※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#740  汚れた18歳

 

 

 

(本放送)・・・1976年1月21日

(再放送)・・・2020年1月16日

(脚本)・・・西沢治

(監督)・・・中村経美

協力)・・・無し

(協賛)・・・北陸・山代温泉、山代グランドホテル、全日空

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)、

松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

富山真沙子、森田めぐみ、平野康、本多洋子、逗子とんぼ、大原百代、

花原照子、岸野一彦、山田光一、黒部進、二瓶秀雄、水村泰三、西尾美恵子、

葉山良二

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

学園生活に退屈しきった、ある女子高校生は、

刺激を求めて旅へ出た。

そして少女は、東京で死体となって見つかった!

1度は北陸に足を延ばした少女・・・、

なぜ急に、東京へ舞い戻ったのか?

その謎を知る山代の女・・・、

少女と行動を共にしながら、東京の出来事に口を閉ざして、

山代へ逃げ帰った。

それから、女の苦悩が始まる・・・。

執拗に、つきまとう男が現われた!

そして、またひとり、東京から女を追ってきた男がいた!

やがて、すべてを押し隠していた女に、破局が迫る・・・。

次回、特捜隊、「汚れた18歳」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

#740 汚れた18歳 、#746 愛僧の炎 は、脚本・監督は異なるものの、ゲスト出演がほぼ同一、三船班主体なことから、ロケまとめ撮りと推察される。

・田中係長(山田禅二)、鑑識員(西郷昭二)、の出演場面は見当たらず。

・五十嵐めぐみが、#728 女と祭 に続き、森田めぐみ名義で出演したときの作品。

・西尾美恵子は、西尾三枝子とは別人と思われる。

・劇中で出てくる、文京区もりかわ町は、1965年に廃止された「文京区本郷森川町」をイメージして脚色されたか、当作が1965年以前の特捜隊作品のリメイクか、いずれかと考えられる。また、HP「故郷東京よもやま話」の「旧森川町06_10_01_2」では、文京区の案内板に「旧森川町」の案内板画像があることから、以下本文では、「文京区森川町」として記述する。

・当作でいう「お接待さん」は、四国のお遍路さんに対するものとは違うもので、劇中では不明瞭な表現にとどまる。芸者・花枝(大原百代)に「商売敵」と呼ばれていることから、おおよその察しはつくものの、以下に劇中での週刊誌・紹介見出しを抜き出す。

>緊急レポート・山代温泉お接待さん徹底

>彼女たちはいくら貯めてるか!!

>加賀百万石の情緒が漂よう湯の街山代温泉

>そこで働くお接待さん

>山代を訪ずれる人々の旅情をなぐさめる

>こんどは私の番よ!

註・あくまでドラマ上のフィクションではあるが、当時の放送倫理の緩さもうかがえる。

・また、発見されたノートに書かれていた内容は、以下の通り。

>クラスの皆さん、あたし、今度、学校を辞めて旅立つことに決めました。

>つきましては、旅費のカンパをお願いします。

>あたしは、石川県の山代温泉に行って「お接待さん」になります。

>暗い高校生活よ、さようなら。

>皆さん、さようなら。

 

 

(視聴録)・・・開始約9分前半まで

 

深夜(註・午前0時前)、文京区森川町の八幡神社境内では三船班が、少女の死体検証を行なっている。死因は、後頭部打撲による脳震盪死、死亡時刻は午後11時、階段からの転落時に頭を打ったものと推定。そして、遺留品にセーラー服の入った紙袋、パスケースに所持金が2万3千円、正和高校の身分証明書もあったことで、練馬区北園町に住む女子高生・松尾啓子(森田めぐみ)と断定された。

 

啓子の両親(未詳)への聞きとりでは、昨日の朝に通学したきりで帰って来なかったこと(註・翌日の聞きとりなので、失踪日=事件日となる)、夜に八幡神社にいたことも、2万3千円の出処もわからないということであった。そこで、三船主任・関根・畑野は正和高校へと出向く。

 

高校では、畑野が、教室の啓子の机の中からノートを発見。山代温泉で「お接待さん」になるため高校を辞め、クラスメイトからカンパを募ったことが書かれてあったことから、三船主任たちは、クラスメイトに聞きこみ。緑ヘアピン女(本多洋子)は、クラス50人のうち41人がカンパして5万円集まったこと、光男(平野康)は、その金を持って昨日山代温泉へ向かったはずだと証言する。しかし、パーマ女(未詳)は、森川町で死体発見ということなら山代温泉行きを延期したのかもと考え、茶髪女(未詳)は、何かの都合で帰ってきたのかもと考える。さらに、不良グループリーダー・高弘(佐藤幸二)と仲間2人(赤石富和?麻生竜?)は、真面目な啓子ですら学校を真剣に辞めたがっていたのに感激したと、高校自体に問題がある発言をする。甘やかされて育ったせいなのか、呆れる関根・畑野に同調するかのように、三船主任は立ち去る光男の贅沢な腕時計を見るにつけ、何とも言えない表情をする。

