喘息は、老人あるいは小児期の病気のイメージがありますね。しかし、喘息はすべての年齢で生じ得る病気で、その始まり方もさまざまです。
 
ヒューヒューする、咳が止まらないなどの訴えで診療を受けると、喘息と診断されてしまう事があります。過去に喘息の診断をうけたことのない人では、困惑したり落ち込んだりします。
若い人では、「喘息って、なんなんだよ!」と、イラだつ人もいます。
 
最近は、咳喘息という言葉もしばしば使われますので、ますます、喘息と言われて悩む人々が増えています。
気管支炎などを契機に、神経性の咳に移行する人も増えているようです。
 
気管支炎などにかかると、痰がふえてきます。痰を出す手段として、咳はとても有用です。
 
しかし、人は意識的に咳をすることができます。そのため、咳が出るような状態でなくても、咳をしたくなる感じにつきまとわれてしまう場合があります。
 
これは、心因性の咳と言えるのですが、最近、このタイプの咳が、営業マンや電話対応の職種の若い人に増えているような気がします。この時点では、喘息と言える状態ではないのですが・・・・。
 
医師に喘息、あるいは咳喘息と言われた時から、人々の咳の悩みが深くなり、ますます、咳が止まらなくなる場合もあります。心因は、どんな病気でも作り出してしまいます。
 
喘息は、心因性の咳とは、異なり、気管支が狭くなる状態が決め手で、子どもも大人も共通の現象が起きてきます。では、なぜ、そうした状態になるのでしょうか?
 
健康な人では、多少の刺激物質を吸い込んでも、気管支が縮むことはないのです。それは、縮まないようにうまく調節されているからなのです。
 
しかし、喘息となった気管支は、さまざまな刺激に対して縮んでしまいます。喘息の人が風邪をひくと、ウイルス感染がうまく治められません。ウイルスが増え易く、その他の刺激でも、気管支が強く過剰に反応してしまうのです。
 
しかし、喘息の本態は、それほど、わかっているわけではありません。
実は、喘息本態についての議論は、ここ何十年と長く続いているのです。
 
喘息は炎症であるとの説明も、良く言われていますね。もう少し、気管支の縮み易さについて、考えてみましょう。
 
動物は、体が傷ついた時、炎症を起こして、修復に努めます。炎症は体のすべてで起きますが、のぞけない部位は、炎症のイメージがわかないかもしれません。
 
例えば、胃炎のある胃の粘膜は、真っ赤になっていて、ひどい場合は出血もします。内視鏡写真を見られた方もいるでしょう。同様に、喘息の発作を起こしている気管支の内側の粘膜は、赤くはれています。
 
目で確認しやすい皮膚の場合で、炎症をイメージしてみましょう。皮膚の切り傷などでけがをしたり、毒虫に刺されると、赤く膨れてきます。傷を治すために、血管は拡張し、血液成分は漏れやすくなります。血管から白血球などがしみだしてきます。
 
さらに、時間と共に、皮膚はさらに複雑な反応を起こしてきます。皮膚は、傷の部分のある部分の皮膚に血管を新たにつくる準備を始めます。この時に、局所にあつまってくるのが、血管をつくる前駆細胞(血管内皮細胞)です。血管を新たにつくりあげて、傷を早く修復しようとしているのです。皮膚の傷が大きければ、皮膚の赤みももりあがりも大きくなります。
 
喘息も、同様の変化が、気管支で起きていると、イメージしてください。気管支の内壁に傷がつき、この傷を修復するために、血管内皮細胞がふえてきます。実は、この修復作業が喘息の本体ではないかと考えられているのです。
 
血管をつくる細胞がふえるのですから、気管支の血管は増えてきます。血管が増えると、筋肉も増えてきます。この筋肉は容易に縮み易い性質を持っています。つまり、内側の方向に向かって腫れてきて、気管支を取り巻く筋肉が増えて、空気の通り道が狭くなってしまいます。気管支は痰をつくり、咳は、痰を外に排除しようとします。咳の刺激で、まずます、筋肉は縮んでしまうのです。
 
動物実験で、アレルギー物質を吸入させて、血管に傷をあたえると、動物は傷をうけた気管支の傷に、血管内皮細胞を、集めてきます。
 
人でも、この事実は証明されていて、喘息発作の人から取れた痰では、血管内皮細胞の元になる前駆細胞の増加が確認されています。
つまり、喘息とは、気管支が傷をうけてしまうこと、そして、その修復がうまくいかないことが、その本体ではないかと考えられているのです。
 
専門用語になってしまいますが、喘息の気管支で増えている物質は、IL-8,Gro-α、CXCR2リガンドと呼ばれる物質で、これらは、血管増殖のための因子をよびよせるために働きます。Gro-αは、血管内皮細胞の遊走を強めます。
 
これらの物質の働きと役割をひとつひとつ極めていき、将来の喘息の治療の候補となる物質を見つけていくのです。
(参考文献 Imaokaら、Am JRespir Crit care Med 2011;
食物アレルギーは、食物の蛋白構造の一部に反応する病気ですが、どの部分に反応してしまう (IgEを作ってしまう) かは、人により変わります。
卵であれば、オボブコイド、アバルミン、コナルブミン、ライソゾームに反応する人が多いです。
 
