※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#721  続・刑事はつらいよ

 

 

 

(本放送)・・・1975年9月3日

(再放送)・・・2919年11月14日

(脚本)・・・佐々木武観

(監督)・・・島崎喜美男

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班+矢崎班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)、

松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

片桐夕子、藤江リカ、安藤純子、紅理子、峰千景、斉藤真、片山滉、小川吉信、

大山高男、井上浩、倉田主税、黒沢ときこ、和田明美、水野洋子、浦里みゆき、

臼井克明、はやみ竜次、佐竹一男、中庸介、長沢大、須藤健、亀石征一郎

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

・・・(特捜隊本部で、石原を追及する関根、見守る田中係長の場面)

関根   「(写真を見せながら)浜田と偽装心中の梅島道代だ。

      お前さん、殺害直前の女と寝ているんだぞ!」

・・・(監房で叫ぶ石原と、話を聞く関根の場面)

石原   「罠だ・・・! 僕は、罠にはめられたんだ!」

・・・(以下、ナレーション)

半年前に殺された姉の真相を追って、

秘密売春組織に潜入する、ゆう子という女。

彼女の身を案ずるあまり、次第に罠にはまっていく石原刑事・・・。

凶悪な黒い組織に、敢然と挑戦する石原刑事・大奮闘篇!

次回、「続・刑事はつらいよ」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・前作(?)ともいうべき、#580 刑事はつらいよ(本放送・ 1972年12月13日)は【第3回再放送】では欠番のため、完全に内容を窺い知ることはできないが、検証本329頁のあらすじからみると、石原刑事主演譚であることは共通。なお、完全な続篇なら、約2年ぶりの放送となる。

・オープニング映像、エンディング映像がそれぞれ変更されており、最終回まで(註・音楽は変わるものの)映像は変わらない。

→追加(R2.2.29)

「音楽が変わるものの」としたのは、#751 金貸し一代 で音楽と担当が横田年昭に変わるものの、再度#762 若き十七才哀歌 にて音楽が変わることを指す。オープニング・エンディング音楽が、これまでの特捜隊のイメージを一新するほどのチェンジであり、違和感が避けられなかったから横田年昭が変更したものか?

・矢崎班からの出演者、矢崎主任(亀石征一郎)、桂刑事(佐竹一男)は、エンディングで表記される。

・鑑識員(西郷昭二)の出演場面が見当たらない。

 

 

(視聴録)

・・・開始約7分後半まで

 

特捜隊では、半年前に迷宮入りと目された、「きりもとあきえ殺害事件」を矢崎班が追う中、三船班は荒川土手・にしきはらで、女(後に梅島道代と判明、演者は安藤純子)がペーパーナイフを握り男の胸部を刺した状態の男女心中死体の捜査に当たっていた。しかし、鑑識員は、男(中庸介)は胸部出血が少なく、女の履物が未発見なことから偽装心中であり、どこかで殺されここに運ばれたと見立てる。死因の詳細は解剖待ちであるが、男について、関根・松木は見覚えがあり、畑野は半年前の事件関係者の浜田ゆうきちで、石原が未だに目をつけていることを三船主任に具申する。が、当人の石原の姿が見えないことに三船主任は訝しがる。。。

 

その指摘通り、石原は浜田を尾行の日々だった。そしてある日、浜田が新宿区本田町のビル階上にある三宝広告社に帰るとき、会社に電話がかかり、新人事務員・ゆう子(片桐夕子)が取り、宇佐美(はやみ竜次)に繋ぐ。電話に出た宇佐美は、なぜかゆう子を煙草を買いに行かせる。実は浜田が以前所属していた暴力団組織の会長・南雲(須藤健)、その運転手・大貫(長沢大)から石原の存在は気づかれており、電話は大貫からの石原尾行の件であったからだった。そして、宇佐美と帰社した浜田が階上から見下ろすと、石原の存在ばかりか、ゆう子が石原に連れていかれるのを目撃されていたのだった。

 

石原とゆう子は旧知の仲であり、一昨日から勤務し始めたというゆう子の発言に、石原は真意が掴めず、すぐにでも辞めるよう説得するのだが・・・。

 

 

上記本文は、実見した方ならお分かりでしょうが、ストーリーの流れ・順番を当作とは多少入替えています。具体的には、石原尾行の件が、男女心中事件以前の出来事として当作では描写されていますが、死体で発見された浜田が現われていること、比較的序盤であることで対応できると考え、上記本文作成の手間もあり、入替えた次第です。この点、ご容赦ください。

 

ストーリーはその後、夜となり、浜田が夜の手配師でもあり、梅島(小川吉信)の妻・道代を連れて行こうと争っているところを石原が目撃。そこを、宇佐美に大石で後頭部を一撃され、これから石原の記憶は朧げなものになります。

