※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#725  拳銃

 

※検証本には、題名の後に(14周年記念)と書かれているが、当作予告篇・オープニング表記には、その旨がなされていない。

 

 

 

 

(本放送)・・・1975年10月1日

(再放送)・・・2019年11月28日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・吉川一義

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班+矢崎班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)、

松木部長刑事(早川雄三)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

鈴木孝子、三島史郎、湊俊一、神田正夫、中島元、晴海勇三、松尾文人、

山口暁、萩原信二、佐竹一男、八代順子、加藤和夫、亀石征一郎

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

・・・(三船主任から拳銃を向けられ、関根・松木に手錠をかけられた石原の場面)

石原 「これはいったい何の真似だ!? 

    俺が何をしたというんだ!? 主任・・・!!」

・・・(以下、ナレーション)

原宿のエレベーター内殺人事件の凶器が、石原刑事の拳銃と判明した!

三船から取調べを受ける石原は、

犯行時刻、ある女性とテニスをしていたアリバイすら、

黙して語らなかった・・・。

そこで、矢崎は石原を同道(ドウドウ)、

犯行現場(ゲンジョウ)で異例の面通しを行なう。

目撃者たちは、一様に、犯人は石原だと証言した!

逃走した石原は、今度の事件の糸口を、やっと掴みかけるが、

その寸前、プツンと切れてしまう・・・。

ついに、三船と矢崎は、捜査方法などの違いから対立!

誰が!? いつ!? どうして石原の拳銃を・・・!?

謎めく、数時間の空白・・・!

次回、「拳銃」、御期待ください。

 

※実見すると、内容が異なるナレーション部分も有りますが、敢えてそのまま記載します(その部分に下線を引きましたが、指摘するにとどめます)。

 

 

(備考)・・・

・矢崎班からの出演者、矢崎主任(亀石征一郎)、桂刑事(佐竹一男)、神谷刑事(山口暁)、岩本刑事(萩原信二)は、エンディングで表記される。

・序盤で、矢崎主任のいう施条痕(シジョウコン)とは、発砲により弾丸につくライフルマークのことで、過去の特捜隊作品では、単にライフルマーク、線条痕(センジョウコン)と言われていた。

・地下街の描写について、前半部分のロケ地は不明だが、後半部分は新宿サブナードでロケされたものと推察。

・パクリ屋とは、「手形割引や資金の融通を材料として詐欺・横領・脅迫行為などを行う者」の意(goo国語辞書)で、具体的には、特捜隊でしばしば登場する「高利貸」が、現金を得るために行なう違法行為と考えた方がわかりやすい。

・これに関連して、矢崎主任の言う「捜査3課」とは、実見すると「捜査2課」が正しいと思われるが、本放送時は管轄が違う可能性も考え、以下本文では「捜査3課」のままとする。

・今回の強盗殺人事件担当は矢崎班であることから、序盤で矢崎主任が、三船主任に事件概要を話す場面が有り(註・回想場面も挿入される)、長いが以下に書き出す。

>事件発生は、6日前のことです。

>新宿で不動産会社を経営する貝塚いちろう46歳は、西伊豆に別荘を購入した

>ものの、売れ行きが思わしくなく、1億4千万の手形の決済が迫っていました。

>貝塚いちろうは、個人所有の有価証券を処分することを決め、事件当日・午

>後1時30分、秘書のさくらい千恵子に送られて、6階にある会社の事務所を

>出ました。射殺されたのは、6階から地下2階の駐車場に着くまでの、わずか

>1分足らずの間です(註・回想場面で、エレベーターが降下する状況が、

>各階表示点灯の変化で表わされる)。

>発見は3時10分、駐車場係(註・後述の宮原のこと)の通報で、われわれが

>出動しました。

(追加)R4.9.9

スペシャルセレクションに収録された作品を観賞してみて、当作で石原が矢崎主任に取り調べを受けたことで、石原を演じた吉田豊明は、ゲストやレギュラーを含め、日高主任を除いた5主任から取調べを受ける役柄を演じたことになる。

 

 

(視聴録)

・・・開始約15分後半まで

 

三船班の石原は、非番ということもあり、スナックホステス・こぐれ由紀(鈴木孝子)とテニスを楽しんでいたが、なぜか2人を監視する松木・水木の姿があった。それは矢崎主任・桂同乗の特捜隊車両を運転する関根が、歩く三船主任を呼び止めたことで明らかになる。

