がん細胞は、骨髄に長く潜む場合と、そうでない場合があり、現代の医学レベルでは、その予測が難しいと、前号のブログで書きました。
 
今回は、このネーチャー記事の後半にかいてあることをまとめてみます。
 
後半は、どう再発を防ぐかについて考案しています。骨髄で長く、がん細胞が眠るところまで書きました。
どうして、再度、がん細胞が増殖に目覚めるのか?目覚まし時計のベルは、いつどのようなきっかけで鳴るのでしょうか?
 
元々、がん細胞にとって、骨髄は長く生き延びるのに適した場所で、骨髄では、必ずしも細胞増殖できないにしろ、潜むには適した環境になっているようです。
 
動物実験で、人の乳がんからとったがん細胞に、人工的な蛍光マーカーを付けて、マウスに移植した場合でも、マウスに乳房腫瘍ができ、そして、全身にもマーカーの蛍光が散布されている様子が観察できます。
 
元々、人の乳がん細胞は、自ら流れ出す能力を獲得している証拠です。
 
ネーチャー記事には、目覚まし時計と表現されていて、この記事では、静止状態にあるがん細胞が、再度目覚めて、増殖型への変化してしまうきっかけのベルを考察しています。目覚ましベルをいかに察知して、静止型にもどらせられるかに、治療成果がかかっています。
 
細胞は、増殖と細胞死のバランスの上にありますが、増殖をすすめるERK遺伝子系、及び、増殖をおさえるP53遺伝子系があります。p53とは、がん抑制因子として有名です。
 
乳がん細胞が、原発巣(乳房)から離れて、他の体の部位にたどり着いた時に、どちらの遺伝子系の機能、つまり抑制系か、増殖系かに行くかで、到着場所での増殖が決まると言います。ERK系が優位になると、p53系は働かなくなり、つまり際限のないがん細胞の増殖が進みます。
 
骨髄に残存する静止型がん細胞は、周囲の組織成分から、静止していなさいとの教育を受けているのですが、そうした骨髄における教育環境は、加齢と共に変化します。
 
がん患者の骨髄の免疫能力は、骨髄の細胞の状態や数、そして細胞同士の間のスペース状態などによって左右されます。がん細胞に静止を続けさせることができるのか、がんを再発させないで抑え込めるのかは、骨髄の免疫能力次第ですが、加齢、健康度などの、患者側の条件で変化します。
 
巷では、がんを避ける暮らしなどが模索されています。がんを静止させる能力には、日常的な生活スタイルが反映します。がんを避けるための、食事、運動、ストレス処理など、健康生活のノウハウが研究されています。

確実な治療効果が確認されているのは、正しい食事、十分な睡眠、ストレスをさけるなど、一般的に良く言われていることです。
 
乳がんの将来的な治療法についてですが、他の生活習慣病のような慢性疾患に準じた治療の時代になる可能性を指摘しています。
 
つまり、悪化時に強化療法を行い、具合が良い時は、治療しなくてよいという管理ができれば、糖尿病と同様に、慢性疾患として管理できるかも・・と書かれています。
 
つまり、がんが命取りの病気としての不安や恐怖から、人々は解放されます。

がんと診断された人々の感情は、再発にすごくめげ、再発がなければ命拾いをしたとホットできるものの、いつでも再発しうると悩まされ、毎日のQOLが悪化します。
 
将来、そうしたがんに対する認識から逃れられる可能性を、この記事で指摘しています。
 
がんの治癒にむけての戦略の一つは、慢性病とおなじ管理の可能性です。
がんの増殖のメカニズムを止めたり、がんが増殖しやすい体の環境を、変化をさせることができれば、がんで命を落とすこともなく、がん患者の長期生存が可能であろうとのようです。
科学専門誌ネーチャーに、乳がんの解説が載っている。その中には、一般の人でも理解できるような書き方をしているものがある。
 
ネーチャーは、多種の科学の論文を扱い、広い分野や職種の人たちが読む雑誌なので、記事の中には、わかりやすく誰でも興味が持てそうな解説記事がある。
 
今月号の乳がんの解説文章には、特殊な専門用語が少なく、読みやすい。
若干の専門用語は、出てくるが、それを知らなくてもだいたい、言いたいことはわかるであろう。
本日は、これをご紹介しよう。
 
ネット配信された乳がんの記事は、小説に近い書き方をしている。
小説的な文章は、時に誇張的であるので、そこは注意が必要だ
(あまり、深刻にならず、小説として読んでほしい)。
 
何が小説的な書き方かというと、乳がんは、何年経っても、たとえ30年でも、体の中に潜んで、再発のチャンスをねらっているんだよ!という調子なのだ。
 
まず、配信されたプロが訳した日本語の文章を、以下に示した。
ごらんのとおり、あまり小説風の訳でなく、淡々と書かれているが、実際のネーチャーは、もっとおもしろおかしく書かれている。悪く言えば、興味本位に、良く言えば、刺激的に書かれている。
 