卵白に多く含まれるライソゾームは、チーズにも含まれています。卵、チーズに反応する場合には、卵、ミルクの両方のアレルギーをもちあわす人もいれば、卵、ミルクに共通のライソゾームアレルギーの人もいます。
 
ライソゾームアレルギーは、一般の人より、製薬業の作業員、パン製造業、チーズ職人などに、起きやすいです。これは、そのライソゾーム成分を吸い込むためです。
 
ライソゾームは、細胞膜を破壊する能力があります。薬として使われる場合は、例えば、咽頭発赤などの時に、咽頭についた細菌の膜を障害させることを目的として,、治療薬として用いられたりしています。
 
ライソゾームアレルギーの問題点は、知らずに、チーズなどの製品に含まれていることがあることです。例えば、チーズの中でも、ライソゾーム入りのチーズ製品と、ライソゾームは、入っていないチーズ製品のものがあります。チーズの種類が異なることにより、食後に症状が出たり、で無かったりの現象が起こります。
 
卵アレルギーの中でも、ライソゾームにアレルギーがある人(IgEを作ってしまう人)の場合では、卵は、十分に加熱することでアレルギー反応がでなくなります。しかし、卵の耐熱性成分に、アレルギーがある人の場合では、加熱卵でも症状が起こります。
 
ライソゾームの量は、チーズであれば250-400mg/kg,ワインでは 500mg/kg位とのことのようです。
 
アレルギーを起こす食品を探し出すには、食物成分に対する十分な知識はもちろん、謎解きのセンスも必要とされるようです。、
生まれた瞬間から、赤ちゃんに起こる劇的な変化は、何か?と聞かれたら、多くの人は、おぎゃーと息が始まる呼吸の変化をあげるでしょう。

もちろん、これは大きな変化ですが、これだけではなく、もうひとつ、大事な大きな変化が起きます。それは、赤ちゃんは、無菌の環境から、多様な病原体がうごめく不潔な環境へと放り出されてしまうことです。

赤ちゃんは、生まれ落ちた時から、さまざまな菌をしょいこみますが、それが重大な病気になることがあり、B群溶連菌による髄膜炎、クラミジア肺炎などがあります。
新生児が、産道で体内に持ち込んだ菌が血液、肺などで増えてしまうのです。
 
胎児は、母親の細胞という異種の多数の抗原に包まれながら、胎内で成長しますが、母親の細胞に対し、免疫反応を起こさないように調整されて(抑えられて)います。
その赤ちゃんが、母親の産道で多様な菌に遭遇するのです。
帝王切開の赤ちゃんは、とりあげた人の手の菌にもふれることになります。
 
以前のブログに、赤ちゃんは産道で飲み込んだ菌により腸内細菌相が形成されると言うことを紹介しました。経膣分娩で生まれた赤ちゃんの方が、アレルギー反応が起こりにくいなどとのデータも紹介しました。
 
新生児は、母親が持っている大人の抵抗力を、ある程度、さずかって生まれてきますので、風邪などに、抵抗力を発揮したりすることがあります。兄弟が風邪をひいても、赤ちゃんにうつらなかったという話もあります。
しかし、赤ちゃんに抵抗力がある一方で、時には致死的な経過をとることもあります。特に、生後1か月の乳児の発熱は、重大です。
 
赤ちゃんは、いろいろ体に触れるもの、吸い込むもの、食べるものに、さまざまな反応を示します。動物は、自然免疫と呼ばれる種類の能力があり、これは、動物に生まれながらに備わった能力で、多種多様な病原体を検出して排除する能力です。
 
生後、赤ちゃんの体には、いろいろな反応や変化がおきます。
 
下痢したり、皮膚が赤くなったりですが、多くは、その原因を特定するのは難しいです。
皮膚が赤くなっても、その原因がわからないまま治ってしまうからです。
原因がわからないと言って悩むお母様もしますが、原因がわからないものは、じっくり見守ってください。医師にもわらないことが多いです。
 
時には、皮膚の赤みの原因に、母乳やミルク、離乳食が疑わしい場合がありますが、断定はむずかしいです。
ミルクや母乳が怪しい場合でも、症状が軽ければ、ミルクや母乳を止める必要はありません。

赤ちゃんは、いつでも、さまざまなものに反応しているのです。

つるりすべすべの皮膚をもつ他の赤ちゃんと、比べる必要はありません。
一人ひとりが持ち合わせた反応と能力が、こうした違いを生むのです。
 
赤ちゃんの免疫能力を検査するのは、難しいのですが、そこに挑戦した最近の論文を紹介します。
オランダ発、Pediatr Allergy Immunol 2012;23:65 belderbosらによる

1か月の赤ちゃんの免疫機能を、詳細に検討しています。
1か月の赤ちゃんから採血して、血液のNK細胞、好中球数、好酸球数などをしらべ、血液細胞を、いろいろな種類の刺激物質(トールライクレセプターTLR2,3,4,7)で刺激して、それに反応できるかどうかを調べています。
 
