※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#758  愛情の海

 

 

 

(本放送)・・・1976年5月26日

(再放送)・・・2020年3月19日

(脚本)・・・三浦英博、旭丘光志

(監督)・・・島崎喜美男

協力)・・・無し

(協賛)・・・安房自然村、平砂浦・ビーチホテル

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)、

松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

西尾三枝子、北町嘉朗、川部修詩、梅沢昇、鈴木和夫、依田英助、花原照子、

森本純一、朝比奈順子、山口のぼる、千葉繁、不知火艶、永井柳太郎、梅津栄、

池田鴻

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

目の見えなくなった写真家に、世間は冷たかった。

・・・・・(海岸の岩場で、夫に駆け寄る妻の場面)

妻  「あなた・・・(絶叫)」

夫  「遅かれ早かれ、こうなるんだ! 心配するな!」

・・・・・(その妻に語りかける畑野の場面)

畑野 「君は何かを隠してるんだ!」

妻  「人を殺したなんて・・・! 

    目の見えなくなったあの夫(ヒト)に、

    この海を見せてあげたかっただけ・・・!」

・・・・・(以下、ナレーション)

夫をいたわる妻。

思い出の場所、房総の海岸に旅する夫婦。

だが、金融会社社長殺しの疑いは、執拗に付きまとってくる!

次回、特捜隊、「愛情の海」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

#756 悪魔の暴走 、#758 愛情の海は、スタッフ、ゲストとも異なるが、同じ協賛であることから、ロケ2本撮りと推察される。

・田中係長(山田禅二)、鑑識員(西郷昭二)の出演場面が見当たらない。

・エンディング表記で、広子=朝比奈順子(おそらく平砂浦ビーチホテルのスタッフ役と思われる)とあるが、出演場面は見当たらない。

・検証本428頁にある「脚本 三浦英輔」は誤り、「脚本 三浦英博 旭丘光志」が正しい。

・井田と保子が会うレストラン樺は、#751 金貸し一代 でも登場した。

・保子の父を演じた永井柳太郎は、検索してもなかなかヒットしない人物だったが、近年ネットオークションで「俳優 永井柳太郎の生涯 芸能界今昔」(1978年、大手町企画)という、本人の顔表紙付きの冊子が出されている。

・(追加) R2.3.27

関根のキャラは、直前作#757 霊柩車を撃て! の本気モードキャラと異なり、従来の三船班での重鎮部長刑事キャラのまま。この2本立てキャラで行くのか? 徐々に両捜査班でキャラが統一されていくのか? それとも三船班での溜め撮り作品が無くなったら、日高班専属で本気モードキャラに絞るのか? 興味のあるところである。

 

 

(視聴録)・・・開始約15分前半まで

 

5,6年前、写真集「やすこ」で一世を風靡した写真家・中杉成吾(池田鴻)。その妻で、写真集のモデルでもある保子(西尾三枝子)は、出版社を回り撮影写真を見せ、新しい写真集発行を促進する日々であった。しかし、撮影写真はなぜかピンボケばかりであり、「やすこ」出版元の係長(未詳)のように接待費1万円と引換に渋々写真を受け取るならまだしも、使い物にならないとか心無い言葉を浴びせ写真を受け取ろうともしない編集者(北町嘉朗)にも遭遇していた。

そんな保子は、写真をコインロッカーにしまい込むと、原宿の金井金融へと足を運ぶ。写真集発行のための房総行き費用の工面であり、以前、担保無しでも考えると社長・金井鉄之助(梅沢昇)が発言したからであった。すると金井は、もったいぶりながらも、仕事中の秘書・井田みのる(梅津栄)に帰るよう指示、保子と2人で話し合うことになる。会社を出た井田は、「またか・・・、でも、いい女だな・・・」などと呟きながら、帰宅の途に就くのだったが。。。

 

その翌日、出勤した井田から、左胸から血を流し絶命した金井を発見したとの通報で、三船班は現場に到着、捜査にあたる。金井は心臓部への一突きが致命傷で、背中にも1カ所刺傷があった。また部屋内の金庫は金井が管理していたが、それが開けられ荒らされていた。井田は、自分は開けられないものの、常時200-300万は保管されていたという。そして、水木が顧客200名以上載る金井の手帳を発見、三船主任は全員にすべてを聞きこむよう指示を出す。

 

聞きこみが続く中、畑野・石原はあるアパートを訪れ、管理人(花原照子)に許可をもらい、金井の顧客の部屋を訪れる。その部屋は中杉の部屋であり、視力が衰えたことに愕然とする中杉が部屋を飛び出したところであった。中杉の風貌に見覚えのある畑野は石原と、中杉を追いかけ公園で声をかける。畑野と中杉は高校の同級生であり、畑野は中杉が写真家であることも、妻の保子のことも知っていた。そこに、帰宅途中の保子が通りかかり、3人は旧交を温める。しかし、畑野が刑事であること、昨日の金融社長殺害事件を捜査していることを話すと、保子の顔色は変わり目は伏せがちになる。この様子を見ていた石原は、中杉・保子と別れ特捜隊車両に乗り込む畑野に、何かを話そうとするが押しとどめる。

 

特捜隊本部では、関根が全員の聞きこみをまとめ、おおよその顧客を当たったが何も出ないと報告。すると三船主任は、畑野に井田の経歴を聞く。畑野からは、井田は町工場の会計職であったが、金井の取立てに町工場は倒産、金井に雇われたという。そこで三船主任は、井田のマークと、他に金井から金を借りている人物をあたるよう方針を転換する。