日本では、こうした論調の病気の解説記事は、まだ、少ない。しかし、どんどん、こうしたタイプの解説が増えてであろうし、日本の医学も変わっていくと思う。

ネット配信された【乳がん】のまとめ
毎年130万人の女性と1万3000人前後の男性が乳がんと診断されている。
ここ20~30年でその治療法は大きく進歩したが、乳がんと診断される患者の約4分の1は
このがんが原因で死亡する。さらに厄介なことに、乳がんはきわめて多様であり、
また、腫瘍細胞は「治癒した」患者の体内に潜んでいるらしい。これらの難問への
取り組みは、まだ始まったばかりだ。
http://forcast.emailalert.jp/c/agxQancW2fyyiLad
 
この文章の次に、私の文章を書く。実際の文章はこんな具合だ!

がん細胞は、早期から血流にのって、全身を探索している。どこかに仲間(がん細胞)を増やすに有利な場所はないかとさがし廻っているのだ。
 
つまり、がん細胞は、種(たね)と同じようなものだ。種(がん細胞)は、必ずしも土に落ちて芽をだせるとは限らないが、がん自身の増殖に都合のよい土をさがしている。
 
種は、血流にのって、どの体の部分にも行くことができる。特に、乳がん細胞が定住するのに好む場所は、脳、肺、骨、肝臓なのだ。
 
先に到着したがん開拓班が、まず土を耕しておいて、肥料(増殖因子、ケモカイン、DNA成分)をまき、次に流れてくる種が土に落ちやすいようにしておく。
 
骨髄にたどりついたがん細胞は、骨髄の中で、周りの細胞や成分(マイクロRNAなど)により、再教育をうける。骨髄成分は、迷い込んだがん細胞に、骨髄でおとなしく留まるようにと諭していく。
 
骨髄成分は、がん細胞に対して、骨髄幹細胞のように振る舞うようにと教えこむ。
 
そして、がん細胞が本性を出して、骨髄で仲間をふやしてはいけないと、骨髄成分は、がん細胞を教育する。
 
すると、骨髄の中のがん細胞は、そこで、生き延び、時には、骨髄幹細胞と同様に、体中をめぐる旅にでることもできるようになる。
 
がん細胞は、全身を旅行中に、適切な場所がなければ、また、骨髄にもどれる。
 
つまり、がん細胞は、骨髄という場所を、生存が保障されるねぐらとすることができるのだ。
 
しかし、一旦、がん細胞がそのねぐら(骨髄)を完全に立ち去ってしまうと、次の目的地では、腫瘍を抑えようとする力が働くようになり、増殖に失敗するかもしれない。
 
つまり、骨髄に腫瘍細胞が残っているのかは、がんの予後の判定に、とても重要な情報を与える。
 
乳がんの患者さんの骨髄穿刺をして、骨髄液にがん細胞が無ければ大いなる安全だろうと言いやすい。
 
しかし、骨髄にがん細胞がみつかった場合には、医師は、がんの経過について説明をするのが難しい。
 
なぜなら、潜んでいるがん細胞が、いつ暴れだすかは、個人差が極めておおきいからである。
骨髄から間もなくがん細胞が出てきてどこかで増える人もいれば、何十年も出てこない人もいるのである。
小麦アレルギーで、話題提供をしました。そして、この事件が示唆するものが大きかったと書きました。
これに関して、少し考えてみました。
 
肌を美しく、ぷりぷりにする効果があると謳う宣伝が多い。
一流メーカーも、販売競争に参入している。
社内で製品の開発研究している研究者は、どのような思いでいるのだろうか?研究員たちは、過剰な宣伝に辟易し、現実の効果が証明できない研究結果とのギャップに悩んでいるであろうか。
 
商品の売り上げが伸びれば、すべて良しの世の中にあって、研究員は、泣いているのだろうか?
一方、キャッチコピーを考え出す広報社員は、そんな研究者の悩みは考えていないかもしれない。
 
でも、案外、そんなこともないような気がする。キャッチコピーを作り出せるようなクリアイティブ人たちは、こうした若がえり商品の本態を、きちんとみぬいているのかもしれない。
 
とにかく、ネット時代になって、若がえりをねらう商品は、氾濫して留まるところを知らない。

しかし、再度、皮膚に自然のもの、人工的なものをのせるのは危ないと、肝に銘じて欲しい。
そして、応用をきかせてほしい。

そして、多くの人では病気にならず、問題がないのに、一部の人だけトラブルが起きる理由を理解してほしい。
生体反応や免疫反応には個人差が大きい。人の顔も、声も、ひとりひとり、皆、違うのである。
 
