※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#736  ガラスの橋

 

 

 

(本放送)・・・1975年12月17日

(再放送)・・・2020年1月2日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・天野利彦

協力)・・・無し

(協賛)・・・ホテル鳩和

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)、

田坂刑事(倉石功)、松木部長刑事(早川雄三)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

飯塚仁樹、佐野美智子、南原晋、広瀬たか子、神崎幸子、青柳鉄也、奥野匡、

三鈴栄子、神田正夫、石垣守一、池田駿介、中庸介、外野村晋、長島隆一、

桜井浩子、高木二朗

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

少年が死んだ・・・。

夏の日の光の中で、15歳の少女の体内に、

己の最期の命を燃やして・・・。

残された少女は、

大人の欲望と銃弾のなかで、もみくちゃにされた。

赤ん坊を生むと決意した少女。

それを応援する友人たち。

驚き狼狽する大人たち。

大人の常識とは・・・?

少年たちの、純粋に生きるということは・・・?

そして、真実の愛とは・・・?

追い詰められた中学生たちの、最後の手段は・・・!?

そして、大人たちの最善の解決方法とは・・・!?

・・・・・・(橋の上で、少女が三船主任に問いかける場面)

少女 「15歳のあたしが、なぜ赤ちゃんを生んではいけないのか?

    大人は、誰も答えてはくれませんでした!」

・・・・・・(以下、ナレーション)

次回、特捜隊、「ガラスの橋」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・エンディングで、生徒達(註・エキストラ?)を「東映児童研修所」と表記。

・当作の象徴でもある草花(穂が毛虫のようなもの)の名が明らかになっていないが、当方の知識不足ながら当面、エノコログサ、として扱う。

・民法731条に「男は、十八歳に、女は、十六歳にならなければ、婚姻をすることができない」とあるが、当作では対象が中学生がテーマとなっている。

・なお、当作から4年近く経ってから、似たテーマで中学生と教師との関係を描いた学園ドラマに「3年B組金八先生」(1979年10月26日-1980年3月28日、第1シリーズ、TBS)がある。

・関連して、中学生を主人公とした最古参番組では「中学生日記」(NHK)があるが、似たテーマで制作、放送されたかは未詳。

・当作の撮影ロケは、ホテル鳩和は検索ヒットしないが、青梅線鳩ノ巣駅周辺にかつて「鳩和荘」(西多摩郡奥多摩町)という旅館があったことで、当初は鳩ノ巣駅・多摩川周辺で行なわれたものと推察した。しかし、中学校と生徒の自宅を結ぶ象徴的な橋の、脇側にある看板の「玉翠荘」は現在も営業中であることから、青梅線終点の奥多摩駅・昭和橋周辺であると考える。

・ふなだ守の死因は、脳腫瘍、癌と混乱しているが、以下本文では癌として扱う。

 

 

 

(視聴録)・・・開始約12分前半まで

奥多摩中学校の教室では、担任教師・たかぎ(桜井浩子)と女子生徒・おおつきリサ(佐野美智子)が、机の上のお供えの花とエノコログサを見つめていた。そこは、2日前に癌で亡くなったふなだ守(青柳鉄也)の席であり、リサは守と、エノコログサを互いの小指に巻き、愛を交わす仲であった。そして、リサはたかぎに衝撃的な告白をする。リサも守も助からない命だということを知っており、この夏休みに2人は結ばれ、現在リサは妊娠、出産を希望していた。たかぎは驚くとともに、15歳になったばかりだと説得を試みるが、リサは、15歳ではなぜいけないのか?自分が間違っているのか?と反論。同意してくれるものと思っていたリサは、裏切られた思いで、たかぎの目は汚らわしいものでも見ているようだと叫び、教室を出るのだった。

 