6日前に新宿で不動産会社社長・貝塚(松尾文人)が心臓部を2発撃たれ絶命、秘書・千恵子(八代順子)の証言で有価証券入りカバンが盗まれた事件で、体内に残された弾丸が石原の拳銃の施条痕と一致、石原に容疑がかかっていたからであった。三船主任も特捜隊車両に同乗、現場でもある地下駐車場へと向かう。駐車場係・宮原(三島史郎)に、石原も含めた写真数枚を見せ、事件当日にエレベーターに「故障中」の貼紙をした男の確認を求めるが、宮原は迷いながらも石原の写真を指差す。反論する関根であったが、三船主任はそれを止め、とにかく石原に会おうと席を外すが、矢崎主任・桂は、それを何ともいえない表情で見つめていた。。。

 

テニスクラブを出た石原・由紀を、三船主任以下関根・松木・水木が呼び止める。そして、三船主任は石原の拳銃を取り上げ、2人を殺人容疑で逮捕すると宣言、2人に手錠をかけるが身に覚えのない石原は激しく怒鳴るだけであった。

取調室では、三船主任が関根・松木を同席のもと、石原を訊問。由紀への態度を叱責するとともに、押収した拳銃には弾丸が全て装填されてあることから、誰かが拳銃のみを犯行に使ったとみて、犯行時刻・1時半前後のアリバイを問い質す。しかし石原は、由紀のことをけなされたこともあり、詳細を語ることは無く、そんな石原に三船主任は鉄拳を振るう(註・この箇所は、視聴者には石原の回想でアリバイが判明するが、三船班には、後述の由紀への訊問で判明する形をとっている)。

 

進展しない石原の訊問に、矢崎主任がひとりで問い質す。矢崎主任は事件形態から、パクリ屋の計画的犯行とみて、事件翌日、捜査3課刑事(中島元、晴海勇三)の協力のもと有価証券の行方を捜査したところ、丸菱商事にて8千万で売買されたことを掴んでいた。そして、その取引相手が、手形詐欺で指名手配中のパクリ屋・稲川たけし(加藤和夫)であることが判明。稲川の元情婦を神谷・岩本に張り込ませていたところ、その女は由紀であり、そのアパートに石原が出入りしていたことから、矢崎班がマークすることになったいきさつを話す。そのうえで、事件当日に拳銃を使ったのかどうかを問い詰めるも、石原はそれでも詳細を語らなかった。

 

特捜隊本部では、田中係長が尾行をつけて由紀を釈放したという水木の報告に、三船主任は声を荒げる。由紀には犯行時刻テニスをしていたアリバイがあったからだが、その代わり石原が話さなかった当日の詳細が明らかになる。11時に由紀は石原と会い、昼食後にテニスを始めたが、石原が疲れたようす(註・石原は事件当日は徹夜明け)だったので、アパートの鍵を渡し部屋で休むよう勧めると、石原はテニスクラブを12時半ごろに出て行ったという。その後、由紀が3時過ぎに帰宅すると、石原は拳銃を抱えるようにして眠っていたということが判明する。そして三船主任は、いくら徹夜明けの石原でも、女の部屋で正体も無く眠り込むはずはない、と自分に言い聞かせるように呟く中、矢崎班・桂が入室する・・・。

 

 

その後のストーリーは、桂がテニスクラブの石原のロッカーを捜査したところ、テニスシューズの中に預り所の鍵が隠されていたのを発見したため、矢崎主任へ報告に入室したのですが、矢崎主任の不在もあり、三船主任はそれを強引に受け取り水木と預り所に向かいます。事務員(山田貴光)からは無料で預かるのは3日間までで、以降は超過料金が発生すると言われますが、逆算で事件当日に預かったことが判明、預かった鞄から銃痕の穴の開いた座布団を発見。これらをもって、特捜隊本部では、田中係長のもと、三船主任・関根・松木・水木、矢崎主任・桂が集まり、捜査方針を打合わせますが、ここで予告篇にもある通り、三船主任と矢崎主任の対立が起こります。

 

石原が犯人なら、テニスシューズに鍵を隠すわけはなく、事件から6日も経っていれば遺留品を処分しているはずだという三船主任。目撃証言もあることから、現場であるエレベーター→地下駐車場→地下街の逃走経路に、石原を同道させての面通しを要請する矢崎主任。この面通しに矢崎主任は三船主任の同道を拒否したところに、対立の芽が生まれます。

石原は犯人ではなく、しかも自分の部下だという矜持を持つ三船主任。あくまでも、石原は矢崎班の管轄事件の容疑者であり、黙秘権の行使が許される石原に暴力を振るうのはおかしいとする矢崎主任。2人の刑事としての考え・世界観の違いは明らかであり、ここまで開始18分半ば、これからどのように展開するのか、#635 初笑い とら、とら、とら捕物帳 以来リアルタイムで、約2年近くぶりの吉川一義監督の演出に堪能しながら、残りの約27分で石原の立場はどうなるのか、ドキドキワクワクしながらの視聴になります。

 

これは面白い!