 

そして朝になり、あるマンションの807号室のベッドで目を覚ました石原は、隣にパーマ女(紅理子)がいるのに気づきます。ともあれ、特捜隊本部へ連絡すると、田中係長から、すでに三船班は男女偽装心中事件で動いていると叱責、パーマ女から警察手帳を渡され、遅ればせながら現場に向かいます(これで、上記本文の荒川土手の場面に繋がります。なお、田中係長が電話を切った後、矢崎主任・桂が入室、事件捜査の現況を報告する場面も有り)。

 

しかし、現場に到着したものの、半年前の事件は矢崎班の管轄であり、越権でマークしていた石原に三船主任はカミナリを落とし、また、その事件の関係者でもある浜田が死体で発見されたとあっては相手にされません。また、三船主任・畑野は、これから徳島地裁に緊急出張ということで、三船班の看板不在の仲、石原はどうなるのか・・・、というところでストーリーは約四分の一を経過、興趣を引き立てることになります。

 

登場人物にしても、その後、道代が勤務するCLUB若のマダム(藤江リカ)、ホステス(峰千景?)、マネージャー(斉藤真)が現われ、どういう風に絡むのか、これも興味あるところです。

 

 

しかしながら当作は、刑事ドラマとして観ると、真相も含め首をかしげることが多い作品です。犯行動機は偶発的なものとしても、(伏線は設定してはいますが)凶器を持ち歩いている点に必然性が見出しにくいことがあります。また、「ある人物」に三船班が聞きとりをしてはいるのですが、犯人について一言も語られないというのも不自然です。これは、何度も指摘している通り、前半は良いものの後半バタバタになる脚本に問題がある、「個性」でもありましょう。

 

ところが、人間ドラマとしては、「プレイガール」で実績を残す島崎喜美男監督を起用したのが奏功したのか面白く仕上がっています。

三船班の代表とでもいうべき三船主任・畑野が、とうとう矢崎主任とエンディングまで巡りあうことなく展開、石原(細かくいえば、田中係長とその他の三船班の面々)を接点として、三船班と矢崎班の合同捜査の展開は面白い。これは、【第3回再放送】の、立石班・藤島班・三船班でもなかった展開です。物足りないと思われる方もいたかと思いますが、石原刑事主演譚としてはこういう展開も充分アリでしょう。

 

そして、主演譚であるべき石原にカッコ良さという点をなかなか見せず、それを最後のアクションシーンで炸裂させ、クライマックスの特捜隊版・男はつらいよ、にまでつなげる手法はお見事。正直、三船班のストーリーを視聴してきた側からすると、三船主任の信頼するのが畑野、見守っていたくなるのが石原と見えるのです。これは、伊賀山正光監督の秀作である#513 その夜の女 で、三船主任が関根に「石原もようやく刑事(デカ)らしくなったね」と呟く場面の印象もあります。それがラストの現場再検証で描かれる、2人のコミカルな場面にもなるわけで、観終わったときのニヤニヤ感は、近作の特捜隊では#705 ドキュメント追跡 以来でした。

 

これは石原刑事を演じた吉田豊明の好演もあるのですが、ゆう子を演じた片桐夕子にもありましょう。日活ロマンポルノ女優としての実績もありながら、薄幸の女性を演じることではなかなかの女優さんです。以前、天知茂主演で#18 化粧台の美女・江戸川乱歩の蜘蛛男 を拙ブログで挙げましたが、そのシリーズものでは#16 白い乳房の美女 が非常に面白い作品ですが、主演したのが片桐夕子で、岡田奈々・白都真理あるいは同じ日活ロマンポルノ女優の北原理絵まで凌駕する存在感をみせていました。

もともと演技の素養はあったのだと思いますが、wikiでは銀行OLからの日活入りとあるのには驚きます。当時のスカウトの眼力もあったからか、当時の日活のイメージを払拭して一般映画・ドラマへの出演が増えていったのも、当然かもしれません。

 

キャラでいえば、宇佐美を演じたはやみ竜次、マネージャーを演じた斉藤真が、当作の数年後、「快傑ズバット」でレギュラーとなるのも面白い符号。特に、斉藤真は、特捜隊の後継でもある特捜最前線でもたびたびゲスト出演、インパクトある役柄を演じています。現在では劇団を主宰、舞台俳優として活躍しているとのことです。

 

気になっているのが、【第3回再放送】で欠番となった#580 刑事はつらいよ。(備考)で触れたとおり、全容が検証本だけでしかわからず、もっと知りたい気持ちになります。あわよくば、東映chさんで、予告篇だけでもいいから発掘してくれないかなと思うところであります。