いつまで続くのか!
コロナ禍状況が長く感じられる。
長野県の地方病院での新型コロナウイルスと闘う医師達の物語。
諸外国や都会だけというような対岸の火事ではなかった。
長野でも日本のどこでも同じだった。
他人ごとではなかったことを早く気づけばよかった。
コロナ診療対応側とそうでない側とでは、深刻さの度合いの認識がかなりずれていた。
積極的にそれらから逃げていた医療関係者がいたことが悲しい。
この頃は全てが手探りで、まさに見えない敵と闘っている状態だった。
想像を絶する過酷な医療の現場、働く医師たちの葛藤や本音、医師の家族たちの不安もあってどれもこれも生々しい。
臨場感あふれる医療現場から、初期時期から切実で危険であったことが切羽詰まった事態から深刻に伝わってきた。
新型コロナウイルス罹患患者に対して、ワクチンがなくほとんど武器と言える治療薬もない、物資の不足のために使い捨てされないマスクなどの再利用していた状況下、必要に応じ担当医師の識見と体力をもって、やむを得ず処置せざるを得なかったことを知った。
医療関係者の尽力に敬意を表したいと思う。
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「医師のつとめではありません。人間のつとめだと思うのです」
老医師の細い目が、かすかに見開かれた。
千歳も、日進ですらも、黙って耳を傾けていた。
「病気で苦しむ人々がいたとき、われわれが手をさしのべるのは、医師だからではありません。人間だからです。もちろん医師であればできることは多いでしょう。けれども治療法のない感染症が相手となれば、医学は役に立ちません。だからこそリウーは言ったのです。『これは誠実さの問題なのだ』と」
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ぬっと太い人差し指をたてて日進が告げた。
「ユーモアというのは、一種の鎮痛薬でしてねえ。病気を治してくれるわけじゃありませんが、パニックを回避して、物事と冷静に向き合う時間を与えてくれるんです。私は誠実さとはあまり縁がありません。こちらの方を担当させてもらいますよ」
「なるほど、心強い限りです」と笑った千歳は、施栓を三笠の方に転じた。
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むしろもっと急いだほうがよいのではないか。
敷島の胸にはそんな思いが去来する。
感染爆発も起こっていない今の段階で、すでにコロナ診療現場は限界に近付きつつある。
人は足りず、物資も不足している。
医師は総力戦になりつつある。
<目次>
プロローグ
第一章 レッドゾーン
第二章 パンデミック
第三章 ロックダウン
エピローグ
1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒。医学博士。認定内科医。消化器病専門医。消化器内視鏡専門医。肝臓専門医。長野県にて、地域医療に従事。2009年「神様のカルテ」で第十回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作で10年本屋大賞第二位。









