%)と食物アレルギー(7%)が続きました。 医師が診断した喘息は、5歳の2%、10歳の9%の頻度でした。 鼻結膜炎は、1.5歳の1%から10歳の9%まで増加しました。
 
何らかのアトピー性疾患の罹患率は、1.5歳で20%、5歳で14%、10才で25%まで上昇しました。 吸入や食物アレルゲン検査で、陽性になる頻度は、1.5歳、5歳、10歳の時点で、アトピーがある子どもでは8%、39%、30%、非アトピーの子どもでは3%、10%と12%でした(上の表参照)。アレルギー感作が最も高いのは、10才の喘息のある子供たちで、その陽性率は53%でした。