体内の物質で、善玉、悪玉という考え方は、しばしば、誤解を招きます。悪玉コレステロールは、悪玉との名にかかわらず、細胞膜の構成成分であり、生命現象に必須のものです。しかし、一定以上に増加をすると、循環器病には、マイナスです。
しかし、元々、脂肪のつきやすい女性の体の場合は、コレステロール低下療法は、男性程の治療改果はありません。
女性に必須の、エストロゲンは、様々な作用を持つことを紹介してきました。今日は、悪玉エストロゲン、善玉エストロゲンについてです。
エストロゲンが低下すると、女性に病気が起こるという事実は、卵巣摘出マウスなどで、証明されています。単純に、マウスを、人間にも適応し、女性ホルモンの効用が、拡大解釈されています。
アンチエイジング時代の昨今、テレビコマーシャルなどで、美しい女性たちが出てきて、頬をぽんぽんと叩き、アンチエイジングを説く広告が多いです。彼女たちは、20代も、40代も、ずーと美しいのです。
昨日のテレビでも、40歳と20歳の女性を分けるというバライティ番組がありました。回答者は、20代女性を、40代と間違えることが多く、番組は盛り上がっていました。40代女性がすぐわかってしまったら、番組の意味がありませんから・・・。女性たちを選んできたデレクターは、若く見える40代女性を、十分に吟味して選んだでしょう。
20代に見える40代女性たちの特徴は、まず、美人であること、目力があること、頬や顎のラインがすっきりしていること、顔の皮膚が美しいこと、顔の表情を動かさないこと、背が高く、足はほっそりと長いことなどでした。
20代の女性は、20代に見えない老け顔の女性を選べば、良いのでしょうが、そうした女性は出演したがらないでしょうし、映像的にもつまらないです。普通の顔の女性を、テレビで、さがすのが難しいです。この番組に出ていた20代女性たちも、容姿に自信のある若々しい美人揃いでした。
さて、”女性ホルモンが低下すると病気になる”という啓発活動は、相変わらず盛んです。このブログは、女性たちが、そうした考えにふりまわされないために、女性ホルモンにまつわる話題を、いろいろな形で提供しています。多様なエストロゲン作用を理解してほしいです。
一般的に、性ホルモンは、免疫機能を低下させます。エストロゲンは、抗炎症作用があります。膠原病などでは、閉経後には、症状が改善する場合が多いのです。
耳慣れない病名かもしれませんが、本日は、“肺高血圧症”の話しです。高血圧というと、末梢の血管に起きてくる病気をイメージしますが、今回は、心臓から肺へ血液を送る肺動脈の圧が上昇し、心臓から血液が流れにくくなってしまう病気です。Umar らAm J Respir Crit Care Med2011;184:715
エストロゲン受容体ベータが、肺高血圧症と関係していそうだというデータをだしています。
心臓が悪いと、肺高血圧がおきてきますが、今回は、心臓病の続発症ではなく、肺の血管そのものに起きてくる病気です。肺動脈の血管細胞が、どんどん増えてしまい、血管の壁が太くなり、内腔がせまくなってしまいます。すると、肺に血液が流れなくなります。しかし、心臓は、なにがなんでも、肺に血液を送り込まなくてはならず、そうでないと、酸素不足で生命を維持できなくなるからです。
心臓は、強く縮んで、必死で血液を肺に送ろうとします。最初は、筋力アップさせて、筋肉を膨らませながら、がんばりますが、やがて、心臓は疲れ、血液を送り出す力は弱って行きます。その結果、肥大した心臓は、働きが弱ります。これが、心不全と呼ばれます。
肺高血圧症の病気は、女性は、男性の2-4倍に起きてきます。家族性の発症もあり、この場合は、女性の発症は、男性の約2.5倍です。この病気では、エストロゲンが悪さをしています。その原因として、BMPR2遺伝子の異常が指摘されています。BMPR2とは、bone morphogenetic protein receptor2の頭文字です。
この遺伝子異常は、体内酵素であるCYP1B1の異常と関連します。この酵素の働きが悪いと、エストロゲンが分解されて、16αハイドロキシエステロンhydroxyestronができてしまいます。この物質が、肺の血管を増やしてしまうのです。
治療法をさぐるために、マウスを使ってエストロゲン作用についての実験をします。マウスは、低酸素や薬剤によって、肺高血圧症を起こしてきます。この時、エストロゲンが十分にあるメスマウスでは、オスほど、病気が悪くなりません。卵巣摘出した(エストロゲンの無い)マウスを使って、人工的に肺高血圧症をつくります。そして、このマウスにエストロゲンを投与すると、マウスは、病気から回復します。
Umar らは、10日間のエストロゲン治療により、肺高血圧症が改善し、右心機能が改善したことを報告しています。メスマウスではいろいろな病気に、エストロゲンの保護作用が働くのです。
アレっと、思われると思います。エストロゲンによって起きてくる病気が、なぜ、エストロゲンで治療できるのか?ということですが・・・。
Umar らは、エストロゲン受容体ベータが、肺高血圧症と関係していそうだというデータをだしています。
肺には、エストロゲン受容体が多数あります。一般的に、エストロゲンが持つ炎症を抑える作用によって、肺の炎症と細胞増殖が抑えれてています。エストロゲンのβ受容体の働きを抑えてしまうと、エストロゲンの望ましい抗炎症作用は消失してしまうそうです。
肺には、エストロゲン受容体が多数あります。一般的に、エストロゲンが持つ炎症を抑える作用によって、肺の炎症と細胞増殖が抑えれてています。エストロゲンのβ受容体の働きを抑えてしまうと、エストロゲンの望ましい抗炎症作用は消失してしまうそうです。
この実験の結果、エストロゲンβ受容体の働きを調節して、血管の増殖を止めるための治療が、可能ではないかと、著者らは指摘しています。
解説
エストロゲンを感じる部分は、細胞のαとβ受容体があり、どちらの受容体に結合するかによって、その後に起きてくるイベントが変化します。エストロゲンを働かせる場合と、抑える場合があるのです。多機能物質としてのエストロゲンの役割が垣間見えます。
エストロゲンを感じる部分は、細胞のαとβ受容体があり、どちらの受容体に結合するかによって、その後に起きてくるイベントが変化します。エストロゲンを働かせる場合と、抑える場合があるのです。多機能物質としてのエストロゲンの役割が垣間見えます。
女性で、エストロゲンの効果の過剰評価は、受容体の問題を抜きに、議論されているからでしょう。良かれと思った治療が、女性にマイナスになっているのです。エストロゲンは多機能物質であるため、今後、エストロゲンの多様性を解明し、間違った使い方がされないよう、真に女性を助ける物質として研究されていくべきでしょう。
いずれにしろ、エストロゲンが低下すると病気になるとの単純な考え方には、振り回されないようにしましょう。