海外渡航も、犬にかまれたこともないカリフォルニア在住の女の子が、ある日、突然、発熱し、風邪かと様子をみていくうちに、意識が低下して、自発呼吸ができない重大で危険な状態となりました。この女児は、その後の検査で、狂犬病が強く疑われました。
 
人の狂犬病は、死亡率が、ほぼ100%と言われる病気です。今回は、このMMWR(米国CDC編集)からの報告です。幸い、今回の女児は、後遺症がなく救われました。
 
MMWR(米国CDC編集)2011年、2月3日号にのっています。
 
狂犬病の診断に至るまでの、関係者の努力が伺えます。診断までに、いろいろな人が協力したであろうと思われます。めったにない病気の診断をすることが、難しいことを知ってほしいと思います。
 
 
脳炎の診断となったこの女児において、彼女の血清、呼吸器分泌物など、意識障害と関連しそうな病原体の検査が行われました。狂犬病の診断が難しい理由は、医師が狂犬病をどこかで疑って、狂犬病の検査をしない限り、診断には至りません。もともと、狂犬病は、カリフォルニアでは珍しい病気ですし、動物にかまれたことが無ければ、ほとんど、狂犬病の検査はされないのではないでしょうか?日本でも、この状況は同様と思われます。
 
当初、脳炎状態に対し、ウイルス、病原菌など、主要な感染症病原体の検査をしましたが、決定的な原因物質はみつかりませんでした。検索をすすめていくうちに、血清と脳脊髄液に、狂犬病ウイルスに対し抗体反応が証明されましたが、近所をうろつく野良猫が、狂犬病の感染源と考えられましたが、確定診断には至りませんでした。彼女は、発症前の9週間、4週間前の2回、野良猫に引っかかれた既往がありました。
 
日本でも、狂犬病の国内発症は珍しく、最近では、海外で犬にかまれて日本で発症し死亡した方がいます。死亡を免れた症例は、過去に3名ほど、症例の報告があるようです。
それでは、MMWRの報告を読んでいきましょう。

2011年、4月25日、8歳の女児が、咽頭痛と嘔吐で近医を受診し、その後、呑み込みしにくい状態になり、3日後に救急外来を受診した時には、脱水状態に進展していました。
 
5月1日には、意識状態が低下し、挿管され人工呼吸器管理となりました。近くの地域中核病院に急性期入院当初1週間には、高血圧や頻脈が著明で、その治療を要しました。入院中には、筋力が低下しました。
 
治療薬には、抗ウイルス剤、麻酔剤、筋弛緩剤、脳圧降下剤などが投与されました。
 
5月8日になると、彼女は、頭を自発的に動かせるようになり、さらに四肢も動かせるようになりました。四肢の筋力回復と共に、呼吸状態の回復がみられ、5月16日には、気管内抜管、人工呼吸器からの離脱にこぎつけました。
 
5月31日、彼女の足のマヒの治療のために、リハビリテーションが開始されました。6月22日には、彼女は、めでたく後遺症なく退院することができました。全入院期間は37日間で、諸症状から回復することができました。

5月4日、カリフォルニア感染症センターにより、エンテロウイルス、ウエストナイル脳炎ウイルス検査を行いましたが、反応がありませんでした。しかし、呼吸器分泌物のウイルス抗原PCR検査(エンテロウイルス、、ライノウイルス)から、ライノウイルスの反応が出ました。
 
この結果と、脳炎の臨床症状から、カリフォルニア感染症センターは、狂犬病の検査をすることを病院に勧めました。その結果、病日と共に、狂犬病に対する血清IgG,IgM抗体(蛍光抗体法IFA)の上昇が起きていることが確認できました。IgG、IgM特異抗体は、5月31日をピークに上昇しました。
 
彼女の病気の発症につながった可能性のある動物を調査しました。学校の周りをうろつく野ラ猫2匹のうち、1匹には、病原体がありませんでしたが、もう1匹のデータはえられませんでした。
 
家のそばには、コウモリ(狂犬病ウイルスをもっていることがある)はいませんでした。
 
彼女の家では馬を飼っていて、彼女自身は、馬との接触はほとんどなかったのですが、2010年11月に、腸ねん転で死亡した馬がいました。2011年5月に、自宅の馬がとさつされ、馬の脳内で病原体が検索されましたが、感染源の決め手になることはありませんでした。