※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#749  女ごころの謎

 

 

 

(本放送)・・・1976年3月24日

(再放送)・・・2020年2月20日

(脚本)・・・小川記正

(監督)・・・北村秀敏

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・矢崎班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

谷山部長刑事(和崎俊哉)、神谷刑事(山口暁)、岩本刑事(萩原伸二)、

桂刑事(佐竹一男)、矢崎主任(亀石征一郎)

 

(出演者)・・・

西尾三枝子、服部哲治、一の瀬玲奈、鈴木和夫、上野山功一、中京子、

松風はる美、宮田羊容、石島房太郎、市原清彦、纓片達雄

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

夜の静けさを破って、鳴る電話・・・。

怪しげな女の声が!!

・・・・(机に座るチョッキ姿男が、寝ている妻を横に、鳴る電話をとる場面)

電話の女の声 「チヨよ! やったわ、たった今!」

・・・・(ナレーションに戻る)

そして、この電話が、ひとりのトップ屋の人生を、

大きく狂わしていくのであった。

・・・・(チョッキ姿男が、派手女と一緒のピンクシャツ男に電話する場面)

チョッキ姿男 「おまえさん、親父の堀田善兵衛を殺したろう!?」

ピンクシャツ男「何・・・? 藪から棒に何を言うんだ!?」

チョッキ姿男 「おまえが直接手を下したわけじゃない! 女にやらせたんだ!」

ピンクシャツ男「何?千代が!?(と言って、隣の派手女と顔を合わせる)」

・・・・(以下、ナレーション)

そして、何億という遺産を手にした男を取り巻く、女、女・・・。

そこには、女のエゴイスティックな欲望が渦巻いていた!

次回、特捜隊、「女ごころの謎」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・エンディング表記には「堀田善平=石島房太郎」とあるが、劇中では、終始「ぜんべえ」と発声されているため、「堀田善兵衛」の誤りと解釈して、以下本文ではそれに従う。

・歌手として登場する中京子については、唯一、ブログ・テニスを楽しく、において取りあげられ(2019年4月7日)、当時のレコードジャケット(A面-初恋の町・B面-いくじなし=劇中で歌われているのはB面か?)とサイン入り色紙(昭和51年7月1日付=当作本放送されて約3カ月後)がある。アイドル歌手の嚆矢・石野真子登場以前の、新人女性歌手のひとりと思われる。

・佐伯にかかってきた、間違い電話の内容は、大まかに以下の通り。

>チヨよ! やったわ、たった今!

>あとは、しっかり頼むわ!

>やったのよ、たった今!

(佐伯の「どこにかけているんだ!こちらは○○○-4694だぜ!」の返答に)

>4694? 4695じゃなかったのね!?

・喫茶店で流れる、テレビのアナウンサー(鈴木泰明)の報道内容は以下の通り。

>今朝7時30分ごろ、都下、東山市でレストラン経営者・堀田善兵衛(註・

>演者は、石島房太郎)さんが殺されているのが、通いのお手伝いさん(註・

>演者は、進藤幸)が発見、殺人事件として、捜査が開始されました。

>死亡推定時刻は昨夜12時30分ごろと思われ、直接の死因は睡眠薬を飲ま

>されたうえでの絞殺と断定されました。

・本放送当時の1976年3月の時点でも、すでに旧民法上の「勘当」は、親族・相続法の範疇では認められていなかった。よって、養子縁組解消をしていない善兵衛・一郎の間には、いまだに「相続」が存在しているものと解すのが妥当。

・「トラ箱」とは、警察用語で、警察署内に有る泥酔者専用の部屋のこと。対して、「ブタ箱」とは、逮捕者の留置場のことである。

・田中係長、鑑識員2人の出演場面が見当たらない。

 

 

(視聴録)・・・開始約10分後半まで

 