特に、開始24分後半からの約1分間ですが、関根を挟んでの、三船主任と矢崎主任の対決は屈指の名場面と言ってもいいでしょう。かつて、#515 私は許せない での三船主任と関根の2分ばかりの対峙も名場面でありましたが、当作は、日活代表・青木義朗と東映代表・亀石征一郎の対決にも見えるところがミソ。

窮地に追い込まれた(ように見える)三船主任が、それでも

>奴(註・石原のこと)が真犯人(ホンボシ)なら、

>(註・ここで一呼吸おいて)俺が射殺する!

と言い切る場面、ここは思わず身体が震えてしまいました。

 

そして、当作は石原刑事活躍譚でもあり、【第4回再放送】となってから

#693 情熱の海

#694 ある絶望の女

#705 ドキュメント追跡

#721 続・刑事はつらいよ

に続く5作目になります。3作目までは天野利彦監督作品で、4作目は監督は異なりますが矢崎主任共演作なのが当作と共通しています。

ただ、当作が斬新なのが、三船主任・矢崎主任・石原刑事の3人を均等に取り扱おうとする姿勢であり、このバランスのとり方は絶妙になされていると見えました。それは、ラスト2分間の場面でも明らかなところで、3人が見せる「いい顔」というのも見逃せません。

 

映像表現もこれまた優れており、上記本文では省略しましたが、開始直後にテニスコート、アパートの部屋、エレベーター、テラスを交互に映し出し、映像で人間関係・事件概要をおぼろげながら表現して、三船間と矢崎班の合流まで澱みなく結びつけるのは、脚本構成もあるのでしょうが、やはり特捜隊四天王・吉川一義監督の演出力と感じずにはいられません。

 

しかし、真相究明に走る三船主任・水木が再度の現場捜査で、三船主任の

>誰かが嘘をついている・・・(中略)

>嘘をついているか、つかされているか・・・

と意味深に呟いたあたり(開始約33分後半)からの流れは急すぎで、特捜隊の宿命である時間不足、悪くいえばやっつけ仕事にみえるところはいただけません。

また、「ある人物A」と「ある人物B」との関係については、最後の最後まで明かされないのはどうなのか、あるいは時間不足を補うためカットしたのか、こういう疑問点が湧いてきます。ですので、傑作とはいいにくいものの、心に残る佳作とでも表現したほうがいいのでしょうか、惜しいなあという思いです。

 

前にも触れましたが、【第1回再放送】【第2回再放送】では前篇・後篇と2回に分けての放送もありました。時代が下ったとはいえ、せっかく青木義朗・亀石征一郎と大物(?)2人を揃えたのですから、2回に分けても、視聴者から不評を買うことは無かったでしょう。。。

当作は、2019年12月5日(木)9:00-10:00  のほか、12月12日(木)4:00-5:00 にも東映chで再々放送されるので、観賞を勧めたいと思います。

 

また、ここのところ#720 待っている女 以来、矢崎班が出ずっぱりでもあります。実際、#727 自由への暴走 まで矢崎班ストーリーが続きます。(今から思えば)編成的には、ラストの矢崎主任の「ある一言」から、#721 続・刑事はつらいよ の次作に当作を持ってきて、以降は#727 自由への暴走 まで矢崎班ストーリーでしたら、「ある一言」の効果があったのではとも、思います。あるいは、三船班と矢崎班を繋ぐ人物として、田中係長や田坂(倉石功)は別として、所轄署の女刑事・木塚由里(藤山律子)がいます。木塚を登場させたらどうなっていたのかとも、アーカイヴ的になりますが、つい考えてしまいます。

 

(追加)2019.12.01

なお、昨日の11月30日は矢崎主任こと亀石征一郎の81歳の誕生日でもありました。自分はツイッターをしませんので、この場を借りて、挨拶させていただきます。ツイッターについては、真偽いろいろ言われているようですが、ご健在でいられることは幸いであります。特捜隊が再放送されている現在、東映chに思い出綴りに出演してほしいと、無いものねだりをついつい考えてしまいます。

思い起こせば、三船主任こと青木義朗が逝去されたのが、2000年9月3日・70歳でありました。両主任というか両名優の共演は驚くほど少ないのです。両雄の名演を当作で観れたのは、非常にうれしい出来事でありました。