※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#756  悪魔の暴走

 

 

 

(本放送)・・・1976年5月12日

(再放送)・・・2020年3月12日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・中村経美

協力)・・・無し

(協賛)・・・安房自然村、平砂浦・ビーチホテル

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)、

松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

三原葉子、水木梨恵、佐藤明美、鈴木和夫、朝比奈順子、十時じゅん、湊俊一、

曽根秀介、鈴木志郎、加東三和、池田一臣、島田彰、中村竜三郎、小林勝彦

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

・・・・・・(女の運転する車を追跡する謎の車、仮面を被る人物の声の場面)

仮面の人物 「おひとりでドライブ・・・? 

       付き合っていただきませんか・・・!?」

・・・・・・(以下、ナレーション)

殺人!

罠!

憎悪!

偽装!

狂鬼!

仮面!

追い詰められていく女!

秘密を握る男!

次第に姿を現す悪魔とは!?

次回、特捜隊、「悪魔の暴走」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・エンディング表記では、小坂景子の次女が、純子=十時じゅんとされているが、劇中において、鴨川市太海フラワーセンターでの呼び出し場面では、「りょうこ」と発声される。船田涼子(リョウコ)=水木梨恵と混同しやすいため、以下本文ではカタカナで、リョウコ=十時じゅん、として扱う。なお「晶子」の読みは、劇中では「マサコ」とされている。

千葉県の外房方面ロケだが、その後の作品から、ロケ2本撮りをした形跡は無い。

→(訂正)R2.3.19

スタッフ・ゲストは異なるも、同じ協賛だったことから、#758 愛情の海 とのロケ2本撮りと判明。

・以下本文は、三船班視点で作成。

・かつて特捜隊の捜一課長・西本を演じた鈴木志郎が、東館山署刑事として出演しているが、人事異動したとかではなく別人の役柄。

・なお、非常階段の施錠についての規定は、建築基準法・消防法にも見当たらない。自分自身の経験では、現在のホテルは、内側から開き外側からロックされる非常階段が多いと思われるが、1976年当時はどうであったかは不明。

 

 

(視聴録)・・・

 

ある夜、特捜隊車両を運転する水木と、助手席に座る畑野。畑野は、ふと前方を走る車のトランクが少し空いているのが気になり、赤信号停車の際、その車に横付けて、運転する中年女(後に小坂景子と判明、演ずるは三原葉子)に声をかけるが、その顔は引きつったままであった。と、そのとき、警察無線で「東江戸川町3丁目4番の、江戸川マンションで殺人事件発生」の通報が入り、この場を切り上げ、急遽サイレンを鳴らし現場へと向かうことになった。

 

到着した現場では既に警官が非常線を張っており、周辺を確認すると、エレベーター内から外へ、何かを運んだような濡れた跡があった。そして管理人(曽根秀介)と402号室に入ると、畑野は浴室の浴槽の水が温かいことに気づくが、水木は死体発見の110番通報があったのに死体が無いことに首をかしげる。畑野はさらに、写真立ての館山テニスクラブでの全体写真が気になり管理人に聞きこむ。すると、写真中央の男性が、部屋の持ち主でレストラン経営・船田雅夫(中村竜三郎)で、隣が夫人・涼子(水木梨恵)とわかる。写真を覗き込んだ水木は、離れたところに先ほど信号停車した中年女を発見して驚くが、管理人は小坂景子と指摘、涼子の高校時代の友人で、船田の会社に専務として共同経営しており、千葉市にもレストランを展開しているとのことだった。石原も遅れて駆けつけるが、死体が無いことに同じく首を捻る。

 

夜も明けた外房では、景子の運転する車を、煽りながら追跡する2台の車があり、運転者は各々仮面をつけていた。そして、景子の車に寄せては不気味な言葉を投げかけていた。辛抱できなくなった景子は車を停車、降りて海岸に逃げ出すが、2人の仮面の人物はそれを追いかける。そこにたまたま出会ったドライブイン・カーサフローラの支配人(湊俊一)、青年(大山経男?)は気絶寸前の景子を介抱。支配人は逆に2人の人物を追いかけるが、間一髪、車で逃げられてしまい、その後には象徴的な仮面が残されていた。

 

