リア充、リアルな世界で安定した職業を持ち結婚して子どもを育てる豊かな生活を築ける人と、努力しても豊かな生活を築ける見通しが持てない人で、希望格差社会でバーチャルな世界で格差を埋めていく人。こんな方向へと令和は分裂が進行していく!
将来を展望するとこれからの日本は、「みんな!一緒に!少しずつ!幸せに衰退していく」と予想されている。経済の停滞や女性活躍の低迷、少子高齢社会が加速度的に進行、格差社会の進展しているなかであながち嘘ではない気がする。
「婚活」や「希望格差」、「パラサイト・シングル」などの言葉を世に出して広めたのはこの山田昌弘さん。いわゆる大学の教授など先生が記す書物は、専門用語が多く比較的硬い文章で内容が難しいものが多いようだが、山田さんはそうではなく読みやすくわかりやすく書かれていた。
昭和から続いている「日本型雇用慣行」、「性別役割分業型家族」などを前提とした諸制度の抜本的な改革をすれば、日本が経済的に大きく発展する可能性があると予想されていたが、現状を大きく変えるような改革を国民がこころから望んでいるのかは疑問である。現状維持(だんだんと衰退していく!?)でよいような空気感で漂っているように思われる。
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私の分析は楽観的なものではない。格差は広がるだけでなく、固定化し、経済的に行き詰まりを見せている。しかし、人々は大きな不満を持つわけでもなく、幸福な生活を送っているようにみえる。実際に、様々な意識調査で、平成期に人々の生活満足度は上昇している。特に格差拡大の被害を最も受けているはずの若者の幸福度が上昇している。格差拡大、経済停滞と人々の幸福感の高まり、このギャップを「幸せに衰退する」と私は表現した。その秘密は、人々がリアルな世界ではなく、「バーチャルな世界」で満足を得る方法を見出すようになったからと考えている。リアルな世界では、生活は豊かにならず、経済的越えがたい格差が存在している。しかし、バーチャルな世界(ペット、ソーシャル・ゲーム、アイドルの推し活など)に意識を向けさえすれば、平等で希望にあふれた世界を体験することができる。
本書では、まず、平成時代の日本社会において、様々な格差がどのように拡大してきたかを分析する。希望という観点から、社会をみる視点を開設し、その人々の希望が戦後、昭和時代から現在に至るまでどのように変遷していったかを考察する。平成期に進行したバーチャルな世界の広がりが、リアルな世界の格差を埋めるように機能しているロジックを解説し、それらの点で、平成時代が江戸時代後期の日本社会と類似している点を指摘する。
<目次>
まえがき
第1章 平成時代に生じた「4つの負のトレンド」
第2章 世界経済の構造転換と「4つの負のトレンド」の発生
第3章 生活者視点から「格差問題」を考える
第4章 格差社会の変遷―過去・現在・未来
第5章 令和の格差社会の形成
第6章 バーチャルで格差を埋める時代
第7章 江戸時代化する?令和日本
第8章 幸せに衰退するニッポン―令和日本のゆくえ
あとがき
参考文献
山田昌弘さん
1981年、東京大学文学部卒業。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。親子・夫婦・恋人などの人間関係を社会学的に読み解く試みを行っている。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、2004年には『希望格差社会』を刊行し「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。また、「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。