和漢薬などは、植物由来(一部動物由来)の生体活性を持つ物質である。
体の中に入れれば、何か起きると考えるのが、普通であり、だから薬なのである。

和漢薬は、腸管を動かしたり、鎮静作用を持つ物質であり、こうしたものが、皮膚にどのような作用するかの研究成果は、極めて乏しい。

特に植物エキスなどは、多様で多彩であり、どの物質が皮膚のトラブルの原因であるかを特定することが難しい。

だから、○○エキス入りなどで、トラブルが生じた時に、すぐ気付いてほしい。
小麦石鹸事件で、人々は大いに学んだのではないかと考えるが、もしかすると甘いのかもしれない?
 
酵母、和漢エキス、卵蛋白など、次々に商品が出てくる。人工的に加工された蛋白質物質を肌に、のせるのは危ないのだ。

植物には、動物を刺激する物質が、さまざまに含まれている。
極端な例が植物由来の毒であり、植物は動物に食べられないための仕組みを持っている。

しかし、進化の過程で、動物と植物は、それぞれが作りだす物質を生存に利用してきた。
 
植物は、防衛蛋白と呼ばれる種類の蛋白質を作り出す。それは、特に動物に作用する。なぜなら、動物は、食物のつくりだす生体活性物質を利用して進化してきたのである。つまり、果物や野菜を食べると、腸管が良く動いて便がスムーズにでるとかの効果が出る。
 
植物は、自らの根、葉、花、種の保存のために、防衛蛋白を作り出す。防衛蛋白の構造は、植物ごとに微妙に違っていても、構造的に似ている場合が多い。植物も一つの細胞から、様々に進化してきたからであろう。
 
人間にアレルギーを起こすのは、こうした共通する蛋白質であることが多い。つまり、杉花粉症になると、食物アレルギーが出たり、口腔アレルギー症候群などが起きていくる。口腔アレルギー症候群とは、まず、花粉症が発症し、その後食べた後にアレルギー反応が起きて、口の中がイガイガする病気である。
 
話題を元に戻すと、肌はどうすれば、美しく保てるのか?。この質問は、人はどうすれば老化を避けられるのか?との質問と同じで、誰も答えを持たない。

医学は、老化を遅らせるための答えを必死で探している。
皮膚科医は、老化の予防には、皮膚に刺激を与えないようにするのが良いという人が多い。
つまり、のばしたりひっぱたりのマッサージは、長期的には皮膚に良くないだろうと思える。
昔とは考え方が違ってきた。

皮膚は刺激を与えると、免疫反応を起こす。免疫反応は体を守るだけでなく、老化(線維化)させていく。動物が酸素からエネルギーを得ている限り、皮膚は酸化ストレスから逃れられない。
 
人は、老化したくないと望む時、何か“モノ”を得ることで、老化しないと思えるようになるのかもしれない。
老化の基準に客観的なものはなく、本人が老化していないと思えば、老化したことにならない。
広告は、こうした心理につけ込む。

昨今、肌年齢とか、肺年齢、血管年齢とかのネーミングで、年齢を判定できると謳う検査がある。
しかし、老化は多因子で総合的な判定であり、こうした○○年齢に、惑わされてはいけないと思う。
良い結果がでれば信じても良いかもしれないが、悪い結果が出た時は、信じない方が良い。

検査が判定しているのは、あくまで、正常、やや異常、異常との判定なのである。
悠○というメーカーが販売していた石鹸が、多くの人に小麦アレルギーを発症させたとする事件があった。
 
朝日新聞4月21日版によると、悠○が厚労省に報告した小麦アレルギーの発症者数は、1567人とのことである。発売中止まで、うれた石鹸は460万個であった。2010年までに、医師らが何度か、アレルギーの危険を悠香に警告していたという。

最近、全国535人の人が、訴訟を起こしたそうである。
 
この事件は患者にとって不幸な出来事であったが、この事件を契機に、アレルギー発症の機序を社会に根付かせることに役立ってほしいと願う。

今回の事件で学ばなければならないことは、何点かある。

どの部分のたんぱく成分が、人の免疫を刺激するかは、わかっていないこと(予測不可な部分が多い)。
つまり、健康食品に含まれる別の物質(特にたんぱく質)が、同じようなアレルギーを引き起こす可能性があること。

多くの患者が出ないと、明らかにならないことがあり、予めその危険を知ることは難しいこと。科学の予知能力は、まだ、不完全であること。
だから、健康に良いという触れ込みだけで、製品を体に入れないこと。