一方、畑野・水木は館山駅周辺に捜査を伸ばし、東館山署の佐原(池田一臣)ほか刑事2名(鈴木志郎、島田彰)と合流、館山テニスクラブとその運営元の浜田屋旅館に向かい、旅館の女中(吉沢優子)、女将(加東三和)に聞きこみ。女将から、涼子は今朝来訪してヨットをやるからと港へ出かけたとのことで、畑野・佐原以外はヨットハーバーへ向かう(註。その後30分違いで、ヨットを済ませた涼子は車で離れたことが判明)。残った畑野は、涼子の昨夜の行動が気になったが、女将からは昨夜当旅館に涼子は泊まっておらずわからないとの返答に、行き詰まり感を覚える。が、そのとき、女中から電話を取り次がれる・・・。

 

 

その後のストーリーですが、電話は、千葉市にある景子のレストランへ石原と向かった関根からでした。景子の長女・晶子(佐藤明美)、次女・リョウコ(十時じゅん)に聞きこむと、景子あてに昨日の夕方5時半ごろに平砂浦ビーチホテルに滞在中の涼子から電話が入り、車で出かけたがその後連絡が無いことが判明します。

そこで、畑野は戻ってきた水木と平砂浦ビーチホテルへと向かいフロント(鈴木和夫)に聞きこみますが、涼子はまだ戻っていないこと、昨日の夕方4時過ぎに車で到着とともに、504号室で飲酒を始めた涼子は、景子を電話で呼び出し、夜になり景子が車で到着したことまでは話しますが、それ以上のことは宿泊者のプライベートもあり拒みます。しかし水木の説得に、フロントはロビーに場所を変えての話し合いを提案、詳細を知る担当スタッフ(朝比奈順子)を先に行かせ、弁護士・笠井(小林勝彦)のチェックアウトを済ませてから合流、4人での訊問となります。

 

すると、担当スタッフは涼子到着後の出来事を話し始めます。涼子は船田に女ができたと騒いでいましたか、案内した景子の姿を見て落ち着いたのか眠りにつき、飲み終えた飲酒セットを下げ部屋を出ると、室内から景子が出てきたといいます。そして睡眠薬瓶を見つけたからと、2人でウイスキーグラスを見ると底に睡眠薬が溜まっており、景子は沈殿しているから大丈夫だろうけど何かあったら医者を呼ぶということで、担当スタッフは階下に行き、その後は医者を呼ぶこともなく景子・涼子とも休んだようすを話します。

 

フロントからは、その後の今朝4時ごろ、突然起きてきた涼子から景子がいないと言われ、正面ドアは閉まっているため調べたとのこと。そして5階の非常外階段のドアが開いており、駐車場に景子の車は無く、景子も戻っていないことが判明。事件の輪郭が朧気に見えてきます。

さらに東館山署刑事から、景子がカーサフローラで保護されたとの報告を受けた畑野・水木は、そちらへ向かうことになりますが、果たして景子の口から真相が語られるのか? 興味津々に、ストーリーは後半へと繋がっていきます。

 

 

と、ここまで書きましたのが開始約17分後半までなのですが、実は序盤に、景子が平砂浦ビーチホテルを出てから、信号停車で畑野・水木に声をかけられるまでの出来事が描かれており、ネタが半分割れています。そして、残りが後半部である開始約17分後半以降に描かれ、ネタの半分を楽しめる構成になっています。

 

これは個人の好き嫌いの範疇になるのですが、自分自身は「特捜隊に刑事コロンボ風の味つけ・構成は不要」という考えを持っており、特に【第4回再放送】されてから、主張しているところです。つまり、最初に真相をある程度挙げて、それを知らない捜査側と実行した犯人側との駆け引きは、刑事コロンボを演じるピーター・フォーク、それを吹き替えた男優・小池朝雄、さらにはアメリカンドラマだからこそ絵になります。それを、日本の伝統的な警察の匂いが漂う特捜隊には、似つかわしくないというのが自分の見方です。何か犯人の手の平で踊らされている特捜隊、ひいてはそんなことにも気づかないのかと特捜隊が一ランク下に見られてそうで、刑事たちがバカにされているのでは? とも思えてしまうのです。

 

上記本文を三船班視点で作成したというのは、流れをわかりやすくしたいこともさながら、三船班を上位に作成したい気持ちもありました。ですので、放送を視聴された方なら「えっ」と思うかもしれませんが、されてない方なら言わなければわからないように見えるでしょう。

 