トールライクレセプターTNRとは、動物が病原体を見分けるために持つ細胞表面の構造物です。TNRで(受容体)病原体に触れながら、敵かどうかを見分けます。
 
対象となった赤ちゃんは、オランダコホート集団に属する親子で、当初3032人を観察していましたが、生後1か月の時に、赤ちゃんの採血による免疫機能の検査の同意したのは、291人でした。

この赤ちゃんの分娩状態(帝王切開か自然分娩か)、生まれ月、ペットの有無、親のアレルギー、母乳との関連などを調べました。帝王切開は、40人の赤ちゃんでした。1か月までの完全母乳栄養は、53%、ペット32%、春夏秋冬の生まれ月は、ほぼ同一でした。両親のタバコは25%、両親のアレルギーは55%でした。
 
論文の要点をお伝えすると、1か月の時点で、多様な物質に接している赤ちゃんは、そうでない赤ちゃんにくらべ、免疫の活性化には違いがみられました。
 
具体的に、赤ちゃんの免疫を高まらせる活性物質とは、経膣分娩、母乳、ペットでした。
刺激物質の種類により、反応が高くなる場合と、低くなる場合がありました。
 
免疫反応は、赤ちゃんにとって、高まった方が有利な場合と、低下する方が有利な場合があります。
過剰な免疫反応は、病気を悪化させます。その判断は、現時点で断定するのは、難しそうです。
 
専門用語を用いて解説しますと、帝王切開の赤ちゃんは、自然分娩にくらべて、NK細胞の数が低下し、白血球が低下している場合が多かったです。
 
血液細胞を、TLR3で刺激すると、帝王切開の赤ちゃんは、サイトカイン(TNFα、IL12p70)の産生が低下しました。
刺激物質を変えると(TLR7)、帝王切開の赤ちゃんの方が、サイトカイン(TNFα)の産生が亢進していました。
 
冬に生まれた赤ちゃんの方が、NK活性は高まっていて、(TLR7)で刺激後の、サイトカイン(TNFα)の産生が亢進していました。
 
赤ちゃんは、普段、多様な物質に接することにより免疫が高まりますが、その後は、他の異物に対しても、過剰に反応せず、調節能力を高めている可能性があります。
 
免疫が成長発達期にある乳幼児は、調節能力が高まるような自然暴露が有用であることを示唆するものです。
 
自然免疫が高まっている赤ちゃんでは、その後のアレルギーの発症を防ぐ能力も高いであろうと、この論文では結論しています。
緑茶ポリフェノールは、動物実験で、血管疾患とガン化予防効果が証明されています。
 
しかし、人では、緑茶(お茶)の長期的影響は、よくわかっていません。東北大学による栗山研究の結果をおしらせします。JAMA. 2006 Sep 13;296(10):1255-65.
 
研究の方法では、コホート集団をつくり、各個人から詳細に、食事内容をききとっておきました。その後に、コホート集団の人々を追跡して、どのような病気で死亡したかを調べます。そして、生前のお茶の消費量との関連を調べました。
 
お茶と多く取っていた人は、少ししかとらなかった人と比較して、死亡状況が変化しているかを、他の生活因子とつきあわせながら、因果関係を追及しました。

この研究は、二つのパートに分かれています。一つ目は、1955-2005年に行われた、40~79歳の40,530人の観察研究です。この研究では、全ての原因による死亡とお茶の摂取量を見ています。
 
二つ目は、原因別に死亡をみる研究で、7年(1995-2001)間の追跡研究です。こちらでは、心血管疾患、ガン死など、死亡原因別に、緑茶の摂取量の関連を調べました。

結果:11年研究は、86.1%の人で追跡可能でした。観察期間中、4209人の参加者が死亡しました..。
そして、7年間研究は、89.6%の人で追跡が可能で、892人の心血管疾患での死亡と、さらに、1134人のガン死を確認しました。
 
両研究共に、生前とっていた緑茶の量と死亡の関連がありました。
緑茶を多く取っていた人では、とっていない人とくらべて、心血管疾患も全死亡も、減少することが確認できました。つまり、緑茶が多いと死亡が少ないとの結果でした。

特に、女性において、全原因による死亡と、緑茶の摂取量の逆の関係が、男性に比べ強くでました。
 
以下が、緑茶の消費量と全死亡との関連についての数値です(多変量解析法を用いました)

男性では、
一日1杯未満の人の死亡を1とすると、
1~2杯を飲んでいた人の死亡は、0..93に減りました。(95%の信頼区間[CI]、0.83-1.05)、
3~4杯は、0.95に減りました(95%のCI、0.85-1.06)、
5杯以上は、0.88(95%のCI、0.79-0.98)に減りました。(それぞれP < .001)。

(この数値の意味ですが、緑茶を一日1杯未満しか飲まない人が、1人死ぬところを、1~2杯の人では、0.93人しか死ななかったという意味です)
 
女性の場合では、

一日1杯未満の人の死亡を1とすると、
1~2杯は、0.98に減りました(95%のCI、0.84-1.15)。
3~4杯は0.82に減りました(95%のCI、0.70-0.95)。
5杯以上のカップ/は、0.77に減りました(95%のCI、0.67-0.89)。