健康に良いという評価は、極めて難しく、にせ薬を使用し、効果の比較試験を長期に行う必要があること。
一方、健康に悪いという評価は、比較的に容易に得られやすいこと。

今回は、患者が増えたことで、医師が熱心に解明に乗り出し、医学の力で因果関係が明らかになったこと。

最初から、石鹸と小麦アレルギーの因果関係を予想していた人は、いなかったのではないかと思われること。
 
先日のアレルギー予防食でも書いたが、パン食が主食の欧米民族では、小麦の起こす病気が多い。
小麦成分は、グリアジンなど、人の免疫細胞を刺激する物質が含まれている。
しかし、正常人では、パンのたんぱく質を食べても、病気にはならない。胃酸や腸の消化液で分解され、免疫細胞を刺激することがない。
 
小麦の慢性腸炎(セリアック病)などは、免疫異常を持ち合わせたごく一部の人で、発症してしまうことはわかっていた。こうした人では、小麦を食べて腸炎がおきてしまう。

今回は、人工的に分解された小麦蛋白を、皮膚に乗せたことで発症した。
そして、人類は、今まで、そのような経験がなかった。その結果、顔に残った石鹸の保湿成分(小麦成分)は、皮膚の細胞にとりこまれ、免疫細胞を刺激してしまったのだろう。
 
保湿効果が続くということは、この成分が皮膚に残りやすかったのであろうし、それを勝手に人が肌に良いと感じていたのである。その結果、皮膚の免疫細胞は活性化した。
 
最も、こうしたアレルギーも何も起きない人では、保湿効果の高い、素晴らしい石鹸であった。
 
小麦のアレルギー反応は、一部の人に限定して起きたものだが、反応する人の数が増えれば、特殊反応ではすまされなくなり、訴訟ということになってしまった。

グルバール19Sという分画の小麦たんぱく質が、人にアレルギーをおこさせたとのことである。

もう少し学術的な言い方をすると、特殊な人工的な構造体となった小麦蛋白が、人のIgEの産生を刺激した。
 
今後の展開は、悠○が市販後調査などで、アレルギーの把握をどの時点でどの程度を認識し、販売中止の判断時期が適切であったかが、争われるのではないだろうか?

もし、発売前から、動物実験などで、皮膚炎の頻度が高いという事実が判明してしまえば、メーカーには不利であろう。

しかし、こうした一般日用製品が市場に出回る前には、どの位の安全確認義務がかせられているのであろうか?

薬などより、ずっと、ラフな品質管理で、世にだせるはずであろう。
健康食品、サプリなどは、効果がなくても世にだすことはいくらでもできる時代である。
 
今回の事件は、健康に関する商品知識を持つ事が、大事であることを教えてくれた。
特に体に入れる商品については、よくよく考えて、使用を決める必要がある。

副作用に関して、どの位のデータが出るものなのか確かめ、安易に体内に入れない方が良い。
特に、人工的に加工されたたんぱく質は危ない。
そして、商品を販売している業者は、どの位の知識と経験をもつのか、社会全体でウオッチしておくべきと思う。
低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールは、悪玉コレステロールと位置づけられ、その値は、低い方が体に良いと考えています。LDLコレステロールの低い人では、心臓の冠動脈の病気が減るからです。コレステロールを低下させる薬は、特に男性で有効です。
 
冠動脈による死亡とLDLコレステロールの関連については、多くの研究がありますが、最近の日本人研究を紹介します。J Intern Med. 2010 ;267:576-87.

40から79歳の 30,802人の男性と、60,417人の女性を追跡して病気の発症をみた研究です。 平均LDLコレステロールは、男性110.5 mg/dL、女性123.9 mg/dLでした。
 
男性では、 LDLコレステロールが140 mg/dLを超えると、LDLコレステロール80 mg/dLの人と比べて、冠動脈疾患による死亡が2倍に増えました。 2.06 倍でした(95 %信頼区間: 1.34 ー 3.17)。
 
しかし、女性では、この相関ははっきりしませんでした(女性では、コレステロールが高くても、冠動脈の病気がふえませんでした。
 
このように、LDLコレステロールは、下げておくと心臓に有利です。しかし、その他の面では、どうなのでしょうか?以下は、低コレステロールは、脳出血を増やすという論文です。

コレステロールは細胞の膜の重要な成分であり、 LDLコレステロールが低値になると、細胞そのものがもろくなります。その結果、増えてしまう病気があり、がんなどが増加します。
 
LDLコレステロールの値と脳出血の関連について、日本人を対象とした疫学研究である、茨城県調査を紹介します。Circulation. 2009 28;119:2131-3. PMID:19364982
 