そして、校門外で待っていた級友の玲子(広瀬たか子)、千穂子(神崎幸子)、中学校と住宅街とを結ぶ橋(註・備考により以下、昭和橋と称す)でも級友の克哉(飯塚仁樹)、森岡慎一(南原晋)が待っており、リサは事の次第を話す。リサは出産への強い決意を吐露、級友たちもリサへの応援を決意、熱い思いの5人の手が、昭和橋で重なり合った。。。

 

一方、三船班は、信用組合強盗殺人事件を追い、奥多摩の釣り場周辺に詰めていた。主犯の安西(池田駿介)、共犯の村山(野村章平)が2階の釣り場に隠れ、もう1人の共犯者を待っているようであり、石原・田坂は1階で待機、松木・水木が2階のドア近くから踏み込もうとしていた。しかし、2階の窓から覗いた三船主任・関根は人質が3人(註・リサ、克哉、慎一)ほどいるのを目撃。急遽、踏み込むのを停止しようとするが、指示が間に合わず、松木・水木が突入。松木が人質に気がつき説得を行なうも、安西は逆上してリサを人質に逃走。石原・田坂は村山を逮捕、松木・水木そして三船主任が追跡することになる。そして、川沿いに出た安西はリサを川に突き落とし単独逃走、三船主任は追跡を松木・水木に任せ、流されるリサを助けるべく、川に飛び込むのであったが・・・。

 

 

ストーリーはその後、安西が逮捕され、所轄の奥多摩署で松木・水木が取調べ、村山も石原・田坂が取調べます。もう1人の共犯者について、村山は安西の知人だということしかわからず、当の安西はとぼけて供述しようとしません。そして、保護された克哉・慎一も、関根の問いかけになぜか黙ったままですが、所轄署刑事・小林(晴海勇三)が、克哉は釣り堀経営者夫婦(中庸介・葉山美樹?)の子だと指摘、そこで関根は父母の呼び出しをかけようとします。すると、克哉は親が来ても何も話さないから、まずリサに会わせてくれと懇願、慎一も町会議員の森岡夫婦(奥野匡・三鈴栄子)の子だと名乗り、克哉の発言に同意します。

 

これに、リサを救出・入院させた三船主任は、2人の両親を呼び、同意を得たうえで関根と2人を入院先へ連れていきます。リサは、医師(八木秀司)、看護婦(川越たまき)のもと順調に回復していますが、2人の要望もあり病室を3人きりにさせます。が、病室の外で、医師からリサは妊娠5か月で何とか流産は食い止めたものの、15歳では(母体の問題もあり)流産したほうが良かったかもしれないという見解を聞き、三船主任・関根とも唖然とします。

 

そこに、石原・水木が駆けつけ、リサの担任・たかぎから、リサの自宅(店兼用)であるスナック・くれないを訪れたところ、リサの義父(麻生亮一?)の殺害死体を発見した報を伝えます。そこで、三船主任は水木とともに、田坂、所轄署刑事(高木二朗)、たかぎの待つ現場に向かい、新たな殺人事件に直面するのですが、その現場周辺の野次馬には玲子・千穂子もいることに、これからどのように展開していくのか、興味津々にストーリーは後半へと繋がります。

※その他、後半の出演者に、所轄署署長(長島隆一)、守の父母(石垣守一・森康子)、教頭(神田正夫)、校医・深見(満山恵子)が登場します。

 

 

当作は、刑事ドラマと学園ドラマを融合させようとした、野心的な作品だと感じました。刑事ドラマに重点を置くなら、スナック・くれないでの松木の「ある意見具申」(開始約17分後半)で一気に転換、思いもよらないリサの義父殺害の犯人が炙り出されるところはクライマックス。時間配分的にも、「起承転結」のちょうどいい塩梅でもあることから、脚本・横山保朗のパターンからすると有り得なくはないでしょう。