以上の数値をみると、女性においてより、緑茶が死亡率を減らすことに貢献していました。
 
緑茶は、全原因による死亡を減らしましたが、さらに、心血管疾患による死亡を減らすこともわかりました。

女性において、
一日1杯未満の人の死亡を1とすると、
1~2杯は、0.84に減りました(95%のCI、0.63-1.12)
3~4杯は0.69に減りました(95%のCI、0.52-0.93)
5杯以上は、0.69に減りました(95%のCI、0.53-0.90)。
 
緑茶は、心血管疾患死亡のうち、脳卒中の死亡を減らすことがわかりました。しかし、緑茶は、ガン死亡は減らせませんでした。

結論:緑茶の消費は、ガンによる死亡を減らすのでなく、すべての原因による死亡を減らす効果があり、特に心血管疾患による死亡を減少させたと言えます。
お子さんのアレルギーの程度が知りたくて、血液中のIgEを測ったことのあるお母様は、結構多いのではないでしょうか?その時の、医師の説明は、納得のいくものだったでしょうか?
 
花粉症がないのに、杉に対するIgEが出ていると告げられた人はいませんか?

あるいは、卵を食べると皮膚が赤くなる乳児をお持ちのお母さんが、IgE反応が陽性と予想していたのに、卵に反応が陰性、ダニだけIgE陽性と言われて、めんくらった経験はありませんか?
 
上の子のアトピー性皮膚炎は、下の子のアトピー性皮膚炎より軽いのに、IgEは上の子の方がすーと高いと言われたとの話しも、時々聞きますね。
 
そもそもIgEとは、何なのでしょうか?もちろん、IgEはアレルギーの程度を測るマーカーであることは確かですし、日本の石坂博士が50年前に発見したことを知っているお母様は多いでしょう。
 
実は、IgEというのは、免疫の働きがうまく進まない(免疫失調)のマーカーでもあるのです。その場合は、アレルギーの病気とは必ずしも関係がなく、IgEが上昇してきます。今日は、IgEについての理解を少し進めましょう。
 
免疫の調整を狂わせる最大の病気は何?という質問に、何をイメージしますか?そうです。答えはエイズHIV感染症です。HIV感染症では、IgEが上昇しますが、アレルギーの病気の有無とは関連しません。喘息やアトピー性皮膚炎だけで、上昇するわけではないのです。
 
HIV感染症の人では、CD4とよばれるリンパ球がウイルスに感染すると、この細胞は、毎日すごい数で死滅していきます。HIV感染症にかかってまもなくは、免疫が活発となり、ウイルスがとりついたCD4を殺そうとがんばります。
 
この時、CD4リンパ球は、免疫の司令塔として働きますが、CD4リンパ球は、免疫反応を効率よく維持するために、過剰な免疫反応にはならないように、抑えの役割があります。
 
HIV感染症では、この大事なCD4リンパ球が消えていき、司令塔がなくなります。すると、HIV感染症では、免疫グロブリンに対する調節役がいなくなってしまうので、IgEは上昇してしまいます。
 
HIV感染症では、IgEはアレルギーの検査ではなく、HIV感染症の重症度を反映するマーカーとなります。成人HIV感染症と同様に、乳幼児のHIV感染症でも、IgEが上昇することが知られています。
 
これに関する南アフリカケープタウンにある赤十字病院からの論文を紹介します。

pediatr allergy Immunol 2002;13:328
赤十字病院に肺炎で入院した122人の乳幼児において、IgEと免疫状態を調べました。乳児の月齢は3-20か月、月齢の中間値は、8か月です。HIV感染症あり81人、HIV感染症なしが41人です。
CD4リンパ球は、HIV感染症では、減少してしまう細胞ですが、このCD4リンパ球が、今回のHIV有り群600、HIV無群で1900です。
 
CD4/CD8 については、HIV感染症では、分母のCD4リンパ球の数が減少して、CD8リンパ球との比が1を切ってくると進行した状態と考えられます。今回のCD4/CD8は、HIV感染有り群0.3、無群2です。

この数値から推定できるように、今回のHIV感染症の乳幼児は、かなり厳しい免疫低下の状態であると言えます。つまり、CD4リンパ球はすでにかなり壊されてしまっている状態です。11人の子供が、今回の肺炎を契機に死亡しました。肺炎の原因は、細菌12人、結核8人です。
 
この両群において、IgEは、HIV感染症83 IU/L、HIV無群29 IU/Lの数値が得られており、明らかにHIV感染症のある乳幼児で高くなっています。
 
このHIV感染症のある乳児では、かなり免疫低下状態にあるものの、まだIgEは過剰に産生しています。HIV感染症では、免疫反応のストップが効かずに、IgEの産生が亢進しているのです。

巷で、免疫活性物質などと謳った健康食品がありますが、実は免疫活性物質とは、生体に危険な物質でもあるわけです。 正常な人では、過剰な免疫反応が起きないように、CD4リンパ球はストップをかけています。IgE抗体は、元をただせば、体を守る役割を担うために進化してきたものです。
 
このように考えると、IgEの数値に、一喜一憂してもしかたないことがわかります。アレルギーは、確かに悩ましいものですが、IgEの役割やその意味をもう一度、見つめ直してみましょう。この論文の不幸な子どもたちは、必死でIgEをつくりながら、エイズとたたかっているような気もします。
発展途上国では、肺炎球菌により、5歳以下の子どもの100万人が命を失います。今でも、肺炎球菌は、人類の最大の敵と言ってよいでしょう。
 