方法と結果:30 802人の男性と、60 417人の女性で、過去に脳卒中または冠状動脈性心臓疾患の既往のない40~79才の人たちを対象としました。
 
この疫学研究を始めた1993年に、対象男女の、病気の危険因子を調査しておきました。その後、この人たちを年余にわたり、追跡調査して、病気をチェックしました。
 
2003年まで、この集団の男女の追跡ができ、その時点までの脳出血の発症を調べました。この間に、264人の実質内出血死は確認されました。
 
脳出血死と、LDLコレステロールの値の関係を見てみると、低いLDLコレステロールの値の人と比べると、高いLDLコレステロール人の方が、脳出血による死亡を逃れることがわかりました。
 
実際のデータは、それぞれの群に含まれる人たちの年齢に片よりが無いように、補正をしています(年齢が高い人が、特定の群に集まり、結果として死亡率が高くならないように、群間の年齢に数字的な調整を行う疫学的な手法で補正する)。
 
さらに、死亡に影響を与える病気因子を組み合わせた多変量解析法でも、LDLコレステロールが低い人は、脳出血が増加しました。
 
結果、LDLコレステロールが80mg/dL、以下の人と比べて、それより高いLDLコレステロール値を持つ人は、脳実質内出血による死のリスクは半分に減りました。
 
心血管危険因子による影響を加味して調整した後も、80mg/dL、LDLコレステロール以下の人と比べて、80mg―99mg/dL群で脳出血による死亡は、0.65倍(95%のCI 0.44~0.96)であった。、100~119mg/dLでは0.48倍(0.32~0.71)、120~139mg/dLでは0.50倍(0.33~0.75)、140 mg/dL以上 では0.45倍(0.30~0.69)となりました。
 
結論:低LDLコレステロール濃度は、実質内出血による死のリスクが高くなりました。以下の図を参考にしてください。
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昨日、紹介したフィンランドの子どものアレルギー予防のための勧告論文の追加です。
2005年位から、世界中で確立してきた勧告に準じた内容になっています。
 
フィンランドと日本の違いは、ダニアレルギーの影響がフィンランドで少ないことで、この論文でも、ダニを避ける努力(掃除やダニ対策)は、フィンランドでは有用ではないと書かれています。
 
また、ペットが持ち込む細菌類が、子どものアレルギー予防につながるとしています。予防を目的に、ペットを飼うとか、飼うのをやめるとかの変更を行うのは正しくないとしています。(影響の個人差について、触れています)子どもが生まれる前から飼っているペット飼育の変更は、フィンランドの場合は、不要とのことです。
 
妊娠中や授乳中の母親は、子どものアレルギー予防のために、母親が除去食をする必要はなく、母親自身に強いアレルギーが起きる食品があれば、それは避けると書いてあります。
 
子どもが生後6か月までは、母乳限定が望ましいが、6か月を過ぎたら、母乳限定は良くないと書かれています。
 
ミルクのアレルギーがある場合は、4-6か月では他の食品を導入してよいようです。4か月を過ぎて導入できるのは、ポテト、フルーツ、野菜で、5か月を過ぎたら魚、肉とあります。6か月をすぎたら、つぶしの固形食を導入するように書いてあります。パンの導入は10カ月です。欧米では、小麦のアレルギーは問題が多く、導入には慎重のようです。小麦は、大麦、ライ麦と成分が似ているようですが、小麦アレルギーでも、オート麦には反応がでにくいとあります。
 
食物アレルギーに関しては、多種類の厳密除去を避けるように書いてあります。
 
食物アレルギー症状が軽い場合、あるいは、多量に食べた時のみに症状がでるなら、除去をする必要はないとあります。
 
除去食を行う時は、タイムリミットを定めて、除去解除の計画をたてておくように指導しています。
 
ミルクアレルギーで、IgEが関与するのは7割、それ以外は3割としています。湿疹や腹痛は、IgEの関与は少なく、蕁麻疹や嘔吐はIgEが関与するとしています。
昨日、食物アレルギーの話しをしました。
 
なぜ、食べることによりアレルギー反応がなくなるのか?不思議に思う方もいると思いますが、IgEはそうした性質を持つからなのです。負荷して体を馴らす方法は、IgEが病気を起こす場合に、用いられる治療法です。人の体は、刺激があれば、IgEを作り始めますが、やがて作るのを止める性質を持ちます。
 
一方、抗体の中でも、IgGの反応は、刺激が続く限り増加していくことが多いようです。IgGは感染症などで活躍するものですが、体(リンパ球)は、感染症を治すまで、IgGをつくってがんばるからでしょう。

昨日紹介した減感作療法では、食べられなかった食品(抗原)を食べ続けていると、最初は起きていた嘔吐、腹痛、かゆみ、発疹、咳、喘鳴などが起きなくなり、IgGが上昇してくるという経過を紹介しました。
 
負荷食を始めた直後は、IgEの動きは、はっきりしないけれど、2年以上経つとIgEは、減ってきました。

人の体(リンパ球)は、もはやIgEをつくらない判断をしたのです。IgEは悪玉、IgGは善玉と考えがちですが、元々、体内物質に、悪玉、善玉は単純すぎます。IgEは寄生虫を殺す善玉の働きもしています。
 