 

そこで三船主任は教師に聞きこみ。ノートを見た武宮(黒部進)は、生徒の動きに無関心で、カンパのことを今初めて知ったようであり、生徒の処分の話に終始した。同僚の女教師(吉沢信子?)に至っては、週刊誌の延長であり、啓子の様子に気づかない両親の迂闊さを指摘するばかりで、教師の態度に三船主任は席を立たざるを得なかった。実際、生徒間では武宮の評判は悪く、武宮の自宅が森川町にあることから、酒の入った武宮が、無断でいなくなった啓子を八幡神社で見かけ、叱りついでに殺したのではないかと噂をするくらいだった。

 

特捜隊本部に戻った三船主任は、啓子の手持ちの5万円が2万3千円残されていることから、山代温泉に行った可能性を考える。週刊誌を見ながら、関根からの「お接待さん」が2000万以上を稼ぐ商売との指摘もあり、関根・畑野に山代温泉への出張捜査を指示、東京に残った三船班は啓子の周辺捜査を継続することにする・・・。

 

 

ストーリーはその後、山代温泉で関根・畑野が啓子の写真を見せながら聞きこみ。ホテルよろづや・支配人(岸野一彦)から、当ホテルには来ていないが、「お接待さん」なら近隣のホテル・旅館に出入りしているから、彼女たちに聞いた方がいいと提案されます。そこで、山代グランドホテルに出向き、支配人(二瓶秀雄)に聞くと、啓子は昨日の昼来訪、「お接待さん」になりたいと懇願され困惑しますが、たまたま来ていた「お接待さん」のたにざわ志摩(富山真沙子)がその日のうちに東京に行く用事があるから、連れて帰ることになったことがわかります。

 

そこで、志摩の自宅アパートへ訪れた関根・畑野が聞きこみ。志摩は東京行きの理由には触れませんでしたが、啓子と羽田空港で別れたこと、啓子が「お接待さん」になりたい理由も語ります。啓子は、大学に行ってもこの不景気では就職もままならないから、「お接待さん」になってお金を貯めたい、お金があれば何でも好きなことができると言うのでした。そして、啓子を何とかなだめすかした志摩は、いきさつ上自身から両親に渡すために土産物店、自身の東京行きの出金で銀行に寄ってから、2人で飛行機に乗り、羽田空港で別れた経緯を話します。

 

東京では、石原・水木が武宮を追及しているのを目撃した学生たちが、入り浸りの喫茶店で格好の話題にします。武宮は夜の9時から12時過ぎまで、近所のスナック・チェリーで飲んでいたと弁明。しかし、武宮が弱い生徒にだけ暴力を振るうことを目撃した石原・水木からすれば、額面通り信用するわけにはいかず、追及の手を緩めるわけにはいかないのでした。

 

そして後半になると、山代グランドホテルの仲居・直美(西尾美恵子)、直美が志摩に紹介した宿泊客・平島(水村泰三)、「お接待さん」と商売敵の芸者・花枝(大原百代)、志摩の東京行きの要因でもあるおおにし商事社員・佐川(葉山良二)、佐川の近所の主婦(花原照子)、佐川の上司・営業課長(山田光一)など、怪しげな人物たちが登場するのですが、果たして真相と関連があるのかどうか、興味津々にストーリーは展開します。

 

 

当作のテーマは、題名通り「汚れた18歳」であり、近作の中学生の題材ではありますが#736 ガラスの橋 や、青春真っ只中の学園ドラマ(1976年時点では、日テレの青春シリーズは終了していましたが)とは一線を画した、「やりたい放題の高校生」の生き方と刑事ドラマを融合させたものです。実際、この方が刑事ドラマとしては融合しやすく、少年法の年齢規制も当時は処分対象が16歳以上(註・現在は14歳以上)なので、中学生よりも高校生をテーマにする大義名分が背景にあると思われます。

そして、学生も学生なら、教師も教師であるという描写、そして大人も見本となる行動なりをとっても、自分中心の都合で動く面もあるという描写もあり、西沢治脚本としてはスケールの大きい構成にしています。#733 銭湯ブルース 、#734 絶望を越えて 、に続き好調さを維持しているのですが、前2作は監督が龍伸之介、鈴木敏郎 に対して、当作の監督は中村経美でありロケ作品というところが、全体的なバランスを崩しているように感じました。