肺炎球菌による髄膜炎は、死亡が7~10%、後遺症率は30~40%と、ヒブによる髄膜炎に比べても、死亡と後遺症のリスクが高いのです。
 
日本では、毎年約200人の子どもが肺炎球菌による髄膜炎にかかり、うち3分の1くらいが、命を落とし、重い障害が残っています。
 
肺炎球菌には、90種類以上の型があり、型が合うワクチンであれば、その型の菌に予防効果が高いです。逆に、型が合わないと予防効果が低下します。
 
肺炎球菌の中でも、重い病気をひき起こすことの多い、7つの型の肺炎球菌が、ワクチンに含まれています。プレべナーで、カバーできる型は、4、6B、9V、14、18C、19F及び23Fです。
 
日本では、2010年2月に、欧米に遅れること10年でプレベナーが発売されました。日本のこどもたちがかかる重い肺炎球菌感染症の70~80%は、この7つの型の肺炎球菌が原因であることがわかっています。 しかし、ワクチンが広まると、次にはワクチンに含まれていない型の肺炎球菌による病気が増えてしまいます。ですから、できるだけ多くの型が入ったワクチンが望ましいのです。
 
日本では、生後2か月から9歳以下、特に4歳代までに、なるべくプレベナーを打つべきとのメッセージが出ています。

そして、65歳過ぎたら、成人用ワクチンニューモバックスを打ちましょうとなっています。
 
さて、新聞記事では、時に、成人用ワクチンニューモバックスを間違って小児にうってしまったとの報道をみかけます。
これはミスには違いないのですが、どこが違うのだろうか?と疑問を持った方はいませんか?
プレべナーは小児用、ニューモバックスは成人(特に65歳以上)用だから との答えがかえってくるかもしれません。

日本のネットでは、次のように書かれています。
高齢者の肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)は、この小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー:PCV)とは全く違うものです。現在のところ、10歳以上の人にプレベナーの接種は認められていません。
 
それでは、その違いは何なのでしょうか? 今回は、これに関する話しをします。
いま一つ先の知識に、興味を持っていきましょう。
 
実は、外国では、ニューモバックスは、子供にも使うことが研究されています。ニューモバックスは、プレべナーより安価なのです。

この二つのワクチンの違いは、肺炎球菌から抽出した成分の処理が異なります。ニューボバックスは、多糖体といわれる肺炎球菌由来の炭水化物の成分がワクチンの本体です。
 
プレべナーは、肺炎球菌由来の糖に蛋白質成分を結合させたもので、作るのにコストがかかります。蛋白質は、人の免疫に作用する力がつよく、赤ちゃんでも免疫反応を起こさせることができます。
 
一方、成人は、すでに何度も肺炎球菌を保菌して、免疫をもっています。健康人の鼻汁などにも、多様な肺炎球菌がいます。成人は、肺炎球菌とのお付き合いが長く、ワクチンに蛋白質が入らずとも、菌の炭水化物だけでも反応できるのです。老人に、ニューモバックスを打つと、多くの人が腕がかなり腫れる理由は、成人は、肺炎球菌に対して、ワクチン前に、すでに多様な免疫反応を持っているからです。
 
ニューモバックスを子供に使うことの研究が、発展途上国で、現在治験が行われています。最初に、プレべナーを打ってから、この23価の成人用ワクチン(ニューモバックス)につなげることにより、幅の広い良好なワクチン効果がえられるとの結果が得られています。

The Journal of Allergy and Clinical Immunology
Volume 129, Issue 3 , Pages 794-800. 2012
 
成人で使われるニューモバックスは、23種類の型をカバーしますが、これが本当に子供の免疫に、効果が低いかを検討しました。2才未満の子供たちで検討しました。今回は、健康な12ヵ月のフィジーの子どもたちを対象としました。

目的 生後12ヵ月の乳児において、8種の血清型が含まれるワクチンを打ち、引き続き23種の型が含まれるワクチン(ニューモバックス)を打って、肺炎球菌に対するワクチン効果が出るかどうかを研究しました。免疫効果は、オプソニン化能力と、特異IgG抗体の産生でみました。

結果
乳児の71パーセントは、8種の型のうちの4種の型に対して強い免疫効果が確認できました。そして、30%の子どもは、ニューモバックス注射後の数週間後に、23種のうちの10種の型にIgG抗体を生産しました。 欧米で流行している型の肺炎球菌には、免疫反応が起きましたが、発展途上国で流行している型については、子どもたちの免疫反応は低かったです。

結論
この論文は、12ヵ月の幼児において、成人用ニューモバックスを打つと、乳児でも抗体反応ができるかを調べた最初の研究です。ニューモバックスは、先進国で病気を引き起こしている型の肺炎球菌には、予防効果が出ました。
 