 

井田をマークする畑野・石原。石原はネクタイを新調する井田を金回りが良くなったと訝しがるが、畑野はネクタイ1本でそれは考えすぎだとたしなめる。そして、レストラン樺に入った井田を、中で畑野が、外で石原が見張っていたが、そこに保子が現われ井田の隣の席に座る。驚く畑野だったが、井田に何ごとか囁かれた保子は驚きの表情で立ち上がり、すぐさまレストランから出る。後を追いかけようとする石原に、中から出てきた畑野は井田を任せると言い、保子の後を追うのであった・・・。

 

 

ストーリーはその後、保子の周辺をあたる畑野が描かれ、写真を焼却する保子を目撃、中杉のことを語る編集者への聞きこみ、さらには中杉の主治医(川部修詩)から目の状態を聞くまでに至ります。そして井田、保子が会合の帰り道、チンピラ3人(山口のぼる、千葉繁、不知火艶)に絡まれるのを、尾行中の畑野が石原の制止を振り切り救出にあたります。ここで保子は畑野の突然の救出に、自分は疑われていると察したのか、自分の父(永井柳太郎)が千葉の安房自然村で働いていることもあり、房総へ中杉と出かける展開に移ります。

 

そして、中杉・保子とも知見のある畑野はどうするのか? 保子に異常接近する井田の目的は? いつもと違う畑野に石原は何を思うのか? など様々な人物に焦点を当てていくのが後半です。

 

 

刑事ドラマとして観ると、今となっては・・・の真相解明など、目新しさはありませんが、人間ドラマとして「人物」に焦点を当てたところが、見るべき箇所なのでしょう。しかし、その人物について、特捜隊刑事が事件関係者と懇意だったパターンは、これまた数多く描かれており、畑野を見つめる石原にしても#667 失われた週末 で容疑者の後輩という役柄を演じたことがあります。まあ、このときは石原の独断専行キャラが目立ちましたが、畑野はそこまで前のめりになるキャラではありません。当作ではむしろ「中杉・保子に寄り添う畑野」であり、これが最終的に報われるか? しっぺ返しを食らうのか? が隠れた見どころになっています。

 

ただ、上述したように、刑事ドラマ、人間ドラマの観点からは使い古し感は否めないのと、房総ロケに三船班からは三船主任・畑野・石原(+松木が数秒のみ)しかないのは物足りなさに拍車をかけます。この使い古し感というのは、現在から遡っての感想ではなく、過去の特捜隊作品でも多々見かけたからでもあります。同じやり方でも、創意工夫次第で目新しさを感じさせることもあるのですが、当作ではそれを行なったかな?という気がします。

まあ、房総ロケの点は、フィルムに納めたものの(備考)の広子=朝比奈順子の未出演の点から、放送時間の問題からカットしたことも考えられるのですが。。。

ですので、全体的にみると、何かモヤモヤした感じの仕上がりです。

それでは、まったく見るべきものが無いのかというと、部分的には刮目すべきところが多い

 

具体的には

(1) 前半から、冷静でいられない畑野にやきもきしていた石原が、開始約38分後半、平砂浦ビーチホテルのロビーで、遂に不満を爆発させる場面。目を合わせようともせず、このまま決裂かと思われたところ、新たな展開で特捜隊車両にある人物も含め3人で出発します。映像では流れませんが、車内で3人と意見交換をしたのでしょう。ある場所に到着すると、石原の声はいつものように明るくなり、畑野とある人物を降ろし、自分は海岸に向かうなどなかなかリズミカルで、目を見張ります

 

(2) 保子演じる西尾三枝子は、特捜隊の前回出演の#749 女ごころの謎 とは、打って変わった控えめな女性を演じ、その中に可愛らしさも浮かばせます。どうしてもプレイガールでの女保険調査員のイメージがあり、キイハンターのゲスト出演でも「女性」というより、「女」を思わせる野性的な魅力が売りと思っていました。西尾三枝子の変貌した作品は、探せば見つかるのかもしれませんが、当作ではその野生さが一変してしまう役柄でもあり、これまた、驚いたところでありました。

 

(3) ラストの場面は、#513 その夜の女 を思わせるつくりです。かつての三船主任の立場を畑野が担い、当の三船主任は当作では急かす側になります。その畑野(横には事の次第がわからないほど、失明状態になった中杉がいる)に誰もフォローが無いのかと画面を見つめていると、石原が「畑さん・・・、(しなくていいよという風に手を振りながら)いいよ・・・、ね」と言いながら特捜隊車両に乗り込む、目を瞑る畑野、顔を横にしながら(仕方ないか、と思わせる表情)近寄ってくる三船主任、などの構図は、いい場面です。そして、敢えて畑野を残し、三船主任を乗せた石原が「後は俺がやっとくからさ・・・、好きなように・・・」と言って、にこやかに車両を出発させるのも、いい場面です。

 

このように、部分部分は観るべき点があり、出演場面が少ないながらも石原刑事活躍譚に見えるところは見どころのひとつ。演じる吉田豊明の、特捜隊での絶頂期であるともいえるでしょう。このことから、上述したような良い場面を、使い古し感を払拭するための創意工夫とみることもできますが、それでも全体的にまとめられず、個々の場面に終わった印象は残ります。

調べてみると、特捜隊での島崎喜美男監督は、当作が初めてのロケ作品です。地方ロケが鬼門になることは、四天王である天野利彦、田中秀夫両監督もあることですので、それが一因になったのかも・・・とも考えます。