アレルギー以外でも、食べ物を食べると、下痢や腸炎がおきる病気があり、こうした病気には、小麦による腸炎であるセリアック病、ミルク不耐症などがあります。この病気を起こす元は、IgGであったりします。
 
IgGを解説します。神経難病などで、神経細胞が壊れていく多くの病気にIgGが関係します。インフルエンザの重症肺炎でも、IgGが悪化に関係するようです。IgGは、自己免疫病で、さまざまな悪さをします。
 
昨日のピーナッツ負荷でも、当初、子どもたちに、ずいぶんと恐い反応が起きているようですが、やがて、体の反応は変化していきます。多くの子どもで、IgEを作り過ぎないようにストップがかかります。アナフィラキシーも進まないようにストップがかかるのです。
 
但し、ごく一部の人ですが、ストップがかけられない体質の人がいます。本当に注意すべき危険人物は、どの子かは、不明ですので、学校の先生は、食後の蕁麻疹でも、大変なこととして扱わざるをえないのでしょう。
 
たまたま、子どもに遺伝子異常などを持ち合わせていると、止まるはずの反応が止まらなくなり、アレルギーが進むことがあります。補体の遺伝子異常などがあると、ストップスイッチが入らなくなるのです。
 
ワクチン、衛生環境の整った地域で、アレルギー疾患が増えているのですが、欧米では、そうしたアレルギーの増加を減らすべく、知恵をだしているようです。医学は、欧米にならうことばかりですので、欧米のアレルギー戦略をのぞいてみしょう。
 
フィンランドでは、2008年から20018年にかけて、アレルギー低下作戦を展開させているようです。Pediatr Allergy Immunol 2012;23:103
目標項目は、
1) アレルギーへの進行を止める
2) 抗原への抵抗力をつける
3) 診断能力を上げる。
4) 職業関連のアレルギーを減らす(職場環境の改善)
5) 重症反応の予防と治療に重点を置く。
6) コストをへらす
どの項目も、医学としてのアレルギーの解明が進むことが前提となっています。
 
以上の内容は、日本でもそのまま適応できそうですが、日本の原状をかんがみて、注目すべきところはどこでしょうか?少し、考えてみたいと思います。
 
長い間、日本はアレルギー対策として、症状を起こさないようにとの啓発が盛んでした。どの国より早い時点で、食品表示を法律化しました。法律の施行には難しい問題が多いのですが、日本は、規制の好きな国なんです。
 
花粉症なども、症状がおきないうちから、早く治療を始めよとか言われてきました。
治療のコストは度外視する傾向にありました。
 
しかし、今後は、注意すべきこと、軽い症状は見逃すことなど、メリハリをつけた予防法です。
 
軽いものは許容する。そのうち、軽くなると考える。つまり、重症の病気を知り、軽いアレルギー症状は、問題にしない。
 
食後の軽いじんましんは、見逃す。
周りの花粉症が軽くなっている人がいたら、その人の生活環境を参考にしてみましょう。イライラしないタイプの人が多くありませんか?
 
医師による診断技術を上げて、アレルギーと誤解している病気を減らすこと。重くなるかもしらない・・との恐怖から、病気を考えないこと。
 
食物アレルギーでは、抗原食品を食べて、体を慣らすこと。
但し、食物による慢性腸炎もあり、同じ症状にみえても、食物アレルギーとは、質が違う病気の腸炎であることを理解しましょう。
 
喘息では、抗原の除去だけでは、対処できず、発作が積み重なることを悪化が進む病気であることを理解しましょう。有害物質を吸い込まないように気をまわしましょう。
 
職業性のアレルギーに要注意していきましょう。職業によっては、有害物質を吸い込むことがあるので、できるだけ避けるよう神経を使いたい。
 
日常生活の有害物質として、タバコは有名ですが、他にも、たとえば、ガソリンの自動車への注入時、ガスを吸い込むことで、気道に傷を与えます。暖房器具などの燃料にも、刺激のものを避けること。体の修復能力を落とす、お酒も良くないです。
 
欧米では、アレルギーは日本より先行して増加して、東南アジアはそれを追いかけている状態です。
 
オーストラリア、ニュージーランドは喘息やアレルギー疾患の頻度の高さで知られていますが、植民地に住む白人は、祖先の暮らした生活環境とは異なる、気温、湿度、衛生状態などに適応できずに、アレルギー疾患を得ている可能性があります。
 
 