しかし、発展途上国で流行している型には、十分な免疫効果はありませんでした。それでも、成人用ニューモバックスは乳幼児でも、若干の効果効果は期待できるかもしれません、発展途上国の乳幼児で、ニューモバックスがどの位に有用であるかは、今後の検討が必要です。
以前、若返り物質の話題を提供しました。男性ホルモンは、老人の筋力をアップし、運動機能が改善したという話でしたが、マイナスの見返りも相当に強いことも書きました。

体に作用する物質は、短期でなく長期的な影響が大事です。一部の薬剤などは、飲み続けると、細胞表面の薬剤を感じる部分が反応しなくなる(内包化という現象)が、あります。
つまり、良かれとおもって治療に使っているうちに、薬剤の効果が変わってしまうのです。これは、一種の体の防御反応といえるものですが、その出方に個人差が大きいです。
 
例えば、喘息の治療薬である気管支拡張剤は、縮んだ気管支を広げることを目的に使用されます。
医師は、気管支拡張剤の処方の時に薬を使いすぎないように注意をします。
使用が多いと薬剤が効かないだけでなく、逆の作用がおきて、かえって呼吸が苦しくなってしまう人がいるのです。
遺伝子の型と関連して、この現象がでやすい人がいます。

気管支拡張剤が効かなくなる現象は、客観的に証明されています。すなわち、喘息の子どもに毎日、気管支拡張剤を使用していると、4週間目には、薬の作用が低下する現象が観察できます。
 
抗ヒスタミン剤も、ステロイドも使い続けると、その効果は薄れます。ステロイドを皮膚に塗って、治ったようでも、止めたら又出た!となります、実は、ステロイドの作用を受け入れないために皮膚が変化したのです。
 
このブログでは、女性ホルモンの効果について、考察を続けてきました。女性ホルモンも、若返りの物質としての期待がかかるものです。

その効果は圧倒的である一面、長期的にはマイナスが多いです。
 
この50年、マウスやサルを用いた実験が繰り返されました。
エストロゲンの短期投与はメスの知能を改善させます。
そして、人間に応用しようと臨床研究が続けられました。そして、今も、欧米では、閉経後のホルモンの補充は、かなりの数の更年期女性で行われてきています。
 
女性ホルモン、特に、エストロゲンは、神経細胞の伝達物質で、動物実験で脳の改善機能があります。
しかし、人では、エストロゲンの脳への効果についての証明が困難です。
この50年の、疑問解決の取り組みについて、ご紹介しましょう。
 
胎児において、脳の神経細胞の構造が作られる時に、性ホルモンが働きます。それが男女の違いを生んでいきます。

動物であれば、親の性ホルモンを変化させることで、生まれた子供の脳への影響を調べることができます。
例えば、妊娠マウスにアンドロゲン(男性ホルモン)を投与すると、生まれたメスサルは、オスとメスの中間の行動を示すようになるそうです。
 
もちろん、人では、こうした操作は不可能ですが、いろいろな事例や病気から、エストロゲンと脳との関連が推定されてきました。

1950年以後からでている論文をさぐりながら、考察がされてきた内容をご紹介します。
 
病気により生ホルモンが異常になると、患者さんの脳にどのような影響がでるかを見る研究法があります。
胎児期の性ホルモンの異常が起きてしまう子どもがいます。
性ホルモンの影響をみることができる代表的な病気に、副腎過形成症候群があります。これは、遺伝病で21ハイドロゲナーゼという酵素が作れない病気です。
この異常をもつ女児は、エストロゲンが利用できず、アンドロゲンが脳をつくります。生まれてからは、空間認識が優れるものの、言語能力はむしろ劣る状態になりやすいことが観察できます。

ターナー症候群では、性染色体がXOの女児ですが、この子どもを7歳の時に、エストロゲンと偽薬を投与して、脳への影響を比較した研究があります。エストロゲン投与群の方が、子どもの言語能力が改善したそうです。
 
正常女性において、月経周期を観察しながら、エストロゲンと脳の関連を調べたりします。
エストロゲンの高い時は、女性の特徴である言語能力が高まるようです。一方、エストロゲンが低い時は、空間認識が高まるとする論文があります。
実際には、この変化は個人差があり、一般的に女性が気づくほどは顕著にはならないであろうとも書かれています。
 
1950年から70年にかけては、性ホルモンが若返りの期待薬として、かなりの数の臨床研究がなされました。その結果は、効果があるとするもの、効果がないとするもの、とばらつきました。

たとえば、1952年の偽薬との比較試験で、75歳以上の女性のエストロゲン投与群において、言語能力の改善はないものの、視覚空間認識は改善したとこ報告があります。

その後、1990年代半ばより開始された米国のWHI研究の結果報告により、閉経後のホルモン補充療法の副作用が無視できないと結論されたのをうけて、若返り効果としてのエストロゲンは、かなり後退したと思います。
頭痛は多くの女性を悩ませる症状です。初潮、月経、妊娠、出産、閉経と女性ホルモンの変動に関係して、あるいは恐らく無関係に、女性では頭痛を経験することが多いようです。
 
頭痛は、女性の専売特許といわれています。

今回は、女性ホルモンと頭痛について、考えてみましょう。
 
古くから、月経と頭痛の問題は医学的議論が盛んでした。しかし、その関連に関しての解明は遅れています。エストロゲン、プロゲステロンの、脳実質や血管に対する生理学的な機序が解明されても、実際の女性の訴えは、多種多様です。
 
