今では、至るところで耳にする
「臨界期」という言葉。
10年前は、教育関連の
専門書でなければ
あまり目にすることもありませんでした。
2020年の小学校英語の必修化に向けて
英語熱が高まっているのを
象徴しているかのようですね。
「臨界期仮説」とは、
言語を獲得するには適した時期があり、
その時期を過ぎると、その言語の習得が困難になる。
といった内容のもの。
ある説では
文法や語彙の面での臨界期は7歳あたりとされ、
発音に関してはネイティヴと同じような
音を獲得できる臨界期は
5-6歳あたりとしています。
でも、この「臨界期仮説」には
データサンプルに偏りがあったり、
分析の仕方で解釈が変わったりと、
決定的な研究結果は出されていないようです。
そして何より、この仮説は
ネイティヴ vs. 非ネイティヴ
といった比較に基づいて
立てられたものであり、
再解釈されるべきだという主張もあります(Lourdes, 2009, p.26)。
つまり どういうことかと言うと、
モノリンガルであるネイティヴと、
バイリンガルを比べること自体が間違っているのではないか?
というのです。
一つの言語しか話さないネイティヴと、
二言語を話すバイリンガルを比較することは、
リンゴ と ナシ を比べるようなもの。
二つの果物は似ているけれど
リンゴは ナシには ならないですよね。
確かに言語能力的にも
比較するべきでないというのも
理解できます。
わたしも、個人的に
「臨界期」という言葉に惑わされることなく、
「もう◯歳だから遅い」とか
「◯歳までにこれをしなければ」とか
そういった焦りを感じる必要はないと思います
バイリンガル育児を始めやすい時期は、
親(先生)にとって楽な
1〜2歳。
でも、それは
決して「この時期に始めなければいけない」
ということではなく、
1〜2歳さんは、
新しい音や新しい言語といった、
異質なものに対する抵抗感が
ほぼ無いに等しい年齢。
親(先生)にとって
苦労することなしに
ターゲット言語を導入しやすいのです。
それ以降は、
他言語に対する心の垣根が出てくる子もいたり、
母国語環境が強くなったりと、
赤ちゃんの時期ほど
楽にいくわけではありません。
そういう意味で
1〜2歳という時期は
親にとっての黄金期
なのかもしれません。
それ以降は
親が楽というよりかは
「英語拒否」にあったり
「日本語環境が強く」なったりしても
あの手この手で工夫しながら
続けることの方が大事なのかなと思います。
☆心の垣根(情意フィルター)に関しては、下の『年齢別バイリンガル育児』の「3〜5歳」を参照ください。
そして、
5歳や6歳で始めても
あるいは思春期以降に始めても
高いターゲット言語力を習得することは
十分あり得ることです。
現に、思春期以降に
第二言語を始めて
高い言語力を有するバイリンガル(マルチリンガル)も多数います。
早期よりも、後期に学習を開始した方が
有利に働くこともあります。
ただ それには、学習者本人の資質だったり
モチベーションだったり、
教育環境だったり、
生活環境といった社会要因によっても
大きく変わってくることなので、
どちらが良いとは一概に言えません。
確かに 早期に始めることのメリットは多くありますよね。
だからと言って、
「◯歳を過ぎたからバイリンガルにはなれない」
と焦る必要は全くないと思うのです
《参考文献》
Ortega, L. (2009). Understanding second language acquisition. London: Hodder Education.