低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールは、悪玉コレステロールと位置づけられ、その値は、低い方が体に良いと考えています。LDLコレステロールの低い人では、心臓の冠動脈の病気が減るからです。コレステロールを低下させる薬は、特に男性で有効です。
 
冠動脈による死亡とLDLコレステロールの関連については、多くの研究がありますが、最近の日本人研究を紹介します。J Intern Med. 2010 ;267:576-87.

40から79歳の 30,802人の男性と、60,417人の女性を追跡して病気の発症をみた研究です。 平均LDLコレステロールは、男性110.5 mg/dL、女性123.9 mg/dLでした。
 
男性では、 LDLコレステロールが140 mg/dLを超えると、LDLコレステロール80 mg/dLの人と比べて、冠動脈疾患による死亡が2倍に増えました。 2.06 倍でした(95 %信頼区間: 1.34 ー 3.17)。
 
しかし、女性では、この相関ははっきりしませんでした(女性では、コレステロールが高くても、冠動脈の病気がふえませんでした。
 
このように、LDLコレステロールは、下げておくと心臓に有利です。しかし、その他の面では、どうなのでしょうか?以下は、低コレステロールは、脳出血を増やすという論文です。

コレステロールは細胞の膜の重要な成分であり、 LDLコレステロールが低値になると、細胞そのものがもろくなります。その結果、増えてしまう病気があり、がんなどが増加します。
 
LDLコレステロールの値と脳出血の関連について、日本人を対象とした疫学研究である、茨城県調査を紹介します。Circulation. 2009 28;119:2131-3. PMID:19364982
 
方法と結果:30 802人の男性と、60 417人の女性で、過去に脳卒中または冠状動脈性心臓疾患の既往のない40~79才の人たちを対象としました。
 
この疫学研究を始めた1993年に、対象男女の、病気の危険因子を調査しておきました。その後、この人たちを年余にわたり、追跡調査して、病気をチェックしました。
 
2003年まで、この集団の男女の追跡ができ、その時点までの脳出血の発症を調べました。この間に、264人の実質内出血死は確認されました。
 
脳出血死と、LDLコレステロールの値の関係を見てみると、低いLDLコレステロールの値の人と比べると、高いLDLコレステロール人の方が、脳出血による死亡を逃れることがわかりました。
 
実際のデータは、それぞれの群に含まれる人たちの年齢に片よりが無いように、補正をしています(年齢が高い人が、特定の群に集まり、結果として死亡率が高くならないように、群間の年齢に数字的な調整を行う疫学的な手法で補正する)。
 
さらに、死亡に影響を与える病気因子を組み合わせた多変量解析法でも、LDLコレステロールが低い人は、脳出血が増加しました。
 
結果、LDLコレステロールが80mg/dL、以下の人と比べて、それより高いLDLコレステロール値を持つ人は、脳実質内出血による死のリスクは半分に減りました。
 
心血管危険因子による影響を加味して調整した後も、80mg/dL、LDLコレステロール以下の人と比べて、80mg―99mg/dL群で脳出血による死亡は、0.65倍(95%のCI 0.44~0.96)であった。、100~119mg/dLでは0.48倍(0.32~0.71)、120~139mg/dLでは0.50倍(0.33~0.75)、140 mg/dL以上 では0.45倍(0.30~0.69)となりました。
 
結論:低LDLコレステロール濃度は、実質内出血による死のリスクが高くなりました。以下の図を参考にしてください。
イメージ 1