 
昨日、紹介したピーナッツアレルギー論文ですが、もう少し、くわしく経過を見てみましょう。
 
初回の負荷テストでは、ピーナッツ蛋白50mgまで増量することが目標でした。
 
1日でこの量に達したのは、10人(26%)でしたね。それでは、他の子どもは、どうだったのでしょうか?
15人(38%)は、25mgまででした。6人(15%)は、12mg、5人(13%)は、6mgでした。ピーナッツ蛋白1.5mgまでの子どもは、2人(5%)でした。
 
92%の子どもに症状があったのですが、主な症状は27人(69%)が、気道症状だったようです。喘鳴、口のかゆみなどの口腔の症状、喉頭症状などでした。
 
これらの気道症状は軽症だったようですが、気道症状は食物アレルギーの症状では、一番注意を要します。喉頭浮腫など、気道が狭くなり、それが進行すれば、息ができなくなります。この時点でめげそうになりますが、中止せずに、がんばってアレルギーを克服できたということですね。
 
アレルギー反応は起こしても、子どもたちは、なんとか調節能力を働かせて、それ以上には反応は進まないことが多かったのです。喉頭浮腫は、進むと恐いので、この症状があれば、自宅での増量は難しいですが・・・。エピペンのタイミングも難しいですね。
 
胃腸症状の嘔気と腹痛は、17人(62%)に見られました。6人(21%)は、下痢と嘔吐がありました。24人(62%)は、皮膚症状がありました、6人に喘鳴があり、そのうち、2人の喘鳴は中等度まで進行しました。
 
食物アレルギーは、症状が2か所以上にわたると、さらに進行するのが恐いと言われます。この論文の症例は、喘鳴や胃腸症状に加えて、皮膚症状も伴っている子どももかなりいたようです。
 
それでも注意深い観察や、薬剤などを併用して、初日をのりきったようです。
その後のピーナッツ蛋白増量期には、46%の子どもが反応を起こしました。
 
しかし、その後に、自宅で維持療法を続けている間では、症状は3.7%と少なかったようです。子どもたちは、この時点で、ピーナッツにかなり反応をしなくなったようです。つまり、異物として反応することが消えてきたと言えます。
 
その後は、93%の子どもが、ピーナッツ蛋白3.9gに耐えられるようになったと昨日に書きました。途中の10人の子供たちが、それぞれの理由で負荷試験を止めていますが・・・。
 
論文では、この子どもたちの免疫状態の経過を追ってみています。IgEは、33ヶ月後には低下がみられ、IgGは上昇しました。バソフィルの反応は低下しました。調節性のT細胞は、6-12ヶ月で増加しましたが、その後は低下しました。
ピーナッツアレルギーの一般的な認知度は、どの位でしょうか?この病気の方や,、親御さんにとっては、悩ましい病気ですが、病気のない人では、どの位の方が興味をもっているのかは、気になるところです。
 
人が何らかの慢性の病気になると、悩みますが、食物アレルギーは、病気を考える時に、いろいろな示唆を与えてくれます。
 
一般的に、病気を克服するためには、不安を感じすぎずに、成果を信じて、落ち着いて対処するのが、望ましいの教えがあります。病気が起きる原因とは?悪化させるものとは?それを克服するためには?などを考えながら、後悔しないで、やるべきことをみつけます。
 
日本は、学童期に入ってからの卵、ミルクアレルギーが、諸外国より多く、環境が似ている隣の韓国などより、かなり多くなっています。
 
日本は、医療へのアクセスがよく、検査が容易であることから、除去食に流れやすい時期が続きました。
 
学校でも、知識が浸透し、重症型が強調され、学校の先生方は、敏感になっていました。誰でも、重症に移行するとの注意が徹底しました。学校は、万一の場合を想定する場所だからです。しかし、学校の先生の中には、だんだん病気の理解が進み、ベテランの先生になるほど、重症型の子どもは、ごく一部であることを理解するようになります。
 
長い間、除去してきた食品については、それを克服しようとする時、子どもの性格が成功に左右します。不安の強い子どもは、親も不安が強い方が多く、なかなか食べられません。
 
親が自分自身にアレルギーがあると思いこむと、子どもにも食べさせることの恐怖をかかえてしまう方もいます。そのまま、大人になるとますます、恐怖はつのるものと思われます。

一方、大人の方の中には、カニアレルギーだけど、おいしいから食べ続けた結果、症状がなってしまったと言う人もいます。親元を離れてから、治ってしまうことがあります。
 
昨今の食物アレルギーは、食べて克服する治療法がかなり進んできました。そのやり方もさまざまです。
 
どんどん、除去食の解除を進めてほとんどの子どもが成功したとする小児科医がいる一方で、それは危険だと警告する小児科医もいて、治療法は混乱状態にあります。
 
この論争にも、小児科医自身の性格や考え方、医師の背景や学派の影響が垣間見えます。それでも、多くの人は、食物アレルギーを克服するために、考べていくとの考え方の変化を歓迎しています。
 