トップ屋・佐伯(纓片達雄)は妻・みどり(遊佐ナオ子)をホステスで働かせての取材生活だが、金銭面がズボラなのが玉にキズ。今晩も、賭け事の胴元(未詳)から返済の催促電話を受け頭を抱えるが、そんな折、突然かかってきた間違い電話に、佐伯は激高、電話を切る。時に、時刻は深夜の12時30分であった。

 

翌朝、喫茶店でモーニングを食べている佐伯の耳に入ったのは、実業家・堀田善兵衛殺害事件の報道であり、死亡推定時刻と昨晩の間違い電話との一致した時刻の符号に驚く。そして、一目散に堀田邸へと向かい、取材で現場に入ろうとするが、身分証を忘れてきたため谷山・桂に止められてしまう。しかし、後輩の毎朝新聞記者・成田(市原清彦)が通りかかり、そのとりなしで、佐伯は成田と現場に立入ることができた。現場では、お手伝いに聞きとり、さらには会社の秘書・三上智江(チエ、松風はる美)が駆けつけていた。佐伯・成田は捜査状況を見聞、その後、外へ出て雑談する。

 

どうやら矢崎班は、善兵衛の養子で28歳の一郎(服部哲治)に目をつけ、財産目当ての犯行の線で捜査しているようだった。善兵衛夫婦には子供が無く、一郎を5歳のときに養子として迎えたが、善兵衛は5,6年前に妻を亡くしてしまった。それ以来、一郎は金をタカり、競輪・競馬にのめり込み女遊びにも散財していた。そして2年前、一郎は善兵衛の不動産権利書を持ち出し転売しようとしたことが発覚、善兵衛から勘当された経緯があることも判明していた。

 

谷山・桂は一郎の住むメイゾン石神井へと急行、同棲中のホステス・千代(チヨ、一の瀬玲奈)の制止を振り切り、室内の一郎に善兵衛絞殺事件を話す。一郎は善兵衛の死に驚くが、死亡推定時刻については、昨夜酔っ払い東新宿署のトラ箱におり、釈放されてたった今まで寝ていたという。さらに、凶器とされるスカーフについては、一郎も千代も覚えがないと答える。

 

聞きとりも終わり引き揚げようとする谷山は、マンションの外で佐伯の姿を見かける。嗅ぎまわっているものとみた谷山は、佐伯の尾行を行ない、桂には一郎のアリバイを東新宿署に確認するよう分担することにする。佐伯は、マンションから離れた踏切脇の電話BOXから、どこかに電話しているようであったが、その内容について谷山には知る由も無かった(註・視聴者には、予告篇の恐喝の場面が流れ、佐伯が一郎に200万要求したことがわかる)・・・。

 

 

ストーリーはその後、桂は東新宿署の巡査部長・けんもち(小高まさる)から、昨晩10時-今朝まで一郎がトラ箱にいたことが説明され、堀田邸の矢崎主任に合流します。その一郎も、堀田邸に駆けつけますが、智江と顔を合わせた途端2人は険悪な雰囲気になり、何かしらの因縁があることがわかります。一郎が去った後、智江は近寄ってきた矢崎主任からスカーフを見せられ、千代のものだと証言しますが、桂は先ほどの千代の証言と矛盾する点を指摘。矢崎主任は何か思うところがある表情をします。

 

尾行中の谷山は、クラブ・エンパイアに佐伯が入るのを確認。矢崎主任と合流して店内に入ります。歌手(中京子)の歌う店内で、矢崎主任はバーテン(三浦伸一)から、佐伯は千代の出勤を待っていることを聞き出しますが、程なく佐伯は退店、矢崎主任は谷山に再度の尾行を合図します。そして、矢崎主任がバーテンに聞きこみを継続しているところに、ひとりのホステスが接客で挨拶に来るのですが、そのホステスはかつて矢崎主任と付き合いのあったじゅんこでありました。今ではルミ(西尾三枝子)と名乗っているのですが、お互い気まずそうな雰囲気の中、矢崎主任が立ち上がると、ルミは「千代とは仲よしで、何でも知っている」と腕を掴んで引き止めます。