ところが、(備考)でも触れましたが、テーマを学園ドラマの範囲にまで深めたのが当作の特徴であり、転換というより飛躍とでも称したほうがふさわしい構成になっています。この当時、「3年B組金八先生」はまだ放送されていませんが、昔を遡った視聴者の目には(中学と高校の違いはあるものの)、三船主任を、「青春とはなんだ」の野々村先生(夏木陽介)、「これが青春だ」の大岩先生(竜雷太)、「飛び出せ!青春」の河野先生(村野武範)、「われら青春!」の沖田先生(中村雅俊)に重ね合わせたかもしれません。

 

個人的な視点からすると、相手は既に亡くなっており、残された中学3年のリサに問題を追わせる設定は酷な思いがします。問題解決には、短期的、長期的なものと双方あるわけで、当作のように膨らみのある問題だと、いくら「雑草のように」「強く生きる」とはいっても、60分番組では非常に厳しい。さらに、義務教育のさ中の15歳の女子に、単独で立ち向かわせるというのはどうかなとも思います。

だからこそ、国家権力の徒とでもいうべき三船主任を介添えに、ストーリーを展開させる構成をとったかもしれないとも思いますし、命の恩人でもある三船主任だから、リサも信じる気持ちを持たせることで補完させているのかもしれません。

 

しかし、劇中にある通り、三船主任はあくまで警察官であり、学校関係者ではないのです。さらに、三船主任が「あること」をリサに説得させる場面は、弱すぎる感があります。他の人たちの話に耳を貸さず、自らの意思を貫徹させようとしたリサが、三船主任の一言二言で翻意してしまうのは性急すぎであります。いくら命の恩人でも、(当作の問題解決には)信頼関係の醸成が足らないのでは、とも考えます。

ここは、前述の松木の「ある意見具申」(開始約17分後半)で、刑事ドラマの本質に戻しておいて、ありきたりですが、「物分かりの良い」たかぎ先生にキャラ転換をかけ、前述の「あること」についてはカットして、(本放送が12月17日ですから)卒業までの3か月で、学校と生徒の親密な話し合いのパターンに持っていき、側面から三船主任がアドバイスするほうが良かったかもしれません。

 

まあ、こうした感慨も、後年「3年B組金八先生」を視聴した立場だから、自分もエラそうに講釈を垂れてしまうのですが、「3年B組金八先生」を知らずリアルタイムで観ていたら、ストーリーが刑事ドラマの範疇から広がり、「凄い面白い」と感じたことでしょう。昭和橋の場面は、当作の象徴でもあり、非常に印象的で、ラストの三船主任・リサの2人きりの場面は本当に美しい。

ですので、「3年B組金八先生」を視聴したことが、自分にとって仇となったともいえ、後年からみての客観的な批評は、(先入観もあり)本当に難しいですね。

冒頭に

>当作は、刑事ドラマと学園ドラマを融合させようとした、野心的な作品だと

>感じました。

と書いたのは、自分なりの苦渋でもあります。

 

ところで、年末に録画溜めしておいた、渡哲也主演映画の「大幹部・殴り込み」(1969年)、「大幹部・ケリをつけろ」(1970年)をようやく観賞しました。これは、三船主任こと青木義朗が出演していたからでもあるわけですが、三船主任初登場が1969年10月1日の特別機動捜査隊(第413回)麻薬 で、翌1970年から三船班が本格的に稼働していくのですが、そのさ中の作品であり興味を持っていたわけです。

まあ、観賞しましたら、俳優に役柄は関係は無いのですが、東映作品ではなく日活作品であることもあり、三船主任のイメージそこのけの青木義朗の役柄でした。ついでにいえば「あんな事件」が頻発するのに警察が出てこないという、ピカレスク作品であります。そして、俳優・青木義朗の幅広さを示す作品でもあり、個人的には「大幹部・殴り込み」は渡哲也を喰ったものだとも思えます。その冒頭、渡哲也のあとに、青木義朗と藤竜也が登場する場面は、ふと#540 夜の誘惑者 のワンシーンを思い出し、背広姿で拳銃を撃つ場面は、三船主任そのものに見えてしまいました。