表現する女性側のコメントは一様でなく、ある人は頭痛は、月経や妊娠に強く関連すると言い、別の人では、影響ないとの答えがかえってきます。その結果、女性ホルモンの影響を画一的に評価できず、解明を難しくしています。
 
性ホルモンの変動を、体がどのように感じ取るかは、個人差で大きく変わってしまうようです。つまり、気持ちの持ち方や性格の影響が大きいのですが、エストロゲンの細胞への作用も、個人ごとに多様だからでしょう。
 
更年期の女性が、ホルモン補充療法を始めてから、頭痛から開放されたという話を聞く一方で、ホルモン補充を始めたら頭痛がひどくなった、ムカムカがひどくてとても続けられないとの訴える人などもいて、その評価はさまざまです。
 
論文 その1
頭痛と性ホルモンの関連の論文を紹介します。
米国の研究者の論文ですので、対照となっている女性たちは、米国人です。以下に、頭痛の頻度の数値が述べられていますが、印象として、外国の論文の頭痛の頻度は、日本の女性の頭痛の頻度と比べて多いようです。但し、日本でも、女性の社会進出や、知識の普及により、日本と米国との頭痛の違いが減少してきて行きます。
 
日本では、産後うつ病、月経前症候群などの症状を訴える人は、米国より少ないですが、近年、急に増加している状況です。昨今、女性たちが、より自分たちの症状を意識するようになったことが一因か?もしれません
 
PubMed 11139745 Rev Neurol (Paris). 2000;156 Suppl 4:4S30-41.
 
一部の人では、小児期から頭痛を訴えます。初潮をむかえる前の年齢では、男女とも100人のうち4名位に頭痛症状があります。やがて、性ホルモンの変動が起き。女性が初潮を迎える頃から、女性に頭痛の訴えが多くなり、思春期の女子では頻度が上昇し、100人当たり33名位の女子が頭痛を訴えていると考えられます。
 
成人になると、女性では、100人当たり16名に対し、男性では100人当たり6名との数値です。
 
頭痛は、月経との関連が深く、月経前から月経期間まで持ち越す頭痛を訴える人が多いようです。
 
頭痛は、妊娠との関連が深く、特に妊娠初期の三分の1で、頭痛が多く、残り三分の二の妊娠期間で、頭痛の訴えは少なくなります。
 
閉経に伴い、再度、頭痛を訴えるようになることも多く、月経サイクルのある世代では、ピルの内服中におきやすくなります。つまり、人工的なホルモンの補充により、頭痛を誘発するようです。
 
こうした事実から予想できることは、エストロゲンレベルが高いから、低いからが頭痛の原因となるわけでないであろうということです。むしろ、ホルモンレベルが増えたり減ったりの変化が、体内調節物質の均衡をくずし、それが、頭痛を起こすと考えられます。なぜなら、元々、人の体は、体内物質の増減に応じて反応する生体環境にあるからです。
 
例えば、月経の機序として、下垂体からろ胞刺激ホルモンが急上昇し、引き続き急に下降することが刺激となり、排卵がおこるといった具合です。このように、性ホルモンが大きく増減するので、脳内の血管調整がついていけず、血管拡張がおこり、女性たちに、頭痛が起きると推論があります。
 
 
論文その2 PuMed14979877 Headache. 2004 Jan;44(1):2-7.
米国アトランタの頭痛センターに通院中の女性たち504人の、月経、妊娠、閉経の時にまつわる頭痛のデータを紹介します。
 
頭痛センターの通院中の女性に、月経、妊娠、閉経と、頭痛との関連を問診しました。頭痛センターに通院中の女性のうち、68.7%に月経前と頭痛に関連があると答えています。29%は、閉経に伴って症状があると答えています。24.4%に、ピルを飲むと頭痛がおきると答えています。
 
64.9%の女性は、月経に関連する頭痛と、関連のない頭痛があると言います。3.4%は、月経にのみ限定して頭痛が起きると言います。
 
女性たちの61.3%は、妊娠を経験しています。
このうち、79.6%の女性が、妊娠により頭痛は変化したと答えています。残り29.4%は、頭痛と妊娠とは関連がなかったと答えました。
79.6%の妊娠中の頭痛を報告した女性のうち、妊娠時に頭痛は悪くなったのは34%、軽くなったのは17.8%、27.8%は変わらなかったと答えています。
 
全体の女性のうち、64%の人がピルをのんで、頭痛が悪くなったと答えました。
 
頭痛に前兆(頭痛の前にちかちかする、吐き気がしたりなどする症状のこと)のある人のほうが、ピルなどの人工的なホルモンに対する反応は少ないという結果が得られました。しかし、前兆のある人のほうが、自然なホルモン増加である妊娠に対しては、頭痛は悪くなると答えた人が多かったです。
昨日、狂犬病について書きました。病気の症状が典型的でないとかきました。それでは、典型的な症状とはどのようなものでしょうか?
 