 

一言でいえば、時間不足であり、まとめるというか撮るだけ撮って、あとは編集でブッタ斬りという場面が目立つのです。

たとえば

・山代グランドホテルの廊下で、畑野が直美に話しかける場面

→直美初登場の場面なのに、畑野が「直美さん、すみませんね、志摩さんと親しそうなので、もう少し聞かせていただきたいんですよ」となるのは、それ以前の場面を削除した印象

・志摩と直美が、アパートで語り合う場面

→曇りガラスの外で、誰か(男性?)が中をうかがっているが、これについてはラストに至るまで追及は無く、それらしい人物も登場人物で見当らない(「ある人物」かと思っても服装が違う)

・志摩の東京行きの理由を、いきなり関根が言い出し三船主任に報告する場面

→直美が話したのかと推測はされるが、警察に頑なな態度をとる直美の転換が描写されないのは不自然であり、ドラマ展開の肝を抜かれたような印象

・志摩が「ある人物」から逃げる場面

→直後に、いきなり「ある人物」を関根・畑野が追跡する場面に繋がるが、スピーディーというより性急すぎて、尺を切ったと思われかねない仕上がり

・「ある人物」が志摩の来訪をを待っていたという場面

→志摩が何度も連絡しても繋がらない場面も描かれているので、単に「ある人物」が嘘をついているとも推測できるが、説明が無いのは不自然

などあり、その他にもそこそこ見かけます。

 

粗探しには違いないのですが、せっかくの良い流れが何度中断したことか、そう思わずにいられない仕上がりというのが、当作の印象です。富山真沙子(一時期、鹿山有紀)は、あくまで個人的にですが、高野ひろみ(一時期、高野ひろ美)、藤本三重子(一時期、美浦わか)と並び、特捜隊が絵になる女優さんです。たぶん、リアルタイムで半年おきのローテーションで出演されているからか、インパクトを残す存在なのですが、当作については宝の持ち腐れ感が強い印象でした。特に、防波堤の場面は悲劇感丸出しで、明日への仕切り直しも見当らず、インパクトというより口あんぐりの印象でした。

 

まとめますと、脚本をコンテの段階で絞り切れず、とりあえず全部撮影して、あとは編集で感が強い作品でした。まさか、西沢治が「脚本を一字ならずも改変はまかりならん」と言っていたわけではないでしょう。そこまでの大物脚本家ならネット検索でwikiがあっても良さそうなものの、そこまで出ていません。それならば、中村経美監督の裁量で何とかならなかったか?

題材は良いものを選択したのに残念であります。次の石川県ロケは、脚本・元持栄美、監督・天野利彦となり、西沢治は外れているようなのが残念。次の西沢治脚本作品に期待します。

 

なお、「直前作#739 あの子が危ない →当作」とのキャスティングで興味深いことがあります。

2作続けて

・「浜田ゆう子→葉山良二」は夫婦出演

・「北町嘉朗→森田めぐみ」は当時所属の天知プロゼの俳優であり、三船班・石原刑事役の吉田豊明も天知プロゼ所属俳優

でありました。偶然かどうかはわかりませんが、興味ある符号でありました。

 

(追加 R2,01.26)

ここでいう、特捜隊が絵になる女優さんというのは、「特別機動捜査隊という個性ある番組」でなければ主演を張れない、ことも含みます。その体で行きますと、当作共演の浜田ゆう子、あるいは夏海千佳子、久保田民栄も該当するでしょう。村田知栄子は戦前からの大物女優、万里昌代の新東宝・大映での活躍は周知の通り、小林幸子(小林さち子)は本業もさながら、今でもビッグスターの1人ですので、外しても良いでしょう。

 

まあ、、「特別機動捜査隊という個性ある番組」ならではの助演女優さん、というと、これまた枚挙に暇がありません。水木梨恵、美弥たか子、宗方奈美、金子勝美、本多洋子、など、

>エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優

だけでもいるわけで、四列以上で表示された男優・女優ともなると、数え切れないほどです。当作の、花原照子に至っては、wikiも設けられ、2011年の「相棒」にまで出演していたくらいですから恐るべし(1927年12月生まれですから、当作時点で48歳、「相棒」時点で84歳!)。

こう考えると、「特別機動捜査隊という個性ある番組」が、

>15年6カ月の長い間に亘って

放送されたのも、頷けるような気がします。