他の同様の本よりも、頭ひとつ抜きん出ている素晴らしさがありました。
数多くの定年本がありますが、現状把握もしっかりと検証されており、提案内容が濃くて啓発されました。
第二の人生でいまの仕事が豊かで満足できるものであるのかどうか。
無理のない仕事と豊かな生活を両立しながら、幸せに暮らすことができているのかどうか。
定年後は、「他人との競争」よりも、「他者への貢献」や「人の役に立つ」ことにシフトすべき。
統計上、仕事量が多くて責任も重い「大きな仕事」よりも、目の前にある「小さな仕事」に意義を感じていく姿が定年後のキャリアの典型となってきている。
高齢期の仕事が「小さな仕事」であったとしても、誰かの役に立っているのであれば、その仕事に誰もが敬意を示し社会にも報いることができる。
定年後の日本は、小さな仕事を積み重ねていくことで、小さくても豊かな国を作り上げることができる。
◎7P
本書の目的は、定年後の仕事(概ね60歳以降の仕事)の実態を明らかにすることにある。
第一部は、家計の収入や支出、仕事内容などに関する様々なデータから定年後の仕事の実態を15の事実としてまとめた上で明らかにしている。定年後の仕事の全体像をつかむことができる。
第二部は、7人の定年後の就業者の事例を通して、歳を取るにつれて仕事に対する姿勢がどのように変化していくのかを迫った。
第三部は、少子高齢化が進展していく中で、社会が定年の仕事に対してどう向き合っていけばよいかいくつか提案をしている。
将来このように仕事ができたらベターかと思います。
◎207P 定年後に幸せに働き続けられる「仕事の条件」
・健康的な生活リズムに資する
仕事を通じて起床や就寝の時間が安定して生活リズムが整う。
・無理のない
無理をせず過度なストレスがない仕事が好ましい。
・利害関係のない人たちといつ解消してもよいような緩やかにつながり
幸せに働き続ける要件。仕事を通じて人とのつながりを持てることは、幸せに生活していく上で重要な要素である。
この箇所は、定年後の仕事に対して言い得て妙だと思います。
219P 健康なうちは無理せず稼ぐ
仕事から得られる収入の額は、その人がなした仕事による成果に応じて決まるものであって、決してそれがその人自身の価値を決めるものではない。定年後は、高い給与を稼ぐから偉いのだとか、低い給与の仕事はそうでないのだとか、そういう競争意識にとらわれる必要はない。
仕事とは自身の生活を豊かにするために、その結果として誰かの役に立つためにあるものであって、キャリアの良し悪しを他者と比較して競うためにあるものではない。
そうした考え方で自身に合う仕事がないかを探していけば、身近な仕事のなかに、自身にとっても社会にとっても双方に価値のある仕事がきっと見つけられるのだ。
【目次】
はじめに
第1部 定年後の仕事「15の事実」
事実1 年収は300万円以下が大半
事実2 生活費は月30万円弱まで低下する
事実3 稼ぐべき額は月60万円から月10万円に
事実4 減少する退職金、増加する早期退職
事実5 純貯蓄の中央値は1500万円
事実6 70歳男性就業率は45.7%、働くことは「当たり前」
事実7 高齢化する企業、60代管理職はごく少数
事実8 多数派を占める非正規とフリーランス
事実9 厳しい50代の転職市場、転職しても賃金は減少
事実10 デスクワークから現場仕事へ
事実11 60代から能力の低下を認識する
事実12 仕事の負荷が下がり、ストレスから解放される
事実13 50代で就労観は一変する
事実14 6割が仕事に満足、幸せな定年後の生活
事実15 経済とは「小さな仕事の積み重ね」である
第2部 「小さな仕事」に確かな意義を感じるまで
事例1 再就職先で一プレイヤーとして活躍
事例2 週末勤務で会社を支える
事例3 包丁研ぎ職人を目指して独立
事例4 近所の学校で補助教員として働く
事例5 同僚、患者とのやり取りを楽しむ
事例6 幕僚幹部から看護師寮の管理人に
事例7 仕事に趣味に、人生を謳歌する
第3部 「小さな仕事」の積み上げ経済
1.定年後も働き続ける人に必要なこと
2.高齢社員の人事管理をどう設計するか
3.労働供給制約時代における経済社会のあり方
おわりに
1985年生まれ。リクルートワークス研究所研究員・アナリスト。一橋大学国際・公共政策大学院公共経済専攻修了。厚生労働省にて社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府で官庁エコノミストとして「経済財政白書」の執筆などを担当。その後三菱総合研究所エコノミストを経て、現職
【No1211】ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う 坂本貴志 講談社(2022/08)