病気は、人ごと、違う経過をとるものであるし、食物アレルギーも、個人差が大きい病気です。
 
ピーナッツアレルギーの減感作の論文です。JACA 2009;124:292

この論文にかかれているのは、ピーナッツの増量と、その経過です。
 
ピーナッツ蛋白を、初期量、強化量、維持量、目標量までに増やしていく道筋と、その時に起きたイベントが紹介されています。
 
治療の全経過に参加した29人のピーナッツアレルギーの子どものうち、27人が3.9gのピーナッツ蛋白が食べられるようになったとの話です。(ピーナッツ1個で蛋白240mg前後)
 
参加した子どもの年齢は、12-111ヶ月で、平均52.5カ月です。男児が多く64%を占めます。

それぞれの人の重症度に応じて、治療内容が異なりますので、治療に要した時間は、症例ごとに異なります。
 
最初に参加した子どもの数は、39人でしたが、そのうちの10人は途中で脱落しています。通院しきれなくなった、両親の不安が強い、家庭での増量に抵抗を感じたなどが、脱落の理由です。
 
治療(ピーナッツを食べること)は、入院して、どんどん増やす強化療法と、自宅で行う同じ量で続ける維持療法を、組み合わせます。
 
1回目治療群に属する子ども、2回目治療群に属する子どもと、患者を2群に分けて治療しています。1回目の治療群の経験を生かして、2回目の治療群の子どもでは、ピーナッツの増量は急いで行っています。
 
治療途中で行うピーナッツチャレンジテストは、1回目の治療群では、13-22週後に行い、2回目の治療群では、増量を早く行ったので、ピーナッツチャレンジテストは、4-7カ月で行っています。
 
初日、ピーナッツ蛋白0.1mgから初めて、30分おき、倍々と増量し、50mg食べられることをめざします。
50mgに達することができない子どもは、その後の期間に延長して、増量に努めます。

その後、自宅にて、毎日食べて、2週間ごとに、25mgづつ増量し、300mgをめざします。

初日の導入日には、92%が何らかの反応を示しました。初回導入日には、中等度までの皮膚反応は、62%の子どもに出現しました。初回導入日に50mgまで行けた子どもは、39人中の10人(26%)でした。
 
300mgでいったんとめて、維持します(~12ヶ月)。その後、チャレンジテストを行い、その後、さらに1800mgまで増量しました。
 
4か月ごとに症状を見ながら目的量まで増量していきました。その結果、多くの子どもで、ピーナッツアレルギーが克服できました。
昨日、咳と痰の話しをしました。気管支の奥で痰がつくられると、痰は1-2日かかって、上の方に運ばれ、気管まで痰が到達すると、咳反射がおき、咳が起こります。昨日は、痰がなくても、咳をしてしまう心因性の咳の話しをしました。
 
今日は痰が作られる話をします。痰はべたべたとした粘液のムチン(Muc5ac)が含まれています。痰の中には多くの細胞成分が含まれています。痰の粘液をつくる細胞は、杯細胞とよばれます。このムチン粘液をつくる遺伝子の代表は、MUC5AC遺伝子です。
 
喘息などでは、このムチンMuc5acは、発作の悪化を引き起こす悪玉として取り扱われています。ムチン遺伝子と喘息に関しては、多くの研究が発表されています。
 
それでも、粘液が体を守るために大事な成分であることは、容易に想像がつきますね。
 
粘液は、外界の刺激から粘膜を守る役割です。粘液は、気管支だけでなく、粘膜にも多量に存在しています。気道では、ムチン遺伝子は活性化しています。痰がでなくては、気管支炎は治りません。
 
胃腸の粘液は、数多くの細菌、ウイルス、寄生虫の攻撃から、胃腸の表面を守っています。
胃腸にはMUC5AC遺伝子は隠れて存在いるようですが、回虫などの寄生虫の駆除には、遺伝子が活性化します。寄生虫の感染があると、Th2型の反応もおきてきます。Th2型の反応とは、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギーの病気でおきる免疫反応と同じタイプです。
 
最近、日本ではほとんどいなくなった寄生虫ですが、MUC5AC遺伝子は、回虫の駆除にとても大事だという紹介です。論文は、Hasnainら、J Exp Med 20011;208:893
 
研究者らは、MUC5ACの遺伝子を欠損させたノックアウトマウスを用いて実験を行いました。MUC5AC欠損マウスでは、ムチン粘液がつくられません。このマウスは、回虫を体外に排除しようとして、必死に、Th2型の免疫反応を高め、サイトカインを多量につくります。しかし、マウスは、回虫を対外に排除をすることができずに、回虫の慢性感染を許してしまいます。
 
さらに、著者は、人間のMuc5ac蛋白が、直接的に、回虫の生存を障害させる能力があることも証明しました。