 

そこで職務的に千代のアリバイを聞くと、千代は昨晩11時までいたが、酔いつぶれていたためルミと同僚ホステス・朱実(吉沢信子)とで家まで運び、ベッドに寝かせ帰ったことを話します。さらにスカーフを見せると、千代のものという証言を得ます。

 

そして翌日、佐伯は一郎と脅迫した金を受け取りに倉庫裏で会いますが、谷山・岩本の尾行に気づいていた一郎は、あらかじめ用意しておいた車に佐伯を乗せ先に行かせます。ところが車内では、一郎から相談を受けていた久米(上野山功一)が短刀を佐伯に突きつけ、久米の舎弟(鈴木和夫)がニヤニヤ笑いながら運転と、佐伯に危機が到来。これから、どのように展開していくのかと興味を引っ張りながら、ストーリーは後半へと進みます。

 

 

当作は、#738 十字架を背おう女(以下、前作と略称) に続いての小川記正脚本作品。前作では、整合性がとれない久しぶりのアンバランスさに苦言を呈しましたが、当作は、「今となってはありきたりの男女のドラマ」として、小さくまとまった作品と評したらいいかもしれません。

というのは、複雑な「女ごころ」を軸としながら、1つ、2つ、3つ、と殺人事件が発生、そして犯行動機の裏側には、女性の男性に対する想いがありました。これは現在見られるサスペンスドラマでも共通した要素で、上手くツボを押さえた構成で、北村秀敏監督も器用かつコンパクトにまとめています。平均点は上手くクリアした出来といってもいいと思います。

 

が、今まで小川記正脚本に慣れてきた視聴者目線でいくと、物足りなさがどうしても出てきます。期待度が大きすぎることが一因なのですが、この事件の背景は? この人物の裏の顔は? もしかして驚天動地のどんでん返しとか? など、つい思いもよらない展開があるかもしれないと考えてしまうのです。

たとえば、矢崎主任とルミの関係にしても、通俗的では無く社会をひっくり返す陰謀劇が隠されているのではとか(これは前作のイメージもありますが)、考えてしまうのです。これは、主人公が「トップ屋」という職業ということもあるのですが、それだけ、今までの小川記正ワールドが凄かったかということです。当作がコンパクトに仕上がったのは、平均点を与えられると同時に、それ以上ではないという、悪くいえば抑揚の少ない作品ともいえます。

 

ただ、小川記正ワールドらしさがみえるのは、後半、ある場面で「ある人物2人」が実はつながっており、「そんなの有りか?」とラストに向けて進んでいくあたりは、らしさがよく出ており、北村秀敏監督も手順を踏みながら上手く仕上げています。しかし、そのキーマンとなるべき「もうひとりの人物」が、後半になり出演場面が皆無なところ(開始約33分前半以降は、出演場面がありません)は、なんともはや。これは、脚色の問題なのか? 演出の問題なのか? 今となってはわかりませんが、小川記正ワールドへの道筋が消えてしまった感もあります。

個人的には、その「もうひとりの人物」が一波乱起こす展開となり、中盤、エンパイヤのホステス・朱実の「あら、一緒といっても、あたしたち変な関係じゃないわよ」の言葉が、鋭い意味を持つ内容(いわゆる#476 奇妙な男と女 の関係)にすることもできたのに、とも考えます。

 

今回も小川記正脚本への手厳しい見方になってしまいましたが、テレビドラマデータベースでみると、まだまだ小川記正脚本の特捜隊は続きます。演出陣がイマイチな感はぬぐえませんが、なんとか小川記正ワールドを炸裂させてほしいと考えます。

なお、#740 汚れた18歳 、#746 愛僧の炎 で触れた「西尾美恵子」と反応するかのように、当作では「西尾三枝子」が出演。もちろん別人ですが、面白い符号です。