同じ会社で再雇用になるほか、他社に転職する、雇われないフリーランス(個人事業主)となる、ボランティアなどの稼がない働きをする事例紹介があった。中高年に対して長期に渡り丁寧に取材しており彼らのあるがままの定年後の働き方や意識の変化をまとめた本であった。
組織での肩書きが高かった人ほど定年後の処遇にギャップを感じてその状態を受け入れられない、プライドがあることも分かるし、ほぼ同じ仕事をするのにも報酬が3から4割以上下がるのに納得がいかないことも伝わってくる。
セカンドキャリアにおいて、勤務する会社でしか通用しない部署間の調整能力、いわゆる根回し力や自社の事業、商品の説明能力などの「ファーム・スペシフィック・スキル」ではなく、現状把握のための情報収集・分析力や課題設定・計画立案能力、社内外の対人関係・コミュニケーション能力などのどこの会社でも通用するポータブルスキルや、専門性を究めるために新たな知識やスキルを習得するリスキリングが必要だとわかった。
また自分に置き換えて考えると、外部的な報酬や地位ではなく、世のため人の役に立つなどのやりがいや達成感などの内部から沸き起こる内発的に動機づけられた労働へと転換することがこれからの方向性には大切だと気づけたことが大きな収穫となった。
<目次>
はじめに
第1章 再雇用は「価値観の転換点」
第2章 転職で「再チャレンジ」
第3章 フリーに懸ける―雇われない働き方
第4章 「人のため」をやりがいに―稼がない働き方
第5章 「均等法第一世代」女性の光と影
終章 シニア人材戦力化に向けて
おわりに
奥田祥子さん
京都市生まれ。近畿大学教授、ジャーナリスト。博士(政策・メディア)