さらに、今回の特捜隊の捜査班たる三船主任が、開始約25分後半まで出演することがありません。これは、畑野・水木両刑事活躍譚でもなく、ゲスト出演者たちに下駄を預けたというでもなく、三船主任が高みの見物をしているように見えてしまうのが残念なところ。ただ、この点は、【第4回再放送】になっての特捜隊視聴者、自分のように【第3回再放送】からの視聴者、【第1回再放送】からの視聴者、さらにはリアルタイムでの特捜隊視聴者、などと見解が分かれることもあるでしょうから、一元的には語れないと思います。

 

これらは自身の主観であるので、自分の脳裏からできるだけ排除して、客観的に分析しますと、上記本文だけでは「誰か殺されたの?」「そもそも何があったの?」であり、110番悪戯通報で終わってしまうささいな出来事でした。それを、畑野・水木の「ある目撃」から大きく広がりをみせるのが、脚本・横山保朗のねらいであったと見受けられます。

いわゆる偶発的出来事を、上手く都合に合わせて展開させるのが犯人の目的でもあったのですが、真相がわかると「あれ?」という部分が多いのに気づきます。いわゆる、恒例ともいえる特捜隊の辻褄が合わない場面ですが、そもそも景子が平砂浦ビーチホテルに来訪する確信も無いのに、ある犯行を継続したことがわかりづらい。これには。「計画的」というか「なりゆきさ」が感じられ、もし景子来訪が無かったらどうしたのだろうとも考えます。さらには、実際景子は来訪したのですが、それこそ未明に景子が目を覚ますことなど予見しづらいでしょう。千葉県外房まで警察を引っ張るなら、才知に溢れた犯人像が求められると思うのですが、そういった点は見られません。

 

具体的事例でも

・前述した序盤と中盤での、同じ出来事繰り返しの映像や場面

・そもそも、千葉市と館山市(あるいは鴨川市)との距離は長く、時間的に不可能であること

・ネタの半分にあたる犯行目的が、あまりに現実離れしていること

・ラストでの、突拍子もない関根の検視報告の指摘

など、指摘するところが挙げられ、傑作・秀作とは少なくとも言い切れません。これは、オープニングで「脚本・横山保朗」と出て期待したものの、「監督・中村経美」と出てから「うーん」となったところから覚悟はしていましたが。。。

 

ところが、怪我の功名というか、人間ドラマに軸を置き気味の、最近の特捜隊の風潮からみると、これが新鮮に感じるのです。「またか!」というより「こうじゃなくちゃ!」の気持ちが勝ったこと、キャスティングも新東宝の三原葉子・中村竜三郎を前面に、特捜隊常連の水木梨恵、新東宝と対極にある大映の小林勝彦とキャスティングの妙が見えたことで、ある程度カバー。佳作と判断してもいいんじゃないかという、主観的ではありますが、何か【第3回再放送】のころの作品テイストに戻ったような気分でありました。

 

さて、当作で気になった女優さんというのが、小坂晶子を演じた佐藤明美。この女優さんを検索しても出てくることは無く、いわゆる大部屋女優さんのひとりだと思われます。ところが、特捜隊での出演歴は長く、

>エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優

でみると、#589 浅間山慕情 のリアルタイムで1973年2月14日からの出演で、四列以上で表記されたものを含むと、それ以前にまで遡れます。それが、特捜隊という刑事ドラマだからか、下積みが認められ、近作では貫目負けはするものの#718 呪われた人々 では相続人のひとりというキーマンを演じるまでになります。テレビドラマデータベースでは、土曜ワイド劇場の「はみだし弁護士巽志郎」(2005年9月17日)の同姓同名出演者でみられますが、特捜隊常連の佐藤明美と同一人物かは不明です。もし、同一女優だったら、息の長い女優生活は特捜隊時代の貯金が多少なりとも生きたのではと思う次第です。

 

さて、次回作はいよいよ日高主任登場の #757 霊柩車を撃て! で、拙ブログの更新が上手くいけば、いつもどおりの2020年3月22日の日曜日になります。

が、その日は、以前触れた「鉄道探偵と56年前の犯人」の都営現代篇京王過去篇の2つを午後~夕方に更新することになっており、原稿もスタンバイ済です。もう解いてしまい、応募済の方が多いことでしょうが、日曜日は少なくて2本、多くて3本の更新となります。