日本の症例で、Yamamatoらによる(2008年 J of travel Medicine)60歳の男性の報告があります。
 
この方は、脳脊髄駅から狂犬病ウイルス抗原が検出されており、昨日の症例より、狂犬病と診断して問題のない症例でした。
 
論文によると、この男性は、発症の当初は、海外で犬にかまれたことが明らかでなく、その後、家族の話しから噛傷のエピソードが判明したそうです。この方は、いわゆる水が飲めない、水を怖がるといった古典的、教科書的な狂犬病の症状があったようです。
 
発症は、発熱、咳、鼻水など風邪症状で始まっています。
発熱が続き、虫が見えるなど幻視がおき、「トイレの後に、怖くて手が洗えない」の訴えがあり、さらに、「人がそばを通って、空気が流れた感じがすると怖い」「エアコンの風が怖い」と訴えたようです。
 
高血糖、高ナトリウム、高血圧、頻脈、難治な全身けいれん、意識障害がありました。
 
唾液、局所リンパ腺からウイルス抗原が陽性となり、狂犬病の診断となりました。
海外渡航も、犬にかまれたこともないカリフォルニア在住の女の子が、ある日、突然、発熱し、風邪かと様子をみていくうちに、意識が低下して、自発呼吸ができない重大で危険な状態となりました。この女児は、その後の検査で、狂犬病が強く疑われました。
 
人の狂犬病は、死亡率が、ほぼ100%と言われる病気です。今回は、このMMWR(米国CDC編集)からの報告です。幸い、今回の女児は、後遺症がなく救われました。
 
MMWR(米国CDC編集)2011年、2月3日号にのっています。
 
狂犬病の診断に至るまでの、関係者の努力が伺えます。診断までに、いろいろな人が協力したであろうと思われます。めったにない病気の診断をすることが、難しいことを知ってほしいと思います。
 
 
脳炎の診断となったこの女児において、彼女の血清、呼吸器分泌物など、意識障害と関連しそうな病原体の検査が行われました。狂犬病の診断が難しい理由は、医師が狂犬病をどこかで疑って、狂犬病の検査をしない限り、診断には至りません。もともと、狂犬病は、カリフォルニアでは珍しい病気ですし、動物にかまれたことが無ければ、ほとんど、狂犬病の検査はされないのではないでしょうか?日本でも、この状況は同様と思われます。
 
当初、脳炎状態に対し、ウイルス、病原菌など、主要な感染症病原体の検査をしましたが、決定的な原因物質はみつかりませんでした。検索をすすめていくうちに、血清と脳脊髄液に、狂犬病ウイルスに対し抗体反応が証明されましたが、近所をうろつく野良猫が、狂犬病の感染源と考えられましたが、確定診断には至りませんでした。彼女は、発症前の9週間、4週間前の2回、野良猫に引っかかれた既往がありました。
 
日本でも、狂犬病の国内発症は珍しく、最近では、海外で犬にかまれて日本で発症し死亡した方がいます。死亡を免れた症例は、過去に3名ほど、症例の報告があるようです。
それでは、MMWRの報告を読んでいきましょう。

2011年、4月25日、8歳の女児が、咽頭痛と嘔吐で近医を受診し、その後、呑み込みしにくい状態になり、3日後に救急外来を受診した時には、脱水状態に進展していました。
 
5月1日には、意識状態が低下し、挿管され人工呼吸器管理となりました。近くの地域中核病院に急性期入院当初1週間には、高血圧や頻脈が著明で、その治療を要しました。入院中には、筋力が低下しました。
 
治療薬には、抗ウイルス剤、麻酔剤、筋弛緩剤、脳圧降下剤などが投与されました。
 
5月8日になると、彼女は、頭を自発的に動かせるようになり、さらに四肢も動かせるようになりました。四肢の筋力回復と共に、呼吸状態の回復がみられ、5月16日には、気管内抜管、人工呼吸器からの離脱にこぎつけました。
 
5月31日、彼女の足のマヒの治療のために、リハビリテーションが開始されました。6月22日には、彼女は、めでたく後遺症なく退院することができました。全入院期間は37日間で、諸症状から回復することができました。

5月4日、カリフォルニア感染症センターにより、エンテロウイルス、ウエストナイル脳炎ウイルス検査を行いましたが、反応がありませんでした。しかし、呼吸器分泌物のウイルス抗原PCR検査(エンテロウイルス、、ライノウイルス)から、ライノウイルスの反応が出ました。
 
この結果と、脳炎の臨床症状から、カリフォルニア感染症センターは、狂犬病の検査をすることを病院に勧めました。その結果、病日と共に、狂犬病に対する血清IgG,IgM抗体(蛍光抗体法IFA)の上昇が起きていることが確認できました。IgG、IgM特異抗体は、5月31日をピークに上昇しました。
 
彼女の病気の発症につながった可能性のある動物を調査しました。学校の周りをうろつく野ラ猫2匹のうち、1匹には、病原体がありませんでしたが、もう1匹のデータはえられませんでした。
 
家のそばには、コウモリ(狂犬病ウイルスをもっていることがある)はいませんでした。
 
彼女の家では馬を飼っていて、彼女自身は、馬との接触はほとんどなかったのですが、2010年11月に、腸ねん転で死亡した馬がいました。2011年5月に、自宅の馬がとさつされ、馬の脳内で病原体が検索されましたが、感染源の決め手になることはありませんでした。